やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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相変わらず不安に感じながらも投稿する駄作者である
てな訳でどうぞ


六十五話(改)

グレンは男バレを『過去の変身魔術の後遺症で、お湯を被ると男の身体になってしまう』という、実に苦しい言い訳で誤魔化して事なきを得た。

留学も十四日目となり、前日のテストのリィエルの点数は百点中六十五点。今までのリィエルからしたら格段の進歩だ。

そのままグレンの音頭で、クラス全員でマグス・バレー大会を開催するのだが……

 

 

「…………」

 

「どーこに行こうとしているのかなぁ?」

 

 

エルザが一人、その輪の中から離れようとしていたのでウィリアムがそれを引き留める。

エルザが資格云々とか言って渋っていたので―――

 

 

「資格とかそんなん知らん。お前が入りたいか、入りたくないかだけだ」

 

 

ウィリアムはそう言い切り、エルザの背中を押して強引に連行し、皆の輪の中へと放り込んだ。

皆もエルザをにこやかに受け入れ、リィエルのお願いにも根負けしたエルザは一緒に皆と遊ぶ事となった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

短期留学最終日。

グレンが担当した生徒達は、学院敷地内のオープンカフェでグレン達の送別パーティーを開いていた。

リィエルの短期留学も無事に成功し、落第退学を免れたのである。

 

 

「ところで……リィエルは?」

 

 

リィエルはいつの間にかいなくなっており、ウィリアムが辺りを見渡して探していると、システィーナが、リィエルはエルザと一緒に散歩へと行ったと告げる。

 

 

「じゃあ、ちょっと探しに行くか。あいつにはちゃんと礼を言っときてぇしな」

 

「ひょっとしてヤキモチ?」

 

「うっせぇ」

 

 

システィーナのからかいを軽く受け流し、ウィリアムはリィエルとエルザを探しに行った。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

鉄道列車駅の駅前広場にて。

エルザはリィエル―――『イルシア』と戦っていた。

エルザはリィエルに自身の過去と、復讐、敵討ちの為に近づいたことを明かした。

 

 

「あの日以来、私の人生は無茶苦茶となったッ!(ろく)でもない親戚達が父と母の財産を全て奪い、私は政略結婚の道具として、通っていた軍学校からこんな下らない学校に押し込められたッ!何より―――『炎の記憶』が今も尚、私を苦しめ続けている……ッ!あの時、私を貴女の凶刃から助けてくれた人を連想させる紺色と、自己暗示装置の眼鏡がなければ、日常生活でさえ満足に送ることが出来ない程に……ッ!!」

 

 

そして、瞳を憎悪に染めたエルザは『春風一刀流』と呼ばれる東方剣士(サムライ)の剣術を駆使して、リィエルに斬りかかった。

エルザはリィエルの剣技の底を見切り、勝てると思っていた。だが、リィエルの強さを見誤った。

その結果、エルザは劣勢に立たされる事となった。

エルザは必死にリィエルの力まかせの重剣の連激を捌くも、遂に捌ききれず、強烈な衝撃によって尻から地面に叩き付けられる。

そして、リィエルは大剣を大上段に振り上げている。

その光景―――『炎の記憶』の焼き直しにエルザは思わず目を閉ざしてしまう。

あの時と違うのは、助けは来ない事だけ。

あの時は黒い仮面をつけた正体不明の人物に助けられたが、そんな都合のいいことは二度も起きはしない。

エルザは死を覚悟するも―――

 

 

(……?)

