幻想郷で旅立つ黒の剣士   作:エーン

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天魔様に剣を見せられる

本編は下です


23話 対椛

弧を描くように俺は剣を振りかぶる。

相手である椛の剣と強くぶつかり、金属が削れる音がした。相手も剣には使い慣れていると予測されるのはあの天魔様が言っていたからだ。恐らくこの種族の中で一番剣に長けているのはこいつだろう。

確かに訓練してきたような動きや力の籠め方は良く伝わる。だが、ここで負けるわけにはいかない。

 

キリト「うぉ…おおお!」

 

椛「くっ…はぁああ!」

 

鍔競り合いで火花が散っていた。互いに俺たちは剣を押し切ってやろうとするが、この少女の力は普通じゃない。容赦はできないのだ、するつもりはないが。

俺は芯に力を込めて、ここは押し切るしかない。

 

キリト「おおおおおお!」

 

キンッ!

俺が椛の剣を押し切り、椛自身も体が後ろの方によろめきはじめた。彼女はすぐさま体勢を立て直し、慎重に後ろ歩きで俺から距離を取ろうとする。

だが俺はすぐさま振り切った剣を握りしめ距離を詰める。椛の剣が上がり、俺も剣を横から振りかぶる。

そして攻防が始まった。俺の剣が優勢だが、それに冷静に一つ一つ対処する椛。すごいのは下がりながら範囲を超えず、8の字で下がっていることだ。俺もそれに追いつきながら剣を振るう。

決して攻撃を許さない。ここは不意を衝くしかない。ならば遠くから一気に距離を縮める技に頼るしかない。

俺は少し距離を離すと、椛は足を遅くする。そして、剣を肩に持ってくる。眩く剣が光り、緑色の光に染められる。

 

キリト「うぉおおおお!」

 

そして、残像が見えるほどに早く斬撃をして椛へと迫る。一撃《ソニックリープ》である。

椛は目を見開き、しかし狙いが分かったかのように自身の持つ剣を両手持ちしたのだ。片手剣を両手で持つときは、大きな攻撃の防御か。または

ギギギギギ。

俺の剣先と同じように向けられた椛の剣先。俺の剣を受け流したのだ。

 

キリト「何!?」

 

椛「はああああ!」

 

俺は椛を通り過ぎ、即座に後ろに振り向くが椛の剣は上がっていた。

スキル硬直から一気に防御に徹するがそれも厳しかった。足のつま先を一気に椛へと変えるが、勢いが止められなかったため少し足が動いた。

そして防御に徹したが、椛の剣はすぐさまそこに来ていた。

 

キリト「ぐっ…!」

 

俺の腹を上から裂くように剣が入った。これ以上はやらせまいと持つ剣で迎撃をした。

 

46530/50000

 

俺の左上に見える、命を表す緑の帯が削られたのだ。ここではルール上回復は禁止だ。

しっかりと距離を取って判断するんだ。

俺は賭けに出すぎたのだ。こうなることをわかっていたはずだ。ならば、隙を与えず攻撃を打ち込む方がいいようだ。

 

キリト「…やるな」

 

椛「…負けません」

 

俺は体を横にして、剣を腰の位置へと持ってくる。

ここからは捨て身で向かうまでだ。

俺の剣が徐々に輝き始め、それはオレンジ色のライトエフェクトになって剣を包んだ。スキルが溜まる独特の音が聞える。

足を一気に出して地面を蹴った。

 

キリト「はぁああああ!」

 

俺の剣がオレンジ色の光を放ち、逆光ができる。俺の顔が少し黒くなった。

そして剣は光の輝きを増し、粒が飛んだ。

椛は剣の腹を見せ、防御に徹し足を固定する。それが俺の狙いだった。

剣は上から振り下ろされ、それは勢いよく椛の剣へぶつかり火花が散り俺の顔を照らした。椛は少し勢いに剣が揺れ、足が下がることを余儀なくされた。

だが、防御に徹している以上すぐには攻撃ができないのだ。だが俺は一撃の必殺技を放ったのではない。

 

椛「な…」

 

振り下ろされた剣は右上へと振り上げられ、再び金属がぶつかる音が響く。椛の剣はさらにダメージを受け、体勢が崩れ始めた。

そして右横から左へ振りかぶり、さらに椛を押した。剣は崩れ、手から一瞬柄が離れそうになった時。そこから俺は左上から右下へ。最後の力を振り絞って剣の腹を当て一気に叩き落した。

