やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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····最新巻の最後、あれの時期は後期なのかな?
てな訳でどうぞ


九十四話

「と、いうわけで、来期から開講される『軍事教練』の講師として、帝国軍より出向してきた、イヴだ」

 

「イヴ=ディストーレ従騎士長よ。どうかよろしく―――」

 

「「「「うぉおおおおおおおおおおおおお―――っ!!!!」」」」

 

「い、一体何!?」

 

 

突如上がった男子生徒からの歓声に、イヴは目を瞬かせ戦く。

 

 

「どんなゴリラな鬼教官かと思えば、滅茶苦茶美人じゃねーかぁあああああああ―――っ!?」

 

「まさに、酸いも甘いも噛み分けた、大人の女性だ……」

 

「でも、軍人で教官だから、訓練では酷い罵倒を浴びせたり、血ヘドが出るまでしごかれるかも……」

 

「「「「だけど、興奮するから良しっ!!!」」」」

 

 

男子生徒達から上がった大歓喜の言葉に、それを聞いたイヴは一気に半眼で無表情となる。

男子が沸き立つなか、ウェンディとテレサが立ち上がり、イヴは先の戦いで自分たちを助けてくれた大恩人だから変な目を向けるのをやめるように言い、今度は徐々に尊敬の目が集まり始めていく。

イヴは面と向かって賞賛された事に気恥ずかしさを覚え、それを誤魔化すように話を例の決闘へと変える。

 

 

「断言するわ。今の貴方達じゃ絶対、勝てない」

 

 

イヴの容赦ない言葉に生徒達は息を呑む。イヴはそのまま、先の戦いとグレンの存在から生じている緊張感の無さと自惚れを指摘していき、自分が教官として力を貸す事を伝える。

 

 

「今日から、学院で泊まり込みの強化合宿に参加してもらうわ。これから死ぬ気で特訓すれば、あるいは……」

 

 

イヴは最後に投げやりに締めくくろうとすると。

 

 

「よろしくお願いしますッ!」

 

 

カッシュが頭を下げ、他のみんなもイヴに頭を下げていく。

 

 

「どういう風の吹き回しか知らんが……あんがとな」

 

 

グレンがそっぽを向きながらイヴに礼を言うと。

 

 

「勘違いしないでちょうだい。私は私の目的の為に動いているだけ。大嫌いな貴方のためじゃないわ」

 

「な……ッ!?こっちだってお前のことは大嫌いだからな!?そんなんだから行き遅れるんだよ!」

 

 

……口喧嘩が始まった。

 

 

「はぁ!?私、まだ十九だし!?しかも、余計なお世話だし!?」

 

「断言してやる。お前は絶対、売れ残るね!性格ブスだし!」

 

「貴方だって、お嫁に来てくれる人なんて絶対、いないでしょうね!根っからの駄目人間だし!」

 

「あ?やんのか?」

 

「何よ?」

 

 

そんなグレンとイヴの子供のようなやり取りを見たウィリアムは。

 

 

(……本当は仲良いんじゃね?この二人……)

 

 

本人達からしたらふざけているとしか取れない失礼極まりない事を考えていた。

ちなみに、システィーナは戦々恐々、ルミアは苦笑い、リィエルはシスティーナとルミアの様子に不思議そうに首を傾げていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

その日、一旦解散し、夕方頃にグレン達の準備が終わり、魔術競技場へと集められる。

イヴは、一同の魔術師としての武力の程を再確認するため、サブストの一対一の決闘をやらせ始める。

ウィリアムも当然ながら参戦し……

 

 

「《雷精よ》、《二》、《三》、《四》、《五》―――っ」

 

「あばばばばばば―――ッ!!」

 

 

【ショック・ボルト】の五連唱(ラピッド・ファイヤ)を食らわせ、対戦相手を地面に撃沈させる。

ウィリアムのマナ・バイオリズムの調整技術はかなり高い。その理由は固有魔術(オリジナル)【詐欺師の工房】を使い続けた結果である。【詐欺師の工房】は五工程(クイント・アクション)を無視出来るが、マナ・バイオリズムまで無視できるものではない。一つ錬成すれば当然、ロウからカオス状態になる。

ウィリアムは《魔導砲ファランクス》を使う際の銃弾の連続錬成の為に磨き続けた結果、素早くロウ状態に持っていけるようになったのである。

 

 

「やっぱり実力が高いわね。さすがは《詐欺師》といったところかしら?」

 

「ああ。あいつが文句無しで一番実力があるんだよな」

 

「だけど、制限がつく生存戦では、彼一人だけで勝利するのは厳しいわよ」

 

「わーってるよ」

 

 

グレンとイヴは他の魔術戦も見ていき……

 

 

「……あれは貴方の入れ知恵かしら?」

 

 

イヴがグレンにそう聞いてきたのは、リィエルの試合―――至近、否、零距離から放つ【ショック・ボルト】戦法である。

 

 

「いいや。あれはウィリアムの入れ知恵だ」

 

「……まあ、何も出来ないよりはマシね。あれがなかったら彼女、避けるだけしかできないところだったから」

 

「最終的には魔闘術(ブラック・アーツ)の剣バージョンが出来れば恩の字だとウィリアムは言っていたな」

 

「不可能な気もするけど……確かに出来れば今より強くなるでしょうね」

 

 

リィエルの素の身体能力に魔術の破壊力が加われば、確かに今より脅威となる。

イヴは最後にシスティーナを見て、そろそろ彼女は頭打ちになるとグレンに伝え、改めて今のままでは勝てないと言おうとした矢先。

 

 

「ちぃ~~~~っす」

 

 

