やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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天災の発明品は本当に便利である·····
てな訳でどうぞ


百二十九話

昼食を取っている途中でオーヴァイは思い出したように口を開く。

 

 

「あっ。そういえば、この装置をお借りする際、シュウザー教授からモニターを頼まれていたソフトがありました」

 

「…………どんなソフトを頼まれたんだ?」

 

 

ウィリアムは警戒心丸出しで聞き、システィーナは顔を顰め、ルミアは曖昧な笑みを、リィエルは変わらずにキャッシュをリスのように頬張り続ける。

そんな一同の反応に関わらずオーヴァイは話を進めていく。

 

 

「頼まれたのは……《ゾンビの館X》、《スライムの学院IV》、《昆虫の洞窟II》、《ゴブリンの墓場III》……」

 

 

タイトルからして不穏さ全開のソフトにシスティーナとルミアはひきつり、ウィリアムも顰めっ面となる。リィエルは変わらず食べ続けている。

 

 

「後はこれですね!《恐怖のサマービーチ》!!」

 

「……まさか、それ全部モニターしろとか言うんじゃないよな?」

 

「いえ。これらの中から一つだけでいいそうです。確か……“共通深層意識野に特定の環境を作り出す”でしたかね?早い話がこことは違う光景をリアリティーに再現してゲームを楽しむソフトのモニターです。これとは別にもう一つモニターして欲しいソフトがありますがこっちは別にやらなくていいそうです」

 

 

全部やらなくて済む事に一先ずは安堵するウィリアム達。本音を言えばモニターなんかしたくはない。

これらのソフトは間違いなく、オーウェルとツェスト男爵合作のソフト。つまり、少女が泣き叫ぶ系のソフトである事は想像に固くないからだ。……実際は盗撮魔の学生も協力した最悪なソフトだが。

しかし……

 

 

「なぁ、オーヴァイ。俺達が断ったら、それを一人でモニターするつもりか?」

 

「ハイ。せっかく貸してくれたんですから、これくらいは協力しないとバチが当たりますので」

 

 

ウィリアムの質問に即答するオーヴァイ。自ら生け贄となるオーヴァイにウィリアムは深く溜め息を吐き、しょうがないといった感じで肩を竦める。

 

 

「……俺もモニターに協力してやるよ。後輩一人にやらせるのは流石に気が引けるからな」

 

「ありがとうございます。ウィリアム先輩」

 

 

ウィリアムの協力にニッコリと笑うオーヴァイ。

 

 

「……なら、わたしも一緒にもにたー?に協力する」

 

「リィエル先輩も、ありがとうございます」

 

「……ん」

 

 

リィエルもどこか奮然とした様子で名乗りを上げ、オーヴァイもリィエルにお礼を伝える。……また子犬と狼の幻覚が揺らめいているが。

そんな光景にシスティーナは溜め息を吐き、ルミアは苦笑いしつつ……

 

 

「……しょうがないわね。私も協力するわ」

 

「うん……ウィリアム君の言う通り、流石に気が引けるからね……」

 

「システィーナ先輩もルミア先輩もありがとうございます」

 

 

結局、全員参加で天災教授と変態男爵の発明品のモニターをする事となった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

昼食も終わり、再びラウンジでオーヴァイは例の魔導装置を操作していく。

今回挿入された魔導ソフトウェアプレートは《恐怖のサマービーチ》。モニターを頼まれたソフトの中で、タイトルからしてこれが一番マシだというシスティーナの判断からだ。

 

 

「それでは、起動しますよ!!」

 

 

オーヴァイは対戦型ソフトウェアで何度もモニターしていたせいか、手慣れた感じで魔導装置を起動する。ピコピコと稼働する魔導装置を一同は凝視し続けていると、いつの間にか、周りの景色がフィーベル邸のラウンジではなく、海辺の砂浜に変わっていた。

 

 

「……凄いわね、本当に……」

 

「うん……ここが精神世界の中とは思えないくらいだよ……」

 

 

燦々(さんさん)と輝く太陽と青い空。焼けた白い砂浜に千変万化する波の色の景色を前に、こんなに凄い才能を持っているのに常に明後日の方向に爆走しているオーウェルに、システィーナとルミアは何とも言えない気分になる。

 

 

「だけど、確かにここは精神世界の中みたいだぞ」

 

 

ウィリアムはそう言って適当な方向に進み、途中で見えない壁のような何かに突き当たる。先の模擬戦でも精神世界上のフィーベル邸も敷地を隔てる壁に、同様の見えない壁があって外へ出ることは出来なかった。この見えない壁が、ここが精神世界だと認識出来る特徴の一つなのだ。

 

 

「それにしてもこのビーチ、サイネリア島のビーチに似てないかしら?」

 

「まぁ、サイネリアは有名なリゾート地だし、イメージとして組み込みやすかったんじゃねぇか?」

 

「サイネリアか……ふふっ、懐かしいなぁ……」

 

「ん……」

 

 

ウィリアムとシスティーナ、ルミアは少し懐かしむように海辺を眺め、リィエルは心なしか、若干悄気た感じで頷く。

リィエルが若干悄気た理由―――かつてクラスの皆に酷いことを言った事を思い出したのだろう。そんなリィエルに、ウィリアムは苦笑しながら左手を頭にポンッと、手を乗せる。

 

 

「あ……」

 

「あの時も言っただろ?もう過去は変えられないから、昔はこんな事もあったと笑って語れるくらい頑張ってみろって」

 

「ん……」

 

「現に、お前が倒れた時、皆が必死となってお前を助けてくれてただろ?」

 

「……うん」

 

 

ウィリアムのその言葉に、リィエルも薄く微笑む。そんな二人の光景をシスティーナとルミアは暖かい眼差しで見守っていると……

 

 

「先輩方ーッ!!せっかくですので水着に着替えましょうよー!!ちょうど更衣室もありますから!!」

 

 

オーヴァイが手を振りながら元気な声でウィリアム達を呼ぶ。確かに彼女のすぐ近くには更衣室らしき建造物が建てられているが……

 

 

「……水着まであるなんて……逆に不安なんだけど」

 

「あはは……」

 

 

システィーナは警戒心丸出しで建造物を睨み、ルミアは曖昧に笑う。少し忘れかけていたが、ここはあの変態マスター達が作った精神世界。むしろ、水着が用意されている時点で絶対に何かある。

 

 

「ですが、このままで過ごすのももったいないですし、楽しめる時に楽しめないのは損ですよー?」

 

「……それもそうね」

 

 

オーヴァイの意見に、システィーナは何かあれば速攻で攻性呪文(アサルト・スペル)で沈めればいいと納得し、一同は用意されている水着に着替えてこの精神世界を楽しむ事にした。

ちなみに……

 

 

「随分適当だな……」

 

 

男子更衣室に用意された水着はサーフタイプとボクサータイプ、上着のパーカーしか種類がなく……

 

 

「随分と多いわね……」

 

「そうだね……」

 

「ん、いっぱいある」

 

「選び放題ですねー。悩んでしまいそうです」

 

 

女子更衣室に用意された水着はこれでもかというくらい、種類もデザインも豊富であった。

変態男爵が興奮して荒い息を上げている姿を幻視しながら、システィーナ達は水着を選んでいった……

 

 

 




次回は水着回
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