やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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遅くなりました
夏バテのせいか色々と怠くなっていますが失踪しないよう頑張ります
てな訳でどうぞ


百十四話

「ここがアヴェスタ山峰へ続くルートの登山口か?」

 

「ハイ。目的の山頂へ行くにはこの道しかありません」

 

 

シルヴァスノ山脈の(ふもと)にあるいと高きに聳え立つ白の巨峰の前でグレンは地図を広げてオーヴァイに確認し、オーヴァイも肯定する。この超悪天候では徒歩でしか頂上へと辿り着けない以上、セリカはまず間違いなくこのルートを通る筈だ。

グレンは携帯コンパスで慎重に方角を確認し、鉛筆で地図上に磁北線を引き、一同に【エア・コンディショニング】を切らさないよう注意し、呼吸法でマナを慎重に取り込むように言う。

 

 

「俺が先頭、リィエルが殿だ。オーヴァイは登山ルートの確認、ルミアは回復役だから魔力はなるべく温存。ウィリアムは病み上がりだから無理せずに魔力を温存しとけ。白猫は【スペーシャル・パーセプション】で常に周囲の地形確認だ。……お前が俺達の命綱だ」

 

「任せてください……」

 

「わかりました」

 

「了解」

 

「ん」

 

「ハイ」

 

「雪山は、魔術師である俺達にとってはそう怖いものじゃない。……行くぞ」

 

 

そうして、一同は雪山の頂上を目がげて歩き始めた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

登る。

……ただ、登る。

白き死の銀世界を登り続ける。

道標のように散らばっている氷の亡霊の残骸を踏み越えながら、たまに現れる氷の亡霊を退けながら彼らは進んで行く。

そして五度目の戦闘。遭遇早々にウィリアムは高威力の銃弾で氷の亡霊の手足を撃ち砕いていく。銃弾に魔力は付呪(エンチャント)されていないのでこのままだと復元されるが―――

 

 

「ふ―――ッ!」

 

「いぃいいやぁああああああ―――ッ!」

 

「ハァ―――ッ!」

 

 

復元される前に、グレンの拳とリィエルの大剣、オーヴァイの刀が手足が砕けている氷の亡霊を粉砕し、止めをさしていく。

こうする事で全体の消耗率を抑え込んでいるが、一戦ごとの消耗は普段よりも激しい。特にグレンは平凡な魔力容量(キャパシティ)と自身の魔術特性(パーソナリティ)から呼吸法での魔力回復の効率も悪く一番消耗が激しい。ウィリアムの魔力容量(キャパシティ)も高い方ではないが呼吸法でマナをしっかり取り入れられているのでまだ余裕がある。

そんなグレンの消耗に気付いたルミアが《王者の法(アルス・マグナ)》でグレンの持続付呪(ディレーション)をアシストし、グレンの魔力回復の手助けをする。

途中でリィエル主導の強引な休憩を挟みながら一同は雪山をひたすらに登って行く。

そして……

 

ずん……

 

唐突に強大な地響きが一同の元に届いた。

 

 

「せ、先生……今のは……」

 

「セリカだな。今のは……周囲に注意を払ってくれ」

 

 

グレンが警告し、一同は足を止める。

眼前の小高い尾根の向こう側から、地響きを立てて爆炎が上がるのが見えた直後、一同はそこにセリカがいると判断し、大急ぎでそこへと向かって行く。

やがて天辺に辿り着いた一同が見下ろした先には、セリカの後ろ姿と巨人のような巨大な氷の骸骨が立ちはだかっている光景だった。

 

 

「なんだありゃあ!?デカすぎだろ!?」

 

「あれはきっと集合霊です!!アルフォネア教授を止めるために、この一帯の亡霊達が寄り集まったんですよ!」

 

 

システィーナの説明を聞いた一同は急いでセリカの援護に向かおうとした、その時。

 

 

「《くたばれ》ぇええええええええええええ―――ッ!!」

 

 

