やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

127 / 215
ここから原作十巻
書き方にちょっとご指摘があったので、今回からちょっと変えています
てな訳でどうぞ


第九章・神鉄の魔人と二枚のカード
八十話


「ホントになんなんだよ……」

 

 

ウィリアムは上空に顕現した真紅の箱舟を見上げ、力無く呟く。

そんな思考放棄寸前の状態で周りを見やると殆どの人が、この現実に呆然としており、学院校舎の生徒達に至っては、失神したり、失禁したものまでいる。

ウィリアムは呆然とした思考のまま、件の魔人に目を向けると――――

 

 

魔人が手に持っていた槍と盾を粉々に握り潰していた。

 

 

「「……は?」」

 

 

魔人のその行動に、辛うじて正気だったグレンの呆けた声と重なる。

 

 

「……バカか、テメェ?」

 

 

グレンは呆れた声を出すも……

 

 

「―――ッ」

 

 

ウィリアムはその有り得ない筈の行動で逆に正気に戻り、脂汗を流して戦慄していた。

今、あの魔人は自らの武具を()()()()で砕いた。セリカの説明では、《力天使の盾》は日緋色金(オリハルコン)製の筈。

それが意味する事は……

 

 

(あの野郎の身体の硬度は少なくとも日緋色金(オリハルコン)以上、イヤ、余裕で越えている事になるぞ!?)

 

 

日緋色金(オリハルコン)以上の硬度を有しているのは伝説の()()以外思いつかない。もし、あの魔人の身体がアレで構成されているとしたら―――勝てない。

何故なら、アレは存在が確認されていない究極の魔法金属だからだ。

そんな中、グレンが魔人に攻撃を仕掛け―――

 

 

「―――ッ!駄目だ、先公ッ!!」

 

 

ウィリアムが大声で制止を呼びかけるも―――

 

 

「ぐっ――ぁああああああああッ!!」

 

 

時、既に遅く。グレンは右手の手刀を魔人に放ち、逆に右手を壊される結果となった。

ルミアが急いで駆け寄り、グレンの右手の治療にかかるが、すぐに癒せる傷ではない。

ウィリアムは一か八かで、剣をその手に錬成し、呪文を唱え始める。

その間に、セリカとリィエル、ハーレイにツェスト男爵も我に返り、さらにアルベルト、バーナード、クリストフがこの場に現れる。

そして、システィーナも駆けつけたその瞬間――――

 

 

「―――》全員その場から離れろッ!――――《点火(イグニッション)》ッ!!!」

 

 

ウィリアムの前方に形成された紅い球体を見て、全員が一斉に魔人から離れる。

同時に、錬金改【マテリアル・ブラスター】―――劣化縮小版の【メギドの火】が放たれる。

圧倒的な破壊エネルギーの奔流が、魔人の身体を余さず呑み込むも―――

 

 

「―――ッ」

 

『愚者の民がそれを放てるとは……我が《炎の船》の砲と比べるべくもないが、賞賛に値するぞ』

 

 

魔人は―――無傷。

先程と何一つ変わらず、悠然と佇んでいた。その現実にウィリアムは歯軋りする。

もはや認めるしかない。

 

 

「やはり……テメェの身体は……」

 

 

根底を蝕んでいく絶望に必死に耐え、その憶測を口に出す。

 

 

神鉄(アダマンタイト)で構成されている……違うか?」

 

 

神鉄(アダマンタイト)―――竜の鱗より遥かに高く、水銀のような流動性を内包する、古代ロマンと称される幻の魔法金属。

日緋色金(オリハルコン)真銀(ミスリル)でさえ、神鉄(アダマンタイト)を生み出す過程で生じた副産物という一説まであるほどだ。

 

 

『その通りだ。我が身体は不滅の神鉄(アダマンタイト)で出来ている。先程の【メギドの火】であろうとも……この身を滅ぼすことは叶わぬ』

 

 

魔人はあっさりとウィリアムの言葉を肯定した。

それを皮切りに、アルベルト、ハーレイ、システィーナ、セリカが攻性呪文(アサルト・スペル)を唱え、魔人にぶつけるも―――

 

 

『……』

 

 

魔人は、無傷。

直ぐ様、ツェスト男爵が白魔【マインド・ブラスト】を全力で魔人にぶつけ、その隙をついてバーナードが無数の鋼糸で魔人を縛り、リィエルが超特大剣を魔人の脳天へと叩き込み、クリストフが間髪容れず、魔人の周囲に玉式結界魔術【菫青石牢獄界(アイオライト・プリズン)】―――超重力結界を形成する。

魔人はその超重力の結界内でも悠然としており、出来上がったクレーターの側面を平然と歩いてきている。

 

 

「リィエルッ!!」

 

 

ウィリアムはその場に超特大サイズの戦槌を錬成する。

柄頭の叩く部分は直径八メトラ近くあり、中身はゼリー状のようになっている。

リィエルはその戦槌の柄を握り――――

 

 

「いいいいいいやぁあああああああああああああ―――ッ!!!!!」

 

 

【フィジカル・ブースト】全開で、全身の発条(ばね)を使い、魔人に向かって降り下ろした。

魔人はその戦槌の中にズブリ、と押し入れられ―――

 

 

「生き埋めだッ!!」

 

 

ウィリアムがすかさず戦槌の柄に触れ、戦槌の材質を全てウーツ鋼へと変え、魔人を金属漬けにする。

その魔人を閉じ込めた金属が壊れないよう、クリストフはすぐに結界を解除しようとするも―――

 

ビキッ!

