やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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雪合戦開始!
てな訳でどうぞ


百九話

大会が始まってすぐ、システィーナとルミアはフランシーヌ達と密かに合流していた。

 

 

「考えたわね、コレット!有効な攻撃手段が雪玉しかない上、魔術が使えないなら頭数で有利な私達に勝ち目があるわ!!」

 

「だろ?このルールなら大会中は魔術の起動は出来ないからな!」

 

「そして、アルフォネア教授を直接倒した者が明日の銀竜祭を先生と見て回れる権利を得られる……恨みっこなしですわ!!」

 

「はぁ……面倒臭いですね……」

 

(……あれ?何か重要な事を見落としているような……)

 

 

笑顔のシスティーナと何故か悪い笑顔に見えるフランシーヌとコレット、そんなシスティーナをどこか哀れんだように見るジニーを見て、ルミアの頭に不安が過っていく。

 

 

「それにしても落ちているものは防御手段として使っていいなんて、随分変わっているわね」

 

 

システィーナが周りを見渡せば所々に一メトラ程の長さがある木の板や木の棒が幾つも落ちている。

 

 

「より白熱した雪合戦をするための措置なのでしょうね」

 

「いかにして相手に雪玉を当てるか、本人の腕の見せどころだな!」

 

「そうね。これ程有利ならアルフォネア教授に勝てる筈よね!!」

 

「ええ!リィエルとお兄様、オーヴァイさんとはまだ合流出来ていませんが……」

 

「まずは―――」

 

「―――邪魔な部外者達を全員、片付けるわッ!!」

 

 

一同は走っていた先にいた数名の参加者の集団を取り囲むように散開し、走りながら作った雪玉を猛然と投げ飛ばす。

その光景は雪玉の流星群。

恋する乙女達は目的の為に雪玉を投げ続けた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

雪合戦は混戦状態となり、システィーナは現在ルミア達とはぐれ、一人でセリカを探していた。

開始から小一時間程で参加者は殆ど脱落しており、残り人数も僅か。システィーナは木の板と雪玉を手に持ち、木の陰から様子を窺っていた。

 

 

「勝負はこれからよ……いくら教授が魔術師として規格外でも、魔術が起動出来ないなら私にも―――」

 

 

その胸の決意を確かめるように呟いていたシスティーナはそこでふと気付く。

 

 

「あれ……?そういえば、どうして魔術の使用じゃなく起動が禁止なのかしら……?」

 

 

大会中の魔術起動禁止。ゼッケン番号零番。そして、オーヴァイの語り口……

それらの情報が混ざりあい、一つの結論へと導かれていく。

 

 

「……ちょっと待って……そ、そんな筈が……」

 

 

その可能性に至ったシスティーナはどんどん顔を青ざめさせていく。彼女はようやく気付いてしまった。魔術起動禁止ルールの意図的な穴に。

 

 

「どうしたんだシスティーナ?そんなに顔を青ざめさせて」

 

「うひぃッ!?」

 

 

突然の背後からの声に、システィーナは慌ててその場から飛び下がりながら後ろの方へと向く。そこにいたのは圧倒的な存在感と威圧感を放っているセリカだった。

 

 

「あ、アルフォネア教授……」

 

「どうした?私を倒すんじゃないのか?」

 

 

セリカはそう言うや否や、手に持っていた雪玉を達人の剣技のような正確無比にシスティーナの顔すれすれを通過するように投げ飛ばした。

 

 

「あ、アルフォネア教授!?今の絶対に魔術を使ってますよね!?ルール違反ですよ!?」

 

「はははッ!何を言っているんだシスティーナ?魔術起動禁止ルールには一切抵触してないぞ?これは大会前に起動した術だからな」

 

 

予想はしていたが信じたくはなかった言葉にシスティーナは一気に絶望の淵に落とされる。確かにルールで禁止にしているのは魔術の()()、魔術の使()()が禁止ではない。

 

 

「その通りだ。戦いは開催前から既に始まっていたのだよ」

 

 

突然の上からの声に、システィーナはすぐに声がした方へと顔を上げると、そこにいたのは、零番のゼッケンを身に付け、右手に木の棒を手にした―――

 