そして、椛から剣が落とされた。

 

キリト「はぁ…はぁ…」

 

椛「…剣が手から離れた以上、私は攻撃手段がありません」

 

そして一歩椛は下がると、一礼をする。

 

椛「私の負けです。ありがとうございました」

 

俺は剣を背中に背負う鞘にそっと入れ、手を胸に当て一礼。剣士として当然の行動だ。

 

キリト「ありがとうございました」

 

天魔様「勝者、キリト!」

 

俺は無事、この戦いに勝ったのである。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

文「よかったぁ傷を負ってなくて…」

 

椛「大丈夫ですよ。相手もそれを考慮しながらやってくれたと思うんです」

 

文と椛が話し合っていた。先輩と後輩の関係なのか、とても親密な様子がある。俺は約束の品を手に入れる前に椛の下へと向かった。

 

キリト「今回は本当にありがとう」

 

椛「い、いえ!こっちもとてもいい決闘になりました!学んだこととかもありますし!」

 

キリト「そ、そうか?ならよかった…」

 

そう言えば俺は聞きたかったことがあるのだ。

 

キリト「あのさ、俺が今回ほしい剣なんだけど…。あれってもともと俺のなんだけどな。その剣っていったいどこで見つかったんだ?」

 

俺のいうことに少しびっくりするが、落ち着いて椛は答えてくれたのだ。

 

椛「ここの外の監視をやってた時なんですけど、木に深く刺さってたんです。見たことのない形状の剣なので持ってみたんですけど、すごく重かったです」

 

キリト「なるほど…恐らく重かったのは権限レベル…。ならここでの権限レベルは…」

 

椛「権限レベル…?」

 

俺の言葉から自然に出ていた俺の世界の言葉。アンダーワールドと同じ様に俺の世界にはありこの世界にはないような、知らないような言葉もあるのか。

 

キリト「まぁ…扱うことのできる経験力…とでも言ったらいいか…」

 

椛「な、なんとなくわかりました…いや、わかりません…」

 

キリト「無理もないさ、こっちの世界の話だからな」

 

椛「こっちの世界…?え?もしかして外来者ですか?」

 

キリト「まぁな」

 

そっか、このくらいのことは文によって伝わっていると思ったけど伝わってなかったのか。

俺は天魔様に約束の品をいただこうと向かった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

キリト「…天魔様」

 

天魔様「見事だったぞ、キリト。あの剣の光もすごかった。何かの能力か?」

 

キリト「まぁ、そんなものです」

 

天魔様「そうか。それじゃあこれを渡そう。約束の品だ」

 

天魔様はすでに机に置かれている漆黒の剣を両手で刺した。どうやら天魔様でさえ持てないようだ。

 

天魔様「持ってみろ」

 

キリト「はい」

 

俺は一歩近づき、その剣を見る。まさかこの剣とまた会うことになるとは思わなかった。一体どこからこの剣は来たのか。常識が通用しない場所でもここまでするのか。

俺はそっと両手で柄の部分と、刀身部分を支えてあげる。

驚いたのは重さがそこまでなかったということだ。すなわち、片手で持てるほどの重さ。ここでも俺の権限レベルはアンダーワールドと同じだということだ。この剣はプライオリティがかなり高いが、それでも俺は持てている。

 

天魔様「よくそんな軽々しく持てるな。さすがだ」

 

キリト「ありがとうございます」

 

そして、天魔様からあることを尋ねられた。

 

天魔様「ちなみに聞きたいのだが、その剣の名は?」

 

キリト「…夜空の剣、です」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

キリト「じゃあ、また来れたら来るよ」

 

椛「はい!あの剣をもっと知りたいです!絶対に来てくださいね!」

 

なんか一気に感情が変わった気がするのだが、この椛という少女。

俺はそっと頭に手を乗せた。

 

椛「ふぁっ!?あ…」

 

キリト「また来るよ。その時俺の剣も教えてあげるよ」

 

椛「は、はい!」

 

俺は椛の頭から手を離すと、少しなんかシュンとした感じになったのは見逃さなかった。そして俺は手を振り、椛と文と天魔様に別れを告げた。

必要の時だけだ。常に剣はアニールブレードを背負っている。

速く霊夢たちのもとへ戻ろう。もう日も暮れてきた。明日は何が起こるのかわかったものじゃない。常にここは飽きなことでいっぱいだ。

そして、1日でも早くアスナたちの下へ戻らないといけない。それにはとにかく、この幻想郷に平和をもたらすことだ。この剣もそのことに近づく為に必要だろう。

森の中、足元をしっかり見ながら帰っていった。しかし日が落ちている。森の中であるため、足場が全部暗い。早く戻ろう…。

 

キリト「…ん?」

 

俺はついに空を飛ぶことができたのか?それとも、空を歩くことができたのか?もしそうじゃなければなぜ俺の足元に足場がない?

