艦隊これくしょん VERDICT DAY   作:水崎涼

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依頼者 :鎮守府
作戦領域:トラック東方
敵勢力 :深海棲艦
作戦目標:敵勢力撃破

 作戦を説明する。
 依頼主はいつもの鎮守府。目標は、深海棲艦のトラック侵攻水雷部隊だ。
 ごく単純な作戦だ。敵部隊をすべて倒せば、それでいい。ただ、敵にはタ級戦艦が含まれているそうだ。偉いさん、はっきりとは言わなかったが、もしフラグシップなら厄介な話だ。
 あぁ、さっきのタ級のこともあるんだろうが、この作戦では支援機の使用が許可されている。必要なら俺に言ってくれ。
 こんな所か。
 悪い話ではないと思うぜ。連絡を待っている。

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Days

 

 修繕を終えたフォックスアイを吊り下げたF21Cヘリが、海原を飛んでいる。

 彼のACの武装はかつてのままだった。すなわちKRSWハイレーザーライフルと両肩垂直ミサイル、肩部連動ミサイルだ。なお、損失していた左腕に持っていたハンドグレネードはそのまま喪失しており、そしてジャックも購入しなかった。今回は戦う気がなかったためだ。先の戦いを見るかぎり由良たちには一定実力はあり、軽い気持ちで受けるようなレベルの依頼なら問題ないと判断した為でもある。

 そして彼、ジャックはというとヘリの中に納まり。

 

「ヘリを見させてもらえたんですよ。あの時に出会った戦艦の扶桑さん、本当に素敵だったんです! 清楚で、でもキリッとしていて。私、あんな人になりたいって!」

 

 そして、吹雪のテンション高い昔話を聞かされていた。

 調べ物のために由良から借りた端末をしかし弄れず手の中で持て余しながら、まさか利用価値のある少女を邪険にするわけにも行かず、ジャックは仕方なく吹雪に付き合っている。一聞にしてたいしたことのない話でもあるが、それでもジャックには十分な情報をもたらした。

 まず艦娘は、志願制ということだ。登録手続きをし、適正試験に合格すれば候補生として扱われる。この適正試験と言うのは筆記だとかではなく、血液検査。艤装というものを扱うには何か特別な力が必要で、それで検査するらしい。

 次に、艦娘はレイヴンズアークのように傭兵色に染まっていること。依頼を受けて、ヘリで飛び、依頼をこなす。鎮守府と言うのが統括組織であり、そこが依頼を精査して下ろすという構造であることだ。

 そして、艦娘敷地の隣にあるもうひとつの組織。

 

「ファットマン社はどうだった」

「怖い人もいるけど、すごくいい人達ばかりでした。お皿洗いの仕事も楽しかったですよ」

 

 ファットマン社。それが鎮守府とは別の、もうひとつの傭兵組織。ACを保有している場所だ。

 少なくとも実務面で鎮守府と提携しており、多くの依頼は鎮守府から渡される。鎮守府と別個であるがファットマン社が主義主張によって組織を運営しているわけではない。あくまで傭兵派遣組織、しかし鎮守府からの依頼が殆ど。そのような状況から実質的に同じ組織にいるのと同義であり、単に勢力として鎮守府を指す場合、ファットマン社を含むことも多い。吹雪の口調でも、「鎮守府AC部門」とも呼ぶべき扱いだ。

 そんな中、操縦席でモニタを弄っていた由良は、声をかけて吹雪と五月雨にデータを転送。画面には、複数のAC画像が映し出されていた。

 

「支援機の候補が確定したわ。二人で選んでね」

 

 どんな奴がいるのか。自分がリサーチしたフリーのレイヴンが含まれている可能性もあるなと、ジャックも視線をやる。

 

 

 

 

・ファナティック/レッドアイ

 

・ダン・モロ/セレブリティ・アッシュ

 

・ジナイーダ/ファシネイター

 

 

 

 

 知らないレイヴンと。あまりにも記憶に刻まれた、一人。

 

「ジナイーダ、彼女がいるのか」

「お知り合いですか?」

「あぁ、そのようだ」

 

