やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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悩んだ結果、少し戦闘を挟んでからオチへいく方向にしました
てな訳でどうぞ


百三十一話

レポートを書き上げたウィリアム達は、再び集団催眠装置を起動していた。

 

 

「そういやぁ、お前とガチでやり合うのは久しぶりだな」

 

「ん」

 

 

対戦型ソフトウェアが作り出した仮想のフィーベル邸の中庭で向かい合っているのは、紺の外套を羽織ったウィリアムと礼服姿のリィエルである。

ウィリアムはオーヴァイと模擬戦をする前に、自身の手札を多少明かして条件をタイにしようという配慮から、最初にリィエルと一度模擬戦をする事にしたのである。

まぁ、実際は決闘に近い形だが別にいいだろう。

 

 

「それじゃ、そろそろ始めるか」

 

 

ウィリアムはそう言って右手の《魔銃ディバイド》を、左手には錬成した《魔銃ディバイド》と同形状のウーツ鋼製の拳銃を構える。リィエルも大剣を錬成して万全の構えを取る。

 

 

「「―――ッ」」

 

 

二人は暫し様子を窺い合い、静寂が辺りを支配する。その静寂を最初に破ったのはウィリアムだった。

ウィリアムは二丁の拳銃をリィエルの足へと照準を合わせ間髪入れずに発砲する。

炸裂音と共に吐き出されるウーツ鋼製の銃弾。その二条の火線は―――

 

 

「―――ッ!」

 

 

既にリィエルは横へと跳んで駆け出していたため、空しく宙を切るだけに終わる。

 

 

「《雷精》ッ!」

 

 

ウィリアムは直ぐ様詠唱し、拳銃に電気を迸らせ雷加速弾を次々と放ち始める。通常の弾速を遥かに超える幾条もの火線をリィエルは尽く見切ってウィリアムとの距離を詰めていき―――

 

 

「いぃいいやぁああああああああああああ―――ッ!!!」

 

 

白兵の間合いで、大剣を横凪ぎで振り抜こうとするも―――

 

ドゴォオンッ!

 

後退しながら迫る白刃に銃口を合わせたウィリアムの雷加速の銃撃により、大剣は半ばから折られ、その超威力の衝撃でリィエルは折れた大剣を手放してしまう。

しかし、リィエルはすぐに大剣を再び錬成し、ウィリアムへと肉薄していく。

 

 

「《咲き乱れろ刃》ッ!!」

 

 

ウィリアムが一節でそう詠唱して踏み込むと、ウィリアムの前方の地面から幾本もの大剣の刃が生えるように錬成されていき、それを見たリィエルは地面を蹴って後ろへと下がって地面からの凶刃を逃れる。

 

錬金改【大地の牙(ガイア・ファング)】―――高速武器錬成の錬金術を直接攻撃に改変した改変魔術である。

 

ウィリアムは直ぐ様空薬莢を排出し、素早く魔術弾を装填する。装填が終わると同時に、ウィリアムは右側の数メトラ先の地面へ拳銃を向け、何の躊躇いもなく全弾撃ち出す。

地面に着弾すると同時に魔術弾は起動し、瞬く間に氷柱が出来上がる。その氷柱の向こう側にはリィエルがおり、ウィリアムに迫って来ていたリィエルは氷柱に閉じ込められる寸前で回避。後ろに回り込みつつ、大剣を投げ飛ばす。

ウィリアムは飛んできた大剣を銃撃で軌道を変えて逃れるも、両手に二本のクロス・クレイモアを構えたリィエルの接近を許してしまう。

 

 

「やぁああああああああああああああ―――ッ!!」

 

 

リィエルはそのまま稲妻の如く右手の剣を振り降ろす。ウィリアムもすぐに銃撃で右手の剣を弾き飛ばすも、リィエルは右手に再び剣を錬成しながら左の剣を振るい、ウィリアムも再び同様の方法で弾き飛ばす。

 

弾く。かわす。流す。弾く。弾く。流す。弾く。かわす。

 

リィエルの力任せの双剣による剣戟乱舞を、ウィリアムは二丁拳銃で対処していく。炸裂音が響く度に剣が飛んでいき、地面は紫電が爆ぜ続け、辺りは剣の残骸で埋まっていく。

何度目かの打ち合いで、ウィリアムは魔術弾の装填と同時に起動していた【詐欺師の工房】でリィエルの頭上に【騎士の剣(ナイツ・ソード)】を四体具現召喚し、リィエルに向かって発射する。