 

 

死の衝撃が来ない事に、エルザは恐る恐る目を開くと、リィエルはエルザの目の前で大剣を寸前で止め―――泣いていた。

 

 

「お願いエルザ……話を聞いて……わたしは……エルザを傷つけたくない……」

 

 

リィエルのその姿に、エルザの『炎の記憶』―――大剣が弾き飛ばされたあの時、イルシアが泣いていた記憶―――が甦り、再び怒りが再燃する。

その瞬間、エルザの刀が衝動的に跳ね上がり、リィエルは慌てて跳び下がって避ける。

エルザはそのまま、刀を頭上で旋回させ納刀しようとした瞬間―――

 

 

 

一発の銃声と共に、エルザの手から刀が弾き飛ばされた。

 

 

「!?」

 

 

エルザは驚愕し、刀を拾うことも忘れ、急いで銃声がした方向に顔を向けると―――

 

 

「……何でこう、当たって欲しくない事ばかりが当たるんだよ……」

 

 

硝煙が立ち昇る黄金の拳銃を構え、苦い顔でこちらに歩いて近づいてくるウィリアムがいた。

 

 

「……ウィリーさん、何のつもりですか……?」

 

「いや、普通止めに入るだろ」

 

 

烈火の瞳で睨んでくるエルザに対し、ウィリアムは至極当然の事を口にする。

エルザは激情のまま、リィエルの悪行を叫ぼうと口を開こうとした矢先、ウィリアムの静かな言葉で止まる事となった。

 

 

「それと、今お前がしている事は復讐、敵討ちですらねぇからな?」

 

「……は?」

 

「リィエルはお前の両親を殺したイルシアじゃない。そこにいるリィエルは本質的の別人、イルシア本人じゃないんだよ」

 

「何訳のわからない事を言ってるんです!?そもそもどうして貴女はその事を―――」

 

「お前からしたらそうだろうな。あの時、俺は仮面で顔を隠してたからな」

 

 

ウィリアムはそう言い、左手に《詐欺師》時代に使っていた黒の仮面を錬成する。

 

 

「…………え?」

 

 

その黒の仮面を見たエルザは目を見開く。

その仮面は二年前のあの時、あの凶刃から救い、朦朧とする意識の中、燃えたぎる我が家から両親の遺体ごと連れ出してくれた、謎の恩人が被っていた仮面だったからだ。

 

 

「あ、貴女は……まさか……」

 

「その様子からして覚えてるようだな。この仮面と紺の外套を羽織っていた俺の事を」

 

 

ウィリアムはそう言いながら、仮面を霧散させ、構えていた拳銃を降ろす。

 

 

「話の続きだが、イルシアはもうこの世の何処にもいない。二年前、致命傷で死んだからな……」

 

「!?何を言ってるんです!?イルシアはそこにいる―――」

 

「容姿が記憶と一致しているだけで本人か?それとも、それ以外の根拠があるのか?」

 

 

ウィリアムの言葉にエルザは言い返せずに言葉を詰まらせる。

リィエルがイルシアだという情報は、あの女が一方的に教えたもの。自身が確かめた事ではない。容姿が記憶と一致しているだけで鵜呑みにしただけだ。

そんなエルザに、ウィリアムは彼女にとって、残酷な事実を口にする。

 

 

「リィエルはイルシアを元に生まれた人間……『Project:Revive Life』、通称、『Re=L(リィエル)計画』の世界初の成功例だ……だから、お前のしようとした事はただの狼藉なんだよ」

 

 

ウィリアムの口から淡々と語られたリィエルの秘密にエルザは……

 

 

「う、嘘です……そんなの、嘘に決まって……」

 

 

弱々しく首を振り、否定しようとしていた。

だが、薄々変だと感じていた事が、糾弾した際のリィエルのイルシアの語り口が、ウィリアムの言葉が虚言ではないことを如実に証明してしまっている。

それでも、エルザはその事実を認めたくなかった。

認めてしまえば、イルシアを打倒する為に鍛え続けた二年間は無駄だったという事実、何より、自身を未だ苛ませる『炎の記憶』に打ち克つ機会が、もうないという事を認める事になるからだ。

 

 

「エルザ……」

 

 

リィエルが心配げにエルザを見つめていると―――

 

 

「全く。とんだ期待外れだったわ、エルザ」

 

 

