更新頻度が落ちそう······
てな訳でどうぞ
九十二話
後の“フェジテ最悪の三日間”から早一週間。
「……時折こう思うんだよな……裏技ばっか使わず、偶には正規の手法を使う事も……」
誰に言う訳でもなく、一人言を口にする―――本を片手に学院の屋上で寝そべるウィリアム。
「――だから全校集会は正規手順の
早い話、面倒だからサボったのである。ちなみに屋上にいるのは、グレンが中庭のベンチの上でサボっていたため、見つかると面倒だったからである。
「……あれ、人形だろ……」
ちなみにこの人形は、とある魔術工房から、グレンがセリカの金を勝手に使って購入した『
「しかし、先公が来てから色々ありすぎだろ……」
前期過程を振り返ってみる。学院爆破未遂、女王暗殺未遂、サイネリア島のイザコザ、結婚騒動、遺跡探索、集団催眠、講師補佐、そして先日の騒動―――それにより家が吹っ飛ばされ、フィーベル家への居候と、本当にロクな事がない。
まあ、出会えて良かったと思えることもあったが……
「しっかし、何でこのタイミングで全校集会を開くんだよ?」
本を流し読みながらウィリアムが疑問に思っていると、見慣れない初老の男性が講壇の前に立った。
『私はマキシム=ティラーノ。昨日、更迭処分となったリック=ウォーケンに変わって本日から、この学院の学院長を勤める者である』
「……はぁああああああああああああああああ―――ッ!?」
その男――マキシムが告げたとんでもない言葉に、ウィリアムは学院アリーナの生徒達同様、素っ頓狂な叫び声を上げる。
マキシムは学院全体を侮辱し、自分が学院をより発展できると自信満々に告げ、自身の改革案を打ち上げていく。
マキシムの改革は、端的に言えば魔術の『力』だけを求め、武力に直結しないものは容赦なく切り捨てていくというものだ。
そんな横暴極まりないマキシムの暴挙にウィリアムの苛立ちは最高潮に達していた。
「……ん?」
ウィリアムはふとマキシムの頭髪に違和感を感じ、まじまじと見つめ……
「……(ニヤリ)」
非常に悪い笑みを浮かべ、学院アリーナへと向かって行った―――
―――――――――――――――――――――
―――現在、学院アリーナはグレン(人形)の煽りによって一致団結していた。
「くっ……いくら君が一人で反発したところで……ッ!?」
グレン(人形)が生み出した圧倒的な反逆空気にマキシムが怯んでいると、グレン(人形)がギクシャクした動作でマキシムの脳天を鷲掴み……
すぽーん。
マキシムのカツラを無慈悲にむしり取り、不毛の脳天を露にした。
「……え?」
マキシムは自身の脳天に、恐る恐る手を当てていると……
シュボッ。
カツラから突如、火の手が上がり、カツラがメラメラと燃えていく。
グレン(人形)はそのカツラを手放し……
「―――」
マキシムは理解が追いつかず呆然とし―――
「―――なぁああああああああああああああああ―――ッ!?」
理解した瞬間、素っ頓狂な叫び声を上げ、大慌てでカツラの火を消しにかかるも時すでに遅く。カツラは灰となって消えていった。
「「「「…………」」」」
暫し、辺りは沈黙するも……
「「「「……ぎゃはははははははははははははははは―――ッ!!!」」」」
会場中から一斉に、お腹がよじ切れ死ぬと言わんばかりの笑い声が上がった。
「よ、よくも……この私に生き恥をかかせてくれたねぇ、グレン=レーダスぅうううううう―――ッ!?」
マキシムは不毛の脳天を隠す事も忘れ、憤怒の表情でグレンを睨みつける。
これでは懐柔する前からマキシムの
そこでマキシムは、『裏学院』を自身が手にした『アリシア三世の手記』で解放し、グレン(人形)が提示した決闘の具体的な内容―――互いの育てた生徒同士の『生存戦』を行い、自身が負けたら学院改革の取り下げ、グレンが負けたらクビという条件を突きつけた。
会場の誰もが息を呑んで動向を見守る中、壇上に猛烈な煙が巻き起こり―――
どかっ!ばきっ!どがっしゃあああああああああんっ!!
叩き壊す音が煙幕の向こう側で盛大に響き渡り、煙が晴れると、憔悴しきったグレン(本物)と、バラバラに壊れた木偶人形(元・グレン人形)がいた。
「グレン君……その足下の奇妙なガラクタは?」
「あれーーっ?なぁんで、こんなところにゴミが散らかっているのかなぁーーっ!?」
グレン(本物)は取り繕いながら、どうしようかと考えていると。
「いやぁ。見事なハゲ頭ですなぁ?新学院長殿?」
いつの間にか、壇上の上に立っていたウィリアムがマキシムを盛大に煽っていた。
「むっ!?君は……?」
「ウィリアム=アイゼンです。貴方の大事な大事なカツラを燃やした張本人ですよ」
ウィリアムは非常にイラつく笑みで、カツラを燃やしたと自白した。
「何だと!?君は何のつもりで―――」
「それにしても見事な脳天ですなぁ。貴方の無能さを現すように」
「な……ッ!?」
ウィリアムの侮辱に、マキシムはこめかみに青筋を浮かべる。ウィリアムは構わずに煽っていく。
「あんたは教育のきょの字も理解してないようだし?そんなあんたは『指導者』というより『支配者』だ。盛大にズレまくっているし、人望も薄そうだし……どうせ賄賂で支持を得たんだろ?」
意図せず大正解を言い当てたウィリアムに、マキシムは内心怯むも顔には出さず、ウィリアムを睨みつける。それに対し、ウィリアムは平然と受け流している。
「そういえば、君はそこのグレン君のクラスの生徒だったね……『生存戦』の勝敗に君の退学も追加させて貰おうか」
マキシムは思い付いたように、新たな条件を提示してきた。その条件にウィリアムは―――
「かまわねぇぜ?変わりにこっちが勝ったら、あんたは素直に退陣してくれるよな?」
一歩も引かずに受け入れ、マキシムのクビを引き出してきた。
ウィリアムはこの改革を受け入れる気は毛頭無い。この改革が実行されれば、大多数の十人十色の夢が踏みにじられるからだ。
一体自分はどうしたいのか、ウィリアムの『答え』はまだ出ていないが、大切な居場所をこのまま壊されるのを黙って見る気は毛頭無い。
そんな腹を括ったウィリアムに、グレンも触発され……
「……いいぜ?後悔すんなよ?」
グレンは左手の手袋をマキシムの顔面に投げ飛ばし、決闘を受け入れた。
彼らの我が身を顧みぬ行動に、誰もが感極まる中……
(……やっちまったなぁ…………もう、どうにでもなれぇ……)
ウィリアムは自身の勢い任せの考え無しの行動に、内心自棄っぱちになっていた。
そんな光景を、女性用講師服を身に纏った、二十歳前ほどの娘が遠くから呆れた様子で眺めていた。
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