てな訳でどうぞ
―――雪崩から少し時間が経過した頃。
雪が積もったとある一ヵ所から紫電が飛び散り、一つの穴が開いていく。
「何とか上手くいったか……」
そう言いながら這いずるように穴から出てきたのは、黒魔【マジック・ロープ】でオーヴァイを背のうを背負った背中にへとくくりつけたウィリアムである。
雪崩に呑み込まれる直前、ウィリアムは
「……やっぱり大分流されてしまったか……」
周囲を確認しながら登山ルートから外れてしまった事を改めて確認したウィリアムは再び錬金術を使い、大きめのかまくらを作り上げる。
作り上げたかまくらの中に避難したウィリアムは中央の辺りを石にへと錬成し直しそこにオーヴァイを下ろしてからぶつぶつと呪文を唱えながらその場に魔術法陣を刻んでいく。魔術法陣が刻んだ線に従って赤熱し始めたのを確認したウィリアムは背のうから
くべられた紅燃石は激しく燃えあがり、焚き火となった。
「暖はこれで確保できたな。後は……」
ウィリアムは然程得意ではない治癒魔術を顔色が未だに悪いオーヴァイに施していく。オーヴァイの顔色が幾ばくか良くなり、呼吸も落ち着いたのを確認したウィリアムはそこで治癒魔術をやめ、取り出したタオルケットを、左手だけで何とかオーヴァイに巻き付けてから漸く腰を下ろし、自身の回復に努めていった。
――――――――――――――――――――――――
「…………ん……」
「目が覚めたか?」
意識が覚醒していないまま、オーヴァイが声がした方へ顔を向けるとそこに居たのは紫の小さな結晶―――《マナ・クリスタリウム》を左手に持ち、こちらを見ているウィリアムだった。
「……先輩……?」
「身体の調子はどうだ?どこか悪い所はないか?」
ウィリアムのその言葉でオーヴァイはぼんやりとしたまま自身の記憶を辿っていき、自分が吐血して倒れた事を思い出す。
「先輩が治癒してくれたんですか……?」
「ああ。あまり治癒魔術は得意じゃないから効果には不安があるけどな」
ウィリアムはそのまま雪崩に呑まれた事、グレン達とはぐれた事も説明していく。
「……すいません、ご迷惑をおかけしました……」
「後輩を守るのは先輩の義務みたいなもんだからあんま気にするな」
ウィリアムは謝ってきたオーヴァイにそんな言葉を口にする。
そこから二人の間に沈黙が漂うも……
「……オーヴァイ、お前はどうして学院に来たんだ?」
唐突にウィリアムはオーヴァイにそんな事を問い質す。
「単に気になっただけだから無理に話す必要はないが……」
「……お母さんのように強くなりたいからです」
オーヴァイは呟くように言いながら自虐的に笑う。
「私の身体は知っての通り弱くて……激しく動き過ぎたり、無理をすると吐血してしまうんです。それで何度も迷惑かけて……周りはそんな身体で揉め事は危険だって気遣って……」
「…………」
「そんな身体にも関わらず、お母さんは笑って私に剣を教えてくれたんです……『娘の願いを叶える手伝いをするのが親の役目』だって。その時からお母さんは私のヒーローなんです」
「つまる所、学院に来たのも母親絡みなのか?」
「ハイ……お母さんが通った学院がどんな所か知りたかったのもありますが……」
ウィリアムの直球すぎる言葉に、オーヴァイは自虐的な笑みのまま肯定する。
「学院生活は楽しいか?」
「とっても楽しいですよ。ここ最近は大変でしたけどね……」
「確かにな」
ここ最近の学院の出来事を思い出し、ウィリアムは苦笑してしまう。
「お前が学院に来た理由は分かった。オルビスさんのように強く、立派になりたいなんて立派な目標だな」
ウィリアムが微笑みながらそう口にすると、オーヴァイは少し驚いた顔になった。
「……本当にそう思うんですか?」
