やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


七十三話(改)

「ぉおおおおお―――ッ!」

 

 

グレンは雄叫びを上げながら【フィジカル・ブースト】全開で地面を駆け、ウィリアムは青白い大鷲―――移動用の人工精霊(タルパ)の鳥の背中に乗って空を駆ける。

騎士の誇り(ナイツ・プライド)】シリーズは攻撃と防御能力は高いが、例外はあれどその分機動力が低く、こういった移動には向いていないのだ。

グレンは肉体の限界を超えた速度で、レイクの左方へと回り込み、魔術火薬―――灰色火薬(アッシュパウダー)の高速ファニングによる全弾掃射(フルブレット)をレイクに叩き込むも―――

 

 

「――遅い」

 

 

レイクはその銃弾を、一瞬の動作で右手でつかみとる。

レイクの肌は『竜化の呪い(ドラゴナイズド)』により、竜の麟のように堅くなっている為、その右手の掌には傷一つついていない。

ウィリアムはそんなレイクに向かって、日緋色金(オリハルコン)製の弾丸による小銃(ライフル)の雷加速弾を放つ。

不安定な足場により、ウィリアムはその背中から落ちてしまうも、弾丸はレイクに向かっている。

絶対的硬度を誇る日緋色金(オリハルコン)による雷加速弾をまともに食らえば、幾らレイクといえど無事では済まないが―――

 

 

「――甘い」

 

 

フォウルの身体から顕れた黒い異形の半幽体の腕がレイクに迫っていた弾丸を弾き飛ばす。

フォウルの身体から顕れたのは―――悪魔の腕だ。

概念存在には現世の理に依る、物理的な攻撃や魔術はほぼ通じない。

 

 

「チィ―――ッ!!」

 

 

ウィリアムは舌打ちし、【騎士の剣(ナイツ・ソード)】を数体、具現召喚する。

空想存在である人工精霊(タルパ)なら、フォウルに攻撃が通る筈。

だが―――

 

 

「《―――■■■》!」

 

 

レイクが獣の底吠えにしか聞こえない呪文――――竜言語魔術(ドラグイッシュ)を唱え、辺りを猛烈な嵐を吹かせる。

荒れ狂う雷嵐が【騎士の剣(ナイツ・ソード)】をガラスのように砕き、その稲妻が容赦なく襲いかかる―――

 

 

「―――うげぇッ!?」

 

「マジで洒落になってねえぞ、これぇえええええ―――ッ!?」

 

 

グレンは【フォース・シールド】と守りの護符(アミュレット)を、ウィリアムは【騎士の楯(ナイツ・シールド)】と【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・楯兵】を使うも、魔術的な防御は紙のように破られていく。

 

 

「《――来たれ》」

 

 

フォウルが呪文を唱えると、フォウルの周囲からゴブリンや一つ目の蝙蝠の群れ―――下級悪魔が顕れ、ゴブリンと蝙蝠の大群は雷嵐の中、一斉に彼らへと向かっていく。

 

 

「今度は悪魔の団体様かよッ!?」

 

「あの野郎が憑依させたのは、上級悪魔の概念かよ!?ドチクショウッ!!」

 

 

【帳の道標】は憑依させた概念存在の力を自由に使えるだけではない。その存在に連なる下位の概念存在を、代償無しで召喚出来るようになるのだ。

そんな下級悪魔の大群に、ウィリアムは一対の幾何学的な羽を有する、鶏冠がついたフルフェイスの兜―――人工精霊(タルパ)騎士の憤怒(ナイツ・フューリー)】を幾つか具現召喚し、次々と向かわせる。

空想存在の爆破攻撃で悪魔の大群は次々と吹き飛ばされていくも―――

 

 

「《―――■■■■》」

 

 

レイクが再び竜言語魔術(ドラグイッシュ)を唱え、嵐がピタリと止むとほぼ同時に周囲の倉庫が焔を上げて燃え盛り、みるみる焼け崩れていく。

 

 

「お次は山火事って……冗談にも程があるぞッ!?」

 

「もう泣きたい!!」

 

 

マグマのように濃厚な炎が竜の尻尾のようにうねって、襲いかかり―――

 

 

「《楯壁展開(ロード)》!!」

 

 

ウィリアムが堪らず、既に解凍、封印解除し、左手に持っていた《詐欺師の盾》による魔力障壁を展開し、その炎嵐を防ぐ。

その間にグレンが防御の巻物(スクロール)を何枚も広げ、ウィリアムは移動用の人工精霊(タルパ)の鳥を具現召喚し―――

 

 

「―――《楯壁解除(レリース)》!」

 

