やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

108 / 215
ここから原作八巻
皆の者、ブラックコーヒーの準備はいいか?
てな訳でどうぞ

*少し書き加えました


第七章・教師補佐と春風の剣士
六十一話(改)


―――――――――――――――――――――――――――――

~緊急通知~

対象者:リィエル=レイフォード

内容:()()退()()(今年度前期の終了より執行)

理由:一定水準の学力非保持故の在籍資格失効

                      以上

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「どういう事だ、学院長!?」

 

 

掲示板の通達を見たグレンとウィリアムは、学院長室にロックもせずに入室し、学院長に詰め寄っていた。

 

 

「まぁ、来るとは思っていたよ」

 

「学院長!あの掲示板の通知は本当にどういう事だ!?いくらなんでもおかしいだろ!?」

 

「そうですよ!?期末試験を待たずに落第退学なんて、さすがにおかしいっすよ!?」

 

 

一緒に連れてこられたリィエルはいつもの表情のままで、何が起きているのかわかっていない。

『落第退学』は文字通り、学院を退学させられる処分だ。だが、本来は余程の事がない限りその処分が下る事はない筈なのだ。

一緒についてきたシスティーナとルミアも必死に嘆願するも……

 

 

「実はのう……」

 

 

学院長はため息と共に説明する。

リィエルの属している国軍省と政治抗争している魔道省が、リィエルの問題行動と成績不良を口実に、かなり強引に追い込んだそうだ。

リィエルも、落第退学が何なのかをシスティーナから聞かされた途端、今にも泣き出しそうな顔になる。

そんな彼らに、学院長が聖リリィ魔術女学院からリィエルを名指しで短期留学のオファーが来ている事を話す。

 

 

「よかったな、リィエル!聖リリィ魔術女学院に短期留学を成功させれば何とかなるぞ!!」

 

「……タンキリューガクって何?」

 

 

リィエルの質問に、ルミアが、一時的に別の学校へ通うことだと説明した直後―――

 

 

「やだ……リューガク?……したくない」

 

 

眉間に僅かにしわを寄せ、短期留学を強く拒絶した。

ウィリアムがその理由を聞こうとするも、グレンによって遮られてしまう。

そしてグレンの叱責に……

 

 

「絶対、やだ!」

 

 

リィエルは癇癪を起こして、学院長室を飛び出していった。

 

 

「おい!?待てよ、リィエル!」

 

 

ウィリアムは慌てて、逃げ出したリィエルを大急ぎで追いかけた。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「ん―――っ!!」

 

「……頼むから一回落ち着け」

 

 

ウィリアムは現在、黒魔儀【リストリクション】で捕らえられたリィエルと共に、学院に設けられたチャペル内の講壇の裏側にいる。

学院長室から出た後、何とかリィエルを補足し、追いかけていたところで、アルベルトがリィエルを取り押さえる現場に遭遇した。

アルベルトはグレン達にも今回の件について話すという事で、指示に従い、ここで待機している。

 

 

「お前達に話がある。……出てきていいぞ」

 

 

アルベルトの呼び出しで、拘束されたリィエルの襟首を掴んで講壇内から外へ出る。

 

 

「「ええええ―――っ!?」」

 

「……これやったの、アルベルトだからな。ここに隠れるよう言ったのも」

 

 

目を丸くして驚くシスティーナとルミアに、ウィリアムは嘆息と共に説明する。

 

 

「……マシな監禁場所なかったのか?神様に喧嘩売り過ぎじゃね?」

 

「信仰など、とうの昔に捨てた」

 

 

グレンのツッコミにアルベルトはそう返して指を鳴らし、リィエルを縛めていた【リストリクション】を解く。

アルベルトを交えてのリィエルの今後の話し合いは、やはり短期留学を成功させる以外にないそうだ。

その事実を改めて確認したグレンは、リィエルに短期留学を促すも、リィエルはウィリアムの後ろに隠れ、泣き出しそうな顔で短期留学を拒絶する。

グレンはリィエルを諭そうとすると―――

 

 

「ストップだ、先公」

 

 

ウィリアムが手をつきだして、それを制した。

 

 

「ウィリアム?」

 

「リィエル。ちゃんと嫌な理由を言え。いつでも察せるわけじゃねぇんだ」

 

「……わ、わたし……は……みんなと……離れたく、ない……一人になるのが…………怖い……から……」

 

 

リィエルから絞り出された言葉に、グレンはようやく気づいて押し黙る。

忘れがちだが、リィエルはイルシアを元に生み出された人間だ。そのイルシアも『拠り所』を守る為に、罪の意識に苦しみながら、組織の命令に従っていたのだ。

そんな幼いリィエルに『拠り所』を一時的とはいえ、離れるのは相当、酷な事である。

 

 

「……悪かったな、リィエル。ろくに話も聞かずに、無理強いしようとして」

 

「ん……」

 

「だが、どうすんだ?このままだと……」

 

 

振り出しに戻った問題に、グレンが悩ませていると、ルミアが、自分とシスティーナも一緒に行けばいいのでは?と提案する。

アルベルトもシスティーナとルミアにも短期留学のオファーが来るよう、既に手は回しているという。

システィーナとルミアが一緒なら何とかなると思ったが―――

 

 

「……グレンとウィルは?二人も一緒じゃないと……」

 

「……すまん。こればっかりはどうしようもねぇ」

 

