やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

174 / 215
オリジナル回第三弾!
てな訳でどうぞ


幕間三・《詐欺師》の最悪(笑)の一日
百二十六話


学院の休日。

晴天の空模様。

フィーベル邸のそれなりに場所が開けた中庭。

もうすぐ昼が近づく頃合いにて……

 

 

「いぃいいやぁああああああああああああああああああ―――ッ!!!!!」

 

「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――ッ!!!!!」

 

 

青と金の激しい剣戟が繰りひろげられていた。

青の斬撃は圧倒的なパワーで炸裂し、金の斬撃は圧倒的なスピードで炸裂し互いに拮抗している。

 

 

「なんでこうなった……」

 

 

その激しいぶつかりあいをどこか遠い目で見詰めながら、ウィリアムはこうなるまでの出来事を遡る―――

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……んぁ……もう朝か……」

 

 

休日の朝。いつも通りの時間でウィリアムは目を覚ましてベッドから上体を起こす。そして、自身の左で寝ている青髪の少女―――リィエルを起こしにかかる。

 

 

「リィエル、朝だぞ。起きろ」

 

「…………ん……」

 

 

ウィリアムに肩を揺すられ、リィエルはうっすらと目を開け、相変わらずの眠たげな表情のままベッドから身体を起こす。

 

 

「……おはよう……ウィル……」

 

「おう、おはようさん。目が覚めたなら、早いとこ部屋行って着替えてこい」

 

「ん……」

 

 

ベッドから起き上がったリィエルは素直に頷き、自分の衣服がある部屋に行くため、ウィリアムが借りている部屋から出ていく。

ちなみに、ちゃんと二人とも寝間着は着ているので、お楽しみとか、そういう展開は一切ない。……ごくたまにリィエルの寝相が悪いと、ギリギリな格好やら状態になってはいるが。

具体的な例を上げるなら、寝間着が着崩れして下着用のキャミソールが見えていたり、頬と頬、もしくは唇同士が接触するほど近かったり、特に左腕に抱きついている時、ウィリアムの左手がアソコに当たりかけたりといった具合である。勿論それを指摘すれば、めでたく上書き行動(濃厚キス)が待っているので口を閉ざして黙っている……というか、一回指摘してやられてしまったから、それ以降、基本は諦める事にしたのだ。

その事件が起きたのは居候六日目の朝、目が覚めると、リィエルがウィリアムに覆い被さるように抱きついて寝ており、しかも、リィエルの顔がウィリアムの顔にくっつく程近かった為、ウィリアムが恥ずかしさから顔を逸らした時に、丁度、というか運悪く目を覚ましたリィエルにそれを見られてしまい、つい正直に理由を言った直後―――

 

 

『―――んっ』

 

 

両手で顔を向かい合わせ、濃厚に唇を重ね合わせたのだ。がっちりとホールドして三十秒程。その時、目撃者二名は顔を真っ赤に硬直していたが、別にいいだろう。

 

 

「……にしても……この状況に慣れてきてしまってるなぁ……」

 

 

一人となったことで私服に着替えながら、どこか遠い目となったウィリアムは独り言を呟く。リィエルと一緒に寝るのが最早当たり前になってしまっており、家の件も手頃な物件が見つからず、度重なる騒動のせいもあって中々踏ん切りがつかない状況なのだ。

その事をフィリアナは特に気にしていないが、親バカたるレナードはその事を快く思っておらず、家に帰ってくる度に、レナードはまだ居候を続けるウィリアムに制裁を下そうとするが、フィリアナによって毎回沈められている。

そんな現状にウィリアムは溜め息を吐きながら着替えを終えて、食堂へと向かっていった―――

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

朝食も済ませ、ウィリアムは自室で《魔銃ディバイド》の分解整備をしている。《魔銃ディバイド》はフレームや重要な部品は日緋色金(オリハルコン)で構成されているが、バネ等の幾つかの部品の材質は一般的に出回っている物と同じだ。

なので、内蔵されている魔晶石の確認等、一度、本格的に整備する必要があるのだが……

 

 

「……前にも言ったと思うが……見てて飽きないのか?」

 

 

分解して部品の状態を確認していたウィリアムは、傍で作業の様子を見ているリィエルに問いかける。

 

 

「…………」

 

 

対してリィエルはいつもの表情で無言のまま見つめ続けている。そんなリィエルにウィリアムは肩を竦め、再び部品の状態を確認していく。

ウィリアムの使っている拳銃は引き金を引くだけで銃弾を放てるが、その構造上、グレンが使うファニングやトリプルショットといった銃技は一切使えない。変わりに片手だけでも扱えるというメリットが出来ているし、早撃ちや反動の受け流し等の技術に集中できたが。

続いてウィリアムは雷加速弾の要といえる魔晶石の状態も確認していく。ウィリアムの拳銃から放つ銃弾の発射初速は毎秒五百メトラを超え、拳銃で放てる雷加速の限界速度はその十倍―――毎秒五千メトラに達する速さだ。威力の方は言うまでもない。

そんな高威力の弾丸をC級軍用攻性呪文(アサルト・スペル)の消費魔力以下で、しかも連続で放てるものだから、玩具と見くびると相当痛い目に合いかねないのだ。

その分、模擬戦で人に向けて発射するのは流石に不味いし、威力の調節等ほとんど不可能ではあるが。

そんな各種部品を確認している部屋に、システィーナとルミアが紅茶を持って訪れる。

 

 

「……先生もそうだけど、ウィリアムも魔術師らしくないわよね」

 

「自覚はあるさ。まともな方法じゃ無理があったんだからな」

 

 

システィーナの呆れに、ウィリアムはあっさりとそう返す。

 

 

「でも、何度見ても先生が使う銃と全然違うね」

 

「まぁ、何度も試行錯誤したからな」

 

 

ルミアの言葉にウィリアムは少し苦笑して返す。

パーカッション式だと強度は単純に高いが、再装填には手間がかかるという欠点がある。勿論、まるごと錬成することは出来るが、金属薬莢を使う形にしたのは魔術弾を扱うことも想定したからだ。

《隠者》のバーナードのような装填済みの場合、大量の銃を圧縮凍結を施す必要がある上に荷物がかさばってしまう。しかも使った後は回収する暇等ないから色々と効率が悪かったのだ。なので、装填と持ち運びのしやすい金属薬莢製で魔術弾を携帯するという形に落ち着いたのだ。フレームが中折れ式なのは再装填のしやすさと、左右どちらの手でも使えるようにした結果である。耐久力の低さは絶対硬度を誇る日緋色金(オリハルコン)で補っている。

 

 

「……色々と考えた結果、なのね」

 

「そりゃそうだ。短期間で強くなるための工夫なんだからな」

 

 

納得したように頷くシスティーナにウィリアムは最後にそう締めくくって紅茶を飲んだ後、再び作業に集中していく。

整備も終わり、組み直した頃合いに一人の少女がフィーベル邸を訪ねて来た。その少女は―――

 

 

「こんにちわーッ!!遊びに来ましたよーッ!!」

 

 

大きめの鞄を下げ、お菓子等の手土産を持った、後輩のオーヴァイ=オキタであった。

 

 

 




こんな感じの休日回······ありだよね?
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。