帝王の拳   作:マキシマムダンガル

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第四話 桜吹雪が如く

その日も、いつも通りと言わんばかりに生徒会室で談笑していた

 

「っていうか、なんであんたがここに入り浸ってるのよ!」

 

「いやぁ、なんか居心地良いなぁって」

 

我が物顔で生徒会の椅子に座る秋雨に楓はそう叫ぶが、秋雨は気にもしていない様子だった

 

「いい!?ここは関係者以外立ち入り禁止になってんの!」

 

「まぁまぁ、生徒会長さまと仲が良いんだからそれぐらい大目に見てくれよ」

 

「見れるわけないでしょ!」

 

そんなやり取りをしていると、生徒会室のドアが開いた

 

「ハハハッ、君たちはとても仲が良いねぇ」

 

帝は二人のことを微笑ましそうに笑いながらそう言った

 

「会長!こいつをどうにかしてください!」

 

「君は元気でイイねぇ。それはそうと、秋雨君、君にお客様が来ているよぉ」

 

そう言って帝が中に入ると、すぐさま古いカメラを持った女子生徒が中に入ってきた

 

「どうもどうも、あなたが学園で噂になっている二道秋雨さんですね!」カシャッカシャッ

 

出会って早々にカメラのシャッターを切り続ける

 

「うるさいなぁ、何だお前」

 

「申し遅れました、私、私立帝学園 広報委員会委員長『春風 麗(はるかぜ うらら)』と申します」

 

麗は自己紹介を済ますとすぐさま手帳を取り出した

 

「ではでは、さっそく取材をさせていただきたく思います!」

 

「いや、誰が取材を受けると言った」

 

「まずは、二天流についてお聞きしたいのですが」

 

顔をずいっと近づけまるで威圧するように質問をしてきた

 

「話を聞け、俺は取材を受ける気はないし、二天流について話す気もない」

 

「えぇ~、いいじゃないですか。いまだにあなたのことを暴力的で危険な不良生徒と思っている人は多いです、その誤解を解こうと思っているだけではないですか。そう、これは善意の取材なのです、決して情報をばらまいて新たな取材対象を増やそうとかそんな気は一切ございません」

 

「後半から本音が漏れてる気がするがな」

 

「まぁ、あなたに興味があるのは事実ですけど、なによりあなたが使う二天流が一番興味がありますね」

 

そう言って、取材用の手帳を手に取りペンを持った

 

「さぁ、なにから何まで全て教えてもらいますよ、なんてったって番記者!」

 

「うるせぇ、アイドルみたいに言うな・・・」

 

秋雨は一歩後ろに下がりながらそう言うが、にやにやと麗はにじり寄ってくる

 

「いいからさっさと話してくださいよ、さもないとストーキングしてあーんなことやこーんなことを学園新聞で特集組みますよ」

 

「やめろ、通報すんぞ」

 

嫌そうな顔で即答すると、麗は不機嫌そうな顔で

 

「あーそうですか、だったらこっちだって考えがあります。というか、ストーキングします、そして、いわれのないことを書きまくってやります」

 

「おい!」

 

秋雨が麗を止めようと前に出た瞬間

 

「では、せいぜい震え上がることですね!」

 

その言葉と共にまるで消えるかのようにその場から去って行った

 

「早っ!?」

 

「流石は広報委員会随一の情報量と情報提供者の多さを誇る生徒ね」

 

楓が呆れたような顔で喋り出した

 

「生きるWikipediaの名は伊達ではないわね」

 

「なんだそれ」

 

「知らないことはないって程の知識と情報を持っていて、この学園でいかがわしい事から、後ろめたい事をするとその日のうちに学園新聞『春一番新聞』にその細部まで載せられるらしいわ」

 

そう言って、生徒会室の棚の中から新聞を取り出し机の上に広げると

そこには不良生徒の喫煙シーンから、どこかのクラスのカップルの彼氏が浮気をしているなど、何の意味があるのかわからないことまで事細かに書かれている

 

「プライベートもあったもんじゃないな」

 

「これらの情報は麗、または広報委員、はては一般生徒の中にいる情報提供者、至る所に監視カメラが配置されているようなものね」

 

秋雨はその内容を読みながら少しにやりと笑って見せた

 

