やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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よく投稿するなぁ······
固有魔術に関する、この説明で納得いくかも疑問である
てな訳でどうぞ


八十八話

『馬鹿な……』

 

 

魔人は信じられないといった様子で声を震わせて後退していく。

その間にも、ウィリアムの刃に貫かれた右腕が、刺し貫かれた箇所から徐々に粒子となり、崩れていっている。

 

 

神鉄(アダマンタイト)は不滅の金属……何者にも滅ぼせぬ、世界最高の神の金属……その筈なのに……ッ!?』

 

 

魔人は、その穴からボロボロと崩れ拡がっていき、崩れ落ちた右腕と、同様に崩壊していく左手を見―――

 

 

『何故、私が滅びるのだッ!?貴様ら、一体、何をしたぁあああああああああああああああああ―――ッ!?』

 

 

堪らずに叫び声を上げる。

 

 

「……別に?魔術特性(パーソナリティ)で攻撃しただけだが?」

 

 

そんな魔人に、ウィリアムはそのタネを明かす。

 

 

『……は?』

 

「【愚者の一刺し(ペネトレイター)】……『イヴ・カイズルの玉薬』によって発射された弾丸は、“あらゆる物理エネルギー変化が停止”し、同時に、“あらゆる霊的要素に破滅の停滞”をもたらす」

 

「俺の【詐欺師の騙し討ち(ディスパージョン)】……『ダストの玉薬』によって直接衝撃を与えた物体に、“あらゆる構成要素に喪失の分解”と、“その効果を伝搬する構築”の効力をもたらす」

 

『ま、まさか……ッ!?』

 

「そのまさか。先公の弾丸は霊体のみを撃ち抜き……俺の刃は食らわせた対象の統一性を喪わせる……あんたの神鉄(アダマンタイト)自体に損傷はないんだよ」

 

『―――ッ!?』

 

 

その説明に魔人は絶句する。

霊体と肉体は重ね合わせで出来ており、統一性を喪うということは対象に傷が付くということ。どちらも不滅の神鉄(アダマンタイト)に対して不可能だ。

だが―――どちらの固有魔術(オリジナル)もそれを可能とした。グレンの魔弾は防御を無視し、ウィリアムの魔剣はその形そのものを崩すことによって。

 

 

「ただ、どちらもある欠点があってな……俺の魔弾は外界に晒されると、効力が刹那の間に急激に失うし、ウィリアムのにいたっては着火した、その一瞬のみしか発揮しないんだとよ」

 

「つまり、俺らの一撃はこうするしか使えないんだよ」

 

魔人はこの時、完全に一杯くわされた事に気が付いた。

銃としてあり得ない行動―――零距離射撃と銃口の刃を最初から実行すれば、流石に何かあると警戒する。

だから先に無意味な攻撃を放ったのだ。通用しないと錯覚させ、油断させる為に。

 

 

『あ、あり得ぬ……この私が……アセロ=イエロが滅びる等…………そ、そうか……思い出したぞ……貴様らは……ッ!?貴様らは……あの……うぉおおおおおおおおおおおおお―――ッ!?』

 

 

魔人は断末魔を上げながら、真っ黒な爆光に包まれて、四散し、呆気なく消滅した。

三人娘が沈黙する中、グレンとウィリアムはぼそりと言う。

この固有魔術(オリジナル)は、相手がどんな防御を構えていても関係なく殺す、その為に作った、自分の悪意と殺意の塊の術だと。

愚者の一刺し(ペネトレイター)】に【詐欺師の騙し討ち(ディスパージョン)】。

どちらも相当皮肉が効いた名称だ。

愚者の考えなしの一撃は、時に賢者のあらゆる知恵をもってしても防げず、詐欺師に一度騙されると、賢者ですら被害が出るまで気づかない。

三人はなんて声をかけたらいいか分からず、戸惑っていると。

 

 

「まぁ、だけど……」

 

「ルミアを守れた!それでいいよなっ!?」

 

 

グレンとウィリアムは、吹っ切れたかのような、清々しい笑顔で振り返っていた。

グレンはルミアに近づき、我が儘でいいと、皆で幸せを掴める方法を考えようと告げ……

 

