やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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作者自身、よく続いていると思う
てな訳でどうぞ


五十六話(改)

ウィリアムがシスティーナによって、ダンス・コンペへの参加が決まってしまった、その日の深夜。

ウィリアムはフェジテの南地区郊外の倉庫街にある木造倉庫の内の一つ、その扉の前に来ていた。その隣にはここに向かう途中で合流した礼服姿のリィエルもいる。

ウィリアムはその扉に、鍵ルーンを自分の血で三文字書く。

すると、扉がひとりでに開き、ウィリアムはすぐさま倉庫の中へと入って行く。リィエルも続いて中に入り、二人は倉庫の奥へと進んで行く。

ランタンの炎で照らされた倉庫の奥には、アルベルトとイヴ、同い年くらいの少年、筋骨隆々の老人が既に来ていた。

少年の方は知らないが、老人の方は知っている。

執行官ナンバー9《隠者》のバーナード=ジェスター。魔闘術(ブラック・アーツ)を極限まで極めた歴戦の魔導士だ。

 

 

「こうして面として会うのは初めてじゃのう《詐欺師》」

 

「確かにそうだな《隠者》のじいさん」

 

 

バーナードの挨拶にウィリアムも無難に返す。

ウィリアムは《詐欺師》の証の一つとも言える紺の外套を、一応の証明の為羽織ってきている。

 

 

「それにしても残念じゃわい。正体不明の《詐欺師》はカワイイ娘ちゃんと期待しとったのに……実はオン――」

 

 

その瞬間、バーナードが仰け反るように、仰向けに地面へと倒れた。

ウィリアムの右手には硝煙が立ち昇る拳銃が握られている。

 

 

「ちょッ!?」

 

 

木箱の上に腰かけていた少年はその暴挙に驚き腰を上げようとするも、バーナードが額を抑えて転がり回っているのを見て、安心の溜め息を吐いてその場に留まる。

 

 

「いきなり何をするんじゃ!?」

 

「じいさん」

 

 

何処か据わった目付きのウィリアムは、上半身を起き上がらせたバーナードの言葉を無視して錬成した拳銃を霧散させ、全長一メトラまで小型化し、取り回しがしやすくなった《魔導砲ファランクス》―――《魔導砲ファランクス・ミクロ》を解凍し、その六門の銃口をバーナードへと突きつける。

 

 

「次、同じような事を言ったら、非殺傷弾の弾幕をたらふく喰らわせてやる」

 

「……冗談じゃろ?」

 

「―――《駆動》」

 

 

ウィリアムの詠唱で《ファランクス・ミクロ》は起動状態となり、低い駆動音が唸りを上げ始める。

 

 

「わ、分かった!!もう言わんから、それを下げてくれ!!」

 

「よろしい」

 

 

目の前の脅しに屈したバーナードの言葉を、ウィリアムは険しい表情のまま素直に受け取り、《ファランクス・ミクロ》の起動状態を解除する。

そして、《ファランクス・ミクロ》に再び圧縮凍結の魔術を施した後、木箱に座っている少年の方へと近づいていく。

 

 

「もう知っているだろうが初めまして。ウィリアム=アイゼンだ」

 

「クリストフ=フラウルです。執行官ナンバーは5、《法皇》です。よろしくお願いします、ウィリアム君」

 

 

その少年―――クリストフは苦笑いしながらも木箱から降り、礼儀正しく自己紹介をする。

 

 

「呼び捨てでいいし、敬語もいらねぇ。年も近いだろうし」

 

「分かったよ、ウィリアム……それと、すみません。軍属じゃないのに特例条項で引っ張り出してしまって……」

 

「……お前が謝るのは筋違いだし、もう済んだ話だ。だから気にすんな」

 

 

謝ってきたクリストフに対し、ウィリアムは呆れ目でそう伝える。

本当の理由を隠す為、表向きの理由は特例条項によるものということにしている。

自己紹介を済ませたウィリアムはイヴに近づき、リィエルとコンペに参加する羽目になった事を伝える。

その報告に対しイヴは―――

 

