てな訳でどうぞ
飛行魔術とは比べものにならない圧倒的な加速が襲いかかる。
事前に呼吸補助の魔術を喉に
セリカはさらに暴力的に加速し、そのまま乱気流へと突撃する。
『おいおい、根性見せろよ―――ッ!』
セリカの叱咤を受け、必死にその背にしがみつき、その風圧に耐え抜き、乱気流を抜ける。
抜けた先には、あの《炎の船》が自分たちと同じ目の高さにあった。
『ッ!?……掴まってろッ!!』
セリカドラゴンが急に警告を発し、猛速度で急旋回する。
直後、《炎の船》の側面の幾つから、圧倒的な熱量を持った、真紅の極太熱線が数本、高速殺到する。
「《炎の船》の対空砲火かよッ!?」
視界が九十度傾いた状態でグレンが叫く。
魔術的視覚を強化すれば、確かに、扉のような開閉式の魔導砲らしきものが何門も設置されている。
再び熱線砲撃が放たれ、セリカが必死にかわしていく。
『チッ……まるで小規模な【メギドの火】……【マテリアル・ブラスター】の上位版だな、アレは。……こりゃ強引に突っ切れないな』
「なんですとぉ!?」
セリカの言葉に、グレンが素っ頓狂な声を上げる。
さらに厄介な事に、《炎の船》から大量の豆粒―――飛行に特化したゴーレムが空を埋めつくすような数で迫ってきている。
「団体様のお出ましだぁあああああああ―――ッ!?」
「グレン、うるさい」
「う、うーん……大きな星が……むにゃ……」
「おい!?ここで気絶してる場合か!?」
「システィ、しっかり!?」
てんやわんやしている間にも、無数の極太熱線は容赦なくセリカドラゴンへと放たれていく。
セリカは熱線砲撃を回避していくも、無数のゴーレム達が距離を詰めてきている。
「くそ……やるしかねぇか……ッ!」
「だな」
グレンの言葉にウィリアムは同意し、《魔導砲ファランクス・ミクロ》を解凍し、右手に携える。
そこから、壮絶な空中戦が始まった。
前方はセリカドラゴンの炎のブレス、背後はシスティーナの【ライトニング・ピアス】、右はウィリアムの《ファランクス・ミクロ》の雷加速弾の弾幕、左はグレンの【アイス・ブリザード】、リィエルは錬成した大剣をぶん投げて群がってくるゴーレム達を片っ端から落としていく。
そうしている間にも《炎の船》からの砲撃は止まらず、セリカを撃ち落とそうと容赦なく熱線を放ち続けている。
セリカはバレルロールしたりして、猛速度でかわし続けているが、一向に距離を縮めることが出来ない。
砲門を潰そうにも、開くのは熱線を放つ瞬間だけ。撃ってすぐ閉じる上、足を止められないからこれだけの距離でその瞬間を狙い撃ちするのはほぼ不可能だ。
このままだとセリカが限界を迎え、撤退するしかなくなる。
そんな焦りが湧き出てくる中、突如、地上から真っ直ぐ昇る雷閃が上がった。
突然の【ライトニング・ピアス】に一同が戸惑うなか……
「……セリカ、今から俺の指示するとおりに飛んでくれ」
グレンだけは合点がいったかのような顔をし、そのままセリカに《炎の船》に一度、一気に突進するように飛ぶように言ってきた。
「気が狂ったんじゃないかと思っているだろうが……頼む、信じてくれ」
『……私が死んだら、ちゃんと責任とれよ?』
セリカはグレンの言葉を信じ、指示どおりに《炎の船》へと猛突進する。
当然、《炎の船》から熱線が発射され、セリカは必死に避けていく。熱線は次第にセリカへと掠めていき、次の一射で撃ち落とされると覚悟した、その時。
「……あれ?」
『……不発か?』
とどめの一射がこなかった事にグレンとウィリアムを除く一同が不思議そうに目を瞬かせる。
「まじかよ……」
「やってくれると思ってたけどよ……アホかよ」
ウィリアムは唖然とし、グレンは訳知り顔で笑う。
ウィリアムは撃ち落とされると覚悟した瞬間に見たのだ。《炎の船》の砲門が開いた瞬間に、蒼い雷閃が砲門を潰したその瞬間を。
こんな芸当ができるのは、アルベルトしかいない。
その後もグレンが的確にセリカを誘導し、《炎の船》が砲門を開いたその瞬間に、蒼い雷閃が破壊していく。
《詐欺師》時代にもし、グレンとアルベルトが一緒に襲ってきていたら、捕まっていたなと、ウィリアムは戦慄しながらあるものを錬成していく。
その間にも、ゴーレム達が群がるように迫ってきているが……
「えい」
ウィリアムが錬成した、刀身が爆晶石で構成された大剣を、リィエルが勘で的確に大量に巻き込むようにゴーレム達へと次々と投げ飛ばしていき、容赦なく吹き飛ばしていく。
その光景をシスティーナが何故か呆れ半分、悔しさ半分で眺めている。
やがて、《炎の船》の砲が全て潰され―――
「突撃ぃいいいいいいいいい―――ッ!!」
グレンの雄叫びと共に、セリカドラゴンは《炎の船》へと突撃するのであった。
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地上では―――
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生徒達は《魔導士の杖》に組み込まれている軍用魔術の弾幕でゴーレム達を撃ち落とし、講師達も持てる力を駆使してゴーレム達を撃ち落としているなか……
「ヒャッハァ――――――――――ッ!!」
バーナードはワイヤーアクションによる変態機動でマスケット銃の魔術弾や、鋼糸、
それらの光景を、《炎の船》の最奥にいる魔人は忌々しげに、眺めていた―――
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