とりあえず········ブラックコーヒーを用意したまえ
てな訳でどうぞ
八十九話
バーナードに貸していた《魔導砲ファランクス》を回収したウィリアムは現在、深刻な問題に直面していた。その問題は……
「家がない……」
そう、家がないのである。
ウィリアムの住んでいた家は、連中の自爆攻撃のせいで木っ端微塵に吹き飛んだため、ホームレス一歩手前である
生徒会長のリゼに学院の宿泊施設を借りられないか聞いてみたが、哀れまれながらも出来ないと言われてしまった。……制服と教材一式は無償で支給してくれるよう手配してはくれたが。
学生寮も満室状態。さらに最悪な事にあの辺りも再開発地区の候補に上がっていた為、彼処に新しく家を建て直す事も出来そうにない。
土地は買い取られるだろうが、新しく家を買い直したり、一緒に吹き飛んだ私服や生活用品も買い直さなければならない。軽く費用を見積もっても……
「……足りるかなぁ?」
ぶっちゃけかなりキツい。今後の生活や学費も考えるとますますキツい。宿やアパートを借りるにしても、決して安くない出費がかかる。
その現実に頭を悩ませていると……
「?ウィル、何でそんなに頭を抱えているの?」
「随分と辛気臭い顔をしているわね。ウィリアム」
リィエル、システィーナが話しかけてきていた。
ウィリアムは溜め息と共に、自身の現状を説明し……
「……という訳でホームレス一歩手前の状態だ」
「ア、アハハ……」
一緒にいたルミアも苦笑いするしかなかった。
もう自然公園で野宿するしかないかな、とウィリアムが考えた矢先―――
「だったら、ウィルもシスティーナの家に住めばいいと思う」
「ぶほぉ―――ッ!?」
リィエルが斜め上のまさかの発言をし、ウィリアムは思わず吹き出してしまう。
幾らなんでもそれはまずい。色々と、本当に色々とまずい。具体的には、あの親バカなシスティーナの父親が襲いかかってくるという危険が付きまとう程に。
それがなくとも、少女三人が住んでいる家に野郎一人が新しく住む等、それだけでアウトだ。
ウィリアムはリィエルに諦めてもらうよう、システィーナとルミアに懇願の視線を向けるも……
「この場合は……仕方が、ないのかしら……?」
「さすがに野宿させるよりかは……マシ……なのかな……?」
まさかの前向きな検討発言。
ウィリアムはそのまま、なし崩し的に、フィーベル邸への居候が決定してしまった。
―――――――――――――――――――――
「一緒に寝よ?」
「さすがにアウトだバカヤロウ」
フィーベル邸にあった服を借り、割り当てられた部屋で寛いでいたウィリアムは、部屋に訪れた寝間着姿のリィエルの開口一番の言葉を、速攻で却下した。
「なんで?」
「なんで?じゃない。兎に角、さすがに夜、一緒に寝るのは駄目だ」
「むぅ……」
リィエルは不満げに頬を膨らませるが、駄目なものは駄目なのだ。
そんなリィエルをシスティーナとルミアに引き取らせ、ウィリアムは部屋の扉の鍵を閉めて就寝についた。
――――――――――――――――――
―――夜が明けた早朝。
「……んお…………」
目を覚ますと、最初に映ったのは見知らぬ天井だ。昨日、フィーベル邸に居候する事になっていたと思い出し、身体を起こそうとして―――左腕が妙に重い事に気づく。しかも暖かい。
「ん……ッ!?!?!?」
ぼんやりとした思考のままそちらを向いたウィリアムは、それを視界に納めた瞬間、一気に眠気が吹き飛んでいった。
何故なら―――
「すぅ……」
その左腕に抱きつくように、リィエルが隣で寝ていたからだ。
ウィリアムは部屋の扉を急いで見ると、扉にある筈の鍵をかける部分が、円状にくり抜かれたかのように消えており、錠としての機能を損ない、扉は開いていた。
ウィリアムは扉の状態から、リィエルは力任せに壊したのではなく、その部分を錬成の素材として抜き取ったという事に気づく。
まさかの頭脳プレイに戦慄していると……
「…………ん……おはよう、ウィル……」
「おはよう、じゃねぇだろッ!!このドアホォ―――――――――ッ!!!!!」
目を覚まして、普通に挨拶してきたリィエルに、ウィリアムは身体を起き上がらせ、リィエルの肩を掴んでガシガシとシェイクする。
リィエルの寝間着は着崩れしているが、今はそんな事はどうでもいい。
リィエルの無防備かつ、全く理解していない行動にウィリアムが憤っていると―――
「ウィリアム君、どうし―――」
「急に大声あ―――」
ルミアとシスティーナが、ウィリアムの大声から何があったのかと、部屋へと駆けつけて来ていた。
「「「……………………」」」
ウィリアムも二人が来た事でリィエルの肩を掴んだまま動きを止め、ウィリアム、ルミア、システィーナの間に、圧倒的な沈黙が訪れる。
男女が二人きりでベッドの上、リィエルの着崩れした寝間着姿……普通に誤解される問題案件である。
状況を全く理解していないリィエルが首を傾げたのを皮切りに。
「ウィリアムッ!!?アンタ一体、何をしていたのぉおおおおおおおおおおおお―――ッ!?」
「ま、まさか、大人の階段を……ッ!?」
システィーナは素っ頓狂な叫びを上げ、ルミアは顔を真っ赤にしウィリアムとリィエルを見つめている。
「ま、まさかBを、じじじ、実行していたのかしらッ!?駄目よ!それはさすがに―――ッ!?」
「リィエルがどんどん先に……私もシスティも早く……」
「誤解だぁああああああああああああああ―――ッ!!!!!!」
未だ混乱の渦中にあるシスティーナとルミアに、ウィリアムは必死に声を上げて弁明する。
フィーベル邸初日の朝は、大騒動から始まることとなった。
「……大人の階段?Bって、何?美味しいの?」
そんな中、リィエルは未だに状況を理解していなかった。
男女が同じベッドの上·······舌打ち案件でありますな
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