いかにも軽薄そうな挨拶がその場に響き渡った。

見れば二十名程の模範クラスの面々がこの場に来ていた。

彼らの話から、どうやらメイベルからの提案で二組と模擬戦をしにきたようだ。ここで実力差を見せつければ、自分達に挑む気がなくなるんじゃないかと。

その申し出をイヴは受け入れ、一対一の個人戦を二十回行う団体戦を提案した。

イヴはその団体戦のメンバーにウィリアムを入れず、二組と模範クラスの決闘戦が始まった―――

 

 

 

結果は、二組の惨敗だった。

マキシムの教え子達は魔術の『武器』としての使い方だけを鍛えられてきたのだ。そんな()()()()()()の出だしが早い連中に、まだ()()()()()を使い馴れていない二組の惨敗は必然だった。

特にシスティーナと対戦したメイベルは群を抜いていた。技量が明らかに学生離れしている。

二組に圧勝した模範クラスの生徒―――ザックを筆頭とした取り巻き達は二組の女子生徒達に絡み始めていた。

 

 

「これから俺達とお―――」

 

 

ザックが嫌がるウェンディの腕を掴んで迫っていると、不意にザックの頭が何かに鷲掴みにされる。

 

 

「あ?誰だ―――」

 

 

ザックが不機嫌そうに後ろを向こうとした直後、ザックの頭を鷲掴みにしていた【騎士の腕(ナイツ・アーム)】が万力のようにザックの頭を締め上げ、その痛みからウェンディの手を離した瞬間、派手に投げ飛ばした。

 

 

「―――てぇなぁ!?誰だよ!?邪魔した奴は!?」

 

 

派手に投げ飛ばされて喚くザックを無視し、ウィリアムは割って入るように彼らの前に立ち塞がる。

 

 

「もう用はすんだだろ?用が済んだらとっとと帰れ。俺らはこれから反省会をしなければいけねぇんだ」

 

 

有無を言わさないその物言いに、模範クラスは苛立ちを露にし、ウィリアムに詰め寄って行く。

 

 

「さっきのはテメェの仕業か?」

 

「ザコが粋がってんじゃねぇよ」

 

「テメェもあいつらと同じように―――」

 

 

突如、ザック達の周りに一対の幾何学的な羽を有する上半身のみの甲冑騎士が何体も具現召喚され、その内の一体が取り巻きの一人を派手に投げ飛ばした。

 

 

「手荒いのがお望みなら、容赦なく相手になるぞ?」

 

「へっ……こ、後悔すんな―――」

 

「そこまでにしときなさい」

 

 

一触即発の空気が流れ始めたその時、イヴが割って入り、模範クラスにこれ以上は妨害だと告げ立ち去るようにいうも、ザック達はイヴを見下し自分達に逆らわない方がいいというと―――

 

 

「―――そういうことかしら?」

 

 

イヴはそのまま模範クラスとほぼ全員を同時に模擬戦をし、【ショック・ボルト】だけで地面に沈めていった。

倒れた模範クラスはメイベルと、いつの間にかいたチャールズという模範クラスの男子生徒が回収して立ち去っていった。

模範クラスの連中が立ち去り、お通夜のような空気が流れるなか、イヴは二組と模範クラスの魔術の技量にそれほど差がないことを言い、単純に判断力で負けていただけと指摘する。

 

 

「そして、連中の強さはもう()()()。あれ以上は今のままだともう伸びない。貴方達とは違ってね」

 

 

イヴが確信をもって告げた言葉に一同は困惑し、互いに顔を見合わせる。

 

 

「ただ、最初から魔術で隠れてこちらを見ていたチャールズという男子生徒は貴方達が戦った連中よりかは多少マシ、メイベルは完全な規格外だけど……それ以外の連中は魔術そのものの土台が非常に脆弱だから、あれ以上のモノは積められないのよ。逆に、グレンのおかげで土台がしっかりしている貴方達なら連中以上のモノを積む事ができる」

 

 

そしてイヴは、これから二週間でその土台にモノを積む訓練をみっちり施せば、見違えるほど伸びると言う。

イヴのその説明を受けた一同は……

 

 

「「「「よろしくお願いしますッ!!イヴ先生ッ!!!」」」」

 

 

一斉にイヴに頭を下げた。

イヴによって先程の空気は見事に吹き飛び、一同は意気揚々と合宿所へと戻っていくなか、グレンは素直にイヴに対して礼を言い、イヴも素っ気なく応じるも……

 

 

「……お前、本当にイヴか?」

 

「……どういう意味よ?」

 

 

グレンはそのままイヴに対し、失礼極まりない事を言い、偽物と判断してイヴの身体をまさぐり始め……

 

 

「《死ね》ッッッ!」

 

 

盛大に、イヴの魔術で吹き飛ばされた。

グレンとイヴはそのまま口喧嘩を始めていく。

 

 

(セクハラはスルーなのか……やっぱり仲良くね?)

 

 

二人の喧嘩に対して、ウィリアムはそんな感想を抱いていた。

システィーナとルミアは二人の喧嘩を汗を流して見つめ……

 

 

「ねぇウィル。システィーナとルミアの様子がおかしいんだけど、どうしてなの?」

 

「……複雑な乙女心というやつだ」

 

「……?」

 

 

リィエルの問いかけにウィリアムは曖昧な答えで返し、それに対しリィエルは首を傾げていた。

 

 

その後の就寝時間にて、リィエルが普通にウィリアムが泊まる部屋に来て一緒に寝ようとしていたので、退学話を持ち出して(一応)納得させ、本来の部屋へと帰らせた。

 

 

 




な、何故だ?甘いシーンは無いのに、向こうから黒い―――(作者はこの直後、突然発生したブラックコーヒーの津波に巻き込まれ、彼方へと流されました)

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