やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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自然?不自然?
自然に見えるかなぁ······?
てな訳でどうぞ


五十五話(改)

グレンとルミアのコンペ参加が決まった次の日。

放課後、グレンはルミアの手を引き、ダンスの練習の為、学院校舎の中庭に来ていた。

中庭には既にコンペに参加する予定のカップル達のダンスを練習する姿と、パートナー探しに奔走している男子生徒達の姿がある。

そんな中で―――

 

 

「……なんでお前らまでついてきてんの……?」

 

「……別に?」

 

 

システィーナが二人の後を不機嫌全開にしてついてきていた。

そんなシスティーナの隣にはリィエルもおり、その後ろにはウィリアムもいる。

ウィリアムはコンペに参加する気は欠片もないが、リィエルの今までのパターンから、また何かやらかす可能性からついてきたのだ。

リィエルの監視がすっかり板についてしまっている。本来は逆なのだが。

それを他所に、システィーナはグレンにダンスを教えるといい、シルフ・ワルツの一番をグレンと一踊りするのだが―――

 

 

「……行くぞ」

 

「な―――」

 

 

グレンのダンスの動きは荒々しくも、情熱的であった。

グレンを引っ張り回すつもりであったシスティーナは、逆にグレンのダンスに翻弄されてしまっている。

 

 

「本当にシルフ・ワルツですの……?」

 

「妙に荒っぽいけど、振り付けはシルフ・ワルツだね……いちおう……」

 

「なんか、すげぇ惹きつけられる……ッ!?」

 

「あれはシルフ・ワルツというより……」

 

 

ダンスの練習をしていた周囲の生徒達も、グレンのダンスに目を奪われ、魅了されていく。

そしてそのまま、グレンは力強くフィニッシュを決めた。

 

 

「はぁー……はぁー……」

 

「どうだ?なかなかだろ?」

 

 

グレンは得意げな顔で、昔の同僚にシルフ・ワルツの原型―――『大いなる風霊の舞(バイレ・デル・ヴィエント)』を相当仕込まれた事をどや顔で明かし、システィーナに対して勝ち誇る。

そんな悔しがるシスティーナと、どや顔のグレンを見つめていたリィエルがグレンに近づき……

 

 

「ん。全然だめ。わたしが相手になる」

 

 

負けじと、グレンに組みついていく。

 

 

「ちょっと待て」

 

 

そんなリィエルに、落ちを予想したウィリアムが後ろから肩を掴んで引き止めた。

 

 

「?どうしたの、ウィル?」

 

「……念の為に言うが、これは組手じゃないぞ」

 

「……違うの?」

 

「「「「……………………」」」」

 

 

予想通り勘違いしていた事に、沈黙が一気に周りを漂っていく。

 

 

「……とりあえず、先公から軽くダンスを教えてもらえ」

 

「ん。わかった」

 

 

そんな沈黙をウィリアムが破り、ウィリアムの音頭でグレンがリィエルにダンスを教えていく。

先程と同じシルフ・ワルツの一番だが、ダンス初心者のリィエルに合わせ、システィーナの時よりかは大人しい挙動でリードしていく。

リィエルも初めてのダンスに多少ぎこちないながらも、グレンの動きにしっかりついてきていた。

 

 

「初めてにしては中々やるじゃねぇか、リィエル」

 

「ん」

 

 

踊り終わったグレンの誉め言葉に、リィエルは若干得意げな顔で頷く。

 

 

「「「「講師死すべし。慈悲はない」」」」

 

 

相方のいない負け組の呪詛の言葉が響くが気に止める必要はないだろう。

グレンは呪詛の言葉を無視してそのまま、コンペの相方であるルミアとダンスの練習を始めていく。

 

 

「「「「おおおぉ……」」」」

 

 

グレンとルミアのダンスは、グレンが情熱的なダンスにルミアがそれを引き立たせる優雅さと気品さが合わさり、システィーナの時より、相当魅力的なダンスとなっていた。

比翼連理。そんな言葉がぴったりと当てはまる。

これなら当日は勝ち続けられるな、とウィリアムが思って見守っていると―――

 

 

「……ウィル。楽しそうだから、一緒にだんす?を踊ろ?」

 

 

グレンとルミアのダンスを見ていたリィエルが、ウィリアムをダンスに誘ってきた。

 

 

「そうだな……一回やってみるか」

 

 

