てな訳でどうぞ
アルザーノ帝国魔術学院の、とある日。
「またシュウザー教授からテスト要請がきたのじゃ……最低でも二十人の人手が必要といっての……」
リックがいかにも深刻で険しい様相で告げた言葉に―――
「なんですとぉおおおおおおおおお―――ッ!?」
「あの男、今度は一体何を作ったんだッ!?」
「しかも生け贄が最低でも二十人とは……ッ!?」
「嫌だぁあああああああああああ!!選ばれたくないぃいいいいいいいいい―――ッ!!!!!!」
「落ち着いてください、ラインハルト先生ッ!!」
「誰でもいいですから、早くあの人を始末してくださいよ!!」
大会議室に集まっていた全教員は一気に大騒ぎ。その場は狂騒の渦へと呑まれていった。
「あのー、オーウェルの野郎は一体何を作ったのでしょうかねー?二十人も寄越せだなんてー……」
「……ちなみに、シュウザー教授はグレン君を指名しておった。なので今回は、グレン君と彼の受け持つクラスにやって貰おうと思うのじゃが…………賛成の方々は挙手を」
その瞬間、全員が一斉に右手を挙げる。
「ま、マジで待ってください!!俺はまだしも俺の生徒を巻き添えにするのは―――」
「すまんがグレン君、今回は諦めてくれ。代わりに学院からお金を出すから」
「謹んでお受け致します」
グレンは神速で手のひらを返し、清々しい顔で引き受けるのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――
「―――という訳で、オーウェルの発明品のテストをすることとなった」
「「「「ふっざけんなぁああああああああああああああああああああああ―――ッ!?!?」」」」
午後の授業開始前。二組の教室にて。
教壇の上で実に爽やかな笑顔で告げたグレンに、クラス中から一斉に非難の声が上がった。
「何で俺達を巻き込んだんですか!?」
「天災教授の発明品のモニターなんて嫌ですよ!!」
「じょ、冗談じゃありませんわ!!」
次から次へと上がる生徒達のブーイングの声。当然である。
「今回ばかりは仕方ねぇんだよ……あの野郎が俺を指名してくれちゃったし、学院長が勝手に決めちゃったし、報酬も掲示してくれちゃったし……お金も入るし……」
「本当に最低ですねッ!?」
グレンの言い分に、システィーナは憤慨を露に、ばんっ!と机を叩いて立ち上がる。
「そんな訳だから、発明品が設置されている抗議室にこれから移動するぞー。動かなかったら『無理矢理連れていくぞ君』で強引に連れていくとオーウェルは言っていたから諦めてくれ、マジで」
そんな訳で、グレンを先導とした一同はまるで死刑囚のような気分で件の発明品が設置されている抗議室へと移動したのだが……
「ねぇ、あれ、凄く見覚えがあるのだけれど……」
抗議室に入ったシスティーナが懐疑的な瞳で、教卓の上に置かれた
細部は微妙に違うがその装置がどんな機能を有しているのか容易に想像できるからだ。
その筐型のヘンテコ装置―――体験学習会で猛威を振るった集団催眠装置が何の前触れもなく、独りでにピコピコと稼働し始める。
「な、何ですの!?」
「まさかこれが例の発明品か!?」
多くの生徒が突然動いた装置に困惑し、辺りを見渡し始める。この装置を一度体験しているシスティーナとルミアは何が来てもいいように扉に視線を向け、グレンとウィリアムは危険はないとわかって机に突っ伏して平然としている。
そして―――
ガシャァアアンッ!!
抗議室の扉からではなく、窓から全長三メトラはある巨大な蜘蛛が一同の前に姿を現した。
「いぃいいやぁああああああああああああああ―――ッ!!!」
リィエルは直ぐ様大剣を錬成して、その巨大蜘蛛に向かって稲妻のごとく突貫していくも―――
プシャアーッ!