 

準備が終わると、ウィリアムは《盾》の障壁を解除する。

炎嵐は、グレンが張った防御を悉く破壊していくも、二人は大鷲の背中に乗ってその場から離れている。

 

 

「~~~」

 

 

フォウルが口笛を吹くと、地面が血のように真っ赤な液体のようなものが広がっていき、そこから血の杭ともいえる真っ赤な杭が伸び、あるいは打ち上げられた後、上空から降り注ぎ、容赦なく襲いかかる。

 

 

「何でもありかぁああああああ―――ッ!?」

 

「マジでふざけんなよ!?チクショォオオオオオオ―――ッ!?」

 

 

襲いかかる血の杭を【騎士の楯(ナイツ・シールド)】や護符(アミュレット)で必死に捌いていると、竜麟の剣を手にしたレイクが、跳躍して近づき剣を振り上げていた。

咄嗟にバレルノールさせてかわすも、そのまま地面へと叩きつけられたレイクの剣は地面を裂き、文字通り倉庫街が真っ二つに割れる。

 

 

「あんなん食らったら粉微塵じゃねぇか!!」

 

「あいつら倒せたの、マジで運がよかっただけなんだな、チクショウッ!!」

 

 

片や、竜の力を宿した者。片や、概念存在をその身に宿した者。

どちらも災厄そのものと呼ぶに相応しい。

 

 

「《―――■■■■■》!!」

 

 

そんな二人を他所に、レイクが再び竜言語魔術(ドラグイッシュ)を唱える。

今度は辺り一面の空気が氷点下を優に振り切り、氷結地獄が形成される。

さらに巨大な氷塊が次々と上空に作り出され―――

 

 

「逝ねッ!!」

 

 

レイクが腕を振るうと同時に氷塊が次々と襲いかかってくる。

その上、フォウルが新たに召喚したゴブリン達が目や口から血らしきものを溢しながら、狂ったように迫ってくる。

 

 

「ホント、やになるッ!!」

 

 

ウィリアムは文句を言いながらも【騎士の祈り(ナイツ・プレアー)】を二体具現召喚し、さらに奏でられる歌声で動きが鈍くなったゴブリン達に【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・剣兵】を四体突撃させ、クレイモア・ソードを両手に持った甲冑騎士は独楽(こま)のように回転しながらゴブリン達を斬り裂いていく。

そのままフォウルへと向かって行くも、氷塊や本人から伸びる悪魔の手によって砕かれ、霧散していく。

グレンも【ブレイズ・バースト】と鋼糸を駆使して氷塊をバラバラに切り裂いて防ぐ。

二人はそのまま、倉庫の陰に隠れてこの状況を打破する為の作戦会議をする。

 

 

「あいつらは旧き竜と大悪魔と考えるべきだな……」

 

「それに連なる弱点は……」

 

 

そのまま二人は情報を照らし合わせていく。

作戦会議を終え、二人は倉庫の陰から一気に身を乗り出す。

ウィリアムが正面から《盾》に取りつけられた小銃(ライフル)から、火薬を高圧縮した高威力の日緋色金(オリハルコン)の銃弾を撃ちまくるも、フォウルの身体の右半分から伸びる悪魔の腕が弾き飛ばしていく。

その悪魔の腕に、ウィリアムは右手に錬成したクロスボウを使って、十字の黒剣を射ち出す。

その黒剣を、割って入ったレイクが竜麟の剣で叩き落とした。

そんなレイクに、グレンが反射跳弾による銃撃でレイクの背後を狙う。

そのレイクの背後から迫った跳弾はフォウルの悪魔の腕が弾き飛ばして防ぐ。

 

 

「へっ……防いだな……?」

 

「やっぱ、ドラゴンの弱点である逆鱗を狙われたり、ナルキスの主君たるメイヴェスを連想させる黒剣は流石にまずいってか……?」

 

 

そんなグレンとウィリアムの言葉に、レイクとフォウルはほんの一瞬、顔を鋭くする。

その反応を見てグレンとウィリアムはほくそ笑み、勝ちを拾える可能性を確信した。

グレンは予備シリンダーを握りながらある呪文を唱え、ウィリアムは悪魔の腕で払うしかないように銃撃を放ち、フォウルの右側の腰から伸びている悪魔の腕に黒剣を射ち込もうとする。

 

 

「嫌になる戦力差だが……」

 

「だが……諦めて……たまるかよぉおおおおおおおおおおおおおお―――ッ!!!」

 

 

《愚者》と《詐欺師》は勝利を掴み取るため、目の前の脅威に立ち向かう―――

 

 

 




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