やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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····確実に出てくるだろうな(この話とは無関係な呟き)
てな訳でどうぞ


六十七話(改)

ウィリアムとリィエルが戦っている中……

 

 

(赤い……怖い……怖いよ……)

 

 

エルザは、頭から被せられた紺の外套の襟を握って、ぶるぶると震えていた。

紺の外套のお陰で目眩と吐き気は収まっているが、手足は震え、身体に力は入らず、動かない。

理性ではわかっているのだ。自分も二人と一緒に戦うべきだと。

だが、エルザの中の『炎の記憶』がそれを阻み、あざ笑い続けている。

その上、マリアンヌが動けないエルザを狙い、その結果、二人の足を引っ張っている事もわかっている。

 

 

「ふ、二人、とも……」

 

 

エルザは震える声で、ウィリアムとリィエルに話しかける。

 

 

「わ、私の事は放っておいて……いい、から……」

 

 

エルザは自分を見捨てるよう、二人に言うも―――

 

 

「却下だ」

「やだ」

 

 

ウィリアムとリィエルはきっぱりと、エルザの提案を拒絶した。

 

 

「ど、どうして……?」

 

「だって、友達だから。それに、守るって言ったから」

 

「……ッ!?」

 

 

リィエルのさも当たり前と言わんばかりの返答に、エルザは呆然となるしかなかった。

 

 

「俺は『見捨てる』選択は御免なんだよ。だから、それで得た勝利なんざくそ食らえだ」

 

 

ウィリアムはエルザに視線を向けてそう言い切り、障壁を解除して、リィエルと二人で再び、マリアンヌに攻撃を仕掛けていく。

だが、再び押され気味となりどうしてもあと一歩が足りない状態となる。

そんな必死に戦い続けるウィリアムとリィエルをエルザは再び見つめる。

エルザの中にある『炎の記憶』の焼き直しといえる光景。

その『炎の記憶』の中で二人は戦っている。

一度は命を狙い、騙したのに、友達だから守ると言ってくれた本当の友達が。

二年前のあの時、助けてくれた恩人が。

エルザを守る為に必死に戦っている。

 

 

―――エルザ……守るために剣を振るいなさい。人を活かす剣を振るいなさい―――

 

 

そんな二人の後ろ姿に、父の生前の言葉が甦り―――

復讐に身を焦がし、私利私欲のために剣を振るい、父の顔に……誇り高き剣に泥を塗り、その上、何もせずに、怯えて、震えて、泣いて、父の名と技を―――

 

 

「これ以上……ッ!穢して……たまるかぁあああああああああ―――ッ!!!」

 

 

エルザは泣きながら、吼えて、立ち上がった。

立ち上がった事で、頭から被っていた紺の外套はずり落ちてしまい、身体の震えだけでなく、目眩と吐き気も襲いかかってくる。

 

 

「「エルザ!?」」

 

 

気付いたウィリアムとリィエルが叫ぶが、エルザは恐怖に耐え、立ち続ける。

二人はすぐにエルザの元まで下がり、ウィリアムが再び碧の魔力障壁を展開する。

 

 

「……二人……とも……」

 

 

エルザは襲いかかる恐怖に必死に耐えながら二人に告げる。

 

 

「私も……一緒に……戦い……ます……」

 

 

その言葉にウィリアムとリィエルは目を丸くするも―――

 

 

「……出来んのか?」

 

 

過呼吸にあえぎ、顔を真っ青に青ざめ、滝のように脂汗を流しながらも、決意の瞳を宿しているエルザを見たウィリアムは、そう聞いてくる。

 

 

「はい……!……だけど、その為には刀がないと……」

 

 

エルザの刀は今、炎の結界の外に転がっている。

その事実に気づいたエルザは、立ち向かう決意をしたのに……と、悔しい思いに支配されていると……

 

 

「……刀があれば、何とかなるのか?」

 

 

ウィリアムがそう言うと同時に、地面に手を当てる。

そこから円方陣と、爆ぜる紫電が飛び散っていき、紫電が収まると、ウィリアムの手には鞘に納まった一本の刀が錬成されていた。

ウィリアムは錬成した刀をエルザへと突きだし、エルザは震える手でそれを受け取る。

 

 

「使えるか?」

 

 

ウィリアムの問いにエルザは―――

 

 

「はい……使えます……使いこなしてみせます……ッ!!」

 

 

震える手で刀を鞘から抜き、打刀と同じ形状の刀剣の感触を確かめ、震える声ではっきりと告げる。

 

 

「二人は……先程のように……戦ってください……『機』を見て……私が必ず、あの女に隙を作らせます……!」

 

「……わかった。頼むぞ、エルザ」

 

 

ウィリアムはそう告げ、再びマリアンヌに向き直る。

 

