やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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一先ず出来たので投稿
てな訳でどうぞ


第十二章・月の幻と彼女の絆
百十八話


秋休みが終わり、後期学期がスタートしたアルザーノ帝国魔術学院。その昼休みの二組の教室では―――

 

 

「はぁあああああーーッ!?竜退治~~ッ!?」

 

「嘘でしょう!?」

 

「ふふん!嘘じゃないわよ!?……実際に倒したのはアルフォネア教授だけど……」

 

 

ウィリアム達の秋休み中に起きた出来事で大いに盛り上がっていた。

 

 

「ハハ……」

 

 

そんな中、ウィリアムは若干呆れながらも、再開した学院での日常に頬を緩めていた。ちなみにこの話題が朝ではなく昼休みになったのは、朝はリィエルの首にかけられているペンダントで話題になったからである。

 

 

『リィエル?そのペンダントはどうしたんですの?』

 

『ん。ウィルから貰った。おそろい』

 

 

ウェンディの質問に、リィエルがうっすらと微笑んで答えたその瞬間―――

 

 

『『『『キャァアアアアアアアアアアッ!!ペアルックゥウウウウウウウウ―――ッ!!!』』』』

 

『『『『くたばれ!!クソリア充ぅうううううううううう―――ッ!!!!!!』』』』

 

 

……っと、こんな風に大騒ぎになったからである。ちなみにあの夜の事も暴露されかけたが、ウィリアムがリィエルの口を塞いで辛うじて阻止する事は出来た。

……女性陣は顔を真っ赤に、男性陣は全身が憎悪に染まっていたが。

実に何時も通りの懐かしい光景であったが、勿論気がかりな事もある。

白銀竜を倒した後にセリカが拾った少女は未だ眠ったままだし、セリカもあの戦いで再び体調を崩してしまったのだ。セリカ達は再建したアルフォネア邸で安静にしているが少々心配ではある。それに、あの白銀竜は最初の遭遇の時、何故ウィリアムの攻撃が読めていたのかも気になる。

それでも、今はこの日常を堪能しよう。

そう思い、ウィリアムは隣にいるリィエルに顔を向け―――

 

 

「―――え?」

 

 

ウィリアムは抜けた声とともに動きを止めた。何故なら、隣に座っているリィエルの顔色が明らかに悪かったからだ。リィエルはそのまま身体を傾け、床に倒れ伏そうとする。

 

 

「――ッ!リィエル!?」

 

 

ウィリアムは我に返り、急いでリィエルを抱き抱える。抱き抱えたリィエルは意識を失い、荒い息を吐き―――身体はとても冷たかった。

ウィリアムの大声に周りは一斉にウィリアムの方に顔を向けるが、今のウィリアムはそれに気づく余裕はなかった。

 

 

「リィエル!?一体どうしたんだ!?リィエル!!」

 

 

ウィリアムはリィエルの身体を揺さぶりそうになる衝動を必死に抑えて、意識を失ってぐったりとしているリィエルに何度も問いかける。

 

 

「しっかりしろリィエル!!本当に何が――」

 

「落ち着けウィリアム!!」

 

 

何度目かの問いかけで、ウィリアムの肩に何かが置かれる感覚が伝わり、ウィリアムは振りかぶる勢いで顔を向けると、グレンが焦りを抑えた表情でウィリアムの後ろにいた。

 

 

「気持ちはわかるが、今は急いでセシリア先生達の下へ行くぞ」

 

「あ、ああ……」

 

 

言葉からでも焦りを抑えているとわかるグレンの言葉に、ようやく落ち着いたウィリアムは頷き、リィエルを担いで急いで医務室へと向かった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……法医師として正直に言います。リィエルさんは、もう…………()()()()()()

 

 

セシリアが痛ましそうに断言した言葉に、ウィリアムは地面が崩落して虚空に放り出されるような感覚が襲う。

医務室に向かう途中、法医呪文(ヒーラー・スペル)をリィエルにかけたのだが、今のリィエルは法医呪文(ヒーラー・スペル)を一切受け付けず、霊的な視覚で見たリィエルの体内マナはかつてない程弱々しく、寿命が尽きかけているようであった。

今のリィエルはあらゆる装置が全身に物理的にも霊的にも繋がれており、必死に命を繋ぎ止められている状態である。

システィーナがその事実を前にセシリアに詰め寄り、ルミアが取り押さえた事でウィリアムはなんとか気持ちを持ち直す。

 

 

「……何で……助からないん……だよ……」

 

 

