やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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甘い話と修羅場突入回
てな訳でどうぞ


百二十七話

「いらっしゃいオーヴァイ。よく来たわね」

 

 

アポなしの訪問にも関わらず、システィーナはオーヴァイを快く迎え入れ、現在はラウンジでオーヴァイが手土産で持持ってきたクッキーや苺タルトを皆で食べていた。

 

 

「ごめんねオーヴァイ。気を遣わせちゃって」

 

「いえいえ。これは回復祝いも兼ねてますので気にしないで下さい」

 

「ああ、だから苺タルトが割と多くあるのか」

 

「……♪」

 

 

どうやら手土産のお菓子は逃走劇で祝いそびれたリィエルの回復祝いだったようで、ウィリアムの左隣に座っているリィエルは上機嫌で苺タルトを頬張っている。

 

 

「この間は本当に御愁傷様でしたね。出来れば私も先輩達について行きたかったのですが……」

 

「ええと、気持ちは嬉しいんだけど……」

 

「わかってますよ。先輩達には先輩達なりの事情があったでしょうし、まだ一年の私じゃ多分、皆さんの足を引っ張ったでしょうし……」

 

「だけど、お前もリィエルに率先してマナを送ってくれてただろ?」

 

 

苦笑い気味に自嘲するオーヴァイにウィリアムはクッキーを口に運びながら少し笑いながら言う。リィエルにマナを供給して命を繋いでいた時、二組の皆に次いで、一番リィエルにマナを注いでいたのはオーヴァイだと後から聞いたのだ。

 

 

「ん。オーヴァイの声も聞こえてた」

 

 

ウィリアムに同意するように、リィエルが不思議発言をする。リィエル曰く、皆と“姫”のお陰で自分は助かったと言っており、それをウィリアムは弱っていた時の幻覚や幻聴だとは思ったが、多分、本当に皆の声が聞こえており、その“姫”もあのアストラル・コードの人格なのかもしれないと、不思議とそう思い、心の中で“姫”にお礼を伝えた。

……その後、ウィリアムの想いも伝わっていたとリィエルが薄く微笑んで言った時は気恥ずかしさから、ソッポを向いてしまい―――

 

 

『……?どうしたのウィル?』

 

『な、何でもねぇよ』

 

『…………』

 

 

顔を赤めて明後日の方向を向くウィリアムを、リィエルはじっと見詰め·······

 

 

『……ん』

 

 

そのままウィリアムの顔に手を当てて自身にへと向かせ、実に自然な動作で唇を重ね合わせた。

 

 

『ッ!?!?!?!?』

 

『ちゅぅ……ん……じゅる……んちゅ……』

 

 

ウィリアムは自らの失敗に漸く気づくが時既に遅し。リィエルはウィリアムの口に舌を入れる―――ウィリアムがスノリアで酔った時に敢行したディープキスを実行していた。

素の力が強いリィエルの押さえ込みから逃れるのは不可能な上、まさかのディープキスにかなり動揺したウィリアムはされるがまま、二十秒もリィエルとディープキスをすることとなった。

解放された後も軽く思考停止に陥っていたが、すぐに我に返って問い質す。

 

 

『り、リィエル!?何でまたキスを……ッ!?』

 

『ウィルが恥ずかしがってたから、更に恥ずかしい事で上書きした』

 

『だよなぁ!?』

 

 

リィエルの予想通りの解答に、ウィリアムは頭を抱え、堪らずキスについての知識を教える。

 

 

『キスというのは基本好きな人同士がするもんだ!!こういう風に気軽に―――』

 

『?だったら問題ない。わたしはウィルのことが一番大好きだから』

 

『ぁあああああああああああ―――ッ!!!!!』

 

 

本当に相変わらずのリィエルに、ウィリアムはますます頭を抱えて叫び声を上げる。

結局、上書き行動に関しては恥ずかしがる素振りを見せない以外に手の打ちようがないという結論に至る羽目となった。

ちなみに、この出来事は逃亡劇からの生還、フィーベル邸での夜の出来事だったため他の人達には知られていない。……二人を除いて。

その目撃者たる二人は当然ながら顔は真っ赤に染めながら現場を凝視、静かに部屋へと戻った後で……

 

