てな訳でどうぞ
「お疲れ様です。アルベルトさん」
フェジテの深夜。とある場所で物静かな少年―――クリストフが鷹の目のように鋭い青年―――アルベルトに話しかける。
「クリストフか。どんな用件だ?」
アルベルトが淡々と事務的に問い質し、クリストフは苦笑しながら一通の書状をアルベルトに渡す。
アルベルトはそれを受け取り、中身の文章を確認し……
「……了解した。俺が任務に就いている間の遠隔的な近辺警邏はクリストフ。お前に任せるぞ」
「……どのような内容だったのですか?」
「『ウィリアム=アイゼンが帝国に害ある存在か、改めて調査せよ』という内容だ」
アルベルトはそう言って、
「ウィリアム=アイゼン……あの《詐欺師》ですか……」
「お前は概要と報告書でしか奴を知らなかったな」
「はい……二年前から何の前触れもなく現れなくなったので……」
「そうだな……」
アルベルトはそう返すも、現れなくなった理由はグレンからもたらされた情報で既に知っている。
《詐欺師》―――ウィリアムは天の智慧研究会に囲われていた人物―――イルシアとシオン、ライネルを件の組織から連れ出す為に活動していた。
だが、イルシアとシオンは粛清により死亡、その研究所もグレンとアルベルトの手で潰し、ライネルの生存は向こうからしたら絶望的だっただろう。
最も、そのライネルが二人を手にかけた張本人であったが……
「それは兎も角クリストフ。何故書状の内容を把握していなかった?」
「その書状はバーナードさんがアルベルトさんに届けるようにと渡してきて。内容もアルベルトさんから聞けと」
「……翁が?」
アルベルトはその瞬間に眉間にシワをよせる。先日、バーナードの偽造書にまんまと騙されたのだから当然の反応と言えよう。
「……アルベルトさん?」
「……いや、何でもない。任務として下った以上、いつも通りに完璧にこなすだけだ」
訝しげにするクリストフに、アルベルトはいつも通りの冷徹な言葉で返しその場を後にする。
任務内容も然程不自然なものではないし、バーナードもさすがにこんな短期間で同じ真似はしないだろうと考え、任務内容は本物だと判断した。
……その判断は後に間違っていた、認識が甘かったということを感じる事になるとは、この時のアルベルトは思いもしなかった。
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次の日。
晴天が広がるフェジテの空。アルザーノ帝国魔術学院の通学路にて。
「おはよう、ウィリアム君」
「ん。おはよう、ウィル」
「……おう、おはようさん……」
ルミアとリィエルの挨拶に、ウィリアムは眠たげに挨拶を返す。
「もうちょっと早く来なさいよねウィリアム。先生よりは早いけど」
「学院に行けば会えるんだから、わざわざ待たなくてもいいだろ」
「それだとウィルに早く会えないからやだ」
「そうかい……」
リィエルの言葉に、若干呆れながらも微笑ましい顔をするウィリアム。そんな彼らの様子をベンチに座って新聞を読む人当たりの良い雰囲気を出す紳士然とした青年―――に変装したアルベルトはその鋭い眼光でチラチラと注視していた。
(今のところはは問題無しだな……)
前回の浮浪者の失敗から、今回は周囲に合わせたスーツ姿で監視していた。
その後、グレンも彼らと合流し、一同が魔術学院へと向かう中、タイミングを見計らったアルベルトも尾行するため、その場から移動しようとするも……
「すいません。よろしければ私とお茶を……」
「それよりも食事がまだでしたら、私とご一緒に……」
「いえいえ私と……」
「……申し訳ありません。私にはこの後ご予定が……」
自身に話しかけてきた女性達への対応で見事に足止めをくらっていた。
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「―――そんじゃ、今日の授業はここまでだな……あーだるい……」
何時も通り、やる気なさげに教鞭を執るグレン。
待ちに待った昼食に周りが沸き立ち、教室を後にするなか。
「先生。折角ですから一緒にどうですか?」
ルミア達がグレンを昼食へと誘っていた。
「お?この前のリベンジか?」
「はい。今日は砂糖とお塩を間違えていませんよ」