セリカが何事か呪文を叫び、巨人を中心に炎の線が縦横無尽に奔り、雪原一杯に巨大な魔術法陣を形成した。

その魔術法陣から天を衝かんばかりの真紅の紅炎が上がり、氷の巨人を瞬時に消滅させた。

セリカの規格外すぎる実力に一同は何ともいえない気持ちに陥っていると、不意にセリカの身体が糸が切れた人形のようにその場に倒れ伏してた。

 

 

「―――ッ!?セリカ!?」

 

 

グレンが慌ててセリカの元へと駆け寄り、ウィリアム達もグレンの後に続くようにセリカの元へと駆け寄って行く。

 

 

「……ッ!?不味いぞ!?こいつ、マナ欠乏症に加えて低体温症まで起きてやがる!このままじゃマジで命に関わるぞ!?」

 

 

グレンの切羽詰まった言葉に、一同はセリカを救おうと大慌てで動き始める。

だが、その時、低い地鳴りが一同の耳にへと届く。

 

 

「こ、この音は……?」

 

「まさか、白銀竜……?」

 

 

システィーナとルミアは不安げに辺りを見見回し、リィエルは大剣を深く低く構え、油断なく見回す。

だが、グレンとウィリアム、オーヴァイは愕然として、山頂へ続く急斜面の方へ顔を向けていた。

 

 

「嘘だろ……!?」

 

 

グレンは真っ青な顔で頬を引きつらせ、見上げている先には―――

 

 

「不味いですよ!!あの雪崩、真っ直ぐこちらに向かってますよ!?」

 

 

洪水の如き大量の雪が流れ落ちるように下り、一同を呑み込まんと迫って来ていた。

 

 

「白猫!ルミアを担いで《疾風脚(シュトロム)》であっちの尾根の上に登れッ!リィエルは白猫のフォロー!ウィリアムとオーヴァイも白猫達に続いて安全地帯に上がれ!セリカは俺が何とかする!!」

 

 

グレンが一際高い尾根を指さし、ぐったりしているセリカを背負いながら指示を飛ばしていく。

 

 

「急げッ!!このままじゃ雪崩に呑み込まれて全滅だ―――ッ!!」

 

 

グレンの逼迫した叫びに押されるように、ウィリアム達はグレンが指さした尾根を目指して駆け出す。

システィーナはルミアを担いで《疾風脚(シュトロム)》で斜面を飛ぶように駆け上がり、後から続くリィエルとオーヴァイは素早く雪上を移動し、ウィリアムは若干遅れながらも幾つもの【騎士の楯(ナイツ・シールド)】を足場代わりにして尾根へと目指していく。

だが……

 

 

「―――カハッ!?」

 

 

オーヴァイが途中で吐血と同時にその場で倒れ込んでしまう。

 

 

「オーヴァイ!?」

 

 

その光景に後ろにいたウィリアムは驚き、すぐにオーヴァイの隣に駆け寄る。状態を確認する時間すら惜しいので、人工精霊(タルパ)を使ってオーヴァイを何とか左肩へと担ぎ、再び尾根へと目指すがその歩みは先程よりも遅くなっている。

 

 

「急いで!!早くしないと雪崩に……ッ!?」

 

 

システィーナがウィリアムとまだ遥か下にいるグレンにへと必死に呼びかけるも、雪崩は無慈悲に彼らに迫る。

その状況にシスティーナとリィエルは居ても立ってもいられず、システィーナは《疾風脚(シュトロム)》で、リィエルは【フィジカル・ブースト】全開で駆けつけようとするも―――

 

 

「来るなッ!!もう間に合わねえ!!」

 

「今からじゃ巻き込まれる人数が増えるだけだ!!」

 

 

冷静に判断したグレンとウィリアムがそれを止める。

 

 

「心配するな!!この程度でくたばるかよッ!」

 

「リィエル!ちゃんと生きて合流するから二人の事をしっかり―――」

 

 

その言葉を最後に。

グレンとセリカ、ウィリアムとオーヴァイは雪崩の中に呑み込まれていった―――

 

 

 




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