 

「お、オルビスさんッ!?」

 

 

オルビス=オキタその人であった。

 

 

「成程。お前がホワイトタウン最強だな?」

 

「ああ。去年の大会は魔術戦となって特に白熱した戦いだった。私は楽しかったから今年も魔術は全般的にありでも良かったが、一般の参加者はそれでは楽しめないからな。だから今回のルールを追加したのさ」

 

 

オルビスからもたらされた事実に、セリカは不敵に笑い、システィーナは涙目で震えている。

 

 

「さぁ私を倒してみせろ。私を倒せば、その時点でその者が優勝だ」

 

 

オルビスは二人の前に降り立ち、挑発的に言い放つ。

 

 

「その余裕がいつまで続くのかな?今の私はエリエーテの能力と技術をこの身に降ろしているからな」

 

 

セリカはそう言い、木の棒と雪玉を手に持つ。セリカは現在、剣の欠片から【ロード・エクスペリエンス】を使っている。彼女(エリエーテ)の形見たる真銀(ミスリル)の宝剣はあの時のアセロ=イエロへの集中攻撃のさい、セリカが苛立ち紛れにアセロ=イエロに向かって剣を振るい、ものの見事に真っ二つに折れてしまったのだ。

 

 

「かの有名な《剣の姫》の力の一端と戦えるとは……剣士としてまさに光栄の極みだな」

 

 

オルビスも微笑み、雪玉を新たに手に持つ。緊迫の空気が漂い始める中、セリカとオルビスが霞と消え、風を切る音、雪玉が砕ける音が辺りにしばし響き渡る。

 

 

「驚いたな。再現度が相当落ちているとはいえ、ここまで着いてこられるとはな」

 

「いや、相当落ちているのに互角なのだから私もまだまださ」

 

 

互いに雪玉を投げ、迫り来る雪玉を木の棒で叩き落としながらそう言い合う二人は目にも映らぬ速さだ。

どうやって勝ちを拾えればいいのかと、必死に頭をフル回転させていると。

 

 

「システィーナ。ここにいましたのね」

 

 

いつの間にかフランシーヌとコレットがシスティーナのすぐ近くに佇んでいた。……大量の雪の妖精(スノーホワイト)達を携えた状態で。

 

 

「ま、まさか……」

 

「その様子だとやっぱり気付いていなかったみてぇだな?」

 

「すっかり油断してましたわねシスティーナ?」

 

 

フランシーヌとコレットが非常に悪い笑顔となって自身を見詰めている姿を見て、システィーナはようやく自身の大きな間違いに気付いた。

この戦いは大会が始まる前から既に始まっており、自身の持ちうる英智を総動員すべき魔術戦であったと。この雪の妖精(スノーホワイト)達も大会が始まる前に事前に喚んでいたのであろう。

 

 

「申し訳ありませんが貴女にはここで脱落してもらいますわ」

 

「今のお前じゃあれを見た限り、あの人達に瞬殺されそうだからな。この場合、ライバルは少ない方がいいだろ?」

 

「うう……」

 

 

フランシーヌとコレットからの死刑宣告にもうシスティーナは唸るしかない。

いざ処刑タイム!という矢先。

 

 

「うぎゃーーッ!!!」

 

 

向こうからジニーの声が響き渡る。少しして大きな雪玉に頭だけ残して埋まり、白目を剥いたジニーが転がってくる。

 

 

「「「……え?」」」

 

 

フランシーヌとコレットは信じれない思いで、システィーナは希望に満ちた思いでジニーが転がってきた方向に目を向けると―――

 

 

「やたー!今回はお母さんと戦えますよーーッ!!」

 

「ん。勝負」

 

「考えてたようだが、少し甘かったみたいだな?」

 

「あはは……」

 

 

木の棒を構えたリィエルとオーヴァイ、淡く発光している翡翠の石板(エメラルド・タブレット)を器用に指の上で回しながら大量の人工精霊(タルパ)を携えたウィリアム、人工精霊(タルパ)の後ろから苦笑いでこちらをみるルミアがいた。

 

 

 




雪合戦(という名の魔術戦)は一体どうなる!?
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