やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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雪合戦はどんな結末を迎える?
てな訳でどうぞ


百十話

―――時間は遡る。

 

 

「うーん。これは少しずるい気がしますねー」

 

「とか言いつつも、ちゃっかりここにいるんだな」

 

「……暇」

 

 

そんな感じでのんびりと談話しているのはウィリアムにリィエル、オーヴァイの三人である。雪合戦の真っ只中の筈なのにここまでのんびりと出来ている理由は、三人は現在雪の下―――地下空間にいるからだ。

この地下空間は開始してから三十分くらい経った頃、ウィリアムが競技フィールドの中心に近い場所を大会前に起動した【詐欺師の工房】でくり貫く部分を取っ手付きの別素材に変え、それをリィエルが素の身体能力で引き抜いた後、その中に飛び込んで最後に雪をガチガチに固めて作った板で蓋をして人工精霊(タルパ)を使い、雪で出入口の蓋を隠したのだ。

 

 

「魔術の使用自体は問題なくて、ゼッケン零番がお前の母親とか……大会を私物化してないか?」

 

「あはは……お母さんは楽しめればそれでいい人ですので」

 

「オーヴァイって毎年参加しているの?」

 

「ハイ。毎年参加してますが毎回途中で棄権になって……」

 

「なんで?」

 

「大方大会中に吐血したとか、ぶっ倒れたとかその辺りだろ」

 

「……ハイ。ウィリアム先輩の言う通りです……ですが、今年はこうして休めてますから最後までいけそうです!!」

 

 

そんな感じで大会そっちのけで談話を続け、時間を見計らって三人は地上へと出ると。

 

 

「「「「あっ」」」」

 

「?」

 

 

出てすぐ先に、両手に雪玉を手に持つジニーと木の板を構えたルミアがいた。

 

 

「……今の私達、すごいタイミングで水を差してしまいましたか?」

 

「う、うーん……私としてはすごく助かったような……」

 

 

気まずげに聞くオーヴァイにルミアは曖昧な笑顔で答えていく。

 

 

「うわぁ、まさかウィリアムさん達がすぐ近くにおられたとは……お嬢様からライバルを排除するよう命令されていますが、多勢に無勢ですので一時撤退させてもらいますね」

 

 

ジニーはそう言って退こうとするも……

 

 

「あ、これ無理です」

 

 

いつの間にか上半身のみの甲冑騎士や巨大な腕といった、雪玉を携えた大量の人工精霊(タルパ)に包囲され、ご丁寧に氷の壁を人工精霊(タルパ)によって設置されている光景を半目で見て、一気に諦めの境地に達した。

 

 

「一応お聞きしますが、ルールは守ってます?」

 

「守ってるぞ。これらは俺の起動中の固有魔術(オリジナル)から生み出したものだし」

 

「なんですか、そのチート魔術は……」

 

 

ウィリアムの固有魔術(オリジナル)の存在に、ジニーは完全に諦めて空を見上げ……

 

 

「うぎゃーーッ!!!」

 

 

雪玉の集中砲火をその一身に浴びた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――そして、現在。

 

 

「お、お兄様……」

 

「さて、この状況をお前達はどうするのかな?」

 

 

ウィリアムはそう言って固有魔術(オリジナル)人工精霊(タルパ)を召喚し、その人工精霊(タルパ)を使って雪玉を目の前で作っていく。

 

 

「お兄様!?それはルール違反では―――」

 

「ハハハ。これは俺の固有魔術(オリジナル)【詐欺師の工房】によって召喚された人工精霊(タルパ)だ。その効力は効果領域内における錬金術の五工程(クイント・アクション)を破棄したイメージ投射の瞬間錬成。人工精霊(タルパ)召喚はその副次効果さ。だからルール的には大丈夫なのさ」

 

「なんなんですの!?そのとんでもない魔術は!?」

 

「やべぇぞ……アタシらもミスっちまってたな……さすがお兄様だぜ……」

 

 

とんでもない強敵にフランシーヌは驚愕、コレットは渇いた笑みでウィリアムを見やる。

 

 

「中々面白い話をしているな?」

 

「折角だから私達も混ぜてもらえないだろうか?」

 

 

そんな緊迫感漂う雰囲気の中、戦っていた筈のセリカとオルビスが彼らの間に割って入って来る。

 

 

「話を聞いた限り、お前達はデート権を賭けて戦っているそうだな。なら……」

 

「私達が一緒になってお前達に立ちはだかれば面白そうだという話になってな」

 

「そういう訳で、ここからは私達は手を組んでお前達と戦う事になった」

 

 

