やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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あーいかわらずのー、だーぶんだなぁー♪
てな訳でどうぞ


七十話(改)

暗闇に包まれた下水道の通路。

その通路を指先に灯した魔術の光を頼りに、紺の外套を羽織った一人の少年が歩いていた。

 

 

「くそ……人ん家を爆破して駄目にしやがって……」

 

 

そう毒づく紺髪の少年は―――ウィリアムだ。

ウィリアムはあの爆発の瞬間、【詐欺師の工房】で足元の床に穴を開けて落ち、難を逃れていた。本来ならすぐに難を逃れる事が出来たのだが、部屋にあった()()()()()を守ることにも割いてしまった為、脱出が僅かに遅れて怪我を負ってしまった。

その後、地下の作業部屋まで落ち、爆発の衝撃で負った怪我を魔術で一通り治した後、作業部屋に置いていた魔術弾や以前作成して、使わずに残っていた巻物(スクロール)護符(アミュレット)疑似霊素粒子粉末(パラ・エテリオンパウダー)が入った試験管のような金属の筒、マナ・クリスタリウムに魔薬(ドラッグ)、魔導器は圧縮凍結を施し、持ち出せる物は可能な限り携帯し、一通りの準備を終えてから地下部屋から下水道へと降り、今は下水道からフィーベル邸へと向かっている。

鼠の使い魔を使って外の情報も集めてはいるが、気付かれないように収集させている為、まだ少し時間がかかる。

 

 

「システィーナ達は無事なのか……?」

 

 

ウィリアムは不安に駆られながらも、マンホールの蓋を開け、周囲を油断なく確認してから地上へと出る。

あの襲撃から時間も経っており、既に明け方となっている。

ウィリアムは隠れながらフィーベル邸へと向かい……

 

 

「な……!?」

 

 

フィーベル邸に施されている筈の防御結界が無くなっている事に、ウィリアムは焦燥を露に急いでフィーベル邸へと駆け込んだ。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

「リィエル……」

 

 

フィーベル邸へと駆け込んだウィリアムが見つけたのは、重傷を負い、ベッドの上で眠っているリィエルだけだった。

システィーナとルミアは何処にもおらず、さらに使い魔からの情報で、アルフォネア邸も更地となっており、セリカとグレンも消息不明だ。

 

 

「くそ……」

 

 

ウィリアムが焦燥を露に苛立っていると……

 

 

「……ん……」

 

 

意識を取り戻したのか、リィエルがうっすらと目を開けた。

 

 

「……ウィル?何でウィルがここに……?」

 

「……後で説明すっから、何が起きたのか話してくんねぇか?」

 

 

ウィリアムは安堵の息を洩らしつつも、状況を知る為にリィエルに説明を促す。

リィエルは不器用ながらも、何が起きたのか説明した。

あの時の結婚騒動の首謀者であるジャティスが防御結界を破ってフィーベル邸へと侵入し、リィエルが迎撃に赴いたのだが、ものの見事に返り討ちに合い、意識を失ったそうだ。

リィエルは斬られてない筈なのに斬られた事に疑問を浮かべていたが……

 

 

「【見えざる神の剣(スコトーマ・セイバー)】だな……」

 

 

話を聞いたウィリアムは、リィエルがやられた手品にある程度の目星をつけていた。

グレンの話では、ジャティスは予知に近い行動予測が可能だそうだ。

ジャティスはリィエルの行動を予測し、予め【見えざる神の剣(スコトーマ・セイバー)】を配置し、リィエルは自らその群れに突っ込んだとみていいだろう。

肉眼では捉えられない不可視の刃に予知に近い行動予測。まさに凶悪な組み合わせだ。

 

 

(今はその事は後回しだ。重要なのは……)

 

 

状況からして、天の智慧研究会とジャティスは同時に動いている。

ジャティスが動いている以上、あの《美の商人(ブローカー)》―――ブレイクもジャティスと一緒に動いている筈だ。

ウィリアムはリィエルに自分の状況も説明し―――

 

 

「……とにかくリィエルは休んでろ。システィーナ達は俺が探すし、この騒動の連中もこの手でぶちのめす」

 

 

最後にそう言い、どす黒い感情を宿したまま、探しに行こうと椅子から立ち上がろうするが、リィエルが何故かウィリアムの手を掴んで引き留めた。

 

 

「……リィエル?」

 

「わたしも……一緒に行く……」

 

「馬鹿いうな。お前はまだ傷が癒えてないだろ」

 

 

ウィリアムはそう言い、突っぱねるもリィエルはウィリアムの手を放さず掴み続ける。

 

 

「リィエル、早く手を放せ。時間が惜しいんだよ」

 

「やだ……」

 

「我儘をいうな。幾ら―――」

 

「だって、今のウィルを見てると、凄く不安だから……」

 

「……は?不安?」

 

 

リィエルから出された言葉にウィリアムは訝しむも、次の言葉で驚愕に変わる。

 

 

「ん……ウィルからあの時の、凄く嫌な予感を感じるから……」

 

「―――ッ!!」

 

 

あの時―――結婚騒動の時に感じた予感がウィリアムから発せられていると言われてしまい、ウィリアムは言葉を失ってしまう。

 

 

「……ウィルがいなくなりそうで……怖いから……」

 

 

そんなリィエルの不安の言葉と瞳に……

 

 

「……(わり)ぃ。不安にさせちまったな」

 

 

ウィリアムは素直に謝り、椅子へと座り直した。

この急激な事態と皆の安否、リィエルが重傷を負っていた事実に、かなり追いつめられていたようだ。

頭が冷えたウィリアムは、強引に皆を探しに行けば、無理して同行するであろうリィエルの事を考え、この場に留まる事を決める。

どす黒い感情も霧散し、穏やかな笑みをリィエルへと向ける。

 

 

「とりあえず、お前の怪我がある程度癒えてから一緒に皆を探しに行こうか。今のお前に無理させて怪我を悪化させたら、元も子もねぇしな」

 

「ん……わかった……」

 

 

ウィリアムのその提案に、リィエルは素直に頷く。

ウィリアムは暫し、使い魔の情報収集に専念する事にした。

暫く情報を集めていると―――

 

 

「何……ッ!?」

 

 

グレンがフェジテ市庁舎を爆破し、さらに身代金を払わなければルミアの素性を明かすという投書が警邏庁と各マスコミに届いていたらしい。

その為、グレンが指名手配され、警邏庁に追われる立場となっているそうだ。

ウィリアムがその情報に驚愕した、その直後―――

 

キン、キン、キン―――

 

通信魔術の着信音が部屋内に響き渡った。

 

 

 




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