てな訳でどうぞ
「つまり、あの連中は私とグレンの楽しい楽しい旅行をぶち壊そうとしているという事だな?」
怒りと不機嫌さ全開のオーラに身を包んだセリカは据わった目と底冷えするような声でオルビスに問いかける。
「貴女からすればそうだろうな……炸炎黒石さえどうにか出来れば何とか出来るんだが……」
「つまりその下らない玩具さえなければ問題なしと……」
「ああ。連中の配置場所も、人質達の居場所も既に把握している。炸炎黒石は最上階のスイートルームに居座っている、この騒動のリーダー格の教団員が持っている事もな」
「そこまで把握しているのに何で手をこまねいているんだ?」
「情けない話なんだが、私に一因があるんだ……」
オルビスはそう言って溜め息と共に理由を語っていく。
「連中が騒動を起こす度に私達が素早く制圧していてな……今回の炸炎黒石はその対抗手段として用意されたものなんだ。私達が制圧に踏み込んだ瞬間に爆発させると言っていたから間違いないだろう」
「転移、もしくは転送魔術で直接最上階に行くのは?」
「その場合も同様だ。そいつはずっと炸炎黒石を手に持っている上に既に起動状態なんだ。だから大人しく要求に従う以外に手がないんだ」
オルビスの詳細な説明にセリカを除く一同は息を呑む。確かにそんな状況では相手の要求を呑むしか方法がない。
「そんな玩具、私なら一瞬で
……この場に世界最高峰の魔術師、セリカ=アルフォネアが居なければだが。
「……それは本当か?」
「ああ。ついでに連中も軽く一捻りしてやってもいいぞ?」
「俄には信じ難いが……いや……」
オルビスは思案の途中でセリカの顔をまじまじと見つめ、ひょっとしてという感じで目を見開き言葉を口にしていく。
「まさか貴女は彼の有名なセリカ=アルフォネアか……?」
「そうだけど?」
セリカはオルビスの言葉をあっさりと肯定し、オルビスも確認の為にグレン達に視線を送る。グレン達もその視線の意味を正しく理解し、頷いて肯定する。
「申し訳ないが、貴女のお力をお貸し頂けないだろうか?私の転送魔術で貴女を最上階のスイートルームに送る。そしてすぐに炸炎黒石を
「
了承の返事より先に蹂躙を容認させようとする辺り、セリカはやはりご立腹のようである。
「申し訳ないがそれは控えて頂きたい。下手に死者が出たり、流血沙汰にすると祭りが中止になる恐れがある。建物の倒壊も同様だ」
「ちっ……いささか面倒だな」
「だが、先の言葉に抵触しなければ貴女の好きにして構わない。用は建物が無傷、犯人共は死ななければいいのだからな」
「ふっ、任せておけ!私の手にかかれば連中を殺さず無力化する等、朝飯前さ!!」
オルビスの警備官らしからぬ許可発言に、セリカは先程とは売って変わって満面の笑みで了承する。そのままオルビスは制圧作戦を事細かに詰め、警備官全員に作戦を伝え終え、それぞれの持ち場に就かせる。
「ではいくぞ……《転送》ッ!」
全ての準備を終えたオルビスはセリカに手をかざし、瞬時に最上階へと転送する。それとほぼ同時に持ち場に待機していた警備官達が、実に洗練された動きでバリケードを悠々と乗り越え、広場にいた教団員達を次々と失神させて無力化していく。
「正気か!?そんな事をすればこの付近は―――」
教団員の一人がそういいかけるも、その途中で空から何かが降り落ち、雪の地面へと仰向けに沈み込む。その何かは何てことはない。セリカによって炸炎黒石を
「残念だったな。最大の障害は飛び切りの助っ人によって排除された。もう貴様達に付き合う必要はない!」
「そ、そんな―――ッ!?」
教団員の叫びは警備官が繰り出した、警棒の八連突きで遮られ、そのまま意識を失った。
広場を制圧した警備官達は流れる動作でホテル内部へと突入し、中にいた教団員も外の連中同様に無力化していく。
教団員は人質を盾にしようとしても警備官達はそれより早く人質達の元に辿り着いており、手出しできない状態となり、なすすべなく制圧されていく。
勿論、それだけにはとどまらず―――
ちゅっどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!!!!!
