やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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この先の展開にわりと悩んでいます
てな訳でどうぞ


百十二話

日が暮れた銀竜祭最終日。その中央広場には大勢の観光客が集まっている。もっとも観客達はメインイベントだから一応集まった感じなので、奉納舞踊が始まれば観客達は次々と席を立っていく可能性が高い。

 

 

「マジでやるのかよ……」

 

 

正義の魔法使い役の衣装に身を包んだグレンは舞台の楽屋裏から観客席を見て、頬をひきつらせながらぼやく。

 

 

「心配するな。最後のリハーサルの演舞は座長も太鼓判を押すくらいに踊れていたからな」

 

「ええ。付け焼き刃とは思えない演舞でしたから自信を持って下さい」

 

「頑張って下さい、グレン先生!!あんなに練習したんですから大丈夫ですよ!!」

 

 

魔王役の衣装に身を包んだオルビスとハイネ座長、見学のオーヴァイは嘘偽りのない言葉でグレンを激励していく。

 

 

「そうですよ!ちゃんと踊れていたんですから弱音を吐かないで下さい!」

 

「オーヴァイさんの言う通り大丈夫ですよ。だから頑張りましょう、先生」

 

 

バックダンサーの衣装に身を包んだシスティーナとルミアもグレンを元気づけようとする。

そんな中、ウィリアムは……

 

 

「……………………」

 

 

口から魂が抜け出ているのではないのかと言うくらい真っ白となって椅子に座っていた。酔っていたとはいえ、リィエルにBを実行してしまったウィリアムは、最初は俯いた状態でシスティーナ達と朝食を取っていた。ウィリアムのその様子にグレンが疑問に感じて何があったのかと問い質したが、ウィリアムは当然黙秘した。あれを知っているシスティーナとルミアは何となく察してこの話題は打ち切りの方向に持っていこうとしたが、セリカが非常に悪い笑みとなってリィエルに昨日の事を問い質したのだ。

 

 

『昨日?昨日はウィルがあの後目を覚まして、この前の仕返しの続きをしてきた』

 

『どんな仕返しかな?』

 

『唇に―――』

『言うなぁあああああああああああああああああああああああッ!?!?!?!?!?!?』

 

 

あれの意味をまったく理解していないリィエルは何時もの表情で暴露しようとしたのをウィリアムは大声を上げて阻止しようとしたが、セリカが【リストリクション】でウィリアムを口ごと拘束し、セリカは改めてリィエルに問い質した。

その結果、昨日の出来事―――ディープキスと身体中を触られ、撫でられ、愛でられた事を盛大に暴露された。その内容を聞いたシスティーナとルミアは顔を真っ赤にし、セリカは嫌らしい笑顔でさらに獣耳の一件も暴露させ、グレンは流石にウィリアムに同情するという光景が出来上がった。それ以来、ウィリアムはずっとこの状態となったのである。

 

 

「ウィル。朝からずっとそんな感じだけど大丈夫?」

 

「……大丈夫じゃないでしょうか?時間が経てば復活する筈です」

 

 

魔王の配下役の衣装に身を包んだリィエルはウィリアムの心配をし、同じ衣装に身を包んだジニーは嘆息しながらもどこか同情するように呟いていた。

 

 

「お兄様……」

 

「さすがに同情するぜ……」

 

 

フランシーヌとコレットも同情するようにウィリアムに視線を送る。聞いた訳ではないが彼らの様子から何となく察し、聞かない事にしたのだ。下手に知れば、後日、凶暴な龍が大量に降臨しかねないからだ。

 

 

「待たせたな」

 

 

白銀竜役の衣装に着替え終わったセリカが楽屋裏に現れ、その存在感と次元の違う美しさに周りは圧倒される。

セリカは時間が迫っていたのですぐに楽屋裏から立ち去っていくも……

 

 

「セリカ、すっごく綺麗だった」

 

「お母さんも負けてませんよー!!」

 

「どうすれば、女性として勝てるの……!?」

 

「もっと自己研鑽しなきゃ……!」

 

「く、悔しいですわ……!」

 

「どうすりゃいいんだ……!?」

 

「次元が違いますね。色々と」

 

 

約半分を除き、少女達はセリカとの圧倒的な差にうちひしがれていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

