やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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気持ちが怠いと色々と重くなる·······
てな訳でどうぞ


百十三話

「うっ……」

 

 

肌を刺す寒さと全身の気だるさを覚えながらウィリアムは意識を取り戻した。

目に映ったのは見知らぬ天井。どうやらベッドの上で寝ているようだ。

 

 

「ウィル。気が付いた?」

 

 

声がした方へと顔を向けると、そこには椅子に座り防寒具に身を包んだリィエルがおり、心配そうな顔を向けていた。近くにはカンカンに焚かれている石炭ストーブがあるが、本当に燃えているのか怪しいくらい、部屋は寒いままだ。

 

 

「確か……白銀の竜が現れて……そいつにぶっ飛ばされて……」

 

 

ウィリアムはあの時の事を思い出しながら、身体から感じる倦怠感を振り切るように身体を起こす。だが……

 

 

()ぅ……ッ」

 

 

義手の右腕から激痛が走ったため、思わず顔をしかめてしまう。見れば右腕の義手の腕袋は外されており、その灰色の義手は至る所にヒビが入っている。

確かあの時、白銀竜の攻撃から咄嗟に右腕を前に出していたと思い出したウィリアムは、義手の調子を確認していく。

 

 

「……大丈夫、ウィル?身体はセリカが治療したけど……」

 

「そうか……おかげで身体の方はもう少ししたら大丈夫だし、義手も時間と魔力をかければ元通りだが……」

 

 

ウィリアムはそう言いながら窓の外を見やる。外は猛然と吹雪いており、とんでもない寒波が襲っているのが容易に想像出来る。この状況で下手に魔力を消費する訳にはいかない。可能な限り温存すべきだ。

そう判断したウィリアムはリィエルから軽く状況を訊いた後防寒具に身を包み、右腕を骨折した時にする形で固定し、リィエルに連れられて皆がいる談話室へと向かって行く。談話室の扉を開けるとそこにはグレン、システィーナ、ルミア、厚手の防寒具に身を包んだオーヴァイ、フランシーヌ、コレット、ジニー達が石炭ストーブで暖を取っていた。

 

 

「起きたかウィリアム。身体の調子はどうだ?」

 

「まだ少し怠いし、義手の方は結構酷いが大丈夫だ。それよりあの後、何があったか説明してくれねぇか?」

 

 

ウィリアムの言葉にグレンは素直に頷き、ウィリアムが気絶した後の事を説明する。

あの白銀竜は竜の咆哮(ドラゴンズ・シャウト)打ちのめす叫び(スタン・スローター)】であの場に居た九割以上の者達を行動不能にさせ、『メルガリウスの魔法使い』に登場する魔将星―――“白銀竜将ル=シルバ”と名乗り、セリカに怨みの言葉を告げ、約束の地で決着を付けようと宣戦布告して立ち去ったそうだ。

そして、この異常気象はおそらくあの白銀竜が起こしている事も。

今までの状況証拠からしてもはや疑いようがない。『メルガリウスの魔法使い』は単なる童話ではなく、古代の文明の一定の真実を描いた“記録”だという事を。

魔将星も、彼らを従えていた魔王も実在した人物という事になる。おそらく“正義の魔法使い”に該当する人物も実在していた可能性が高い。しかし同時に何故連中がセリカを知っているのかという疑問が浮上する。グレンの話を聞いた限りでもあの竜は勘違いではなくはっきりとセリカを知っているのだ。

そんな中、雪にまみれたジョン市長と秘書のミリアの二人が談話室へと入ってくる。

ジョン市長は改めてグレンからこの状況が白銀竜の仕業であると確認し、自警団と警備官に白銀竜討伐の編制を指示を伝えるようミリアに言いかけるも……

 

 

「駄目だッ!竜相手に“量”に挑んでも意味がねぇッ!求められるのはひたすらな“質”……この状況でまともに動けるのは俺達魔術師だけだ」

 

 

グレンはキッパリとそう断言し、ウィリアム達に顔を向ける。

 

 

「ちょ……待ってください!!いくらなんでも―――」

 

「大丈夫だ。魔術師のレベルだけなら、とっくに俺を超えているさ。それに矢面に立つのは、当然俺と世界最強の魔術師様だ」

 

 

グレンの不敵な言葉にジョン市長とミリアはハッとした表情になる。

グレンはそのまま世界最強の魔術師たるセリカが今いる部屋へと赴いたのだが、すぐに泡を喰った顔で戻り、セリカがいなかった事を告げた、その直後―――

 

ずんっ!!

