てな訳でどうぞ
―――魔人と戦う前に遡る。
ウィリアムが提示した策。それは、こちらが追い詰められ、相手が勝利を確信した瞬間を攻撃するというものだった。
具体的には、あの太陽球を妨害されずに発動させた時だと。
「ふざけてんのかウィリアム!?」
グレンがこう言うのも無理はない。
確かに勝利を確信した攻撃を放てば、注意力は散漫となり気は緩んでしまう。
だが、あの太陽球は、確実にこちらの防御を余裕で破壊する威力なのは想像に難くない。
そんなものを撃たせたら即、ゲームオーバーだ。
「話を最後まで聞けよ。あの太陽球はおそらく防げる……この《盾》でな」
ウィリアムは左手に持つ《詐欺師の盾》をつき出してそう告げる。
「この盾の碧い金属……魔術金属《ディバイド・スチール》の特性は“あらゆるエネルギーの分解”と“あらゆる魔術要素に崩壊の構築”、そして“その特性を有した魔力障壁を展開”する事ができる」
その説明を受け、一部を除くメンバーは息を呑む。
この話が本当なら、この盾はあらゆる攻撃を防ぐことができるからだ。
当然ながら強力故の欠点もある。
まずこの金属は“あらゆるエネルギーを分解”する為、攻撃能力は一切無い。どんなに鋭利にしても痛み一つ、傷一つ与えられない。受け止められた時も反動は無く、力が抜けたような感覚となる。
次に“あらゆる魔術要素に崩壊の構築”は精神攻撃も防げるが、金属自体に特性として組み込んだもの以外は容赦なく崩していく。だから、特性を封印しなければ、圧縮凍結を施す事すら出来ない。
《ディバイド・スチール》と浮遊制御の魔導器を直接繋げていないのも上記の理由からだ。
魔力障壁の展開は言わずもがな、展開すると金属はそこから動かなくなり、こちらの攻撃も障壁で止めてしまう。
当然、指示も届かなくなるので手動制御オンリーだと一切動かせなくなる
そしてこの障壁はあくまで魔力障壁―――あの魔人の左の魔刀と魔力遮断物質である
この《盾》がウィリアムのもう一つの異名―――《鋼の再来》と言われた最大の理由であった。
それでも、魔人のあの攻撃を本当に防げるのかと悩みを見せるグレンに―――
『大丈夫よグレン。その金属なら
ナムルスが妙に確信した物言いで肯定していた。
こうして、最後の策は可決された。
―――――――――――――――
―――そして、現在。
『な……に……?』
魔術を妨害されることなく放つ事ができ、終わったと判断してしまった魔人は自身の胸に出来た穴に驚愕の声を洩らす。
『―――ッ!そ、そうか……その《盾》は……』
魔人は全身から黒い霧を上げながら、魔力障壁が解かれたウィリアムの《盾》を見て、何かに気づいた素振りをする。
『まさか、貴様がいたとは……気づけなかったぞ……』
魔人がウィリアムを見て、意味不明な言葉を口にする。
『愚者の民達よ……この身は
魔人は左手の刀を落として両腕を広げ、同時に身体から出る黒い霧がどんどん勢いを増し―――消滅していく。
『尊き《門》の向こうで我は待つ!―――そして、次はあの剣を用意しておけ!』
魔人はウィリアムを見やったまま、その場から消滅した。
「……終わった、のか……?」
グレンの言葉で、全員がその場で崩れ落ちる。
魔人との戦いはようやく終わった。
―――――――――――――――
辛うじて魔人を撃退し、無事に全員、野営場へと帰還した。
野営場で丸一日、待ってくれていたみんなと共にフェジテへと帰路についている。
システィーナとルミア以外は全員、疲れから寝ており、グレンは馬の手綱を握り、セリカはグレンの隣で寄り添うように座っている。
ウィリアムとリィエルも互いに肩を寄り添って寝てしまっている。
システィーナはルミアに少々からかわれながらも、『メルガリウスの魔法使い』に書かれていた、ある事を考えていた。
―――全てを防ぐ碧き盾と、奇妙な柄の剣を持った、名も無き旅人。
―――その旅人はかの夜天の乙女の加護を受けた魔人に、己の敗北を認めさせた。
(偶然……よね?)
幾つかの疑問を残しながら、遺跡調査は終わりを告げた―――
これにて原作六巻は終了です
このツッコミどころ満載であろう盾の“崩壊”はあくまで崩すだけ。解呪ではありません
領域系の魔術は、障壁を展開した内部しか効力を発揮せず、障壁を解くと元に戻ります
感想お待ちしてます