やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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読者は甘いものが好き
それを前回の話で感じた作者です
てな訳でどうぞ


六十二話(改)

あの珍事の後、短期留学と臨時派遣は問題無く進んだ。

カッシュを筆頭とした一部の男子生徒は、グレンとウィリアム―――特にグレンが暴露したウィリアムとリィエルのキス話―――への嫉妬と羨望が鰻登りで上昇し、血涙を大量に流す勢いで地面をのたうち回ってはいたが……

 

 

「……あー、めんどくせぇ……」

 

 

フェジテを発った馬車内で、やる気なくぼやいているのはウィリアムだ。

ウィリアムの現在の格好は、学院から借りたアルザーノ帝国魔術学院の男性用の講師服をだらしなく着崩している状態だ。

グレンも同様にいつもの格好だ。

ルミアがにこやかな顔でグレンとウィリアムにおめかしを進めたが、その一線を越えたくなかった二人は頑として拒絶した。

因みに、グレンは『レーン・グレダス』、ウィリアムは『ウィリー・アームゼン』という偽名にしている。

約一秒で決めた偽名に、周りはそれでいいのかとつっこんだが、二人は特に気にしなかった。

そんな相変わらずのウィリアムに―――

 

 

「……ごめん」

 

 

隣に座っていた聖リリィ魔術女学院の制服―――修道服にも似た華やかなワンピースとベレー帽―――を着たリィエルが謝ってきた。

リィエルは、自分のせいでみんなを巻き込んだ事に負い目を感じている事。みんなに迷惑をかけて嫌われて一人になるのが怖い事。一人で短期留学するのが怖い事を消え入るような声で吐露していく。

それに対しウィリアムは、ちょっと呆れ目で、左手をリィエルの頭に置く。

 

 

「ウィル……?」

 

「本当に嫌ってたらこうしてついてこねぇよ。二人も短期留学を進めたのはお前と一緒に居たかったからだ」

 

「ウィリア……ウィリーの言う通りだぞ、リィエル」

 

 

前の席に座っていたグレンも、偽名で言い直しながら、ウィリアムの言葉に同意する。

 

 

「そうかな……?」

 

「そうだよ。それでも負い目に感じるなら……」

 

 

リィエルの頭を撫でながら、微笑んで言う。

 

 

「向こうで二人や俺らに頼らずに、友達の一人くらい作ってみな。そうすりゃ二人も喜ぶさ」

 

「……ん。頑張ってみる……」

 

 

ウィリアムの言葉を、リィエルは微笑んで受けとめる。

そんな二人の仲睦まじい光景を、グレンは笑って見守―――

 

 

「そういやぁウィリー君?リィエルとのキスの味はどうだったかな?」

 

 

―――らず、いやらしい笑みであの時の事を聞いてきた。

それに対しウィリアムは―――

 

 

「―――――~~~~~~~ッ!!!」

 

 

あの時、真っ白になりながらも感じていた、唇の柔らかい感触を思い出して顔を真っ赤にし、身悶えながら、明後日の方向へと顔を向けていた。

 

 

「リィエル。お前があんな行動に出るのは正直驚いたぜ?」

 

「……よくわかんないけど、ウィルとセリカが口移しをする光景をどうしてか見たくなかった。よくわかんないけど」

 

 

リィエルはどうやら、自身の気持ちを把握仕切れず、もて余しているようであった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

フェジテを発って四日後、一同は帝都オルランドに到着し、そこから鉄道で聖リリィ魔術女学院へと向かうのだが……

 

 

「……リィエルはどこに行った?」

 

「「「えっ?」」」

 

 

五番線のホームに着いた矢先、リィエルの姿が見えない事にウィリアムが気付き、グレン達に聞くも、そんな言葉しか返ってこなかった。

ウィリアムは直ぐ様記憶を再生させる。

そこで、ここに向かう途中にあった、駅構内の苺タルトの屋台を思い出し―――

 

 

「あそこかぁあああああああああああ―――ッ!?」

 

 

はぐれた場所に思い至ったウィリアムはグレン達を置いて、大急ぎでそこへと向かって走っていく。

急いで苺タルトの屋台があった場所に向かうと、案の定、リィエルはその場にいた。

リィエルのすぐ近くには、聖リリィ魔術女学院の制服を着た眼鏡をかけた少女もいたが、おそらく女学院の生徒だろう。

 

 

「いいいたぁあああああああああ―――ッ!!」

 

「あ」

 

「!?」

 

 

ウィリアムは敢えて大声で叫んで二人に近づいていく。

 

 

「しれっと迷子になるな!目を離した俺らにも責があるが……!」

 

「違う。迷子になったのはウィル達の方」

 

「……じゃあ、五番線ホームはどっちの方角だ?」

 

「……どっち?」

 

「それが!迷子になった!というんだよ!このアホ!!」

 

「むぅ……」

 

 

ウィリアムの説教に、リィエルは不貞腐れるも―――

 

 

「兎に角、説教は後回しだ!今は急いでホームへ向かうぞ!!そこのあんたも聖リリィの学生だろ!?急がないと乗り遅れるぞ!!」

 

「え、ちょッ!?」

 

 

ウィリアムは右手でリィエルの、左手で眼鏡の少女の腕を掴み、大急ぎで五番線ホームへと向かって行った。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

あの後、無事に五番線ホームに到着し、問題無く列車に乗る事が出来た。

今は眼鏡の少女―――エルザと一緒に腰を落ち着ける場所を探していく。

 

 

「あれ?ですが、リィエルさんはお二人のことを……」

 

「ああ。それはただの愛称だから気にしないでくれ」

 

「は、はぁ……」

 

 

リィエルが普通にグレンとウィリアムを何時もの名前で読んだ事を誤魔化しつつ、互いに自己紹介と身の上話等をしながら列車内を歩いていく。

そして、オープンサロンタイプ車両へと入り、グレンが席に座るよう促すと、金髪の縦ロールの少女を筆頭とした集団が現れ、この車両は自分たち『白百合会』のものだから出ていけという、公共ルールガン無視発言をかましていた。

それに続いて、男勝りの黒い長髪の少女を筆頭とした『黒百合会』と名乗る集団が現れ、こちらも指定席さえも座るという、同じく公共ルールガン無視発言をかましている。

金髪と黒髪の少女―――フランシーヌとコレットはそのまま喧嘩を初め、周りもそれに追従する。

グレン達はジニーという名の少女から後方車両に避難するよう助言を受け、後方車両へと避難した。

そこで一同はようやく腰を下ろし、ゆっくりと寛いでいく。そんな中―――

 

 

「…………」

 

「?ウィリーさん、私の顔に何かついてます?」

 

 

ウィリアムはエルザの顔を探るように凝視していた。

 

 

「……(わり)ぃ、なんでもねぇ」

 

 

ウィリアムはそう言ってエルザから視線を外す。

 

 

(他人の空似だよな?もし()()()の娘なら―――)

 

 

()()に瓜二つのリィエルに、あんな親しげな態度は取れない筈。

やはり、顔が似ているだけの別人だと判断して、ウィリアムはそのまま眠りこけた。

 

 

 




リィエルがいつも通りなのは、恋愛知識の疎さと純粋無垢故である
でなきゃ、あんな濃厚なキスはしない
感想お待ちしてます
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