「まぁ、私たちも手に負えない委員会だから、あんたも気を付けた方が・・・ってなによその顔」

 

「いや、ここまで細かく書けるんだから流石にどこかに穴があるはずだ。そこを逆についてやるぜ」

 

そう言って、秋雨は生徒会室を出て行った

 

「大丈夫かしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからは、広報委員会と秋雨の勝負のようになっていた

お互いに自分がどこにいるのかをバレぬように息を殺し、気配を消して

秋雨は広報委員会を探し、広報委員会は秋雨を追っていた

 

「で?結局どうだったの?」

 

生徒会室にて楓は秋雨にそう聞いた

 

「いや、奇妙なことにあいつらの気配が感じられない」

 

秋雨は腕組みをし不思議そうに頭を傾げていた

 

「はは、そうだろうともぉ、麗さんは忍者だからねぇ」

 

「忍者?まさか、漫画じゃあるまい」

 

唐突に表れた帝の発言に鼻で笑って見せた

 

「それが嘘じゃないんだなぁ」

 

「どういうことですか、会長」

 

帝は楓の質問に少し誇らしげに笑うと

 

「実は彼女は本物の忍者でねぇ、伊賀流忍術を知っているかな?」

 

秋雨を少し見下したかのような表情でそういう帝に

 

「さぁ?」

 

秋雨は軽くながした

 

「元々、忍者の仕事は某忍者アニメみたいに戦うことじゃなく、スパイ活動に近いことをしていてね、で、伊賀流は呪術みたいな技を主体にしている。そして、伊賀流の忍者は金次第で動く忠誠心みたいなのが薄いと言われている」

 

「はぁ・・・で?その伊賀流の忍者があいつと」

 

帝の長い説明に秋雨は少し面倒臭そうにそう吐き捨てた

 

「まぁね」

 

「それがどうしたってんだ、それが俺があいつを見つけられない理由には」

 

「フフフ、これを見てもそう言えるかな」

 

帝は自慢げに笑うと生徒会室の窓を開けると

 

「そんなところにいないで入ってきたらどうだい?」

 

あからさまに誰もいないはずの場所へ声を掛けるが

 

「さっすが会長、あなたには敵いませんねぇ」

 

その声と共に窓の外から突風のように入ってきた

 

「ど、どこにいたんだよ!?」

 

「すぐそこに排水管があるんでそこで待機してました、流石に腕が疲れてしまいましたね」

 

二人はあまりの事に唖然とした

 

「にしても、あの二天流の師範代さまでも私の気配までは感じ取れないようですねぇ、プークスクス」

 

バカにしたような笑い方と嫌味ったらしい言い方で秋雨を挑発する麗だが、秋雨は冷静に

 

「もしかして、お前一人で俺を見てたって事か?」

 

「おぉ、大正解。今回ばかりは用心して一人でやりました。私以上にかくれんぼが上手いのはいませんから」

 

フフンと得意げに笑う麗だが急に表情が暗くなった

 

「しかし、それなりの情報は手に入ったのですがどうしてもわからないことが・・・」

 

ガックリと肩を落とし自信を失ったのか下を向いた

 

「あ?何だよ」

 

「二天流の強さ」

 

麗が顔を上げた瞬間の顔は今にも飛びかかってきそうな程不気味な笑みで、秋雨は思わず身構えた

 

「あなたは強いんですよね?でしたら私と是非手合わせ願いたいのですが」

 

「忍者は戦わないんじゃないのか?」

 

()()()ですよ、忍者だってやるときはやるんですよ?」

 

そう言って、スッと構えた

 

「おいおい、流石にこんなところではやれないだろ」

 

「ふーむ、では屋上でやりますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、行動力スゴすぎないか?」

 

現在屋上

 

「いいからいいから、さぁ、やりましょう。元々喧嘩は見る派なんですけど、まぁ、いいでしょう」

 

よほど自信があるのか、勝利を確信した顔で奇妙な構えを取った

 

「何だ、それ」

 

「伊賀流に打撃はないんですけどね、自己流で色々な技を編み出していったんです」

 

すると、急に麗はまるで柳が揺れているかのような動きをし始めた

 

「これは、忍術の一つ、分身」

 

柳が揺れるようなゆっくりの動きから急に前に飛び出した、しかしその瞬間であった

 

