やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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·····これでいいかな?
てな訳でどうぞ


七十九話(改)

「ぬぅんッ!!」

 

 

ラザールが槍を振るって、衝撃波をハーレイ達に向けて飛ばすも―――

 

 

「《楯壁展開(ロード)》ッ!」

 

 

ウィリアムが正面に《詐欺師の盾》の魔力障壁を展開し、難なく防いでいく。

このように、ラザールとの戦いは拮抗状態となっており、安定している。

セリカの動きは次第に悪くなってきているが、皆が上手く援護しているため問題は無い。

ウィリアムは戦いながら、遠見の魔術を起動し、グレンとルミアの様子を見る。

グレンの口からは笑みが浮かんでおり、どうやら時間内に解呪(ディスペル)できそうな感じだ。

グレンは左手首を浅く切り、血を魔術触媒化し、その血を指先に伝わらせて―――

 

 

 

―――そこで、グレンは動きを止めた。

 

 

(先公……?)

 

 

ウィリアムは不意に動きを止めたグレンに最初は訝しげるも―――

 

 

(……あれ?……何か、おかしくね?)

 

 

ウィリアムの中で一連の騒動に対する疑惑が浮上した。

グレンの一連の動作から、グレンは『核熱点火式(イグニッション・プラグ)』をそのまま解呪(ディスペル)しようとしていた。

ルミアの『異能』を使おうとせずにだ。

つまり、あれの解呪(ディスペル)はルミアの『異能』無しでも容易いということになる。

『マナ活性供給式(ブーストサプライヤー)』には普通の解呪(ディスペル)だと数日はかかる程のプロテクトが掛けられていたのに、肝心要の『核熱点火式(イグニッション・プラグ)』の守りが薄いのは明らかにおかしい。

そして――――

 

 

(あの野郎は何で焦りの雰囲気があんなに薄いんだ!?)

 

 

ここまで大掛かりな計画が頓挫する寸前の筈なのに、ラザールからそういった雰囲気が薄すぎる。

まるで、計画通りに進ませるために敢えて戦っているかのような感じである。

そんなあまりにも都合が良すぎる展開に、あの『核熱点火式(イグニッション・プラグ)』を解呪(ディスペル)させていいのか、不安になってくる。

こうしている間にも、貴重な時間は刻一刻と消費している。

一番確実なのは、あの『核熱点火式(イグニッション・プラグ)』を精査してから判断することだが、ルミアの『異能』を使わなければ、確実に間に合わない。

周りが動かないグレンに焦燥と苛立ちの視線が集まっていく中、ルミアの身体から黄金色の光が放たれ始め、その状態でルミアがグレンの手を握りしめる。

ルミアが自身の身を顧みずに『異能』を使ったことにウィリアムは複雑な気分になりながらも、ラザールの足止めをセリカ達と共に続ける。

そして―――

 

 

『……これから、こいつを解呪(ディスペル)せずに()()する』

 

 

遠耳の魔術で聞こえてきたグレンの言葉は一見、信じられないものだった。

グレンはそのまま、ルミアのアシストを受けたまま、目の前の魔術法陣を起動する為の行動を開始していく。

ハーレイとツェスト男爵はグレンの暴挙に慌てるも―――

 

 

「構うなッ!!」

 

「止めるなッ!!」

 

 

セリカとウィリアムは、グレンが起動作業を開始して、明らかに先程より焦っているラザールの猛攻を、セリカが剣で槍撃を叩き落とし、ウィリアムが《盾》で飛んでくる衝撃波を防ぎながら、叫ぶ。

 

 

「おのれぇ……ッ!?そこをどけいッ!!」

 

「そこまで焦るってことは……あれは【メギドの火】に偽装した別の術式だな!?」

 

 

苛立ちを露にするラザールに、ウィリアムが決定的な言葉を放つ。

その言葉にますます苛立ちを露にするラザールに、リィエルの横殴りの一撃が直撃し、さらにグレンとは真逆の方向へかっ飛ばされていく。

さらにウィリアムが《魔導砲ファランクス・ミクロ》による追撃を与え、ラザールは体勢を整えきれずにどんどんグレンから引き離されていく。

その間にも、グレンは起動する為に、魔術法陣上に血のルーン文字を必死に書き連ねていき―――

 

 

「間に合えよぉおおおおおおおおおおおおおお―――ッ!!!」

 

 

遂にグレンが最後のルーン文字を括り、その魔術法陣を起動させる。

起動された『核熱点火式(イグニッション・プラグ)』に偽装された魔術法陣から白い光が溢れ―――

 

 

 

溜め込まれていた大量のマナが、嵐のように渦巻き、活火山の噴火ように吹き出しながら、大気中へと拡散されていく結果だった。

 

 

「おのれぇええええええええええッ!!!?グレン=レーダスぅうううううううううううううう―――ッ!!!?」

 

 

その光景にラザールは憤怒に身を焦がしながら、叫び声を上げる。

だが、突如、硝子の割れ砕けるかのような高音が響き渡り、ラザールに大量のマナ光が降り注いでいく。

 

 

「まさか、あれは『マナ堰堤式(ダム)』だったのか!?」

 

「我々はまんまと騙されていたという事か……」

 

 

ハーレイの驚愕とツェスト男爵の呟きを尻目に、ラザールは大量のマナが降り注ぐ一本の鍵を取り出す。

 

 

「……致し方あるまい。今こそ我は、汝が『内なる声』に耳を傾けよう……ッ!」

 

 

ラザールはそう告げ、その鍵を己の胸に―――差し込んだ。

そのまま鍵を回した瞬間、ラザールの全身からどす黒い魔力が溢れ、ラザールを呑み込んでいく。

その黒き魔力はラザールからどんどん溢れ、ラザールに溶け込んでいき―――

 

 

―――頑健な漆黒の全身鎧、緋色のローブ、バイザーを身につけた、一人の魔人が再誕した。

 

 

「……ラザール……?」

 

 

セリカの呆けたような問いに、ラザールだった魔人は槍を大地に突き立てて、宣言する。

 

 

『否。今の私は《鉄騎剛将》アセロ=イエロ……『内なる声』を受け入れ、魔将星の魂と融合した、至高の存在として、新たに生まれ変わった……』

 

「……()()()……()……だと……?一体、どういう意味だ!?」

 

 

魔人はセリカの詰問を無視して手を掲げ、何事かを呟く。

それと同時に、猛烈な紅い稲妻が空を縦横無尽に幾条も走り、船の形を形成していく。

そして、稲妻は徐々に弱まっていくと同時に、船は徐々に実体を得ていき……

フェジテの大空に、巨大な箱舟となって、現れた。

 

 

『ふははははははははははははははは―――っ!!!!』

 

 

周りがその箱舟の存在に呑まれる中、魔人の哄笑が辺りに響き渡った―――

 

 

 




原作九巻はこれにて終了
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