広場に侮蔑の声が聞こえてきた。

一同は声がした方へと顔を向けると、そこには眼鏡を踏み潰したマリアンヌと、彼女に付き従う月組以外の女子生徒達がいた。

 

 

「……成程、そういう事か……」

 

 

その光景を視界に収めたウィリアムの雰囲気が、徐々に怒気へと染まっていく。

 

 

「この茶番劇はアンタが仕組んだんだな?何が目的だ?」

 

「もう大方分かっているんでしょう?彼女を実験サンプルとして欲しがってるのよ……蒼天十字団(ヘヴンス・クロイツ)がね」

 

 

マリアンヌはそのまま、自身が元、蒼天十字団(ヘヴンス・クロイツ)の研究員だった事も明かし、リィエルを捕獲すれば自身が復帰できる事も明かす。

 

 

「でも、本当に計算外だったわ。おかげで計画を少々修正しなければいけなくなったのだから」

 

 

マリアンヌに付き従っている女子生徒達は一斉に、ウィリアム達に向かって細剣(レイピア)と魔術を構えていく。

 

 

「ウィリーさん。あなたとそこで無様に打ちひしがれているエルザを人質にすれば、彼女も大人しく同行してくれるでしょうから、大人しく捕まってちょうだい?」

 

 

マリアンヌは嫌味たらしくそう告げる。

マリアンヌにまんまと利用されていた事を知ったエルザは、マリアンヌの言葉通り、膝を付いて打ちひしがれている。

そんな状況で、ウィリアムは軽く嘆息し―――

 

 

「きゃあッ!?」

 

「あぐぅッ!?」

 

 

同時に数名の女子生徒から紫電が飛び散り、地面へと倒れていく。

その近くには数体の【招雷霊(ヴォルト)(フェイク)】が浮遊していた。

 

 

「……は?」

 

 

いきなりの光景にマリアンヌから呆けた声が洩れる。

 

 

「《起きよ盾霊(じゅんれい)》―――《解の開放(オープン)》」

 

 

それを尻目に、ウィリアムは《詐欺師の盾》を全部解凍し、直ぐ様浮遊状態にして特性の封印を解く。

我に返った女子生徒達は次々に攻撃を仕掛けるも、かわされたり、《盾》で防がれたりして、攻撃を当てられないでいる。

その間にも、ウィリアムは拳銃や《盾》に取り付けられている小銃(ライフル)から非殺傷弾を放ち、【招雷霊(ヴォルト)(フェイク)】の電撃や【騎士の腕(ナイツ・アーム)】の殴り飛ばしで、女子生徒達は次々と地面に沈んでいく。

《盾》に取り付けられている小銃(ライフル)は単発式で、銃弾を遠隔操作か自動で発射される。弾は【詐欺師の工房】で作り出すので、攻撃手段は併用が前提となっている。

 

 

「いぃいいいいいやぁああああああああ―――ッ!!!!」

 

 

リィエルも刃引きをかけた大剣を振るい、女子生徒達を同じく地面に沈めていっている。

 

 

「な……な……な……!?」

 

 

目の前の蹂躙劇にマリアンヌは信じられない思いで絶句している。

あの三流魔術講師と同じく、リィエルのお目付け役として来た学生。

所詮は学生、やる気なし―――計画に支障は無いと判断し、黙認した。

その結果が―――この事態である。

 

 

「よくもやってくれたわねッ!?ウィリアム=アイゼンんんんんんん―――ッ!?」

 

「下調べはちゃんとしとけ、クソババアッ!!」

 

 

絶叫するマリアンヌに、女子生徒の意識を刈り取りながらウィリアムはそう返す。

この場にいた女子生徒達は全員地面にへと沈み、残るのはマリアンヌ一人だけ。

ウィリアムは地面に沈んだ女子生徒達を【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・風兵】でこの場から吹き飛ばしていく。

 

 

「さあ、いい加減、この茶番劇にケリをつけようか?」

 

 

 




列車の出番が潰れた!作者のものでなし!!
·····やっぱり都合良すぎ?
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