 

『ど、どうしようルミア!?リィエルがどんどん大人の階段を上っているんだけど!?』

 

『う、うん…………そうだね……ディープキスってあんな感じなんだ……』

 

『リィエルがうらや―――心配だわ!!このままだとウィリアムに本当に襲われてしまうわ!!』

 

『本当に……リィエルは凄いなぁ……どんどん大人に……うわぁ……』

 

 

完全に動揺してしまって会話が噛み合っていなかった。

その日は寝る時もリィエルがウィリアムにしがみつき、ウィリアムの胸に顔を埋めて甘えていたが、今は別にいいだろう。

そんな黒歴史に関係なく、一同は和気藹々と談笑し……

 

 

「ところでオーヴァイ……その荷物は?」

 

 

その話の中でウィリアムはオーヴァイに気になっていた事―――手土産とは別の大きめの鞄について聞いた。

ウィリアムのその質問に、オーヴァイはあっさりと答えた。

 

 

「お泊まりセットです」

 

「「……は?」」

 

「……え?」

 

「…………(モグモグ)」

 

 

オーヴァイのどや顔して放った言葉に、苺タルトを食べ続けているリィエル以外は目が点となる。

 

 

「お泊まりセットです。学院の許可もありますので、今日は此処に泊まらせて下さい」

 

「「「……えええええええええッ!?」」」

 

「勿論、理由はありますよ。実はリィエル先輩やウィリアム先輩と手合わせしたくて訪れまして。どうせならこのまま泊まっていこうかと」

 

「いや、ちょっと待て!そればかりは流石にシスティーナの事前了承無しでやるのはまずいんじゃないのか!?部屋だって―――」

 

「部屋はウィリアム先輩がお借りしている部屋に泊まらせて貰いますので大丈夫です」

 

「勝手に話を決めないでちょうだい!!」

 

「宿泊代もちゃんと出しますので本当に大丈夫ですよ」

 

「だから勝手に話を進めないで!!」

 

「ですので、寝る時はウィリアム先輩の左側で寝かせて貰いますね」

 

 

オーヴァイはシスティーナのツッコミを完全に無視し、ニッコリと笑ってウィリアムに顔を向ける。本当に自分の道を突き進むオーヴァイにウィリアムが呆れていると―――

 

 

「ダメ。ウィルの左側はわたしの位置だから」

 

 

リィエルがどこか不機嫌そうにオーヴァイの要望を却下していた。それに対し、オーヴァイはにこやかな笑みのままリィエルに話しかけた。

 

 

「リィエル先輩は毎日ウィリアム先輩と一緒に寝てるじゃないですかー。一日くらい譲って下さいよー」

 

「ヤダ」

 

 

オーヴァイの要望をリィエルはとりつく島も無いと云わんばかりに再び却下する。

 

 

「それなら、模擬戦の勝敗で決めませんかー?勝った方が、ウィリアム先輩の左側を今日一日独占するという内容で」

 

「……ん。わかった、受けて立つ」

 

 

オーヴァイが掲示した妥協案にリィエルは頷いて了承。二人の間に火花が飛び散る幻覚が見え始める。……愛嬌高い可愛い子犬と風を纏う狼の幻影が二人の後ろに現れ、睨みあって対峙する光景と一緒に。

 

 

「ねぇ、ルミア。これって……」

 

「うん……完全に修羅場だね……(私達もあれくらい、強引にいった方がいいのかな……?)」

 

「……どうしてこうなった」

 

 

システィーナの曖昧な言葉にルミアは同意しつつ、小声で何かを呟き、ウィリアムは形成された修羅場に遠い目となった……

 

 

 




ついに二人のスタン○出現!ちなみに―――

「フ、フフフフフフフフフ···········」

自室で勉強中、部屋の空気が急転直下で重くなり、顔だけで部屋が埋る程の巨大な龍のスタン○が出現し、廊下を通った人達は扉から放つプレッシャーに萎縮する事となった·····

「ヤベェ!!エルザがまた荒れてるぞ!?」

「ジニー!!何とかしなさい!!」

「だから無茶言わないで下さいお嬢様(またリィエルさんとウィリアムさんがいい雰囲気になったのでしょうね·······ハァ·······)」

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