やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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····微妙なのかな、やっぱり····
てな訳でどうぞ


七十六話(改)

―――フェジテの裏通りを、ジャティスが具現召喚した人工精霊(タルパ)の馬が、グレン達を乗せた荷馬車を引いて疾走している。

 

 

「……始まったようだね……」

 

 

御者台で人工精霊(タルパ)の馬の手綱を引くジャティスが北の上空を見上げて呟く。

北の上空―――『核熱点火式(イグニッション・プラグ)』が敷設されているアルザーノ帝国魔術学院の上空は、【メギドの火】の『二次起動(セミ・ブート)』により、大地から立ち上る幾条もの紅の閃光によって、紅蓮に染まっている。

そんな急ぐ彼らに『掃除屋(スイーパー)』達が襲いかかってくるが―――

 

 

「《白銀の氷狼よ・吹雪纏いて・疾駆()け抜けよ》―――ッ!」

 

 

グレンの呪文と銃撃が―――

 

 

「さぁ、踊れ!僕の彼女の御使い(ハーズ・エンジェル)達よ……ッ!」

 

 

ジャティスの人工精霊(タルパ)の天使達が―――

 

 

「《駆動》―――ッ!!」

 

 

ウィリアムの《魔導砲ファランクス・ミクロ》の弾幕と人工精霊(タルパ)の騎士達が―――

 

 

「醜い者はお断り、ですぞ―――ッ!」

 

 

ブレイクの鳥型のゴーレム達が―――

 

襲いかかってくる掃除屋(スイーパー)達を次々と返り討ちにしていく。

ウィリアムが拳銃で放った魔術弾を掃除屋(スイーパー)はその手に持った剣で受け止めるも―――

 

バチィッ!!

 

電撃が迸り、電撃をくらった掃除屋(スイーパー)は身体を硬直してしまう。

そこをすかさず、グレンがその掃除屋(スイーパー)の頭を撃ち抜いて、その命を一瞬で刈り取る。

掃除屋(スイーパー)達を迎撃しながら、彼らはアルザーノ帝国魔術学院を目指し、次第に見慣れた風景が入り混じり始める。

ようやく学院まで眼と鼻の先の距離となったところで―――

 

 

「……やれやれ……ここで来るのは“読んでいた”けどさ」

 

 

ジャティスがそう呟いた瞬間に、彼らの乗っていた馬車が、突如、天を衝かんばかりの炎柱に呑み込まれた。

 

 

「うおわ―――ッ!?」

 

「なんだ、いきなり!?」

 

 

グレンが咄嗟にルミアを抱き抱え、ウィリアム共々荷台から跳び降り、事なきを得る。

 

 

「無粋ですなぁ」

 

「まったくだよ……もう少し、このシチュエーションを楽しみたかったのになぁ」

 

 

ブレイクは鳥型ゴーレムの脚に、ジャティスは【彼女の御使い(ハーズ・エンジェル)】の肩を片手で捕まって荷台から離脱しており、ゆっくりと地面に降り立つ。

 

 

「……捉えたわよ、ついに……ふふふ……ッ!」

 

 

そんな彼らに、昏い歓喜で身を震わせる女性―――《魔術師》のイヴが歩み寄って来ていた。

猛烈に面倒な事になると思ったが、イヴは既にこちらの事情を把握しており、グレンがシスティーナに渡した通信魔導器で逆探知し、ここで待ち伏せていたようだ。

 

 

「そうかっ!だったら―――」

 

 

グレンとイヴは同時に告げた―――

 

 

「俺に協力しろ!」

「私に協力しなさい」

 

 

―――まったく、噛み合っていない言葉を。

 

 

「……は?」

 

「お前に協力って……何言ってんだ?今、俺達は【メギドの火】を防ぐために―――」

 

「【メギドの火】の案件は二の次……今、最優先すべきは、そこの二人の確保、もしくは、抹殺なのよ」

 

 

イヴの信じられない言葉にグレンとウィリアムは呆気に取られ……

 

 

「……それ、この状況知ってて、ガチで言ってんのか?コイツらさえ殺れれば、周りはどうなってもいいってか?」

 

「まさかとは思うが……クソくだらねえ手柄に固執してんのか?……あの時、セラを見捨てたお前は大嫌いだが……超えちゃいけねえ一線だけは、決して超えないやつだと……そう思ってたんだが」

 

 

心底、失望したようなその言葉に、イヴは焦るかのように弁明を始める。

 

 

「も、もちろん、【メギドの火】も、放置するつもりはないわ!だけど、そこのジャティスとブレイクを押さえる方が、先決なのよ!」

 