「―――うあっ!?」
その巨大蜘蛛の口から大量に白い糸が吐き出され、リィエルは瞬く間に絡め取られ、捕らわれてしまった。
リィエルを一瞬で捕らえた巨大蜘蛛はそのまま二射、三射と次々と糸を吐き出していき、ルミア、リン、ウェンディを含めた女子生徒の半数を糸に繋げ―――
「きゃッ!」
「ああっ!?」
「ひっ!?」
俊敏な動作で侵入した窓から抗議室を後にし、糸に繋げた女子生徒達を連れ去っていった。
「「「「…………」」」」
そのあまりの早業に残された一同は暫し茫然としていると……
『こうして……少女達は連れ去られていった……魔王の供物として……』
どこからともなく、魔術による拡声音響が流れてくる。もはや疑いようがない。
『そして、残された面々は連れ去られた少女達を救う為に立ち上がるのであった……』
「シュウザー先生ッ!!これ、絶対あの時の装置ですよね!?」
『その通り!!今回は様々な実験を行う為に改良した集団催眠装置弍号と、弍号の専用ソフトウェア《魔王の城》を君達に試してもらうぞ!!』
「今すぐ装置を切ってください!!」
『そして、この精神世界を自由に操作できる、ボスキャラの魔王を努めるのはこの方だぁあああああああ―――ッ!!!』
システィーナの抗議を完全に無視して声を上げるオーウェルの呼びかけに応えるように、波紋のように投射された映像が一同の頭上に現れる。そこに映ったのは―――
『ごきげんよう。私が魔王である……フヒヒ』
いかにも魔王らしい衣装に身を包んだツェスト=ル=ノワール男爵であった。そんなツェスト男爵の後ろには、先ほど連れ去られたメンバーが蜘蛛の糸で身体を縛られてそこにいた。―――亀甲縛りで。
「ちょっと!?どうしてそんな縛り方で捕らえているんですか!?」
『勿論、こうした方がそそるからに決まっているだろう!!フヒヒ……』
じゅるっ。と舌舐めずりするツェスト男爵を見て、女子生徒達は嫌悪感を露に、アイツら殺す!と心の中で強く誓う。
『そして、ゲームが終わるまで私は彼女達に色んな事をするのだッ!!!ここは精神世界だからあんな事やこんな事をしても大丈夫!!あぁ、本当に素晴らしいぃいいいいいいいいいいい―――ッ!!!!!』
この時、その場の男子生徒は羨まし過ぎる嫉妬心から、女子生徒は純粋な怒りからこう思った。
―――ツェスト男爵、絶対に殺す!!!!!と。
「何だとぉおおおおおおおおおおおおお―――ッ!?実に羨まけし―――」
「《死んでください》ッ!!」
「どぉわぁああああああああああああああ―――ッ!?」
『ちなみに、ゲームがクリアされる、もしくは装置が切れるまでこの精神世界から誰も出ていくことはない!!仮に殺られても、その時は手足も出ない幽霊として待機し続けるだけだッ!!!』
『まだ捕らわれていない女子生徒の諸君は安心したまえ!!殺さず捕らえて、可愛いがってあげるから!フヒヒ』
「全く安心できません!!」
『では、ゲェーム・スタァアアアアアアアアットゥ―――ッ!!!!!』
最早取り合っている暇はないと言わんばかりに一同は一斉に抗議室を後にしていく。グレンはシスティーナの【ゲイル・ブロウ】をくらってのびたままである。
『この映像は常に諸君の頭上に投射され続けるから、常にこちらの状況は把握できるぞ!!まずはゾンビで彼女達を愛でた後、スライムで衣服を溶かし、一人ずつ犯―――』
その直後、凄まじい炸裂音が映像から鳴り響いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――炸裂音が響く数分前。精神世界の奥の部屋にて。
「……むぅ、全然解けない。さっきから縄抜けの魔術を使っているのに………それに、動く度にムズムズする」
「あはは……」
力づくで自身を縛っている蜘蛛の糸を引き千切ろうともがき、全く上手くいっていないリィエルの呟きに、隣にいるルミアは困ったような声を洩らす。亀甲縛りで縛られたルミアはその豊満な身体のラインを強調されている状態であり……眼福であった。
「そして、ゲームが終わるまで私は彼女達に色んな事をするのだッ!!!ここは精神世界だからあんな事やこんな事をしても大丈夫!!あぁ、本当に素晴らしいぃいいいいいいいいいいい―――ッ!!!!!」
ツェスト男爵の興奮した叫びにこの場にいる女子生徒達は一気に顔を青ざめさせる。
「お願いです!!止めてくださいましぃいいいいい―――ッ!?!?」
「い、いや……ッ」
これから自分達に起こる事を想像して、彼女達は目尻に涙を浮かべていく。
「……ッ!」
リィエルもルミアに危険が迫っていると理解した瞬間、先ほどよりも必死となってもがくも、ギシギシと軋むだけで一向に解ける気配も千切れる気配もない。
「この映像は常に諸君の頭上に投射されるから、常にこちらの状況は把握できるぞ!!まずはゾンビで彼女達を愛でた後、スライムで衣服を溶かし、一人ずつ犯―――」
彼女達にとっての死刑宣告をツェスト男爵が興奮気味に宣言する言葉を遮るように、突然扉が蹴破られるとほぼ同時に、一つの炸裂音が響き、ツェスト男爵の頭部が爆発四散した。
――――――――――――――――――――――――――――――
―――炸裂音が響く数分前。
ドゴォンッ!!ドゴォンッ!!ドォオオオオンッ!!
精神世界の学院の廊下は壁が壊れたり、窓が吹き飛んだり、一部黒焦げになっていたり、ゾンビやゴブリン、蟲達の欠片が散らばっているといった、見るも無惨な光景が出来上がっていた。その光景最先端には―――
「…………」
連れ去られてすぐに抗議室を後にし、身震いするほどの無表情で両手に
ウィリアムは襲いかかる外敵を銃弾や攻性の錬金術で容赦なく瞬殺していき、ゴール前の扉へと辿り着く。
そして、ウィリアムはそのまま扉を蹴破り、間髪入れずにツェスト男爵に銃弾を叩き込んだ。
現実世界に帰還した後、ウィリアムは元凶三名を義手で殴り飛ばし、件の装置とソフトも粉々に破壊。
こうして今回の騒動は幕を閉じた。
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