「?俺のように何がしたいのか分からなくなっているより奴よりずっと立派だろ?」
さも当たり前と云わんばかりのウィリアムの言葉に、オーヴァイは子供のような微笑みを浮かべた。
「……先輩って、目つきが悪い顔に似合わず優しいんですね」
「人の気にしている事をさらりと言うな後輩」
自覚があるとはいえ、はっきりと指摘されるのはやはりいい気分ではないので、ウィリアムは不機嫌そうにむすっとする。
「アハハ……すみません。お詫びに先輩を温めて上げますのでそれで許してください」
オーヴァイはそう言って起き上がり、ウィリアムの返事を待たずに自身を巻いていたタオルケットを使い、あっという間に背中合わせで一緒に包み込んだ。
「おいおい……」
「十分に温まってから先生達を探しに行きましょう。私達がこうして無事ですから先生達も無事の筈です」
「……そうだな」
もう少し体力を回復させてから外の様子を見て、グレン達を探しに行こうと考えた……その時。
「ぁあああああああああああああああああああーーッ!?あなた達、何をやっているのぉおおおおおおおおおおおおおーーッ!?」
突然の叫び声に、ウィリアムとオーヴァイは驚いて叫び声が聞こえたかまくらの出入り口に顔を向けると。
「人がすごく心配していたのに、オーヴァイさんと何してるのよウィリアムゥウウウウウウウウウ―――ッ!?」
「これはひょっとして……アレ、なのかな……?」
「…………」
顔を真っ赤にして騒ぐシスティーナと、同じく顔を真っ赤にしてこちらを見るルミア、心なしか不機嫌そうな顔をしているリィエルがいた。
システィーナの叫び具合から何を想像しているのか大方察し、ウィリアムは深い溜め息を吐く。
「……システィーナ、周りをよく見ろ。俺達の服は何処にもないだろ」
「……あ」
ウィリアムがタオルケットから左手を取り出し、頭に手を当てながらの指摘に、システィーナはウィリアムの防寒具付きの左手と周りに衣類が無い事に自身の想像が勘違いである事にやっと気づく。
「そうですよー。単にウィリアム先輩を温めていただけですよー」
「そ、そうなんだ……あはは……」
オーヴァイも弁明し、ルミアも誤解であった事で恥ずかしそうに顔を背けながら苦笑いする。
そんな中、リィエルが無言でウィリアムとオーヴァイに近づき、タオルケットの中に潜り込み、ウィリアムの顔のすぐ隣に顔を出す。
「お、おいリィエル……?」
「……すごく心配した。ウィルがいなくなると思って……」
リィエルの眠たげな瞳が不安げに揺れていたので、ウィリアムは一気にいたたまれない気分になる。
「……悪い、心配かけちまったな。すぐに連絡すべきだった」
「ん……」
ウィリアムは謝りながらリィエルの頭を撫でながら謝り、リィエルもその不安が消え、薄く微笑む。その直後、背中の方が妙に動きまわり、抱きつかれる感触が襲う。
「ウィリアム先輩。しっかりと温めさせてもらいますよー!」
オーヴァイのその言葉にウィリアムが後ろを向くと、オーヴァイが背中に抱きついてきていた。それを見たリィエルももぞもぞと動き、ウィリアムの左腕に抱きつく。
「なら、わたしもウィルをしっかりと温める」
「ウィリアム先輩の身体に抱きついている私のほうがしっかりと温められますよ?」
「……むぅ……」
オーヴァイのその言葉に、リィエルは不機嫌そうに頬を膨らませる。
「なんでこうなった……」
まさかの事態に、ウィリアムはかまくらの天井を見上げ、現実逃避をする事にした。
「……あれってリィエルの新しいライバル?」
「あはは……」
そんな三人に、システィーナとルミアの小さな呟きは届かなかった……
文才ないとやっぱりキツいなぁ········
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