日が完全に沈み、メインイベントである奉納舞踊が開始される。

観客達は最初はセリカを嘲笑うつもりであったが、蓋を開けてみるとセリカの圧倒的な存在感により見事に魅了されてしまったのだ。

第一楽章は見事に成功し、続く第二楽章も魔王役のオルビスと白銀竜役のセリカの舞踊は圧倒的すぎた。配下役のリィエルとジニーも必死に頑張っているが二人の存在感が圧倒的すぎる為完全に霞んでいる。

 

 

「す、凄い……凄すぎる……ッ!」

 

「今年の奉納舞踊は最高の完成度なんじゃないか!?」

 

 

観光客達が否応なく期待を高めていくなか……

 

 

「……マジでセリカの相方をすんの?これから最後のシーンまで?」

 

「……だ、大丈夫ですよ……リハーサルでは先生もしっかり踊れてましたし……」

 

「リハーサルの時と全然レベルが違いすぎるんですけど……」

 

「…………」

 

 

グレンは頭を抱えて蹲まり、システィーナは何とか元気づけようとするもグレンの次の言葉に黙りとなってしまう。

 

 

「と、とにかく覚悟を決めて頑張って下さい!!」

 

「……いやだぁ……おしまいだぁ……」

 

 

そんな気弱な会話を尻目に、まだ復活しきれていないウィリアムはぼんやりと舞台を覗いていた。

 

 

(ホント、見事なもんだよ……)

 

 

ぼんやりとした思考のままウィリアムはセリカ達の舞踊を見続け―――

 

 

―――不意にセリカの動きが止まった。

 

 

前触れのないセリカの突然の停止に観客達はざわめき、オルビス達も舞踊を中断せざるを得なくなる。

いつまで経ってもセリカは動かないままなので、心配となって一同はセリカの元へと寄って来る。

 

 

「セリカ、一体どうしたんだ!?」

 

 

グレンも楽屋裏から飛び出しセリカに呼びかけるも、セリカの目は何か別のものを見ているかのように、焦点があっていなかった。ウィリアムも流石にこの事態で復活し、セリカの元へと歩み寄る。

 

 

「セリカッ!?しっかりしろ、セリカ!!」

 

 

グレンはセリカを揺さぶりながら必死に呼び掛け続け……

 

 

「――はっ!?」

 

 

セリカは漸くグレンの呼び掛けに気付いて激しく周囲を見回した後、頭を振りながら息を吐いていた。

 

 

「……やっぱ、疲れてたんだよ」

 

「……すまん……私のせいで……」

 

「気にしないで下さい。元々無理を言って頼んだ事ですから……」

 

「オーヴァイの言う通りだ。お前は帰って休んどけ」

 

 

グレンがそう言ってセリカに肩を貸し、立たせようとした、その時、遥か彼方の上空から恐ろしい咆哮が、響き渡った。

その突然の咆哮に周りが動揺するなか、周りの気温がみるみる内に下がっていき、ダイヤモンドダスト現象が発生し、空が急に発生した厚い雲に覆われ、猛烈に吹雪き始める。

そして、再び咆哮が響き渡り、空から圧倒的な存在感を持つ何かが迫ってくる。

 

 

「……来る」

 

 

リィエルは大剣を錬成して空を見上げ、グレンもすぐに身構え、システィーナは黒魔【トーチ・ライト】を唱え、暗闇と化した空間を照らす。

ウィリアムは()()()が見えた瞬間、既に錬成した長大な小銃(ライフル)を構え、そいつの翼を狙って雷加速した日緋色金(オリハルコン)の弾丸を撃ち出す。

しかしそいつ―――白銀の竜はまるで分かっていたかのように弾丸をバレルロールしてかわし、舞台に降り立ちざまに巨木のように太い前足をウィリアムに叩きつけようとした。

ウィリアムは咄嗟に【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・楯兵】を具現召喚するも―――

 

 

「―――があッ!!」

 

 

騎士の誇り(ナイツ・プライド)・楯兵】は容易く砕け散り、弾力性の高い壁を錬成する間もなく前足が叩きつけられ、ウィリアムは容赦なくその場から叩き飛ばされてしまう。

ウィリアムは派手に雪の積もった地面をバウンドしながら飛んでいき、そのまま意識を手放してしまった。

 

 

 




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