 

「さぁ、一緒に帰ろうぜ?」

 

 

グレンのその言葉で、ルミアは大粒の涙を流しながらグレンへと抱きついた。

その光景を、ウィリアムは微笑み、リィエルとシスティーナは涙ぐみながら見守っていると、《炎の船》が激しく揺れ始め、そこかしこが、光の粒子となって、崩壊を始めていく。

ウィリアムは裏技ではなく正規手順で、青白い幽体の蛇のような生物―――東方に伝わる『龍』の姿をした人工精霊(タルパ)を具現召喚し、その背にまたがる。

続いてリィエル、システィーナもビクビクしながらその背に乗り―――

 

 

「先公ッ!早くしないと置いていくぞぉッ!?」

 

「薄情な事言うなぁッ!?」

 

 

グレンとルミアも慌ててその背に乗り、グレンはナムルスも呼ぼうとしたら、当の本人はいつの間にか姿を消していた。

一同はそのまま、脱出するため、その場を離れていった―――

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

アルザーノ帝国魔術学院の北にあるアウストラス連峰。

その山々の一つである、万年雪の降り積もった、山頂付近の殺風景な場所に―――

 

 

『はぁ……ッ!はぁ……!危なかった……ッ!』

 

 

魔人―――ラザールは生きていた。

ラザールはあの時、自分の身体を霊体化し、グレンの魔弾とウィリアムの魔剣で犯された箇所を抉りとって大量に放棄し、《炎の船》のマナを回収し、そのマナで霊魂を補填した。

再び物質化した身体はすこぶる絶不調。特に右腕は構成する要素をウィリアムの魔剣によって喪っているため、肘から先は失われた状態だ。

だが―――存在は辛うじて保てている。

 

 

『まだだ……私はこの世界に、確たる“神”の―――』

 

「―――存在を見出だす。随分と的外れな事を考えますなぁ」

 

 

ラザールの言葉を継ぐように突如、男の声が遮った。

ラザールが声がした方向を向くと、そこに居たのは、ブーツにマント、羽付き帽を纏った中年男性―――ブレイクだった。

 

 

「まったく、今の貴方は二百年前の貴方より醜く―――弱い」

 

『なん……だとぉ……ッ!?』

 

「神は千差万別……正義の女神、時の女神、戦の神、邪神……貴方がかつて信仰した全智全能の神……人の数だけ神がいるもの。そもそも信仰は人が迷わず生きていくための道標。心の拠り所なのですよ?」

 

『貴様は一体何が言いたいッ!?』

 

「結論を申しますと、貴方が最初に信じるべきは禁忌教典(アカシックレコード)ではなく、己の歩んだ道だったのですよ。だが貴方は己の歩んだ道から答えを出さず、ポッと出の……与えられた答えにすがりついた……その時から貴方の『美しさ』は失われたのですよ。邪神に殺された妻子も、今の貴方を見たら嘆くでしょうな?」

 

『言わせておけば……ッ!!』

 

 

ラザールは憤怒に身を焦がし、構えていくも、ブレイクは涼しげな表情を崩さない。

 

 

「貴方を始末するのは我輩ではない。貴方の後ろにいる《正義》ですぞ?」

 

『何……ッ!?』

 

 

ラザールが不意に気配を感じて後ろを振り向くと、あり得ない現実―――この手で殺した筈のジャティスが二の足でそこに立っていた。

 

 

『何故貴様が生きているッ!?まさか、『Project:Revive Life』―――ッ!?』

 

「そんなわけないだろう……僕は正真正銘、ジャティス=ロウファン本人さ」

 

 

狼狽えるラザールに、ジャティスは自身の存在の本質である己の霊魂を二つに割り、錬金術で用意した肉体に容れ、己の存在を二つに分けていたと説明する。

信じられないと吠えるラザールに、ジャティスはそれが『正義』だからとあっさりと言う。

 

 

「己の信念に命を賭す……何らあり得ない話ではないでしょう?まあ、己を捨てた貴方にはもう分からぬ事でしょうが」

 

 