 ジャックは知った名前があることに驚き、同時に安堵する。同じ人名同じACの名前の別人とは考えにくい。

 どうやら自分が気を失った間にやられたというわけでもなく、また今自分がいる所は、その彼女が依頼受諾を出来るような地域であるという事。何よりも喜ばしい話だ。もし由良達の語る財団というものがインターネサインの亜種で、それが今人類にとって最大脅威であったとしても、ドミナントたる彼女がいるのならなんら問題はない。

 連絡を取る必要がある。ジャックは、選ぶ支援機をジナイーダにすべく声を上げようとして。

 しかし吹雪と五月雨、二人が頷いてダン・モロなる知らないレイヴンを同時にタッチし、送信されるほうが早かった。ジャックは、唖然とするしかない。

 

「なんということを‥‥‥」

「あ、あれ、そんなにダメでしたか?」

「いや、構わないが。彼を選んだ理由を尋ねてもいいか」

「ジナイーダさんは雇用費用が高かったので敬遠を。あとその、ファナティックさんなんですけど、以前ご一緒したことがあって」

「ごめんなさい」

 

 述べて申し訳なさそうに肩をすくめるのは、五月雨。

 

「以前ご一緒した時に、夜間で誤射してしまって」

「怒って撃ち返されました。そして怒って帰ってしまいました」

「それはそれは」

 

 随分と悠長なことだ。

 僚機とはいえこういう世界、誤射を敵対行動とみなすレイヴンもいる。それくらい敏感でなければ厳しい世界でもあるのだ。それでも怒って帰っただけで済ませるあたり、艦娘への加害行動は規制されている可能性もある。

 それにしても惜しむらくはジナイーダだ。まぁいい、接触する機会が後ろに回っただけだと、ジャックは自身に言い聞かせた。

 

 

 □

 

 

 やがてヘリは指定された空域へと到達した。レーダーに反応がある。先客だ。

 すぐにヘリ搭載のコンピューターが認識して、友軍認識された。まずはF21Cヘリ。そして青と橙を基調にした二脚の鋼鉄。セレブリティ・アッシュとの識別がある。これが、今回彼女達が雇った支援機ということだ。

 そのACは何かが違う。ジャックは最早驚くこともしないが、それでも情報を仕入れる為に彼の機体データや望遠映像を確認する。

 クレスト社製を髣髴とさせる実弾防御重視らしき角ばった機体パーツは、しかし彼の知るどの型番でもない。武装もそうだ。それが実弾ライフルでありエネルギーブレードであることは推察できるが、知らないデザイン。何よりも、そのAC自体の大きさがやや大きい。

 ばたばたと出撃用意を始める二人を見送ってから、由良は通信を入れた。

 

「第11部隊由良、到着しました。支援、感謝します」

「こちらネクスト、セレブリティ・アッシュだ。よろしくな」

「ネクスト?」

 

 また知らない単語だ。レイヴンではないのか。あまり重要でなさそうな事項の詮索はやめたほうがいいのかもしれないなとジャックは思いつつ、彼は由良に尋ねた。

 

「4型は、あまり見ませんからね」

「4型とは」

「一口にアーマードコアと言っても、1から5型までの型式があるんです。ジャックさんのは3型。あの機体は4型、別名ネクストと呼ばれています。あらゆる点において圧倒的な基礎性能を持つハイエンド機で、適性がないと乗ることが出来ないそうです」

 

 選ばれた者。それは、幾分かには信用していいという事か。

 すると会話に、別の女性の声が混じってきた。ACの戦地運搬及び現場オペレーターを行う、ストーカーと呼ばれる人間だった。

 

「こちらACオペレーター、聞こえてるぅ~?」

「ロザリィさん、こんにちは」

「おっけ~通じてるわね。何よ由良、まだあんたら支援呼ぶわけ? いい加減五月雨もニュービーじゃないんだからさ、甘やかすのもほどほどがいいわよ。もらえる功績点も減るんでしょ?」

「こうしてAC部隊の皆さんと会うのが楽しいから」

「はいはい。あぁそうそう、今回のこいつほんとポンコツだから、そっちもちょっと頑張ってね」

 