リィエルはその【騎士の剣(ナイツ・ソード)】を見もせずに後ろではなく右に跳んでかわし、両手のクロス・クレイモアをウィリアムに向かって投げ飛ばし、再びいつもの大剣を錬成して肉薄していく。

ウィリアムは迫り来る二本のクロス・クレイモアを銃撃で軌道を再び逸らし、拳銃を交差させて敢えて受け止める。

リィエルはすぐに斬り返そう動くも―――

 

 

「うあッ!?」

 

 

足が何かに捕られてしまいバランスを崩して倒れてしまう。見れば、リィエルの足下の地面が粘着物に変わっており、リィエルの靴底に引っ付いていた。

 

 

「これで詰み(チェック)だ」

 

 

ウィリアムはそれだけ言い、リィエルの身体に銃弾を撃ち込んだ―――

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「むぅ……負けた……」

 

 

現実に戻ったリィエルは頬を若干膨らませ、悔しそうにしていた。

 

 

「近接の対策くらいはきっちりしてるからな。【見えざる神の剣(スコトーマ・セイバー)】だったり、決め手となった粘着物だったりな」

 

 

ウィリアムは事も無げにそう口にする。実はあの打ち合いの間にウィリアムはリィエルの背後に【見えざる神の剣(スコトーマ・セイバー)】を何体も具現召喚して配置しており、もし、あのまま後退していればもれなく不可視の刃の餌食となっていたのだ。

 

 

「肉眼で捉えられない刃って凶悪ですねー」

 

「リィエルはどうやってソレに気づいたの?」

 

 

観戦していたオーヴァイが【見えざる神の剣(スコトーマ・セイバー)】の感想を洩らし、システィーナが疑問に思ってリィエルに気づいた理由を問いかける。

 

 

「勘。あのまま下がったら斬られる気がした」

 

 

リィエルはいつもの勘だとあっさりと明かす。以前、ジャティスにやられた経験がしっかりと活きていた(?)ようでなりよりである。

双剣による打ち合いもウィリアムに以前、大剣を弾き飛ばされたり粉砕された経験から、手数を増やせばいい、という考えからの戦法のようであり、脳筋寄りではあるがリィエルなりに成長しているようである。

 

 

「それはそうと、次は私の番ですよー!!ウィリアム先輩ッ!手合わせお願いします!!」

 

「了解。……ホントは面倒だけど(ボソッ)」

 

「ん?何か言いましたか?」

 

「別に?それより、さっさと起動したらどうだ?」

 

「それもそうですね。ではちゃちゃっとやりますよー!!」

 

 

オーヴァイは楽しそうに装置を起動し、ウィリアムと模擬戦をした。

結果は……落とし穴と爆晶石のコンボが炸裂したとだけ言っておこう。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

あれからあっという間に時間が過ぎ、夕食も終わったその日の夜。

オーヴァイはウィリアムが借りている部屋でウキウキして荷物を置いていた。

 

 

「ムフフー。今日はウィリアム先輩と一緒に寝られますよー!……残念な事に左じゃないですが······」

 

 

女の戦いでリィエルに負けた事を思い出し、オーヴァイは若干悄気るも、すぐに気持ちを持ち直す。

 

 

「まぁ、終わった事でくよくよしてても仕方ないです!チャンスはまだありますからね!!それにしても……」

 

 

オーヴァイは思い出したように、妙な形のソフトウェアを取り出して眺める。形状は凸状となっており、装置に差し込んではみ出るであろう部分には半球の水晶が取り付けられている。

 

 

「このソフトは何なのでしょうね?こちらも可能であればモニターして欲しいとシュウザー教授は仰っていましたが……」

 

 

オーヴァイは好奇心からそのソフトウェアを装置に差し込み、手慣れた手つきで装置を動かそうとするも……

 

 

「あれ?動きませんね?」

 

 

装置はウンともスンとも云わず、沈黙を保っていた。

 

 

「どうして何でしょう?後で手渡されていたマニュアルレポートを確認しますか。それよりもお風呂です!!」

 

 

オーヴァイはそのまま沈黙を保ったままの装置をほったらかしにして部屋を出ていった。

それから少しして、寝間着姿のウィリアムとリィエルが部屋へと入り、扉を閉めた瞬間―――

 

 

―――二人はその場で倒れこんだ。

 

 

 




二人が倒れた理由は次回で!
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