やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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さあ皆の者、壁の用意はいいか?
てな訳でどうぞ


六十八話(改)

結論から言うと、ウィリアムが普通に男だということが、バレてしまった。

理由はリィエルが『ウィルは悪くない。わたしが無理を言って一緒に着いてきてもらった』と、ウィリアムが誤魔化す前に両手を広げて庇ったからである。

その時点でウィリアムはブタ箱行きを覚悟したのだが、システィーナやルミア、グレンも嫌がるウィリアムを強引に女に変えて同行させたという有無の事情説明。実害ゼロ、何より月組の女子学生達が、グレン程ではないがウィリアムにも心酔していたお陰で不問となり、周りへの口裏合わせにも協力してくれる事となった。

その代わり、『お姉様』から月組の面子のみの限定で『お兄様』呼びになってしまったが……

そんな感じで正体がバレたウィリアムに、月組の女子学生達から『ひょっとして、レーン先生も……』と出てきたので、グレンもこれ幸いにと本当の事を言おうとしたが―――

 

 

『先生はれっきとした女性ですよ?』

 

『うん。レーン先生は女性だよ』

 

 

と、何故かシスティーナとルミアがグレンを女性と言い切った為、グレンだけは『レーン』のままとなっている。

そして現在―――

 

 

「―――これで、全部だと思う」

 

「…………」

 

 

エルザはリィエルから、イルシアの話を聞いていた。

全てを聞き終えたエルザは複雑な表情となっている。

 

 

「……無理にイルシアの事を、許さなくていいぞ?」

 

 

同席していたウィリアムがエルザの内心を察し、そんな言葉をかける。

 

 

「……え?」

 

「イルシアだって自分のしている事の自覚はあったんだ。だから『自分の命に意味はなかった』って言ったんだ。俺だって二人を殺したアイツの事を許してねぇし、自分に出来てない事を人にやれ、なんて言えないさ」

 

「……その人は今……」

 

「バカやってたから、ぶん殴ってブタ箱に放り込んだ」

 

 

あっさりと言うウィリアムに、エルザはもはや苦笑いだ。

確かに両親を殺したイルシアの事は許せない。だけど、彼女は人でなしの悪鬼じゃなかった。

あの時、イルシアが泣いていた理由も今なら分かる。

彼女のことが知れて良かったと、エルザは心から思った。

そして……

 

 

「あの時、助けてくれて……ありがとうございました」

 

 

エルザはあの時―――二年前に助けてくれたお礼をウィリアムへと伝えた。その言葉を―――

 

 

「……ッ(ポリポリッ)」

 

 

ウィリアムは少し照れくさそうに頬を掻きながら、素直にお礼を受け取っていた。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

―――諸々の後始末等も終わり、遂にアルザーノ帝国魔術学院へと帰還する日となった。

月組の生徒達は全員総出で見送りに来ている。

互いに別れの挨拶をし、グレンを中心に例の争奪戦の空気が流れる中―――

 

 

「本当に色々あったなぁ……」

 

「ん……色々あってよくわかんないけど……退学にならなくて良かった」

 

「そうだな……」

 

 

最後は面倒なので、目の前で起きている争奪戦を我関せずと見守っているウィリアムと、隣で一緒に見守っているリィエルはそう呟く。

ウィリアムが左手でリィエルの頭を撫でていると、不意に左腕が誰かに引き寄せられ、抱きしめられる。

 

 

「えっと……エルザさん?なんで俺の腕に抱きついてるのでしょうか?」

 

「別に、何でもないですよ?ウィルさん」

 

 

思わず敬語で問うウィリアムに、エルザはにこやかな笑みでそう返してくる。しかもウィルという呼び名で。

 

 

「…………」

 

 

リィエルはそれを見つめて何を思ったのか、ウィリアムの右腕へと抱きついた。

 

 

「リィエル……?」

 

「なんかよくわかんないけど、こうしないといけない気がした」

 

 

そんな両手に花となった状況を、グレン達が無言のニヤニヤ顔で見守っている。

 

 

「それと……これは今回のお礼です」

 

 

エルザはそう言って、ウィリアムの頬に―――口づけをした。

予想外のお礼にウィリアムは目を見開いて頬を真っ赤にし、周りはキャーキャーとはしゃぎ、エルザ本人もやってしまった……という感じで顔を赤くしている。

そんな状況にリィエルは―――

 

 

「……頬と唇、どっちがよかったの?」

 

 

いつもの眠たげな表情で、とんでもない爆弾をこの場に投下した。

 

 

「…………ウィルさん、どういう事です?」

 

「いや……その……」

 

「わたしが、ウィルと口移しをした」

 

 

リィエル、いつもの表情で再び爆弾投下。いつもの眠たげな表情が逆に勝者の顔に見えてしまう。

 

 

「……ふふ。やっぱり、リィエルは凄いなぁ」

 

 

エルザはそう言ってにこやかな笑みを浮かべたままだが、超低温の空気が発せられて流れてきており、凄く怖い。

周りの生徒達も、「修羅場ですわ!!」、「恋の三角関係だわ!」、「大胆!!」、等と叫んで騒いでおり、リィエルの投下した爆弾発言によってカオスとなっている。

グレンは矛先がウィリアムへと変わった事で余裕ができ、腹立たしい程のにへら顔で修羅場となった空間を眺めている。

そんなこんなで、時間があっという間に過ぎ、別れの時となる。

互いに別れの挨拶を告げ、グレン達は列車へと乗り込んでいき……

 

 

「二人ともッ!」

 

 

最後に列車に乗り込もうとしたウィリアムとリィエルを、エルザが呼び止める。

 

 

「また、会えるよね!?」

 

 

エルザのその問いに―――

 

 

「……ああ」

 

「ん。また……いつか、会おう。……エルザ」

 

 

二人は笑顔と共にそう返し―――

 

 

「……うん!」

 

 

エルザは涙を浮かべながら、向日葵(ひまわり)のように笑ってその言葉を受け止めた。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

帰りの列車内にて。

グレン達は行きとは少し違って、個室席を二つ占拠し、二組に別れていた。

 

 

「ん……」

 

 

リィエルはウィリアムと二人きりであり、今はウィリアムの膝を枕として、幸せそうに眠りこけている。

ウィリアムはそんなリィエルを、手元の翡翠の石板(エメラルド・タブレット)を器用に指の上で回しながら、笑みを浮かべて見つめていた。

 

 

 




原作八巻はこれにて終了
都合良すぎかなぁ······?
おいしい展開(愉悦の意味で)ならいいですよね!?
感想お待ちしてます
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