てな訳でどうぞ
次の日の早朝。
銀竜祭開催のセレモニーが始まり、スノリアの各集落方面からの代表者である巫女役の少女達が聖火を掲げながら市内へと入来した。
三人の巫女と、その従者達はホワイトタウン中央大広場に築かれた祭壇へと辿り着き、聖火と燻製等の供物を一つに纏め、祭壇で待機していた巫女が北の山脈の入り口の麓に築かれた《竜の祠》へと納めるそうだ。
「あの儀式は―――」
「あの儀式はこのスノリア地方の守護者、白銀竜に感謝を捧げる儀式だ」
システィーナが胸を貼って説明しようとすると、セリカが先んじてあっさりと言ってしまう。
セリカはそのまま白銀竜がどういった存在か、メインイベントの一つであり、『メルガリウスの魔法使い』にも書かれている奉納舞踊についても説明していく。
「……っと、説明している間にセレモニーは終わったな。せっかくだから、各種イベントを回ってみようぜ」
「あっ!?待てって、こら!引っ張るなよ!?……ったく、ガキのようにはしゃぎやがって……」
セリカはそう言ってグレンの右手を引いて歩き出し、セリカに引っ張られているグレンも口で言う割には嫌そうでもなくそのまま一緒に歩いて行く。
「今日はいっぱい遊ぶから早くいこ?」
「はいはい」
そんなセリカとグレンの後を追いかけるようにリィエルも続き、ウィリアムもリィエルに引っ張られるように歩いて行く。
「うぬぬぬぬぬ……」
「あはは……」
「中々お熱いですねぇ~」
そんな二組を、システィーナは悔しげに、ルミアは苦笑いで、その場で合流していたオーヴァイは笑顔で見送るのであった。
そんな感じで本格的に始まったスノリアの銀竜祭を見て回っていく一同なのだが……
「グレン!北地区の高台に上ってみないか!?アイスリア山の絶景はお前も見たいだろ!?」
「はいはい。我が
「わたしたちもいこ?」
「ああ、そうだな」
「高台の最短ルートはこっちですよー」
「お前の分までアイスを買ってきてやったぞ?せっかくだからあーんして食わせてやろうか?」
「なんでこんなところでアイスなんだよ!?それと一人で食えるわ!!」
「苺タルトいっぱい買ってきた。一緒に食べよ?」
「苺タルトだけかよ……」
「せっかくですから苺大福もどうですか?」
「オーヴァイ!?いつの間に俺の隣に!?」
「この機会にお二人と仲良くなりたいと思いまして。そして手合わせを願えれば……」
「しかも理由が物騒!!」
「?」
こんな感じで祭りを回って楽しんでいるのだが、不満げな人物が約二名いた。云わずもがな、システィーナとルミアである。
「これじゃあ、完全にお邪魔虫じゃない……!」
「今の私たち、完全に引っ付き虫だよね……」
「このままじゃ、女の子として見てもらえるどころか、一緒に居たという記憶すら、先生の頭に残らないわ!」
「そうだね……このままじゃ駄目だよね!」
システィーナは拳を握り絞めて悔しげに顔を歪ませ、ルミアもいつになく表情を引き締めて彼らを見やると……
「いえ~い!私の勝ちだなグレン!!」
「ずりぃぞセリカ!?今のコルク弾、明らかに途中であり得ない曲がり方をしたぞ!?ぜってぇ今の、魔術を使っただろ!!」
グレンとセリカは遊戯屋台で射的勝負をしており……
「むぅ……全然当たらない……投げ飛ばしたら一発なのに……」
「絶対にするなよ?」
「いえーい!また当たりましたよー!!」
その隣では、リィエルはコルク銃を構えたまま不満げに頬を膨らませ、ウィリアムがそんなリィエルを宥め、オーヴァイはまた当てた事にはしゃいでいた。
「何とかしてオーヴァイさんのように割り込まないと……!」
「でも……今の教授、楽しんでいるけど、すごく焦っているように見えるんだよね……」
「え?教授が焦ってる?」
ルミアのその言葉に、必死に頭をフル回転させていたシスティーナは思考を中断してルミアに聞き返す。
「うん……まるでこの機会を逃したら、もう二度と、先生とこんな時間を過ごす機会がない·····そんな感じに見えるんだよね……」
「…………」
ルミアの気のせい、とは一言では片付けられなかった。ルミアはこれまで他者のそういった予感を当てているのだからルミアがそう言うのであればそうなのかもしれない。
とは言え……
「……だけど、このままじゃいけないのはルミアも同じでしょ?せっかく旅行に来たのに……(私だって、先生と一緒に遊びたいし……)」
「……システィ?」
「はっ!?な、なんでもないわよ!なんでもないの、あはは……ッ!」
最後の呟きを拾われそうになり、システィーナは慌てて手を振って誤魔化す。
「でも、どうやって割り込んだらいいのかしら?全然、隙がなさそうに見えるんだけ―――」
「「あああああああああああああああああーーッ!?」」
