やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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·····大丈夫だと信じたい
てな訳でどうぞ


五十八話(改)

生徒会長のリゼの音頭で社交舞踏会が開催され、会場は華やかな雰囲気に包まれる。

 

 

「…………♪」

 

「こういう場で、あんま言いたくねぇが……食い尽くすなよ?」

 

 

テーブルの皿の上に見上げるほど高く積み上がった苺タルトの巨塔の前で、上機嫌に苺タルトを食べるリィエルにウィリアムは呆れ目で注意していく。

 

 

「なんで?」

 

「他の人達だって食べるだろうし、お前だって食べようと思ってた苺タルトが既に無くなってたら嫌だろ?」

 

「……わかった。せめて半分くらい残しとく」

 

 

リィエルは素直に頷き、再び苺タルトにかじりつく。

ウィリアムは微笑ましい顔で、皿の上に盛った肉を口に運ぶ。

チラリと見れば、グレンとシスティーナは何時ものやり取りをしており、ルミアも微笑ましげに見守っている。

クラスのみんなもなんだかんだで楽しんでいるようだ。

 

 

『皆様。お待たせいたしました。ただ今より、魔術学院社交舞踏会伝統のダンス・コンペ、予選一回戦を開始します―――……』

 

 

リゼのアナウンスが音声魔術で会場に流れ、ついにダンス・コンペが開催される。

 

 

「絶対に予選を突破しなさいよ!!」

 

「わかったから、そんな恐い顔で睨むなよ……」

 

「システィーナ、すごい気迫……」

 

 

システィーナから発せられるプレッシャーをひしひしと感じながら、ウィリアムとリィエルはダンスを披露していき―――

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

「予選突破おめでとう!!」

 

「……どうも」

 

「ん」

 

 

予選突破を賞賛するシスティーナにそう返すウィリアムとリィエル。

周りのダンスの技量が高かったから、ひょっとしたらという思いが芽生えたが、そんなに甘くなかった。

わざとミスしたり、手を抜けば脱落できるだろうが、それを実行すれば、目の前の少女が東方の般若となって襲ってきそうで怖い。

ちなみに貴族のお嬢様筆頭のウェンディは、カッシュとペアを組んだがいつものドジをかまし、予選敗退となった。

遠目からグレン達を見ると、同い年くらいの人の良さそうな少年がグレンと右手で握手していた。

……妙にピリピリとした雰囲気を出していたが。

正直気にはなるが、下手にイヴに伝えれば『口出し』になる可能性がある。

ウィリアムは歯がゆい思いを抱いたまま、再びコンペへと挑み―――

 

 

 

その後の予選も突破してしまい、本選への出場が決まってしまった。

先程の予選三回戦では、グレン&ルミアのペアと同グループで踊ったのだが……

 

 

「どう?先生?二人もなかなかやるでしょ?」

 

 

システィーナがどや顔でグレンに突っかかっている。

先程のチェック数はまさかの同数……互角という結果だった。

ウィリアムは正直手を抜きたかったのだが、システィーナの鋭い視線が終始、グサグサと刺さり続けて出来なかった。

グレンも分かってはいても、リスクを助長させてしまっているウィリアムに非難の視線を送ってしまう。

 

 

「先生、ひょっとしてビビってます?これなら、今年の『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』はリィエルのものかしらね~?」

 

「……それはどうかな?システィ」

 

 

システィーナの煽りに、意外にも反応したのはルミアだった。

 

 

「私と先生のペアは負けないよ?……ですよね?」

 

「……お、おう……?」

 

 

グレンの腕に絡みつくハイテンションのルミアに、グレンは戸惑いながらも頷く。

 

 

「むむむ……むぅ~~~っ!!」

 

 

その光景に、システィーナは拗ねたように頬を膨らませ、胸元で両拳を固めていき……

 

 

「二人共!!絶対に負けないでよ!?」

 

「わ、わかったから、そんな睨むなよ!」

 

 

システィーナの何度目か分からない、鬼のように感じる剣幕に、ウィリアムは押されっぱなしであった。

その後、システィーナ、ルミア、リィエルと一緒に食事を取りにいったのだが……

 

 

「俺が散々食ってたの、さっき見てたろ?」

 

 

安堵の息を吐いたグレンの言葉に、そういえばという疑問が浮かび上がる。

グレンの様子からして、自分たちは敵の術中に嵌まっていた可能性が高い。

今グレンがイヴに報告しているだろうが、グレンのあの様子からして切り捨てられている可能性が高いだろう。

仮に報告しても、口裏を合わせたと言われて、切って捨てられるのがオチだ。

できればグレンと情報を共有したいが、話し合うのは難しく、通信もイヴを通さないと出来ないので共有はほぼ不可能だ。

そんな思いを抱いたまま、コンペへと挑み―――

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

コンペは順調に進み、本選準決勝戦が終了した。

勝ち残ったのは、グレン&ルミアペア、ウィリアム&リィエルペア。

この二組が決勝で争う事となった。

 

 

「頼むぜ、ウィリアム!このままだと先生を金銭的に乾せない!!」

 

「先生!何としても勝ってくださいまし!」

 

「ここまで来たんだから絶対に勝ちなさいよ!!」

 

 

クラスのみんなが、わいわいと沸き立ち、興奮気味に盛り上がる。

 

 

「なぁなぁ!?みんな、どっちの『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』姿が見てみたい!?」

 

「当然ルミアちゃんだ!」

 

「リィエルに一票!」

 

「どっちも見てみたい!!」

 

 

そんな楽しい雰囲気にウィリアムも思わず和んでしまう。

そんな中で、イヴから敵の計画が完全に潰れた事が伝えられる。

 

 

『……それでは、良い夜を』

 

 

イヴはそう言って、一方的に通信を切る。

黒幕を捕らえ、外の方もほぼ完全勝利で終わったらしい。

正直、妙に上手く行き過ぎている感が否めない。

このまま最後まで終わって欲しいと思いながら、決勝へと挑む――――

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

迎えた決勝戦。

ウィリアムは意外にも全力で挑んでいた。

最初はシスティーナの気迫に呑まれて、気が進まない参加だったのだが―――

 

 

(……結局、俺もリィエルの『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』を着る姿を見たかったという事かな?)

 

 

そんな事を思いながらスッテプを刻んでいき、リィエルと共にダンスを踊っていく。

それにルミアも、コンペが始まってから終始真剣だった。ここまで来たら、真剣には真剣で返すのが礼儀えある。

その思いでダンスへと没頭していき――――

 

 

―――結果は僅かな差で、グレン&ルミアペアの勝利だった。

 

 

「おめでとう、完敗だ」

 

「ん。よくわからないけど……負けた。ルミアすごい」

 

 

清々しい気分で、優勝者に賞賛の声を送るウィリアムと、どこか祝福するように見つめるリィエル。

システィーナもすなおに、優勝したルミアを褒め称えるも―――

 

 

「白猫ちゅわ~~~ん?今どんな気持ちかなぁ?」

 

 

グレンがシスティーナをおちょくった事で少々台無しとなった。

 

今年の『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』はルミアが勝ち取り、着る事となった。

 

 

 




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