「!?」

 

初動では確かに前に重心を動かした筈が、麗が三人に分れたように見えた

 

「何ぃ!?」

 

「分身とはそもそもただの歩行法の一つ、素早い動きと相手を惑わす動きで生まれるのです」

 

丁寧に説明している麗は一瞬にして秋雨の懐まで入ってきた

 

「まぁ、簡単な話、ただのフェイントですよ」

 

麗は秋雨の顎に底手を当てようとするが、秋雨はギリギリのところで体を反って避けた

 

「危ねぇ!」

 

「わぁお、流石にそれは予想してませんでしたねぇ」

 

一気に至近距離まで詰めたが、そこから飛び下がった

 

「ふぅ、やはりこれは体力を使いますねぇ、だから喧嘩はキライなんですよ、疲れるだけで何も良いことが・・・」

 

体力を消耗し愚痴をこぼしていると、かなりの距離まで開けたはずが秋雨がすぐ傍まで距離を詰めて

 

「底手はこうやるんだ、よっ!」

 

その言葉と同時に底手を麗の顎に向けて放つ、麗は咄嗟に体を反らすが

 

(しまった、これでは無防備に)

 

麗の考え通りに、手の平はちょうど自分の方に向いていて、手の平を開けたと思うと、麗の胸倉を掴んだ

 

「捕まえた」

 

「まずっ!・・・」

 

言葉を言い終える前に、麗は片手で投げられ壁に叩きつけられそうになるが、寸前で空中で回転し壁を蹴って地面に立った

 

 

「危ない危ない・・・」

 

「お前、人じゃないだろ」

 

「まあ、半分辞めてるようなもんでしょう」

 

麗は軽口を叩きまだまだ余裕そうだ

 

「しかし、ここまで楽しいと思ったのはあなたを含めて三人目ですね」

 

「へぇ、その二人は?」

 

「言う意味ないでしょう」

 

そう言うと、また奇妙な構えを取った

 

「今度はそう簡単にはいきませんよ」

 

「やってみろ」

 

秋雨がそう言うと今度は柳のような動きはせず横にまるで流れるように動き出した

 

「何だ?回るだけか?」

 

「これは正真正銘の私の秘技です、避けられますかねぇ?」

 

そう言うと、次第に動きが速くなっていく、それと同時にまた分身のようなモノが見え始める

 

「流石に速いな、目で追うのもままならないな」

 

「これは私たちが代々受け継いだ秘技、『桜吹雪』さぁ、行きますよ!」

 

ついに目で追うことが出来ず本体がどこにいるのかわからない状態になった、すると、確かに自分の周りを回っている筈なのに、ハッキリと自分の前に麗が現れ、不気味な表情で

 

「ドーモ、アキサメ=サン」

 

すると、今度は四方八方から麗が攻撃を仕掛けてきた、本体は一人の筈が複数人から攻撃されているかのようだった

 

「さぁさぁ!この攻撃どうやって凌ぎますか!」

 

「凌ぐ?いや、その必要はないな、お前の技は見切った」

 

「冗談はもう少し上手く言ってもらわないと!」

 

麗は余裕綽々に攻撃を繰り返している、しかし

 

「そこだ」ガシッ

 

「!!」

 

麗に取ってあり得ないことが起きた、それは、絶対に見えていない筈が腕を掴まれたことだ

 

「変だろ?人が増えるなんて、速いならまだしも」

 

「なるほど、わかっちゃいましたか」

 

「お前の分身の正体はその強烈な殺気だな」

 

秋雨がにやりと笑いながらそう言うと、屋上の扉が勢いよく開き、楓が出てきた

 

「秋雨!!予想はしていたけどやっぱり手を出したわねぇ!!」

 

楓からすれば、秋雨が麗の腕を掴み今まさに暴力をふるおうとしている瞬間にしか見えない

 

「ウッソォン・・・」

 

「今度という今度は地獄の底まで送ってやるぅ!!」

 

「と、取りあえず、これで取材は終わりだ!じゃあな!」

 

「待てやコラァァ!!」

 

そんなギャグ漫画のエンディングのような光景を麗は

 

「う~ん、流石はあの会長を恐れさせた男、器は大きいようですねぇ。俄然、あなたの事が知りたくなりました」

 

END

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