背中からの突然の大声に、システィーナとルミアは驚いて思わず振り返る。そこに居たのは……
「フランシーヌにコレット!?それにジニーまで!?」
以前聖リリィ女学院へ短期留学した時に出会った、三人の少女達であった。
「システィーナにルミア!久しぶりだなぁーーっ!?」
「まさか、こんな所で再会するとは思いませんでしたわ!」
「どうもー、お久しぶりです」
フランシーヌとコレットは歓喜に満ち、ジニーは相変わらず気だるげに近寄っていく。
「どうして貴女達がこんな所に!?」
「理由は多分、お前らと一緒だろうよ!」
「わたくし達も、スノリアに旅行に来たんですの!」
「……おかげでバカお嬢のお世話なので、やってられませんね(ぼそっ)」
「え……ジニー?今―――」
ジニーがボソリと吐いた毒舌に、フランシーヌが聞き返そうとした矢先。
「あれ?フランシーヌにコレットにジニーか?」
「ひょっとしてお知り合いですか?」
ウィリアム、リィエル、オーヴァイの三人が彼女達の元に近寄って来ていた。
「リィエルにお兄様!」
「やっぱりお二人も来ていたのですね!」
「ご無沙汰してます、ウィリアムさん」
「はは……本当に久しぶりだな」
「ん。久しぶり」
そんなこんなの再会で、オーヴァイがフランシーヌ達に自己紹介した後、彼らは互いの近況を報告しあいながら歩いて行く。
「エルザは来てないの?」
「エルザさんは今回の旅行には参加されていません。今頃は故郷で山ごもりの修行を積んでおられる筈です……参加するよう強く言ったんですが……」
「あれ以来、エルザは鍛練に励み、腕を上げられています。思わず萎縮する程に……」
「軍のスカウトからも声がかかったみたいだし、この休暇中にまた腕をあげるんだろうなぁ……今度は天変地異の幻覚が見えるかもな……」
何故か三人の目がどこか遠くを見つめていた。そんな彼女らの様子に、ウィリアム達が疑問に思っていると。
「ウィリアムさん。つかぬことをお聞きしますが、リィエルさんとは何処まで進んでいるのですか?」
「……は?……ッ!い、いきなり何を……ッ!?」
現実に復帰したジニーの唐突な質問に、ウィリアムは思わず面くらうも、その意味を理解した途端、動揺してしまう。
「……進んでいるって、何?」
首を傾げるリィエルに、続いて現実に復帰したフランシーヌが例を上げる。
「そうですわね……例えば一緒に寝ている、とか」
「ん?一緒に寝ているけど?」
「「「……え?」」」
リィエルがあっさりと答えたその瞬間、彼女らの空気が一気に凍った。
「ちょっと待って下さい。一緒に寝ているって、夜、ベッドの上で?」
「そうだけど?」
「ど、どのくらい一緒に寝ているのですの……?」
「……一月くらい前?」
「ほ、他には……?」
「ウィルにむぐっ」
「頼むからそれ以上喋らないでくれ!!」
これ以上の暴露を防ぐ為にウィリアムは強引にリィエルの口を塞ぐ。
「お兄様!!詳細な説明を要求致しますわ!」
「特に一週間くらい前の事を詳しく!!」
「申し訳ありませんが喋って下さい。これは私たちのこれからの生活に関わりますので」
「黙秘する!!っていうか、何でそ―――」
「一週間くらい前って、ひょっとしてあれですかね?先輩方が獣耳と尻尾を生やし、ウィリアム先輩がリィエル先輩の尻尾をモフッていた」
フランシーヌ達の追及から何とか逃れようとした矢先、オーヴァイがさりげなく特大の爆弾をこの場にへと投下してしまった。
「……マジですか?」
「……本当ですの?」
「……本当なのか?」
フランシーヌ達の言葉に、未だ口を塞がれているリィエルはコクコクと頷いて肯定する。その直後、三人はその場で崩れ落ちた。
「ど、どうしたのよ急に!?」
「あれはそういう事でしたのね……」
「龍の幻覚が見えていた時は、リィエルとお兄様がそういう事になっていた時だったのか……」
「やっぱり無理矢理にでも今回の旅行に連れていくべきでしたね。もう後の祭りですが……」
「今頃、エルザは荒れていますね……」
「ああ。絶対に察知してるよな……」
「これからも龍の幻覚に怯える日々が続くんですね……」
三人の呟きに、ウィリアムは猛烈に嫌な予感を覚えながらも。
「は、早く現実に帰ってこいッ!?すごく目立ってるぞ!!」
必死に現実に呼び戻そうとしていた……
……とある地にて。
「…………はぁあああああああああ―――ッ!!!!!!!!」
その頃、山の木が開拓するように斬り倒されている光景が広がっていた……
彼女達はついに龍の出現タイミングを知りました
まさに好奇心は猫をも殺す、というやつかな?(多分違う)
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