「そんじゃ喜んでお相伴にあずからせてもらうぜ」
そのまま彼らは中庭へと向かって行った。
(相変わらず迂闊だな……)
そんな様子を、お気楽な清掃員の青年に変装したアルベルトが見送っていた。
(ここまで観察しても、ウィリアム=アイゼンが害ある存在か判断できぬな……まだ調査は必要だな……)
「新入り!なんだその拭き方は!?誠意が込もっていないぞッ!!」
「いえいえ。誠心誠意を込めて磨かせていただいていまーす」
「ふざけているのか貴様!?」
「いやいや。ちゃーんと真面目に取り組んでますよ?」
「……チッ、まあいい。いい加減な拭き方はするんじゃねぇぞ!?」
「はいはーい」
相変わらずのなりきり度で、アルベルトは窓ガラスをせこせこと拭くのであった。
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「……おっ、中々いけるな」
「だな。このミートパイが一番頑張ったんじゃね?」
「ん。この前のより美味しい」
「ちょっとリィエル。あの時のと比べなくていいから」
「フフッ……みんなのお口に合って良かったです」
彼らが和気藹々と食事している現場を……
(ふむ……ここまでで特に害ある存在とは判断できないな)
厳つい学院の警備員に変装したアルベルトが、集音の魔術を使って聞き耳を立てて聞いていた。
「とりあえずウィリアム。明日はリィエルの事を頼むぜ?」
「俺が言い出した面倒な事だけどよ……本当に大丈夫なのかよ?」
「大丈夫だろ……多分」
「おい」
(明日?明日は学院は休みだが……)
リィエルの任務にはルミアの護衛だけでなくウィリアムの監視も含まれている。元々リィエルは撒き餌の意味合いが強い護衛だが、ある程度は一緒にいてもらわなければ困る。
……もっとも、その辺りの判断をリィエルに任せた結果、ホームレス生活をしようとした事には頭を痛めかけたが。
それはともかく、明日はリィエルとウィリアムは二人きりで行動するようである。
(そして話の流れからして、アイゼン主導の事案のようだ……奴め、リィエルを懐柔する心算か?)
あり得ない話ではない。
(兎も角、明日も監視する必要があるな……場合によっては……)
アルベルトは自身の内心を現すように、拳をきつく握り締め、決意を新たにした。
「あの警備員さん、すげぇ厳ついよな……」
「ああいう御方がいてくれれば学院も安心ですわね」
「正に警備員、だな……」
周りから相当目立ってはいたが……
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その次の日の休日。
日も昇りきった自然公園内のベンチでウィリアムは眠たげに座っていた。
「ふわぁ~……」
呑気に欠伸をするウィリアムを遠くのベンチに座って日向ぼっこしている立派な髭を蓄えた初老の男性―――に変装したアルベルトが注視していた。
(随分とだらけきっているな……これがあの《詐欺師》だとは思えぬだらけ振りだな……)
眼光だけは鋭いままウィリアムを注視していると……
「……ん。お待たせ、ウィル」
シンプルな白のワンピースを身に纏ったリィエルがヒョコヒョコとウィリアムに近づいて来ていた。
「おっ、時間通りだな」
「ん。ウィルの方が早かったけど」
「こういうのは男が先に待つのが礼儀なんだよ」
「……そうなの?」
「そういうもんだ」
ウィリアムとリィエルはそのまま一緒に歩いて行く。
(さて……頃合いを見計らって俺も移動するか……ん?)
自然公園内の樹木のとある一角に注視すると、そこには帽子や眼鏡で変装したグレン、システィーナ、ルミアの三人が木の陰に隠れてウィリアムとリィエルの二人を注視していた。
(グレンにフィーベル、王女まで奴らを監視しているのか……?)
三人の不可解な行動に疑問に思いつつも、アルベルトはウィリアムとリィエルを尾行する為に移動を開始した。
「撃っていいかの?グレ坊と《詐欺師》を撃ちに行っていいかの?」
「……駄目に決まっているでしょう……」
この話の続きの更新は·····未定である!!
ちょ、やめて!!グーでビンタしないで!!
ちゃんと書くから!!だから筋肉バスターをかけないで!!
感想お待ちしてます