「ンなわけねーだろ!?」

 

「先公の言う通りだ!今優先すべきは、こっちじゃねーだろ!?」

 

「千載一遇の好機なのよッ!この一帯はすでに私の【第七園】の領域ッ!!だからそこの二人を料理した後で【メギドの火】に対処すれば―――」

 

「そんな訳あるかッ!!!」

 

 

イヴの勝利を確信した物言いを遮り、ウィリアムが反論する。

 

 

「ジャティスの野郎は“読んでいた”と言っていた!!つまり、あんたの待ち伏せは予想できていたという事だ!それでもコイツらに勝てると思うのかッ!?」

 

「ウィリアムの言う通りだ!だから今、こいつらに構っている暇は、一分一秒たりとも無いッ!!」

 

「うるさいわねッッッ!?誰よりも優秀で強い私ならできるのよッ!……そのくらいできなきゃ……誰も私を認めてくれないんだから……ッ!!」

 

 

明らかに様子のおかしいイヴに戸惑う二人に、イヴは切羽詰まった声で告げる。

 

 

「だから私に協力しなさいッ!!今、この場で、ジャティスとブレイクを倒すのよッッッ!!!!そうしないと、私は……ッ!私はぁあああ―――ッッッ!!」

 

「……諦めろ、イヴ……」

 

「今は【メギドの火】を止めようぜ……?その後なら、協力してやるからよ……」

 

「どうしてわからないのッ!?」

 

 

イヴはヒステリーに叫びながらも、そのまま、グレンにジャティスに対する憎悪を指摘する。

対して、グレンは―――

 

 

「……ああ、憎いさ。だけど、関係ねえんだよ、今は。……俺は、敵討ちより生徒達(あいつら)の方が大事だ」

 

 

揺るぎない、静かな意思をはっきりと、真っ直ぐにイヴを見つめて、そう告げた。

そんなグレンにイヴは怯むも、すぐにどこか据わった目となり、再度協力しろと命令してくる。

当然、グレンはきっぱりと拒絶した。

イヴは最早、懇願に近い声で喚くも―――

 

 

「学院に急ぐぞ……時間が惜しい……」

 

 

グレンはその懇願を完全に無視し、ウィリアムとルミアを促す。

ウィリアムは複雑な表情でイヴを見て、ルミアも複雑な表情でイヴに一礼して、グレンの後へと続く。

 

 

「イヴ。どうしてもって言うなら、もう止めねえ……せめて、()()()()?」

 

 

グレン達三人はそのまま、その場を立ち去った。

そんなフラれたイヴに、ジャティスの哄笑が山彦のように響き渡る。

 

 

「フラれて当然だよ!『正義の魔法使い(グレン)』は人の救いをもとめる声にこそ応えるんだから!!自ら地獄に向かう者を救うのは―――『(ぎぜんしゃ)』だけさ!!」

 

「本当に滑稽ですなあッ!!!貴女のそんな地獄行きの提案を、彼の者は絶対に賛同しない事はわかりきっていたことでしょうにッ!!!!」

 

 

ブレイクも嘲りに満ちた表情で、そんなイヴの愚かさを指摘する。

イヴはそんな二人に、全てを呪い殺す勢いで睨みつけるも―――

 

 

「唯一尊敬する魔術師、グレンの顔を立てて……警告してあげるよ……()()()()()()()。最弱の魔術師……僕の前からとっとと失せろ」

 

 

ジャティスは慇懃(いんぎん)に正して、イヴに向かってはっきりと告げる。

その侮辱にイヴの目尻がたちまちつり上がっていく。

 

 

「私が……最弱、ですって……ッ!?」

 

「ああ。今の君は最近まで最弱だった《戦車(リィエル)》より……いや、システィーナより弱い」

 

「確かに最弱ですなぁ。貴女は楽な道に逃げ続けている、醜き弱者ですから」

 

「……どうやら、死にたいようね、貴方達」

 

 

イヴの左手が激しく燃え上がると同時に、ジャティスとブレイクを囲むように炎の壁が燃え上がっていく。

 

 

「せっかくですから、貴女が『美しき者』か、改めて観察しましょうぞ」

 

「弱い者いじめは趣味じゃないけど……君の最弱を証明してあげるよ」

 

「やってみなさいッ!!この《紅焔公(ロード・スカーレット)》相手にできるならね―――ッ!!」

 

 

《魔術師》は、《正義》と《美の商人(ブローカー)》と激突する―――

 

 

 




《魔術師》対《正義》と《美の商人》
イヴは一体どうなる?
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