ウィリアムも軽い気持ちで、リィエルの誘いに乗った。

ウィリアムも去年のパーティーには食事目的で参加しており、ダンスもルール状、求められたら踊っていたくらいだ。

……最も、目付きの悪さから誘ってくる相手が少なく、数回くらいしか踊っていないが。

そんな事を考えながら、シルフ・ワルツの一番をリィエルと一緒に踊り始めると―――

 

 

「―――んおッ!?」

 

 

ウィリアムから驚愕の声が洩れる。

リィエルは、先程グレンと一緒に踊ったシルフ・ワルツの一番の動きを完璧に再現していた。

その正確無比な動きに、ウィリアムは即興で動きを合わせていく。

 

 

「リィエルちゃんはダンス初心者だったよな……?」

 

「二回目であんなに踊れるなんて……」

 

「ウィリアムもしっかり着いていってるし……」

 

「動きが人形じみているけど……目が離せない……ッ!?」

 

「嘘だろ……ッ!?」

 

「…………」

 

 

そんな二人の動きは意外にもマッチしており、グレンを含めた周りの他の生徒達も思わず目を止めてしまっていた。

そんな周りの視線を集めたウィリアムとリィエルは、綺麗にダンス・フィニッシュを決めた。

 

 

「お前……あれを一発で覚えたのかよ……」

 

 

リィエルの物覚えの早さに、踊り終えたウィリアムは呆れと感嘆が混じった声を洩らす。

 

 

「リィエル……お前、マジかよ……?」

 

 

グレンも同様に、リィエルが素人が簡単にできないダンスを一発で覚えた事に驚いている。

この覚えの早さを少しでも頭の方に回って欲しいと、若干どや顔しているように感じるリィエルを見て、ウィリアムが思っていると―――

 

 

「二人共ッ!!」

 

 

システィーナが鬼気迫る表情で、ウィリアムとリィエルに近づいてきていた。

システィーナはそのまま、二人の肩を掴み―――

 

 

「当日のダンス・コンペ、あなた達も参加しなさい!!!」

 

「は?」

「ん?」

 

 

いきなり意味不明な事を言ってきた。

 

 

「あなた達なら、今から練習すれば十分に優勝が狙えるわ!!」

 

「……イヤ、何言ってんだよ?ダンス自体、あんましやった事ねぇんだぞ?」

 

「大丈夫よ!!私が手取り足取り教えるから!!」

 

「そもそも、コンペに参加する事自体、面倒だし……」

 

「リィエルに『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』を着せてあげたいとは思わないのかしら!?」

 

「イヤ、だから面倒……」

 

 

ウィリアムはいつもの理由を上げて断ろうとするも、システィーナは何故か、しつこく食い下がってくる。

ウィリアムとしては、コンペに参加する訳にはいかない。ルミアを連中から守る為には、グレンがコンペで勝ち続けて護衛する必要があるからだ。

社交舞踏会は誰かからダンスを求められれば、一度はダンスの相手を務めなければならず、拒否し続ければ会場から追い出されてしまう。だが、この伝統行事であるコンペの参加者は、参加権を有する限りは任意で拒否する事ができ、勝ち続けている間はルミアの安全を確保することができる。

だから、自らルミアの命の危険を引き上げる真似をしたくないのだが……

 

 

「い・い・か・らっ!当日のコンペに参加し・な・さ・い!!」

 

 

そんなウィリアムの内心を知らないシスティーナは鬼の形相でコンペ参加を迫ってくる。

そのシスティーナの凄まじい剣幕に―――

 

 

「お、おおう……」

 

 

ウィリアムはその剣幕に圧されて思わず、了承とも取れる返事で返してしまった。

 

 

「よーしッ!それじゃあ、早く練習しましょう!心配しないで!ちゃんと二人に教えてあげるから!!」

 

 

その返答に一気に上機嫌となったシスティーナは、そのままウィリアムとリィエルの腕を掴んで引っ張っていく。

それをルミアは微笑ましく見つめ、グレンは非難の眼差しをウィリアムにぶつける。

 

 

「「「「チッ!!」」」」

 

 

相方のいない負け組が、憎々しげな表情で露骨に舌打ちをするなか―――

 

 

(なんでこうなったぁああああああああああ―――ッ!?)

 

 

コンペの参加がほぼ強制的に決定し、ダンスの練習をする羽目になった事に、ウィリアムは心の中で叫び声を上げていた。

 

 

 




相変わらずの押しに弱い主人公(黒い笑み)
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