 

不意に地響きが鳴り渡り、その場の一同は弾かれたように外へと出ると。

 

 

「皆、あれ!?」

 

 

システィーナが指をさした先には、遥か遠く向こう側に、燃え上がった紅蓮の猛火が小さく一点を灯す光景が見えた。

アヴェスタ山峰の麓辺りで上がる灯火を見て、グレンはあれはセリカの攻性呪文(アサルト・スペル)だと確信して皆へと伝える。

さらにこの猛吹雪の中、数名の自警団が慌てた様子で駆けてきた。

 

 

「た、大変です市長!!アヴェスタ山峰の方角から化け物の群れが……ッ!!オルビス総隊長と『気』を多少使える警備官達が食い止めていますが……ッ!!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ホワイトタウン、北の玄関口となる北区画街にて。

その大広場にて、“氷で形作られた骸骨”達が警備官達に襲いかかってくるのだが。

 

 

「炎王煉獄斬!!」

 

 

オルビスは炎を纏った大太刀を振るい、襲いかからんとしていた氷の骸骨達を火柱に包み込み容赦なく溶かしていく。

 

 

「ハァッ!」

 

「シィ―――ッ!」

 

 

彼女と共に戦う警備官達も、手に持つサーベルには不可思議な揺らめきを発しており、そのサーベルで容赦なく氷の骸骨達を切り刻んでいく。

 

 

「この化け物達は『気』を使った攻撃でしか倒せないのが厄介だな……!」

 

「だが、総隊長から『気』を学んでいなければ足止めしか出来なかったところだ!」

 

 

警備官達はそう言いながらも襲いかかってくる骸骨達を切り飛ばしていく。最初は普通に斬っていたのだが、バラバラにした氷の骸骨がひとりでに組上がって復活したのを見た時点から『気』を使った攻撃でバラバラにした所、復活する気配が感じられなかったので、現在は『気』を使える者を中心に応戦しているのである。『気』を使えない方の警備官は市民の避難誘導や『気』を使える方の警備官の援護に回っている。

 

 

「しかし数が多いな。このままでは追い詰め―――」

 

 

警備官の一人がそう呟いた、その時―――

 

 

「ぅおおおおおおおおおおおおおおおーーッ!」

 

「いいいいいいやぁあああああああああーーッ!」

 

「はぁあああああああああああああああーーッ!」

 

 

駆けつけたグレン、リィエル、オーヴァイの魔力を付呪(エンチャント)した一撃が氷の骸骨達を吹き飛ばし、粉砕し―――

 

 

「焼き尽くせッ!!」

 

「《紅蓮の獅子よ・()()()()()()()()()・吼え狂え》―――ッ!」

 

「《聖なる送り火よ・彼等を黄泉に導け・その旅路を照らし賜え》―――ッ!」

 

 

続いてウィリアムの【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・炎兵】、システィーナの黒魔()【セイクリッド・バースト】、ルミアの白魔【セイント・ファイア】が氷の骸骨達を容赦なく呑み込み、溶かしていく。

さらにフランシーヌ達も参戦し、氷の骸骨達は一気にその数を減らしていく。

 

 

「ここはわたくし達に任せてください!」

 

「先生はアルフォネア教授を助けに行ってきてくれ!」

 

 

彼女達の頼もしい言葉にグレンは素直に頷き、何時ものメンバーを連れて行こうとするも。

 

 

「待ってください!私も連れて行って下さい!」

 

 

オーヴァイが同行を求めて彼らを引き留めた。

 

 

「オーヴァイ!?」

 

「アヴェスタを登るなら案内する人がいた方がいい筈です!戦力にもなりますし、損はない筈です!」

 

 

オーヴァイの申し出にグレンは悩ましげな顔となる。確かにオーヴァイの申し出は有難いが、彼女自身はそこまで身体は強くなかった筈だからだ。登山途中で倒れでもしたらそこでアウトとなる。だが……

 

 

「……今は状況が状況だし少しでも戦力は必要だ……オルビスさんすいません。貴女の娘さんをお借りします!!」

 

 

グレンは悩みながらもオーヴァイの同行を許可し、オルビスに向かって頭を下げた。

 

 

「了解した。どうか娘の事をよろしく頼む、グレン先生」

 

 

オルビスは氷の骸骨を十体近く同時に斬り倒しながら了承する。

 

 

「はいッ!!行くぞ、白猫、ルミア、リィエル、ウィリアム、オーヴァイ!!」

 

 

グレンの掛け声に五人は素直に頷き、オーヴァイを加えた六人はその場を後にした。

 

 

 




大丈夫だよな·······?『気』なら使えても問題なく、骸骨達も倒せる筈········!
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