やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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完成したので更新!
てな訳でどうぞ


百四話

セリカの鶴の一声で旅行へ行くことになったグレン達。

セリカ曰く、今回の旅行先はアルザーノ帝国に存在する辺境小地方の一つスノリアである。

やたらハイテンションなセリカに引きずられる勢いで、翌日にフェジテを発ったのだが。

 

 

「あれ~?先生達じゃないですか!」

 

 

馬車の中で一人の肌白い、金髪の少女に話しかけられていた。

 

 

「お前は確か……」

 

「ハイ!一年の天才剣士、オーヴァイ=オキタさんですよ!!」

 

 

その金髪の少女―――オーヴァイが胸を張って自己紹介していく。

 

 

「ひょっとして里帰りか?」

 

「ハイ!久しぶりにスノリアに帰るところなんですよ!今からお母さん達に会うのが楽しみで楽しみで!!」

 

「え!?今スノリアって言わなかった!?」

 

「ハイ。そう言いましたが」

 

「私達、ちょうどスノリアに旅行に行くところなんだけど……」

 

「そうなんですか?ということは『銀竜祭』に参加されるんですね!?」

 

 

システィーナの言葉にオーヴァイは目を輝かせて訊いてくる。

 

 

「ああ。この時期はちょうど『銀竜祭』が開催される時期だからな」

 

「でしたらこのオキタさんに説明させて下さい!!なんたって地元ですからね!!」

 

「……そうだな。せっかくだから説明してもらおうか」

 

「ありがとうございます!それでは説明させて頂きますね!!」

 

 

オーヴァイはそのまま『銀竜祭』について説明を始めていく。

 

 

「『銀竜祭』は元々はスノリアに伝わる土着地方宗教に根ざした、白銀竜と呼ばれる竜の神様を崇める伝統祭事でしたが、今の市長さんが観光事業の一環として外から来る方も楽しめるお祭りとして復活させたんです!おかげでスノリアは近年話題の観光地として広がっていっているんですよ!!」

 

「そうね。確かにスノリアが観光名所として有名になったのは本当に最近だものね」

 

「ハイ!ただ、その弊害も現れてはいるんですが……」

 

 

オーヴァイは若干肩を落とす。

 

 

「弊害?」

 

「ハイ。年配の方々が反発しているというか……白銀竜信仰を極端に拗らせた集団が今の『銀竜祭』をぶち壊そうとしているというか……」

 

「……ほう?せっかくの旅行を台無しにする輩がいるのか?」

 

 

オーヴァイの沈んだ言葉にセリカが反応し、その両目を一気に据わらせる。それを見たオーヴァイは慌てて弁明していく。

 

 

「だ、大丈夫ですよ!現役の警備官たる私のお母さんが、その連中が迷惑な行動を起こしたら、即刻ぶちのめしていますので!!だから今年も大丈夫の筈です!!」

 

「そうかそうか。もし祭りが中止になったら、怒りでその街を地図から抹消しそうだからな」

 

「抹消!?お願いですから止めて下さい―――カハッ!?」

 

「オーヴァイさん!?」

 

 

セリカの物騒な発言にオーヴァイは懇願するも、吐血。目の前で吐血された事でシスティーナが大慌てでオーヴァイに駆け寄っていく。

 

 

「オーヴァイさん、しっかりして!?」

 

「だ、大丈夫です……ちょっと動揺しただけですので……」

 

「ルミア!!急いで治療して!!」

 

「う、うん!」

 

 

システィーナの呼び掛けでルミアは大急ぎでオーヴァイに治癒魔術を施していく。

 

 

「まったく。この程度で吐血するとは情けないな~。やるとしても地図から半分消えるくらいさ」

 

「消す時点でアウトだからな!?」

 

「頼むからそんな物騒なジョークは今はやめてくれ!!」

 

「ん?わりと本気だが?」

 

「ゴハァッ!?」

 

「オーヴァイさぁああああああああああん―――ッ!?」

 

 

セリカのブラックジョーク(?)にオーヴァイはさらに吐血。場がさらに混沌とするなか。

 

 

「…………すぅ……」

 

 

約一名は夢の中であった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

馬車で数日、帝都から鉄道で何時間も時間をかけ、オーヴァイを加えた一行はスノリアでもっとも発展した地方都市であり観光目的地でもあるホワイトタウンに到着した。

 

 

「ここがホワイトタウンなのね!?」

 

 

防寒具をしっかりと身に纏い、駅前広場に出たシスティーナが歓喜の声を震わせる。

街は既にお祭り騒ぎであり、あちこちに雪だるまや色とりどりのキャンドルや屋台が並んでいる。

 

 

「あそこで大道芸をやっている人がいるよ!」

 

「苺タルトの屋台……どこにあるの?」

 

「この時期のスノリアには見所が多いからな。きっと楽しい旅行になるぞ?」

 

 

ルミア、リィエル、セリカもばっちりと防寒具に身を固め、街の楽しげな雰囲気を堪能している。そんな中―――

 

 

「さっぶぅうううううううううううううううううーーッ!?」

 

「だらしないですね、グレン先生は」

 

「そんな薄着じゃ当然の結果だろ」

 

 

グレンは講師服のローブを纏っただけという、寒冷地を舐めきった格好で寒さにガチガチと震えており、オーヴァイはシスティーナ達と比べたら薄い手の防寒具にも関わらず平然としており、旅行前日に買った防寒具を身に付けたウィリアムは仏頂面で呆れていた。

ちなみにファムは今回はフェジテでお留守番である。

 

 

「オーヴァイ。お前はそんな薄着で平気なのかよ?」

 