 

「そう。作戦には特に問題ないわ」

 

 

涼しげな顔であっさりと受け流した。

この反応からして、ルミアを囮にする類の策も用意していると見ていいだろう。

文句はあるが、あの交渉でウィリアムは今回の作戦に口出し出来ない。出来るのは今のような報告と、人形のように指示通りに動く事だけだ。

その後、グレンもこの場に到着し、グレンはバーナードとクリストフと旧交を温め合い、イヴの音頭で作戦会議が始まった。

 

この一件は一部の『急進派』の先走りであり、首謀者が組織の内陣(インナー)たる第二団(アデプタス・)地位(オーダー)》である以上、今回は『暗殺』に拘らなければならない事。

敵の戦力は四人で、今回捕らえるべき首謀者は《魔の右手》の異名を持つ、暗殺特化の外道魔術師であるザイードとの事。

ザイードの暗殺方法は未だに不明だが、イヴが会場一帯に、一定領域内の負の感情を炎の揺らめきとして感知する眷属秘呪(シークレット)【イーラの炎】と【第七園】を多重起動(マルチ・タスク)して予め仕掛けておくとの事。

会場内にはグレンとリィエル、ウィリアムがルミアの近くに待機し、念のために備える事。

外部はアルベルト、バーナード、クリストフが対処するとの事。

 

 

「……つまり、どういう事?」

 

 

イヴの作戦の内容をよく理解できていないリィエルが、ウィリアムにそう聞いてくる。

 

 

「……つまり、舞踏会当日はここにいるメンバーでルミアを守ろうという事だ。俺とお前、グレンの先公は近くでルミアを守る役、いつも通りという訳だ」

 

「……わかった。いざという時はルミアとシスティーナはわたしが守る。敵は全員斬る」

 

「……それでいいから、当日は頼むぞ」

 

「ん。任せて」

 

 

とりあえず、リィエルに話を大まかに理解させ、溜め息を吐いていると―――

 

ガシッ

 

ウィリアムの肩が突如、後ろから誰かに掴まれる。ウィリアムは訝しげな表情で振り向くと、バーナードが真剣な表情でウィリアムの肩を掴んでいた。

 

 

「《詐欺師》、イヤ、ウィル坊と呼ばせてもらうぞ……お主……」

 

 

一体なんなんだと、ウィリアムが怪訝(げげん)に思っていると―――

 

 

「特務分室に来てくれんか!?割とマジで!!」

 

「……は?」

 

 

いきなりの勧誘にウィリアムは戸惑っていると―――

 

 

「僕からもお願いします」

 

 

バーナードに続いて、クリストフが頭を下げて勧誘してきた。

 

 

「やはりお前を引き入れるのは、帝国軍にとってかなりの益となるな」

 

「……本音は?」

 

「お前が居てくれれば、俺の苦労が大幅に減るからだ」

 

「つまり、リィエルの手綱を握れと」

 

 

アルベルトの本音に、ウィリアムはウンザリした顔となる。

 

その後、作戦会議は滞りなく終え、解散し帰路につく中―――

 

 

「ウィリアム。お前、ホントになにやってくれたんだよ」

 

 

グレンがウィリアムに、今日の放課後の事に文句を言っていた。

 

 

「俺だって、こんな危険を呼び込む真似はしたくねぇよ」

 

「だったら、今からでも……」

 

「あのシスティーナを前に出来ると思うか?」

 

「……無理、だな」

 

 

あの時のシスティーナの剣幕を思い出したグレンとウィリアムは揃って溜め息を吐く。

ダンスの練習もシスティーナが教えているから、手を抜いたら即一発でバレるし、練習の時も凄く睨んでいたので、ぶっちゃけ怖くて手が抜けない。

頭や胃が痛くなる想いの中、とりあえず途中でかち合わないよう、二人は天に祈るしかなかった……

 

 

 




····問題ない筈
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