まさかの共闘発言に一同は……

 

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「うわぁ……」

 

「お、お二人が組むだなんて……」

 

「やべぇぞ……本格的に……」

 

「マジかー」

 

「ん。負けない」

 

「わくわくしてきましたよー!!」

 

 

驚いたり、呆れたり、恐れたり、気合いを入れたりと別々の反応をしていた。

 

 

「どうした?この程度でビビっているのか?」

 

「怖じけついている暇はないぞ。ここは戦場。互いの主義主張は関係ない、己の願いを叶える為の戦いの場だ」

 

 

圧倒的強者オーラ全快でセリカとオルビスは言い放つ。お二人共、完全にノリノリである。

 

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 

ウィリアムはそう言うや否や、人工精霊(タルパ)が持つ大量の雪玉を二人に向けて一斉に投げ飛ばしていく。

セリカとオルビスは襲いかかる雪玉をよけ、木の棒で叩き落として悉く防いでいく。

ルミアも必死に投げ飛ばし、フランシーヌも召喚した雪の妖精(スノーホワイト)達に雪玉を抱えさせて二人に向かわせていくも、木の棒で妖精ごと叩き落とされていっている。時折合間を縫うようにセリカ達から雪玉が投げ飛ばされていくも。

 

 

「ハァッ!!」

 

「おっとぉ!!」

 

「ひぃいいッ!?」

 

 

オーヴァイが叩き落としたり、コレットと涙目のシスティーナが木の板を盾にして防いでいく。

 

 

「いぃいいいいいいやぁああああああああああああ―――ッ!!!」

 

 

リィエルは身の丈の三倍もある超特大雪玉を烈迫の咆哮と共にセリカ達に向けて投げ飛ばす。セリカとオルビスは一呼吸入れ、迫り来る超特大雪玉を二人がかりで切り裂いて防いでしまった。

 

 

「ハハハ、残念だったな!」

 

「悪くはなかったが、この程度で―――」

 

 

不意に上空が暗くなったのでセリカ達は何かと思って頭上を見上げると、超特大雪玉のが隙間なく辺り一帯に、殆ど同時に大量に落ちてきていた。

 

 

「これは避けようも防ぎようもないな。ハハハ……」

 

「フッ、これは一本取られたな」

 

 

その光景にセリカとオルビスは観念したように笑って呟き……

 

 

「わ、私達も巻き添え!?」

 

「これを仕掛けたのって……」

 

「?ウィル、どこ?」

 

「見事にやられましたねー」

 

「は、早く防御を……!?」

 

「早く木の板を……って、回収されていってる!?」

 

 

システィーナは巻き添えに驚愕、ルミアは苦笑い、リィエルはいなくなっているウィリアムを探し、オーヴァイは額に手を当てて笑い、フランシーヌは木の板を求めて辺りを見渡し、コレットは人工精霊(タルパ)に回収されている現場を目撃していた。

直後、彼女達は超特大雪玉の下敷きとなった。

 

 

「これで大会は俺の優勝、かな?」

 

 

龍の人工精霊(タルパ)の背に乗り、上空へと逃げていた仕掛けの張本人はそんな事を言っていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……という訳で、今年のホワイトタウン最強決定大雪合戦大会の優勝者はゼッケン百九十番のウィリアムさんです」

 

 

責任者は盛大に疲れた顔でウィリアムの優勝を伝える。

 

 

「く、悔しい~……」

 

「この場合、デート権はどうなるのかな?」

 

「そりゃあ、優勝したアイツに権利があるさ」

 

「明日はウィルとグレンが一緒に遊ぶの?」

 

「ある意味一番良い決着かもしれませんわね……」

 

「明日は先生とお兄様が一緒に見て回るのかぁ……」

 

「お母さんを最初に倒すのは私の予定だったんですが……」

 

「ハァ……すごく疲れました……」

 

 

グレンデート権をかけて破れた者達は口ではそう言いながらも拍手して優勝者を祝福した。……納得はしていないが。

 

 

「それでは優勝商品であるこちらの白銀竜を模した一組のペンダントを贈呈いたします」

 

 

責任者はそう言い、一つの箱に入った二つのペンダントをウィリアムに贈呈する。

 

 

「このペンダント……ペアルックか?」

 

「はい。その通りです」

 

 

その答えを聞いたウィリアムは少し考える素振りをしながら、優勝商品であるペアルックのペンダントを受け取った。

ちなみに来年からは魔術の使用が一切禁止される事になるのだが、今の彼らには知るよしもなかった。

 

 

 




雪合戦終了。この結末で大丈夫かな?
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