てな訳でどうぞ
―――遂に迎えてしまった、社交舞踏会当日。
「どうですか?このわたくしに相応しい逸品でしょう?」
「まぁ、良い生地。さすがね……私が持ってきたドレスはどうでしょうか?」
「……何度見ても凄いですわね……」
「うふふ……あら?リン、貴女のドレス……」
「わ、私のドレス……これしかなくて……ウェンディやテレサから見たら……」
「いいドレスですわね」
「ええ。そのドレスからは人の歴史を感じます。きっと、御先祖様が代々、大切にしてきたドレスでしょう?」
「……わかるの?」
「ええ。その古さは誇りですから、堂々としていなさいな」
「……あ、ありがとう……」
女子更衣室が数多くの女子生徒達で賑わう中―――
「システィーナ……まだ、動いちゃ駄目なの?」
「もう少しだけじっとしててね」
奥の部屋で、リィエルは既にドレスに着替え終えたシスティーナにおめかしされていた。
―――――――――――――――――――――
「ハァ……」
会場の入り口前で疲れたため息を吐いているのは、システィーナが用意した
入り口前にいるのは、一応怪しい人物がいないかの確認の為である。
システィーナの熱の入った指導により、ウィリアムは身体を動かす事自体には相当馴れていた事もあり、シルフ・ワルツの八番以外は踊れるようになった。リィエルも練習初日同様、一発でダンスの動きを再現していたのであっさりと振り付けをマスターしていた。
システィーナ曰く、「これなら優勝を狙える!」との事。
本音を言えばコンペなんぞボイコットしたい。昨日もそれとなく辞退の話をしても―――
『何か言った?』
と非常ににこやかな怖い笑みで返され、口を閉ざす結果となった。
そんな重たい気分でいるウィリアムに二人の少女が近づいてくる。
空色を基調とした華やかなドレスを着た少女はシスティーナだが、もう一人の水色を基調としたドレスを着た少女は―――
「……は?」
ウィリアムの口から間抜けな声が出て、水色のドレスを着た少女―――リィエルに目が釘付けとなる。
ドレスもさることながら、髪型も普段の後ろに一つに結ったものから、左右に分ける二つ結びになっており、幼さがより強調されたものとなっている。
加えて、人形のような可憐さとも見事に合わさり、とても魅力的になっていた。
「……?どうしたの、ウィル?」
「……あ……いや、その……」
そんなウィリアムの様子にリィエルが首を傾げ、我に返ったウィリアムは言葉を濁してしまっている。
「フッフーンッ!どう?私の渾身のプロデュースは!!」
そんなウィリアムに、システィーナがどや顔で胸を張って自慢している。
「あ、ああ……ホント、すげぇよ……思わず、見惚れちまった……」
もう誤魔化すのもなんなので、ウィリアムは素直に答える。
「そういやあ、ドレスを着た感想はどうだ?リィエル」
「ん。少し動きにくいけど、悪くない」
「ハハ……そうか」
心なしか、リィエルが若干微笑んでいるように見える。
そんな少々気恥ずかしい雰囲気のまま、ウィリアムはシスティーナとリィエルと一緒に会場へと入る。
会場内では、楽奏団が場を盛り上げるために演奏しており、既に盛り上がっていた。
「よう、ウィリアム!お前もリィエルちゃんと一緒に参加するんだって聞いたぜ?」
「……成り行き、だけどな」
声をかけてきた、少しサイズが合っていない燕尾服に身を包んだカッシュに対して、ウィリアムは嘆息と共にそう答える。
「実はな、お前もグレン先生同様、『夜、背後から刺すべき男リスト』に載ってたぜ?」
「ちょっと待て。そんな物騒なリストに載せられる理由は無い筈だ」
ウィリアムの反論に、カッシュは俯いて肩を震わせていく。
「理由が無い?馬鹿言うなよウィリアム。お前は何時もリィエルちゃんと仲良くしてるじゃないか……リストに載るには十分過ぎる理由だろ?」
「まさかとは思うが、お前がそのリストに俺を載せたんじゃねぇよな?」
少々目が据わったカッシュに、ウィリアムは疑惑の目を向けるも、当の本人は据わった目を引っ込め、悪戯坊主のように口の端を吊り上げていた。
「まぁ、それより今は重要な作戦があるんだよ……『
「……なんだよ、そのふざけた名の作戦は?」
猛烈に嫌な予感を覚えつつも、ウィリアムはカッシュに問い質す。
「具体的には二組のほぼ全員がダンス・コンペに参加して、憧れの天使ちゃんを小遣い稼ぎのためにかっさらった先生を蹴落とそうという作戦だ」
(な、なんつう余計なことを……)
内容を聞いたウィリアムは、顔にこそ出さなかったが、本当に余計なことをしてくれたカッシュに、内心で文句を言っていた。
「なんだかんだで皆盛り上がるし、基本くじ引きでカップルを決めるとはいえ、女の子と手を繋げられるし、我ながら英断だったぜ!」
……何故か、カッシュの言葉に哀れみを感じてしまった。
その後、システィーナの音頭でダンスを披露する事となり、ウィリアムとリィエルは流れる曲に合わせて踊り始める。
リィエルの人形じみた動きも、本人の美貌と、ウィリアムが積極的にリードを取り、ウィリアム自身のダンスの技量も上がった事で、最初に踊った時よりも相当マッチしていた。
「う、羨ましい……」
「たった数日であんなに踊れるようになるだなんて……ッ!?」
「可憐……可憐だ……」
「いつもの悪い目付きも、クールに見える……」
「本当に似合い過ぎる……ッ!!」
そうして、会場中の視線を集めていく中、ウィリアムとリィエルは華麗にダンス・フィニッシュを決める。
ぱちぱちぱちぱち―――ッ!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおお―――っ!!
踊り終えた瞬間、会場中から、拍手と感嘆の声が上がっていく。
「「「「リア充死すべし。慈悲はない」」」」
……拍手喝采と感嘆の声の中に、物騒なセリフが混じっていたのは気のせいだろう。
一踊りしてシスティーナ達の元に戻ると、グレンとルミアも既に来ていた。
「どお?ウィリアムとリィエルも優勝候補と思えるでしょ?私のおかげでね!!」
「なんでお前が威張ってんだよ……?」
グレンはシスティーナの挑発的な態度に呆れており、ルミアは苦笑いしている。
「ルミア!貴女の『
システィーナはルミアにそう告げ、ウィリアム達の方へと向き直る。
「二人共ッ!!絶対に優勝しなさい!先生の甘い野望を打ち砕くためにも、手加減なんて絶対にするんじゃないわよ!?」
「……そんなにやる気があんなら、カッシュの作戦に乗って、参加すればよかったんじゃねぇのか?」
ウィリアムの最もな指摘に、システィーナはバツが悪そうな顔で答える。
「え~と、その……二人の指導に熱が入ってて、その事を知らなかったというか……」
「一緒に踊る相方がいないと」
「うう……」
ウィリアムの見も蓋もない言葉に、システィーナは若干悄気るも、直ぐに気勢を取り戻す。
「そんな訳だから、絶対に勝ち残りなさい!」
「スゲェ、他力本願」
呆れを通り越して、逆に哀れである。
そんな流れの中、長い夜となる、陰謀渦巻く社交舞踏会の幕が上がる―――
リィエルのドレス姿······これでオーケー?いける?
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