やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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この程度で、折れはしないぞ!
てな訳でどうぞ


九十七話

遂に迎えた『生存戦』当日。

グレン率いる二組の面々は緊張と静かな闘志を湛えて佇んでおり、対して模範クラスのほぼ全員は怠惰と慢心に浸かりきっている。

そんななかで『生存戦』のルールが説明されていき、マキシムが脱落基準を単純な戦闘不能のみというルールを追加してくる。

グレンも例の怪文書の存在から炎熱系魔術の使用禁止のルール追加を要求すると。

 

 

「……やはりあのメモ書きの悪戯(いたずら)は君の仕業だったか。チャールズが君の所にもあったと言っていたが、大方君の自作自演なのだろう?」

 

 

マキシムの言葉にグレンが目を見開き、直ぐに訝しげな表情をする。

まさか自分達の特訓を見張っていたのかと考えたが……

 

 

「チャールズ?ほぼ毎日、女子の大浴場を覗こうとしていた、そこにいる変態生徒のことかしら?」

 

 

イヴからもたらされた情報で、その可能性はすぐに霧散した。その代わり、新たな疑問が浮上した。

 

 

「ちょっと待て。まさかと思うが、あれを見たのか……?」

 

 

グレンの問いかけに対しチャールズは……

 

 

「おいしく撮らせていただきました」

 

 

ペコリ、と頭を下げた。

その瞬間、グレンとイヴ、ウィリアムから凄まじい量の汗が流れ始める。

あれを撮られたのだとしたら、あれが不特定多数に広められてしまう危険がある。

特にウィリアムとリィエルのあれは教師陣にバレたら停学、もしくは退学ものだ。

 

 

「「「今すぐ消せ(消しなさい)ッ!!!!!」」」

 

「嫌や!!こんなお宝、消すのも手放すのもお断りやッ!!」

 

「……と、兎に角、君の要求を聞く気は―――」

 

 

女子生徒から汚物を見るような視線がチャールズに集まるなか、マキシムは気を取り直してグレンの要求を突っぱねようとするも、イヴが自分が景品となるといい、炎熱系魔術の使用禁止ルールの追加が承認された。

そして一同はマキシムの持つ『アリシア三世の手記』により『裏学院』へと入っていく。

足を踏み入れた『裏学院』の偉容さに、ただ一人を除き唖然とするなか、マキシムは圧倒されながらも『アリシア三世の手記』を使い、ランダムワープ用の『門』を出現させる。『生存戦』は『門』を全員が潜り、配置されてから開始される。

生徒一同は、この『扉』を潜っていき―――

 

 

――たんっ!

 

 

同様に潜ったウィリアムも広々とした古めかしい教室内に降り立った。ウィリアムはそのまま周囲を見回していると、黒板近くに貼られた一枚の用紙に気付く。

その用紙には、火遊び禁止。火を使ったら“裁断の刑”に処すという不穏さ全開の内容だった。

やはりこの『裏学院』には何かある。そんな予感を感じながら、ウィリアムは呪文を唱え、幾つか呪文をストックしていく。

幾つか呪文を予唱(ストック)し終えたウィリアムは、索敵結界を展開しつつ教室を出て、廊下をゆっくりと歩き始める。

暫く歩き続け、階段を下った先に―――

 

 

「よお」

 

 

模範クラスの生徒の一人が待ち構えていた。さらに後ろの階段からも二人現れ、ウィリアムを挟み撃ちにする。

 

 

「お前には投げ飛ばされた借りがあるからよぉ。利子をつけて返してやるぜ?」

 

「この生存戦じゃあれはルール違反で使えない……あれがなきゃこっちのもんだぜ」

 

「俺らに歯向―――」

 

 

最後の一人が言い終わる前に、ウィリアムが【ゲイル・ブロウ】を時間差起動(ディレイ・ブート)し、放たれた突風の戦槌が容赦なく吹き飛ばし、壁に叩きつけられた生徒はその一撃で意識を刈り取られ、最後まで紡がれなかった。

 

 

「なッ!?時間差起動(ディレイ・ブート)だとッ!?そんな高等技術―――」

 

「《雷精よ》―――《五連射》」

 

「ぐわぁあああああああ―――ッ!?」

 

 

間髪入れずにウィリアムは【ショック・ボルト】の五連唱(ラピッド・ファイヤ)を食らわせ、もう一人の意識も刈り取る。

 

 

「くそっ!?《凍てつく氷弾よ》―――ッ!」

 

 

最後の一人が凍気弾―――黒魔【フリーズ・ショット】を放つも、ウィリアムは体捌きで近づきながら回避し、至近距離で【スタン・ボール】を時間差起動(ディレイ・ブート)し、最後の一人の意識も刈り取った。

最初の遭遇戦はウィリアムの圧勝。ウィリアムは警戒しながら次の標的を探し始めた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「《雷精の紫電よ》―――ッ!」

 

「……《雷精よ・紫電の衝撃以て・―――》」

 

 

飛んでくる紫電を、リィエルはヒラリヒラリと避けながら詠唱し、不意に姿が霞み消え―――

 

 

「《撃ち倒せ》―――ッ」

 

 

背後から至近、否、零距離で【ショック・ボルト】を起動し、放った。

 

 

「あぎゃぁあああああああああ―――ッ!?」

 

 

リィエルを見失った模範クラスの生徒はその紫電をマトモに受け、ばたりと床に倒れる。

 

 

「ん。上手くいった。頑張って勉強と特訓をした甲斐があった」

 

 

リィエルは誇らしげに呟き、次の獲物を探しに行った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「何故だ!?何故私の“正しい教育”で教えられた生徒達が、こんな“間違った教育”で育てられた連中に、何故逆に圧倒されているのだ!?」

 

 

エントランスホールの投射映像に映し出された模範クラスの生徒達が、どの映像でも二組の生徒達に次々と討ち取られていく光景にマキシムは驚愕と屈辱を露にして吠えたてる。

 

 

「簡単な話よ。土台作りを切り捨てた貴方の方針と土台作りをしっかりしてきたグレンの方針。家に例えるなら、脆弱な地盤と強靭な地盤に同じ速度、同じ家を建てた時、どちらが安定した家となるか……ただそれだけよ」

 

「ぐ……」

 

「いい加減認めたら?貴方の教育方針は、最初から“間違っていた”という事に」

 

「そ、そんなはずがぁ……ッ!?」

 

 

マキシムは映像を凝視するも、現実は変わらずまた一人、また一人と討ち取られていく。

結果は火を見るより明らかだった。

 

 

 

そんななか、恐るべき現実が刻一刻と迫ってきていた―――

 

 

 




チャールズよ、そのお宝いい値で―――(この直後、殴り飛ばされ、銃弾になぶられ、炎で消し炭となりました)
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