ウィリアムは拳を強く握り、必死に感情を押し殺してセシリアに理由を問い質す。その問いに答えたのはセシリアではなく、彼女の隣に座っているギーゼンであった。

 

 

「……リィエルさんの患った病は……『エーテル乖離症』です……」

 

 

『エーテル乖離症』は肉体と霊魂の結合が緩み、霊魂が肉体から乖離していくという、恐ろしい魔術性疾患だ。

この病は魂に負担をかけ続けてきた魔術師が晩年にかかる病気なのだが……

 

 

「それなら、治療法は既に確立してありますよね?」

 

 

グレンが目を瞬かせながら疑問を口にする。グレンの言う通り、この病気の治療法は既に確立されており、老魔術師ならともかく、若いリィエルを治せない筈がないのだ。

 

 

「はい……ですが、リィエルさんの霊魂が……エーテル構造が解析できなくて……そのせいで彼女の施術に必要な霊域図版(セフィラ・マップ)を作れないんです……」

 

「解析できない……?」

 

「法医術の権威とも言えるセシリア先生が……?」

 

「はい……」

 

 

セシリアの痛ましげなその言葉に、ウィリアムは凄まじい悪寒が駆け巡っていき、声を震わせて恐る恐る問いかける。

 

 

「……リィエルの……魂……霊魂は……どういう……状態……なん……だ……?」

 

「……十の霊域(セフィラ)の境界がぐちゃぐちゃで、まるで複数の魂を無理矢理重ね合わせたようなものになっている状態なんです。そのせいで彼女の霊魂の全体像が把握出来ないんです……こんなめちゃくちゃな霊魂、今まで見たことがありません……」

 

 

ギーゼンからもたらされた言葉でウィリアムは理解してしまった。リィエルが何故『エーテル乖離症』を患ったのか。

グレンもセシリアの説明で同様の可能性に至り、思わず『Project:Revive Life』の単語を口に出してしまう。

 

 

「……リィエルさんの霊魂について、何かご存知なのですか?」

 

「……知っているなら話してくれませんか?今は少しでも手がかりが必要なんです」

 

 

グレンのウィリアムの顔色が変わった事を察したセシリアとギーゼンが、声のトーンを抑えて問う。

リィエルの真実は絶対に知られてはいけないことだが、この緊急事態には是非もなく、セシリアとギーゼンに他言無用を約束させ、リィエルの全てを語っていく。

 

 

「……にわかには信じがたいことですが……そういうことだったんですね……」

 

「……僕もセシリア先生と同じ気持ちですが……それなら説明がつきますね……」

 

 

話を聞き終えたセシリアとギーゼンが合点がいったように頷く。

リィエルはシオンの固有魔術(オリジナル)で生み出された魔造人間。特に霊魂体(エーテル)の代替物たる『アルター・エーテル』は複数人の霊魂から精製されたものだ。リィエルのエーテル構造が複雑怪奇なのも頷けるし、おそらくシオンの固有魔術(オリジナル)に僅かな隙があり、それが時間経過で肉体(マテリアル)霊魂体(エーテル)の結合のズレとして現れたのだろう。

それがリィエルが『エーテル乖離症』を患った理由である。

症状自体はただの『エーテル乖離症』だが、リィエルのエーテル構造が複雑怪奇なため霊域図版(セフィラ・マップ)が作れず、治療が出来ないというセシリアとギーゼンに、ウィリアムは俯きながらも、二人に問いかける。

 

 

霊域図版(セフィラ・マップ)さえあれば、なんとかなるんだな……?」

 

「……ええ……それさえ出来ればすぐにでも治療できるんですが……」

 

「最大の問題は彼女の霊域図版(セフィラ・マップ)が作れないことなので……あくまで現時点で、ですが……」

 

「だったら……!」

 

 

ウィリアムは顔を上げ、決然とした表情で告げる。

 

 

「不可能だと言われても、リィエルの霊域図版(セフィラ・マップ)を作るしかない!このまま指をくわえて見ているだけなんて、死んでも出来るか!!」

 

「……そうだな」

 

 

ウィリアムのその言葉に、グレンも意を決した表情ではっきりと告げる。

 

 

「魔術はいつだって不可能を可能にしようと発展するんだ。ウィリアムの言う通り、たとえ不可能でも、俺達はリィエルの霊魂を解析して、霊域図版(セフィラ・マップ)を作るしかねぇんだ」

 

 

こうして―――ウィリアム達のリィエルを救う苦闘の日々が始まるのであった。

 

 

 




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