てな訳でどうぞ
全てが焼かれた、図書室の奥で―――
「「…………」」
グレンとウィリアムはどの頁もインクで汚れた『Aの奥義書』に見向きもせず、切り刻まれ、小山のように積み重なった紙くずの傍らの前に立つ。
その紙くずの山は、“裁断の刑”に処されたイヴだったものだ。
「……イヴの先公……」
「……馬鹿野郎」
とても重く、暗い雰囲気に包まれるなか―――
「先生ぇええええええええええええ―――ッ!!」
本から元の姿に戻ったカッシュ達が、歓喜の表情で駆け寄ってくる。
今回も無事に解決したと彼らが喜びで沸き立つなか―――
「あの……グレン先生。イヴ先生は一体どこに?」
セシルの問いかけに、喜びに浸っていた生徒達が我に返って気付き……
「そういやあ……イヴ先生はどこに……?」
「辺りも焼け焦げていますし……」
「確か、火を使えば“裁断の刑”が……」
「まさか……その紙くずは……?」
「おい、冗談だろ……?なぁ、先生……?」
状況を理解し始めた生徒達は、必死にその可能性を否定しようとするも、無情にもその現実が彼らの両肩にのし掛かっていく。
「イヴさんは……炎の魔術を……私達を守るために……」
システィーナが声を震わせながら告げた言葉に、彼らも全てを悟り、紙くずの前で涙を流し始める。
ウィリアムもその場で膝をつき、やるせない思いで拳を床に突き立てる。
誰もが悲しみに暮れるなか、千切った
「この学院の学院長、アリシア三世の権能をもって……“貴女達の火遊びの違反行為を不問に致し……
メイベルがそう宣言した瞬間、紙くずの小山が優しい黄金色の光に包まれ、切り刻まれた
そして、元通りとなった
「……何……?なんだか頭がぼうっとして……」
イヴは元通りとなり、ぼんやりとした表情で周りを見やる。
「……?貴方達、なんで泣いて……?」
「「「「わぁあああああああああああああああああああああああ―――ッ!!!!」」」」
「わきゃあ!?ちょっと何!?なんな―――」
「良かった!良かったよぉおおおおおおお―――ッ!!!」
「イヴ先生~~ッ!」
「ぐすっ、うわぁあああああああああんっ!」
「ちょっと!お願いだから放れて、苦し―――」
目を白黒させながらイヴは怒鳴るが、生徒達は一向に放れず、抱きつき、もみくちゃにしていく。
そんな光景を、ウィリアムも安堵の表情で眺める。
『裏学院』での騒動は全員生還で、ようやく幕を閉じた―――
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例の騒動から後日、マキシムと武断派の教導省官僚十数名と学院理事会の有力者との間に、かなりの収賄があったことが露呈した。
リゼから依頼を受けたセリカが、様々な手段を使って不正行為の証拠をかき集めてきたのだ。
ファムもセリカの証拠集めに以外にも協力し(後に餌で協力していた事が分かった)、相当な量の有力な証拠が集まっていた。
リゼがその証拠を元に、的確に関係各位へと働きかけマキシムを糾弾、失脚へと追い込み、リックはめでたく学院長復帰となった。
勿論、全面衝突していたら、結果はどうなっていたかはわからない。だがマキシムはその糾弾をあっさりと受け入れ、素直に退陣していった。
「私には足りないものが多すぎた…………零からやり直しだ」
……そんな言葉を残して。
マキシムの退陣により模範クラスも当然廃止。件の事件に巻き込まれた模範クラスの生徒達も、心に多大なダメージを負い、リゼから渡された編入試験案内要項一式を手土産に、故郷へと帰ることとなった。……約一名を除いて。
「本日からこのクラスでお世話になるチャールズ=テイラーです。以後よろしゅうお願いします」
模範クラスの一人だったチャールズはすぐさま編入試験を受け、見事合格し、改めて学院の生徒となったのだ。
チャールズを受け持つことになったグレンは当初、彼がクラスに馴染めるのか心配だったのだが。
「「…………」」(ガシッ!)
カッシュとチャールズは無言で握手を交わし、周りの男子生徒も、以外にもチャールズを受け入れていた。……写真が入った封筒を片手に。
女子生徒達も、最初は訝しげな目でチャールズを見ていたが、チャールズが渡してきた写真―――教導中のイヴの写真―――を咳払いしながら受け取り、あっさりと受け入れた。
そのやり取りで、すっかり忘れていた事―――例の“お宝”を思い出したウィリアムはチャールズに詰め寄り、即刻消すよう脅迫するも。
「勿論……お断りやッ!!!」
チャールズはそう叫ぶと同時に、何処に隠していたのかと云わんばかりの大量の写真を、教室全体にばら蒔く。ばら蒔かれたその大量の写真は―――イヴとリィエルのあの時の写真だ。どちらも見上げるかのように撮られており、色っぽさに拍車がかかっている。しかもイヴとリィエルのツーショット写真までばら蒔かれている。
「こ、これはッ!?」
「は、ハレンチですわッ!!」
「ありがとうございますチャールズ様ッ!!」
「この体勢、誰かを押し倒してないか!?」
「まさか……」
「お察しの通り、イヴ先生はグレン先生を、リィエルちゃんは今僕の胸ぐらを掴んでいるウィリアム君を押し倒している構図です」
「「「「よし、死ねッ!!リア充のクソ野郎共ッ!!!!!!!!!」」」」
「「チャールズ貴様ぁああああああああああああああ―――ッ!!!!!」」
そんな感じでチャールズはあっさりと二組へと馴染んでいった。
この後チャールズは、グレンとウィリアム、事態を知ったイヴによって完膚なきまでに制裁され、件の“お宝”はイヴの手によって全て永遠に抹消された。
ちなみに、チャールズの下宿先はツェスト男爵が手配する事となったそうだ。
「こんな素晴らしい美少女の涙目写真をダースで渡され―――ゴホンッ、身寄りのない人物を無下にするなど帝国紳士のすべきことではない!!」
……ちゃっかりと買収されていたようであった。
――――――――――――――――――――――――
国の方針で新しく追加された授業―――『軍事教練』は、生徒達からすんなりと受け入れられた。
理由は簡単、それを受け持つ派遣された軍人―――イヴのスタイルと面倒見の良さからだ。
現に―――
「「「「イヴ先生ぇ~~ッ!!」」」」
「ちょっとッ!?引っ張らないで頂戴!?」
このように、イヴがあちこちで生徒達に振り回されているのだ。もう人気者である。
「……グレンの先公、それは?」
そんな光景を眺めていたウィリアムは、グレンがその手に持っている手帳に気付き、問いかける。
「メイベルの本来の姿、っていやあわかるか?」
「オッケ、把握した」
その手帳―――『アリシア三世の手記』をグレンは風車のように回しながら……
「厄介ごとはもう打ち止めにしてほしいんだけどなぁ……?」
「……また、来るんだろうなぁ……」
「……ですよねぇ~……」
「「ハァ……」」
グレンとウィリアムは、揃って深い溜め息を吐いた。
十一巻はこれにて終了
ここからは原作のあらすじ待ちですね(もしくは外伝)
それ次第ではオリジナルを挟んでから原作になるかもしれません
考えている話の構成は長期休暇中の·······修羅場(バレバレ)
感想お待ちしてます
件の“お宝”は回収した。これは我が家宝にしよう
―――この後、燃やされました