「「「「ぎゃあああああああああああああああああああああ―――ッ!?」」」」
「よくも私とグレンが泊まるホテルで好き勝手してくれたな!?《全員・覚悟はできている・だろうな》ッ!?」
「「「「うぎゃああああああああああああああああああああ―――ッ!?」」」」
「マッチョが……暑苦しいマッチョが俺の顔にぃいいいいいいいいいいッ!?」
「いやだぁああああああああああああッ!?オカマと抱き合いたくないぃいいいいいいいいいいい―――ッ!!!!」
「ママーーーーーーーーッ!?」
最上階へと転送され、上から下へ向かっているセリカによるお仕置き魔術や憑依魔術による英雄の動き、身の毛も弥立つ精神支配魔術で、教団員達は次から次へと吹き飛ばされ、意識を刈り取られ、覚めぬ悪夢に囚われて蹂躙されていく。
こうして、その日に起きた《
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――《
「こうしてお会いできて本当に光栄です、セリカさん。そして、貴女のお陰で事件も早期解決し、今年の『銀竜祭』も問題なく開催する事ができます……心よりお礼を申し上げます。……本当にありがとうございました」
「私からも礼を言わせてほしい……貴女のご助力に感謝致します」
自らセリカが宿泊するスイートルームに赴いた、スノリアの現市長のジョンとオルビスは深々とセリカに頭を下げてお礼を言う。
「そして、貴方がたに目一杯、スノリアでの秋休み休暇を楽しんで頂けるよう、精一杯便座を図る事も約束致します。この程度で恩を返せたとは思えませんが……」
「いえいえ!?既に十分過ぎる程、恩を返してますよ!?」
ジョンの聖人君子ぶりにグレンは堪らず謙虚する。既に事件を早期解決したお礼としてホテルに関する賃金は全てタダという十分過ぎるお礼を貰っているのだ。
「どうしてそこまで『銀竜祭』の開催に拘るんですか?」
同席していたシスティーナが疑問に思い、ジョンに遠慮がちに聞いてみると。
「……『銀竜祭』は今のスノリアの生命線だからです」
ジョンの代わりに、彼の秘書であるミリアが答える。
「少し暗い話になるが、元々スノリアは近代化の波に取り残された地域。過疎化も年々進み、そう遠くない未来に帝国から消えゆく……ジョン市長が観光名所として町おこしするまではそんな地方だったんだ」
「あ……」
オルビスが引き継ぐように以前のスノリアの状況を説明した事で、馬車でのオーヴァイの話もあり、システィーナも含む彼らは大体の事情を察した。
「その……ごめんなさい……少し無神経な質問をしてしまって……」
「謝らなくていいですよ。余所からきた方々には当然の疑問でしょうし」
「どうしても気にやむなら、明日からの『銀竜祭』を目一杯楽しんで行ってくれ。皆が楽しんでもらえれば私達も嬉しいからな」
「……はい」
ジョンとオルビスの穏やかな心遣いの直後。
「失礼しまーーすッ!!おやつの羊羮や饅頭等をお持ちしましたよーーッ!!」
元気一杯に扉が開けられ、ニコニコ顔のオーヴァイがトレイの上にある帝国では珍しいお菓子やお茶をテーブルの上へと並べていく。
「これが噂に聞く東方のお菓子なのね……!」
「ハイ!私のお父さんがお母さんから聞いた話を元に再現したものですが、味は保証しますよ!」
「少し苦味が強い茶と一緒に食べるといいぞ」
「結構甘いなこれ(モグモグ)」
「何一人で先に食べちゃってんのぉおおおおッ!?」
「はむはむ……美味しいけど苺タルトの方がいい」
「こっちもかよ!?しかも失礼な事まで言いやがって!?」
先ほどの微妙な雰囲気は嘘のように消え、一同はそのまま、出されたお菓子を楽しんでいった。
ちなみにこの後、セリカが勝手に二人部屋を二つ、追加で取っていた事、その部屋割りを知ったウィリアムはその場でうちひしがれる事となった。
部屋割りはお察しの通りだよ(ニヤリ)
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