 

「ありがとうウィル。エルザを信じてくれて」

 

「あんな決意を宿した瞳を見たら、無下に出来なかっただけだ」

 

 

リィエルのお礼に、ウィリアムはそう返し障壁を解除し、再びマリアンヌへと突撃する。

ウィリアムは【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・氷兵】と【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・風兵】、【エア・スクリーン】に【トライ・レジスト】を駆使し、灼熱地獄に立ち向かっていく。

リィエルも【トライ・レジスト】を全開にして、ウィリアムと一緒に立ち向かっていく。

《詐欺師の盾》はエルザを信じて浮遊状態を解除し、空いた深層意識領域(エリア)リソースをこの地獄に留まる為に使っている。

エルザはその光景の中、父親の教えを思い出しつつ、技の構えを作っていく。

 

 

(……ありがとう、リィエル……ウィリーさん……信じてくれて……)

 

 

エルザは心の中で礼を言い、その動きを止める。

準備は整い、心も落ち着いている。

そして―――その『機』はきた。

 

 

「はぁあああああああああああああああああああああ―――ッ!!」

 

 

裂帛の気合いと共に、エルザは『春風一刀流』の奥義―――剃刀のように薄く鋭い刀剣を様々な体術・術理を尽くしてひねり出した常識を逸した『力』と『速度』。それらをまったく減衰させずに刀に乗せ、魔力で増幅(エンハンス)することで、遠間を斬り裂く風の刃を繰り出す絶技―――『神風』を繰り出す。

 

ひゅぱッ!

 

その刹那、空気が鳴り、ウィリアムとリィエルを呑み込まんとした炎の津波を左右に割り、マリアンヌの半身を斬り裂いた。

マリアンヌは咄嗟にかわした為、直撃には至らなかったが―――道は拓かれた。

 

 

「らぁああああああああああ―――ッ!!」

「いぃいいいやぁあああああああ―――ッ!!」

 

 

ウィリアムとリィエルは直ぐ様、咆哮と共に、マリアンヌに向かって突撃していく。

 

 

「がぁああああああああああ―――ッ!?」

 

 

マリアンヌは迎撃しようと剣を振り上げるも、リィエルが一瞬早く大剣を振り上げ、マリアンヌの剣を上空へと弾き飛ばす。

ウィリアムはそのまま、拳銃と《盾》を手放して、マリアンヌの胸ぐらを左手で掴み―――

 

 

「ッ!?」

 

「――さあ、歯ァ喰いしばれッ!!」

 

 

限界まで引き絞った右腕の―――義手の拳を、マリアンヌの顔面へと容赦のなく、全力で殴りつける。

殴り飛ばされたマリアンヌは、激しく地面とバウンドしながら、その意識を手放していき―――沈黙した。

 

―――キィインッ!

 

弾き飛ばされた《炎の剣(フレイ・ウード)》が地面に突き刺さると同時に、ウィリアム達を閉じ込めていた炎の結界もその火勢を弱めていき、外の景色が露となる。

建物のあちこちが焼け焦げおり、全焼した建物もあるが、多くの建物はその存在を保っていた。

 

 

「……止まった……?」

 

 

エルザは信じられない思いで、未だ燃え(くすぶ)っている炎の中にいるにも関わらず、一切震えていない自分の手を見つめる。

 

 

「……ん。炎、ようやく止まった」

 

「いえ……そうではなく……」

 

 

戸惑うエルザに、ウィリアムもゆっくりと歩いて近づいていく。

 

 

「助かったぜエルザ。お陰で何とかなった」

 

 

ウィリアムはエルザに礼を言うが……

 

 

「……え?……ウィリー、さん……ですよね……?」

 

 

エルザは何故か、ウィリアムを見て戸惑っていた。

 

 

「ん?そうだ―――」

 

 

自身の低い声で、ウィリアムは今の自分の状態にようやく気がついた。

 

 

「―――あっ」

 

 

ウィリアムはあの戦闘中、セリカが施した変身魔術が解けており、元の男の姿に戻ってしまっていたのだが、窮地だった為、自身も含めて気付いていなかったのだ。

 

 

「無事か、お前らッ!?…………」

 

「三人とも無事!?…………あ」

 

「…………えーと」

 

「エルザッ!リィエルッ!お姉さ、ま……?」

 

「無事なの……か……?」

 

「「「「……………………え?」」」」

 

 

更に運の悪い事に月組の生徒とグレン達が駆け寄って来ており、月組の生徒達はウィリアムの姿に目を丸くしてしまっている。

どうやって誤魔化そうかと、ウィリアムは疲れきった状態で言い訳を考える羽目となった―――

 

 

 




さあ、主人公の明日はどうなる?
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