てな訳でどうぞ
「どこから……!?」
謎の着信音に戸惑いながらもウィリアムは耳を澄ませ、音の出所らしき机の引き出しを開けると、引き出しの中に点滅して着信音を立てている、半割れの宝石があった。
ウィリアムは警戒しながらその宝石―――通信魔導器を操作すると―――
『フハハハハッ!!ご機嫌はいかがですかな?』
通信魔導器からテンションの高い妙に気取った声が聞こえてくる。
この声は間違いない―――あの男の声だ。
「ブレイク……ッ!」
『いやはや、久しぶりですなぁウィリアム殿?』
「……こっちは声すら聴きたくなかったがな」
『おや?これは手厳しい挨拶ですな』
ウィリアムの呪詛のような声色にも、ブレイクは平然と受け流している。
『では、貴方が知りたい話を始めましょうか。ルミア嬢はジャティス殿と共におり、グレン殿とシスティーナ嬢は無事で一緒、セリカ殿は消息不明ですぞ』
ブレイクの情報提供により、グレンとシスティーナの無事が分かるも、厳しい声のままウィリアムはブレイクに問い質す。
「市庁舎の爆破もテメェらの仕業だな?」
『正確には彼の手、ですがな』
「お前らの今回の目的はなんだ!?ルミアを連れ去って何をするつもりだ!?」
おそらくコイツらと連中は手を組んではいない。
今考えられるのは、連中の目的に乗じて何かをやろうとしている事くらいだが―――
『目的ですか?彼の言葉を借りるなら、このフェジテを救う為ですぞ』
「……は?フェジテを救う?」
ブレイクの発した予想外の言葉に、ウィリアムは呆けた声で聞き返す。
『ええ!!詳しく知りたければ早く行動すべきですぞ!!』
「テメェが教えやが―――」
『では我輩はこれにて失礼しますぞ!!』
ブレイクはウィリアムの問いかけに応じず、一方的に通信を切った。
「マジでなにが目的だ……」
謎が多いが、こうなった以上じっとしているわけにはいかなくなった為、ウィリアムはベッドの上で寝ているリィエルへと向き直る。
「わりぃ、リィエル。先に一人で先公達と合流する為に動くわ」
「だったら、わたしも……」
「さっきも言ったが、お前は怪我がある程度治るまではじっとしといてくれ。ルミア達を心配させたくないだろ?」
「だけど……」
「大丈夫だ」
不安がるリィエルを、ウィリアムは安心させるように、微笑みながらその頭を撫でる。
そんなウィリアムを見たリィエルは……
「……ん、わかった。……動けるようになったら直ぐに追いかける……」
安心したようにそう言い、目を瞑って再び深い眠りについた。
ウィリアムは微笑ましげにリィエルを見つめ続けた後、フィーベル邸を後にした。
―――――――――――――――――
フィーベル邸を後にしたウィリアムは、グレン達と合流しようと動いたのだが……
「あんの野郎……!」
中央区が騒がしくなっていた為遠見の魔術で確認したところ、グレンが警備官と追いかけっこしている姿を発見した為、苦い顔となる。
グレンのあの行動はジャティスの指示と見ていいだろう。本当に何がしたいのかとツッコミを入れたい気分だ。
しかも警備官達は
警邏庁はこの一連の事件をグレンの仕業と考えている以上、その動機を尋問する為、まずは逮捕、制圧に動く筈なのにだ。
少なくとも、いきなり殺害前提の行動には移さない筈だ。だから、今の状況に疑問がわき上がる。
考えながらも、ウィリアムは警備官の目を盗んで進んでいく。だが、警備官達がグレンを次第に包囲していっている為、グレンに近づく事が出来ない。
まるで警備官全員が、グレンの居場所を把握しているかのように正確に動いている。
(……そういう事かよ)
警備官の不自然な動きのタネ―――暗示魔術による無意識の共有―――に気づいたウィリアムはうんざりする。
そんな気分の中、遠見の魔術で捉えていたグレンが、街路灯の根元の石畳を魔術で吹き飛ばし始める。
その行動に驚くも直ぐにグレンの意図に気付き、合流する為の行動を再開していった。
――――――――――――――
―――フェジテ西地区の人気のない住宅地にて。
「―――第二の『マナ
ジャティスはユアン=べリス警邏正―――天の智慧研究会、
ユアンは左目を
「本当にそこにあるのかい?」
「ああ、本当だ!!だから―――」
「―――だそうだけど、どうかな?」
ジャティスはユアンを無視し、右肩に乗っている土気色の小鳥―――鳥型のゴーレムに語りかける。
『嘘ですな。第二の『マナ
鳥型のゴーレム―――ブレイクからもたらされた情報にユアンは一気に表情を青ざめる。
なぜならそこに、ユアンが担当している『マナ
ジャティスは冷めきった瞳のまま、ユアンの脳幹を
「どうして、殺したんですか……?」
ジャティスの後方で佇んでいたルミアが、臆せずに問い詰めるも―――
「あんな邪悪は死んで当然……そんな奴を絶対正義たる僕が、生かしておくわけないだろう?」
ジャティスはさも当たり前と云わんばかりに答える。
非難しても全く会話にならないどころか……
『自分に嘘をついている醜い貴女の言葉には、何の力もありませんぞ?』
「……ッ!?」
逆にブレイクの言葉に容赦なく心を抉られる結果となった。
ルミアは諦念に目を閉じるしかなかった……
――――――――――――――
――――フェジテの某所にて。
「イヴ=イグナイトが、介入したようだ」
聖騎士装束を纏った壮年―――ラザール=アスティールがそう呟く。
事前に手を打ちながらも自分たちの思惑を超えたイヴを賞賛しつつも、自分たちの計画には然程、問題は無いとラザールは口にする。
「それよりも、
ラザールはダークコート、チンピラ、フードの男を見やる。
「無論だ」
「その為に、我らを
ダークコートとフードの男は頷いて踵を返し、ダークコートの男はチンピラの男に背後で糸を引く者を叩くよう指示するが、チンピラは苛立ったように食らいついてくる。
「……あ?てめぇが俺に指図すんじゃねぇぞ……あいつら程度、俺一人で……」
「その程度の相手に、完封なきまでに負けたのは誰だ?」
「ああ。その慢心ゆえに、私達は殺られたのだ」
「はぁ!?てめぇが言うなッ!!」
チンピラの男はキレてダークコートの男の胸ぐらを掴み上げるも、ダークコートの男から放たれた絶対的な氷の威圧感にたちまち萎縮してしまう。
そのダークコートの男の威圧感を前にしても平然としていたフードの男が二人の間に割って入る。
「これ以上、下らぬ事に時間を割くわけにはいかぬ。早々に行くべきだと我は思うが?」
「……そうだな。今度こそぬかるなよ」
「……ちっ!」
そうして―――最凶の三人がついに動きだした。
原作の伏線張りは本当に見事ですよね
感想お待ちしてます