その日は、太陽は暖かく昼寝には適した日であった
「だからって、堂々とサボってんじゃないわよ」
「えぇ~、こんな良い日は屋上で昼寝に限るぜ」
学園の屋上で秋雨が寝ているところを、楓が発見していた
「そもそもなんでここにいるってわかったんだ?」
「会長が直接言いに来たのよ」
楓は見るからに呆れた顔でそう言った
「あっ、それと、会長があんたを呼んでたわよ?」
「何もしてないっての」
「さっさと行け!!」
楓は半ば強引に秋雨を生徒会室へ連れて行った
部屋の中では帝が大量の書類とにらめっこをしていた
「やぁ、来たね」
「何か用かよ?」
「まぁ、まず、いい加減きちんと授業に参加しないとダブるよ?二年だからってそう簡単に進級できるほど簡単な問題が出るはずないわけだし」
帝は書類を見ながら流すようにそう言った
「へーへー、気が向いたら行くよ」
秋雨も全く話を聞いていない
「で、もう一つ。君この前、虎王 仁って他校の生徒とやり合ったよね?」
急に書類を置くと、秋雨の顔を見た
「何だよ別に約束を破ってないだろ?」
「そうじゃなくて、その子がここに手紙を送ってきたんだよ。また来るって」
書類の山から筆で書かれた古臭い果たし状のような物を取り出して見せた
「あ~、あのクソ弱い」
「口悪いわね」
「実際めちゃくちゃ弱かったしなぁ。お前が止めなきゃ一生のトラウマになって二度と来ないと思ったんだが」
「あれは誰でも止めるでしょ!?」
帝は一つ咳払いすると
「で、面倒だから彼とえんがちょしてくれるかな?」
「古い言い方を・・・そもそも縁も何もないだろ、それに行ったら行ったでまた因縁付けられるっつぅの」
秋雨は心底面倒臭そうにしていながら
「でも、あいつがどこの馬の骨かもわからねぇしなぁ、虎王拳って言っていたような気がするが・・・」
「二駅先にある『公立王都高校』っていうところがあって、そこの生徒のようだね」
机の棚の中から紙を出し見せると、虎王 仁の学歴から生年月日、住所などおおよその個人情報がすべて書いてあった
「捕まるレベルだろ・・・よく調べたな」
「これは、広報委員会の子が調べてくれてね、しかも独自で」
「あぁ、あの忍者女か?」
「いや、麗くんじゃなくて・・・」
その時、秋雨の背後から強烈で人間に害をなすほどの一陣の殺気を感じ、後ろに振り向き構えると
そこには、真っ白なポニーテールの少女が立っていた
「ども~、恐縮です。私『
ニコニコと愛想の良い笑顔で秋雨を拒絶した
「な、何だお前・・・」
「えぇ~、自己紹介したのにわからないって、日本語理解できてますぅ?」
愛想のいい顔を崩すことなく煽るような毒を吐き続ける青葉に楓が間に割って入る
「落ち着いて、特に青葉ちゃん」
悪い空気を断ち切ろうと楓が出て行くが
「あっ?別にあなたとは会話する気ないんですけど、自意識過剰ですかぁ?」
強烈な毒を吐いた
「せ、先輩に向かってそれはなくない!?」
「たかだか一年ちょっと早く生まれた程度ででかい態度撮らないで下さいよ、セ・ン・パ・イ」
楓はあまりの毒の吐きように涙目になった
「青葉くん、そこまでにしたまえ」
「ん~、まぁ、帝会長がそうおっしゃるなら」
帝の一言でやっと場の空気が落ち着いた
「まぁ、単純に面白そうだったんで調べただけです。後は、あなたが麗先輩のお気に入りだったので」
「最初からそう言えっての・・・」
「では、私も暇ではないので、せいぜい虎王 仁とか言うキチガイにやられないように」
最後の最後まで青葉は毒を吐いて去って行った
「何だってんだ、あのガキ・・・」
「まぁ、少し複雑な家庭環境だったから性格が捻くれているだけだよ」
「それで納得できるほどの雰囲気ではなかったがな・・・」
秋雨は苦笑いしながら仁の手紙を手に取り
「まぁ、しょうがないから決着くらい付けてやるか」
やれやれとため息を吐くと、生徒会室を出て行き、その背中を追うように楓も出て行った
秋雨は手紙に書かれている使われなくなった倉庫の中で待っていた
「・・・」
物音一つしない倉庫の中で秋雨は精神統一するように大きく深呼吸していた
そして、その静寂は倉庫の扉が開く音で破られた
「逃げずに来たようだなぁ」
「帝に行けって言われたからなぁ、それに、まだ懲りてないみたいだしな」
秋雨は指をポキポキと鳴らしながら歩み寄るが、その瞬間に気が付いた
それは、虎王 仁の気迫が前とは比べものにならないくらい変わっていることだ
「へぇ、前までのは見せかけか?」
「門下生があんだけ弱ければ当然の態度だろう」
「そいつは楽しみだな」
お互いに自分の射程範囲まで詰めると、己の流派を代表するかのように構えた
「俺の名は虎王 仁 虎王流拳法師範 手合わせ願う!」
「二道 秋雨 二天流空手師範代 いざ参る」
まず最初に仕掛けたのは虎王だった、素早い連打と強烈な一撃を秋雨との距離を測るように慎重かつ大胆に打ってきた
それに対し秋雨は落ち着いた様子で攻撃を捌いていく
一進一退の攻防、素人目で見ればお互いの実力は拮抗しているように見えた、しかし、確実に体力を消耗しているのは虎王だった
「ほれほれどうした、もう限界か?」
体力を消耗しているのを悟ってあえて煽るような言い方を虎王にすると
虎王は無言のうちにスピードを上げるが、いとも容易く避けられる
「反撃させてもらうぜ」
秋雨は一言そういうと、真っ直ぐ顔面に飛んできた拳を肘で上に弾いて、自分の拳を肺の部分に当てると
「天門 空絶」
すると、軽く押された程度の力ではあるが確実に後ろに仰け反った
「な、何をしやがった!?」
「天門は基本的に自己防衛、護身術として使われる、その中にたった一つ、相手の命を奪うための技がある、それが空絶」
秋雨が説明していると虎王は途端に膝を着き呼吸が荒くなった
「空絶は読んで時のごとし、空気を絶つ、肺に振動を当てて呼吸が出来なくなる」
呼吸が出来ず苦しむ虎王であったが、その状態から秋雨に飛びかかった
「諦めの悪い奴め・・・」
そういうとさっきと同じ場所に拳を当て虎王を吹き飛ばす
「どうだ、呼吸ができるだろ?」
「ゲホッ!ゲホッ!」
虎王は苦しそうに咳き込み、秋雨を睨んだ
「流石、最強とまで言われた武術だ、今回は負けておいてやる、だが、次こそは勝つ!!」
そう捨て台詞を吐いて去っていった
「何か、面倒なことになってきた気がするなぁ」
一抹の不安を残しその場を去っていく秋雨、しかし、その不安はすぐに思い知ることとなる