 

リィエルの縋るような言葉に、ウィリアムは苦い顔で答える。

聖リリィ魔術女学院は文字通りお嬢様学校、男子禁制である。男であるグレンとウィリアムは敷地内にすら入れないのだ。

さすがに諦めてもらうしかないのだが……

 

 

「問題無い。お前達も、臨時教師と体験実習の教師補佐として同行してもらう」

 

「「は?」」

 

 

アルベルトの意味不明な言葉に呆けた言葉が洩れた直後、チャペルの壁が爆破される。

 

 

「ジャジャジャジャーンッ!!」

 

 

壁の大穴から現れたのは、ようやく復帰したセリカであった。肩には羽を広げてポーズを決めているファムもいる。

セリカはグレンに向かって歩き、胸の谷間から取り出した小瓶の中身を口内に含み、グレンを抱きしめて―――キスをした。

その三秒後、何かを口移しで飲まされたグレンはセリカを振りほどくも―――

 

 

「《陰陽(いんよう)(ことわり)は我に在り・万物の創造主に弓引きて・其の(からだ)を造り替えん》―――ッ!」

 

 

セリカが得意げに呪文を唱えた直後、グレンの全身から煙が立ち上り、奇妙な音が響いていく。そして、煙が晴れた先には―――女性がいた。

 

 

「……なんじゃこりゃあああああああああああああ―――っ!?」

 

 

その女性―――グレンの身に起こった光景を見て、ウィリアムは猛烈に嫌な予感を覚え、その場から急いで逃げようとするも―――

 

 

「《動くな》」

 

 

セリカの金縛りの魔術によって、セリカが開けた大穴に向かう途中で動けなくなり、ウィリアムはあっさりと捕まってしまう。

セリカは胸元からもう一本の小瓶を取り出し、そのままウィリアムへと近づいて行く。

 

 

「さあ!私の口移しか、自ら飲むか選ばせて上げよう!」

 

 

セリカが笑いながら告げた地獄の選択に、ウィリアムが脂汗を流していると―――

 

 

「……待って、セリカ」

 

 

リィエルがセリカの腕を掴んで引き止めた。

 

 

「リィエル?」

 

「そのくちうつし?は、さっきグレンにした事なの?」

 

「そうだが?」

 

「……だったら、わたしがそのくちうつし?をする」

 

 

リィエルの口から出たのは静止の言葉ではなく、まさかの立候補発言だった。

それを聞いたセリカは目を見開くも、一気に悪い顔となり、小瓶を渡しながらリィエルの耳元で何かを吹き込み始める。

ウィリアムは必死に金縛りから逃れようとするも、同じく悪い顔になった女体化グレンが、動けないウィリアムの顔の位置をリィエルの身長に合わせて調整していく。

そして、セリカに何かを吹き込まれたリィエルは、ウィリアムに近寄りながら手渡された小瓶の中身を口内に含み―――

ウィリアムの頬に手を置き、自らの顔を近づけ―――

 

 

「―――ん」

 

 

セリカ同様、一切の躊躇いもなくウィリアムにキスをした。しかも十五秒もの間、たっぷりと。心無しか、ぶっちゅううううぅぅぅ…………という空耳が響いているような気がするが、気のせいだろう。

その光景にシスティーナは更に混乱、ルミアは「リィエルまで先に大人の階段を……」と呟き、セリカとグレンはいやらしい笑みを浮かべ、アルベルトはリィエルの行動に少なからず驚いていた。

リィエルにキスをされたウィリアムは、頭の中が一気に真っ白となってしまい、そのまま例の小瓶の中身を飲み込んでしまう。

接吻を終え、金縛りから解放されても、ウィリアムは顔を真っ赤にし、硬直したまま動かなくなっている。

対するリィエルは何時もの能面だが、心なしか、どこか満足げに見える。

そして、セリカは再び詠唱し、ウィリアムもグレン同様、女の姿へと変えた。

女に変えられたウィリアムは、髪が肩の所まで伸び、胸の大きさは……システィーナよりはあるがそこまで大きくない。

全体的な見た目は、スレンダーなクールビューティーの少女となった。

 

 

「これで問題は無いな?」

 

「「問題大ありだッ!?」」

 

 

アルベルトの言葉に、グレンと我に返ったウィリアムが詰め寄っていく。

 

 

「まったく……少しは察しろ。単なる嫌がらせでこんな事をすると、本気で思うか?」

 

「「…………」」

 

「グレンに対しては、半分は俺の嫌がらせだが」

 

「おい!?」

 

「……じゃあ、俺は?」

 

「半分はイヴからの厳命だ。余程、異臭を放つ液体を頭から被せ、丸三日も取れなかった事を未だ根に持っていると見える」

 

「…………」

 

 

アルベルトの明かした理由に、ウィリアムは視線を明後日の方へと向けた。

そして、アルベルトから今回のタイミングが良すぎる短期留学のオファーの疑惑を指摘され、グレンとウィリアムはしょうがないと、同行する事を決める。

こうして、ウィリアムはグレンの補佐として、同行する事となった。

 

 

「因みに、何で補佐なんだ?」

 

「そっちの方が都合がいいだろう。精神上でな」

 

「……気遣いどうもありがとう」

 

 

 




おかしい·····思ったより砂糖の出が少ない····
これが雰囲気の力か!?
ツッコミは出来ればスルーの方向で
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。