ブレイクの言葉にラザールは苛立ちながらも、神速の動作で左手の手刀を振るい、ジャティスの肘から先の左腕を斬り落とす。

その直後、あの時殺したジャティスの血で汚れた部分の左腕が、禍々しく輝き、粒子となって解けていき……ジャティスの左腕へと集まり、新たな左腕として形成されていく。

 

 

「さあ、ラザール。刑の執行時間だ」

 

 

ジャティスは神鉄(アダマンタイト)で構成された左手の甲から、黒い剣―――神鉄(アダマンタイト)の剣を携え、ラザールへと近づいていく。

右腕を喪い、左腕を奪われたラザールは奥底から湧き出る恐怖から逃れるように、その場から逃げ出そうとするも、ジャティスはそれよりも早くラザールを斬り刻む。

 

 

『あ……ぁあ……』

 

 

バラバラに斬り裂かれたラザールは、そのまま黒い霧状に蒸発し、消滅していった。

 

 

「いやはや、見事なお手前ですなぁ!!」

 

「……ふん」

 

 

ブレイクの賞賛を、ジャティスは不満げに鼻を鳴らして返す。

 

 

「おやぁ?フェジテが丸々無事だと“読めなかった”のがそんなに悔しげでしたかな?」

 

「……分かってて言う君に対して苛立っているんだよ」

 

「ええ分かってますとも。貴方はグレン殿に賞賛と羨望を抱いている事も。我輩に今すぐ『正義』を執行したいという事も」

 

「……」

 

「だが、我輩にはまだ利用価値があり、我輩が手にした“面白いもの”から、我輩の判決を保留にするのも分かってますぞ!!」

 

「本当に人を苛立たせるね……」

 

「これぐらいでなければ、『美しさ』を観察出来ませんからなッ!ふはははははははははは―――ッ!!!」

 

 

陽気に笑うブレイクを尻目に、ジャティスは苛立ちを隠さずに下山し、ブレイクもそれに追従する。

彼らの行き先は……誰も知らない。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

セリカドラゴンの背に乗って地上に帰ってきた彼らを迎えたのは―――

 

 

「「「「「皆、お帰り―――ッ!!!!!!!」」」」」

 

 

学院の生徒達の大歓声あった。

セリカが中庭に降り立つと、二組全員が集まり、大はしゃぎで囲んでいく。

その直後、セリカの変身魔術が解け、一糸纏わぬ姿となって別の意味で大騒ぎにもなったが、それでも、確かに全員無事にこの学院へと帰ってきた。

 

 

「さぁ、このグレン=レーダス超先生を、救世主様と崇め奉るがいいッ!!!ぎゃっはははははははは―――ッ!!!!!」

 

 

相当ハイテンションで調子に乗っていたグレンは、生徒達から胴上げされることとなり……

 

 

「「「「せーのっ!わっしょぉおおおおおおおおおおおおいい―――ッ!!!」」」」

 

「――ぁああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!?」

 

 

身体強化された全力胴上げで、空の彼方へと打ち上げられていった。

そんな光景をウィリアムは呆れた表情で眺めていると。

 

 

「あれ、楽しそう……一緒にやってもらお?」

 

「ちょっ……おいッ!?」

 

 

リィエルはそう言って、ウィリアムの腕を引っ張って、グレン達の方へと向かっていく。

ウィリアムはそのまま、連れて行かれて……

 

 

「おっ!ウィリアムッ!!お前も胴上げしてやるぜ!?」

 

 

カッシュを筆頭に、二組の男子生徒達がウィリアムの身体を持ち上げていく。

 

 

「……一応聞くが、何で強化したまま、胴上げしようとしてんだ?」

 

「そりゃあ勿論……」

 

「「「「吹き飛べ、リア充ッ!!!!!!!!!!」」」」

 

「ふっざけんなぁあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!!!」

 

 

グレン同様、空へと打ち上げられたウィリアムは、怒声の雄叫びを上げる。

しかし、その顔はどこか、呆れながらも笑っていた―――

 

 

 




これにて原作十巻は終了です
オリジナルを少し挟んでから原作十一巻に入ります
オリジナル話のヒントは·····家である
感想お待ちしてます
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