俺はゆっくりと、下を見る。円形に穴になっていることに遅れて気付いた。そう、ここは穴である。

 

キリト「うわああああああああああああああ!」

 

俺は穴の中へ一気に落ちていった。

地下へと続く、穴へと。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

アスナ「どこにも入り口なんてないよね?」

 

私達は今、キリトがいなくなったと思われる場所に来ている。キリトがいなくなったのは、確かある場所へ宝を探しに行っているということだ。そしてその場所が確かここだった。《エリオンウォード異相界》。強力なモンスターが生息しており、所々ホログラムが上手くいってないところもあるが、マップとして認定されている。

だがここもすごい広大であるためこの中からキリトが別の場所へ行ったといわれている入り口があるのか、皆で探しているのだ。

 

シノン「広すぎるわよ。それに全く情報がないんじゃ探しようがないじゃない」

 

シノンと一緒に行動しているが、ここにはなさそうだと互いに思っている。ほかのメンバーも2人一組で探し回ってはいるが、メッセージには「ない」という言葉だけだった。

 

アスナ「ない…ね。一旦戻ろっか?」

 

シノン「そうね。とりあえずもうアイテムもないし、戦えないわ」

 

アスナ「じゃあ私の転移結晶でもどるわよ」

 

私はシノのんと共に青い光と共に転移が始まった。

キリト君がいなくなって今日で3週間くらいがたった。キリト君の健康管理はラースがやってくれると言っていたのでとりあえず私たちができることはキリト君のもとへどうやっていくか情報をあつめるということぐらいだろう。

だが、一向に情報がないのだ。このままずっとキリト君が戻らなくなったらどうしようという不安感が常に心の中にあった。これまでもずっと戻ってきたが、今回だって戻ってくるとは限らないのだ。

転移後、宿屋に集まる。

いまここにいるメンバーは、シリカ、リズ、シノン、フィリア、ストレア、セブン、レイン、リーファ、ユウキ、アリス、エギル、クラインである。

キリトがいなくなったという情報は皆すでに知ってはいるが、そこから進展がないのも一緒である。

 

クライン「思ったんだけどよぉ、ほんとにそこでどっか行ったのか?菊岡さんが隠蔽とかしてんじゃねぇのか?」

 

アスナ「いや、それはないと思うわ。キリト君はいなくなった日は普通にログインしていたし、宝探しに行ってくるときも私に会ってから行ったから。それに勝手にログアウトなんてしないし、何かあったら話してくれるもん。前のアンダーワールドの時だってちゃんと言ってくれた」

 

シノン「私もアスナには賛成よ。菊岡さんは今は向こうの相手にされるがままだからよ。菊岡さんの上はまだいないと思うからね」

 

エギル「そうか。だがそうなればキリトは行くまでは、そのことに関して干渉してなかったってことか」

 

リズ「そうだと思うわ。恐らく連れていかれた…もしくは拉致よ」

 

シリカ「…拉致なんて、いったい誰が…」

 

皆悩むが、とりあえず今できることはない。あっちからの行動が必要だと思う。主導権はあっちが握っているのだ。

とりあえず私はキリトの下には簡単にはいけない。いけないわけではないが、あっちにも迷惑がかかる。六本木ではなくオーシャンタートルにいるためヘリで向かう必要があるのだ。あっちにヘリを用意してこっちから行きたいというのは大変迷惑だろう。前の様にオーシャンタートルに泊まるのもありだが、何もできないのにいても仕方ないだろう。親にも失礼だし、今は皆との情報収集が優先される。

今はまだなにもできないが、いつかは向こうに行って見せる。そしてキリト君を必ず連れ戻す。




投稿先を一回間違えてしまった俺氏。すみません。

ご朗読ありがとうございます。
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