「地元なので慣れてますから平気です!本当は薄手でも大丈夫なんですが、それだと周りが騒いでしまいますからね!!」

 

「……本当に身体が弱いのか、疑わしくなる台詞なんだが」

 

 

オーヴァイとウィリアムのそんな会話を尻目に、セリカは寒さで震えるグレンに後で防寒具を買うと約束し、そのままグレンの腕を自身の腕へと絡ませて予約していたホテルへと向かっていく。

 

 

「…………」

 

 

リィエルはそんな二人を見て何を思ったのか、自身の腕をウィリアムの左腕へと絡ませた。

 

 

「急にどうしたんだ?リィエル」

 

「不思議とやってみたくなった。このまま一緒にいこ?」

 

「……だったら力を緩めてくれ。凄く痛い」

 

「ん」

 

 

リィエルは素直に力を緩め、そのままウィリアムとリィエルは腕を組んだまま、グレンとセリカの後を追いかける。その様は、端から見ればまるで、というより、まさに恋人同士である。

 

 

「~~~~~~ッ!!」

 

「……やっぱり、このままじゃ駄目だよね……」

 

「うわぁ!お熱いですね!!」

 

 

その光景にシスティーナは唸り、ルミアは決意を改め、オーヴァイははしゃいでいた。

そんな一行はシャトースノリア―――スノリアの最高級ホテルへと向かうのだが……

 

 

「このホテルは、我々《銀竜教団(S・D・K)》が占拠したッ!」

 

「このスノリアの地は、我らが白銀竜様の神聖な聖域ッ!!」

 

「故に、余所者は立ち去り、偽りの『銀竜祭』を即刻中止すべきであるッ!!」

 

「不届きもの達に竜罰をッ!!」

 

「「「「S・D・Kッ!!S・D・Kッ!!!」」」」

 

 

その高級ホテル前広場には何故かバリケードが張られており、その内側にいる白頭巾で顔を隠した変態集団がそう叫んでホテルを占拠していた。

 

 

「あれは一体何なの……?」

 

「……あれがお話しした傍迷惑な連中ですよ。だけど心配ありません!すぐにお母さんが解決しますので!!」

 

 

オーヴァイはシスティーナにそう言って辺りを見回し、対策本部らしきテントにいる、長い金髪をポニーテールに結び、自身の身長を優に超える刀剣―――東方の刀『大太刀』を帯刀している女性へと近づいていく。

 

 

「お母さーーーーーーーんッ!!」

 

 

オーヴァイはそう声をあげながらその女性へと飛び込んで抱きついていく。

 

 

「オーヴァイ!?」

 

 

その女性はオーヴァイを視界に収め、驚きを露に彼女の名前を口にする。

 

 

「すいません!お仕事中に邪魔しちゃって……!」

 

 

慌ててオーヴァイの後を追いかけたグレン達は、その女性へとグレンが代表として謝罪する。

 

 

「すまないが貴殿方は……?」

 

「分かりやすく言えば貴女の娘さんが通っている学校の講師と、彼女の先輩達です」

 

 

グレンの簡潔な説明で理解した彼女は微笑み、そのまま自己紹介していく。

 

 

「そうか。この状況だが自己紹介させてもらおう。私の名はオルビス=オキタ。この子の母親であり、スノリア警備官隊の総括者を務めさせてもらっている者だ」

 

「お母さん!さっさと連中をぶちのめして解決しちゃって下さい!」

 

 

オーヴァイは母親―――オルビスに子供のように頼み込むも。

 

 

「……残念ながら今回は不可能なんだ」

 

 

オルビスから出された言葉は無念に彩られたものだった。

 

 

「どうしてなんですか!?」

 

「連中はホテル内の人達を各フロアで軟禁している。それだけならまだ何とかなるのだが……」

 

 

オルビスは苦い顔で一番の障害を口にする。

 

 

「連中は炸炎黒石を用意しているんだ……」

 

「なんだと!?」

 

「マジかよ……」

 

 

オルビスからもたらされた情報にグレンは驚愕に目を見開き、ウィリアムは危険物を用意していた事にうんざりする。炸炎黒石は爆晶石より段違いの爆発力があり、魔力量や術式で威力や指向性も自由自在、おまけに解呪(ディスペル)には超一流の解呪師が何人も時間をかける必要がある厄介極まりない魔道具だからだ。

 

 

「まさか連中がここまでして銀竜祭を中止にさせよう等とは流石に予想していなかった。これは私達の落ち度だ」

 

 

オルビスは申し訳なさそうにそう言うが、元々《銀竜教団(S・D・K)》はテロリストというよりちょっと過激なプロ市民団体のような集団だ。その連中が炸炎黒石を持ち出す等、予想出来ていなくても責められるものではなかった。

 

 

「だから今年の銀竜祭は連中の要求に従い、中止にするしか方法がない。せっかく来てくれた方々には申し訳ないが、人命には替えられないからな」

 

「……こればっかりは素直に帰るしかないな。完全に宮廷魔導士団の案件だし」

 

「そうですね……流石に帰るしか……」

 

 

グレンの真剣な言葉に、想像以上に深刻な事態だと察したシスティーナも今回ばかりは素直に同意し、諦める事にする。

 

 

「つー訳で、セリカ。悪いが今回の旅行は―――」

 

 

グレンはセリカに話しかけ、途中で言葉を止めてしまう。何故ならそのセリカ本人から凄まじい怒りのオーラが溢れていたからだ。

 

 

 

《灰塵の魔女》による蹂躙劇の開幕はすぐ傍まで来ていた。

 

 

 




オキタさんズ、親子として登場!!母親は勿論オルタさん!
理由は母は強い、それが世界の真理であるからだ!
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