 ロザリィの物言いにダンが何かをいいたそうに声を漏らしたが、言葉にはなっていない。これはロザリィが熟練者だから返せなかったのか、それとも本当に腕前が残念なのか。

 笑いながらも由良は手を止めない。有視界範囲に、それがやってきたのだ。

 深海棲艦。数はおよそ10。

 

「吹雪、五月雨、出撃準備完了。投下」

「オペレーティングシステム起動。マーカーをセットしたわ、全部やっちゃいなさい」

 

 データの共有で、ロザリィ側で捕捉した敵情報も流れてくる。なるほど仕事が速い。

 号令で艦娘の二人とAC一機が進み出て攻撃を開始する。どうやらACのほうは空を自由に飛びまわれるほどのジェネレータ出力があるらしい。加えて前後左右に瞬発力のある高機動。明らかに、3型と呼ばれている自身のACなど比較にならないポテンシャルがあった。本当に艦娘が必要なのかとジャックは思わず疑ったが、放つライフルは直撃こそすれ深海棲艦がまるで動きを鈍らせない。

 あのライフルが継戦重視の低火力型である、というよりは、相手の対実弾装甲が極端に高いか、ACで扱える武器が有効打になり辛いという事か。

 

「あくまで支援でしかないのだな」

「艦娘の攻撃は、通常兵器に対しては相応でしかありませんが、深海棲艦に対しては大きな効果を出すんです。あれですね、ロールプレイングゲームとかで、すごく堅い敵だけど弱点属性の攻撃だけ大ダメージみたいな」

「その例えはどうなんだ」

 

 悠長だが、それが許されるくらい彼らの戦闘は優位に進んでいた。あえてけちをつけるなら、ACの彼の動きがいまいちぎこちないことか。衰えたとはいえレイヴンたるジャックから見て、そのポテンシャルを到底扱いきれているようには見えない。どうも彼は弱者の側の人間らしいとジャックは呆れたが、彼自身もそう大きなことは言えない。自分自身、第一線で通用しないほど鈍ってしまったのは確かなことなのだから。

 と、ロザリィの声が届く。モニタにも、望遠カメラらしい映像が送られてきた。今までの良くわからない生物とは違う、人型だ。一体。

 

「増援検知」

「スキャン、戦艦タ級フラグシップを確認。敵は水雷戦隊と言う話だったのに」

「タ級がいるって話はあったでしょ? それに」

「えぇ」

 

 由良は頷く。

 ACがタ級に対してライフルを乱発する。が、何か見えざる障壁によってあからさまに弾かれていた。そして反撃の砲撃が、がつんとACの装甲を叩く。耐えきったようだが相手の攻撃は凄まじい威力のようだ。

 

「こいつっ、堅いぞ。どうすればいい!」

『この程度、問題にはならない』

「え、あ、ちょ」

「雷撃戦用意」

「了解です!」

「了解しました!」

 

 弱者のたわごとをかき消して、吹雪と五月雨はタ級戦艦に向けて肉薄していった。左右に振って砲撃をかわし、そして、脚部につけた実体弾頭を作動。

 射出。

 同時に放たれた魚雷は、白い航跡を描きながら海中を進み。炸裂。

 大きな水柱を上げ、そして後には何もなくなった。

 

「マーカー消失、敵影なし。う~ん、いい威力してるわ」

「お疲れ様でした」

「毎度どうも。また楽に稼げる依頼があったらこっちに回して頂戴。ほらあんた、帰るわよ。きびきび動け」

「‥‥‥わかったぜ」

 

 ロザリィにけしかけられて、ACは単独にて帰還を始めてしまった。しょげた様子の青年の声が哀愁を誘う。正直、彼がいてもいなくても大して変わらなかった、と同時、自身の機体の攻撃が相手に通じない可能性にジャックは内心唸る。これが艦娘の力なのか、それとも彼女の言う通り相性の問題なのか。兎に角ロザリィは由良達を一定評価していた様子なので、由良たちの技量に対して敵が弱かったというだけの話なのだろう。そう考え。

 残った吹雪と五月雨、二人の回収のために、ヘリが降下していく。

 笑顔で手を振る二人の娘。

 

「ただの子供だ」

 

 傭兵業を営みながらそれをまったく感じさせない態度に、ジャックは小さく呟いた。

 

 

 




誤字修正。レイヴン、ご協力感謝します
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