 

その魔人を閉じ込めた金属からヒビが入り、そのまま破砕音と共にバラバラに砕け散ってしまった。

 

 

『……残念だったな?』

 

 

自力で脱出した魔人は、埃を手で軽く払いながら平然と告げる。

その後も無数の火球、絶対零度の凍気、乱舞する稲妻、踊り狂う風の刃、大気を焦がす爆熱、酸の雨や塊、毒の霧や槍、隕石、銃弾、神速の剣技、エネルギーの矢、石化の呪い等、ありとあらゆる攻撃をぶつけていくも、魔人の身体には傷一つつかない。

さらにセリカが黒魔改【イクスティンクション・レイ】をぶつけるも―――

 

 

『……無駄だ』

 

 

魔人は―――尚、無傷。何一つ通用しなかった。

そして、遂に魔人が攻性へと転じ―――

 

 

「ぐぉおおおおおおおおおお―――ッ!?」

 

「あ、ぐぅうううう―――ッ!?」

 

 

その攻撃により、バーナードは両腕を、リィエルは肋骨と右腕を砕かれ、吹き飛ばされていく。

さらに魔人はウィリアムにへと迫り―――

 

 

「くっ―――」

 

 

ウィリアムは咄嗟に左手の《詐欺師の盾》をかざして、魔人の拳打を受け止める。

 

 

『……チッ』

 

 

音も無く止められた拳打に、魔人は少々苛立ちを見せるも、再び霞と消え、次に現れたのは―――《盾》の防御が間に合わない、超至近距離。

迫る拳の正面に弾力性の強い参考書サイズの板を錬成するも―――

 

 

「ごはぁ―――ッ!!?」

 

 

派手に殴り飛ばされ、校舎の壁に激突する。

壁にめり込む程の凄まじい衝撃に、全身が痺れてしまい、その上拳打を受けた肋骨部分にもヒビも入り、動きが一気に鈍くなる。

魔人はそのまま、アルベルトにも襲いかかり、アルベルトは魔術と併用して辛うじて捌くも、左手に手酷い重症を負った。

その状況にルミアは自分を殺して皆を見逃すよう、魔人に懇願するも、魔人はルミアだけでなく、このフェジテを贄として滅ぼすから無意味と告げる。

そんな魔人からルミアを守るため、グレンとアルベルトは魔人と対峙し、ウィリアムも身体に鞭を入れて彼らの元へ近寄っていく。

 

 

『待ちなさい』

 

 

突如、対峙する彼らとの間に異形の翼を抱く少女―――ナムルスが突然現れる。

 

 

『む。貴女は……』

 

『“名無し(ナムルス)”よ。今世ではそう名乗ってるわ……今は退きなさい』

 

 

ナムルスは魔人にそう告げる。しかし、魔人は殺気と威圧感を放ち、要求を突っぱねようとするも·····

 

 

()()()()()

 

 

ナムルスはそう凄み、白い手を差し出すと、圧倒的な黄金の光がその手から放たれ、“黄金色に光輝く鍵”が現れる。

 

 

『その《黄金の鍵》は!?』

 

『ええ、そうよ。貴方達が持っている“紛い物の鍵”ではなく、世界に二つだけある“本物の鍵”の一つよ』

 

 

意表をつかれた魔人にナムルスはさらに言い放つ。

 

 

『今の私でも、完全消滅を覚悟すれば、マナ不足で魔将星との融合がまだ不完全な今の貴方程度なら、刺し違えるくらいのことはできるわ。それとも、ここで私と戦うつもりかしら?』

 

『……いいだろう。《■■■■・■・■■■■………》』

 

 

魔人はナムルスの要求に応じ、得体の知れない言語で、何事かを呟く。

途端、《炎の船》の船底の紋様から、無数の赤い光が放たれ、四方八方の地平線と空が真紅に染まっていく。

 

 

『……さらばだ。精々、残り少ない生を謳歌すればいい……』

 

 

魔人はそう言い残し、《炎の船》から伸びた光の柱を通って、その場から立ち去っていった。

 

 

「くそ……あいつは一体、何をするつもりなんだ……!?」

 

 

グレンの口から洩れた疑問を、ナムルスが説明していく。

今、フェジテそのものが断絶結界の中に閉じ込められ、その状態で《炎の船》から【メギドの火】を放つ魂胆とのこと。

ナムルス曰く、【メギドの火】は元々、あの《炎の船》の主砲であり、本家本元との事。

そんな絶望的な状況で、ナムルスはまだ終わってないと告げる。グレンが一矢報いた事ですぐには【メギドの火】は撃てず、今から明後日の正午までは大丈夫との事。

その間に、アセロ=イエロを打倒する方法を考えろと。

 

 

『私にはその方法がわからないけど……グレン、ウィリアム、少なくとも“貴方達はアセロ=イエロを倒せるはず”なのよ……特にグレン、“貴方は倒せなきゃおかしい”』

 

「……は?」

 

「一体、どういうことだ……?」

 

『むしろ、私の方が聞きたいくらいよ。そっちはあのアセロ=イエロが露骨に対峙するのを避けていたから、おそらくの部類だし』

 

 

そんな意味不明な事を言うだけ言って、ナムルスは歩き去っていく。

魔人が姿を消した事で誰もがその場で膝をついて脱力している状況で、ウィリアムは《盾》を杖代わりに地面を付きながら、倒れ伏しているリィエルに近寄っていき、ウィリアムは残り少ない魔力で、リィエルに応急処置を施していく。

向こうで何か怒鳴り声が聞こえるが、今はそれに向ける程の精神的余裕がない。

 

魔人との戦いは完全敗北で終わった――――

 

 

 




これでどう感じるのかな?
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。