やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


放置は大敵

とある晴れた日、学院敷地内のとある場所にて。

 

 

「―――と、いうわけで!今日は『魔導探索術』の探索実習で、お前らにはあの洞窟遺跡を調査してもらう!!」

 

 

グレンが指をさす先には、アルザーノ帝国魔術学院が敷地内で管理している古代遺跡の一つである人工洞窟の入り口がある。

本日は古代魔術(エインシャント)魔法遺産(アーティファクト)に関する調査・研究を行う『魔導考古学』に重要な要素―――地図作成、明かりの確保、周囲の索敵、罠や仕掛けの探知、碑文の解読、戦闘……それらを纏めた『魔導探索術』で魔術師としての実力向上を図るのが今回の授業の目的である。

 

 

「あの、先生……この洞窟遺跡は本当に大丈夫ですか?」

 

「この洞窟遺跡は、学院が生徒達の実習のために管理している訓練用だから大丈夫だ。それじゃあ、もう一度ルールを確認するぞ!」

 

 

ルミアの質問にグレンは真剣な顔で答え、改めて今回の実習のルールを説明していく。

今回の成績評価ポイントは―――

 

1.作製した地図の精度。

2.回ったチェックポイントの数。

3.探索にかかった時間。

4.『黄金苔』の採集量。

 

―――この四点である。

『黄金苔』は文字通り金色に光る苔であり、様々な魔術薬や魔術道具の材料になる貴重な魔法素材の一つである。

 

 

「しつもーん。何で『黄金苔』の採集配点が、他の配点より高いんですかー?」

 

 

システィーナがジト目で至極真っ当な疑問をグレンにぶつけた。

 

 

「そ、そんなの決まってるだろ!?え、ええと……うーんと……あ、アレだっ!『黄金苔』が発生するのは空気中の外界マナ濃度―――」

 

「単に売り捌く為だろ。今、『黄金苔』の価値が品薄のせいで高騰して売り時だからな」

 

 

額から脂汗を滝のように流しながら、言い訳していたグレンの言葉を、顔を明後日の方向に向けていたウィリアムが遮るように告げた。

 

 

「な、何を言っているのかなー、ウィリアムくんっ!?ボクは純粋に学究的な目的で―――」

 

「……つまり、私達を利用して『黄金苔』を集めるつもりなんですね……サイテー……」

 

「さぁ、実習開始ぃいいいいいいいーーッ!!さっさと潜りたまえぇーーっ!!!」

 

 

グレンはキョドりながら、ぱんぱん!と、手を打ち鳴らしながらシスティーナの冷ややかな言葉を無視して、生徒達を促す。

当然、一同はジト目の呆れ顔だが……

 

 

「……『黄金苔』を集めてきたら、グレンは嬉しいの?」

 

 

リィエルだけは事態を何一つ理解しておらず、きょとんとグレンを見つめる。

 

 

「お、おう!『黄金苔』がたくさんあると、懐―――研究が捗るからなっ!」

 

「ん、わかった。グレンのために、頑張って『黄金苔』を集める」

 

「そ、そうかっ!期待してるぜっ!リィエル!」

 

「……ん」

 

 

よしよしとグレンに頭を撫でられ、心なしか目を細めて嬉しそうにするリィエル。

 

 

「悪い男に貢がされる、可哀想な女の子の姿すぎる……ウィリアム、傍でしっかり見ててあげなさいよ」

 

「だから何で俺に振るんだ?」

 

 

そんなこんなで、遺跡探索実習の授業は始まるのであった。

 

 

『…………』

 

 

遠くの岩陰から密かに窺う怪しい人影の存在に気付くことなく……

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

―――洞窟内では。

 

 

「ぎゃーーーッ!?」

 

「むにゃむにゃ……」

 

「し、痺れ針が……」

 

「お、落ちるぅうううううーーッ!?」

 

 

無策で突っ込んだ生徒達の阿鼻叫喚の声が響き渡っていた。

 

 

「まったく……」

 

 

罠の洗礼を受け、死屍累々と倒れている生徒達の傍を通りながら、システィーナは溜め息を吐く。

システィーナ、ルミア、リィエル、ウィリアム……いつものメンバーでパーティーを組んだ彼らは、システィーナをリーダーに洞窟内を進んでいく。

 

かりかり、かりかり……

 

 

「……こけ。いっぱい」

 

「そうだな。あっ、そっち行くなよ。魔術罠(マジック・トラップ)があるから」

 

「ん」

 

 

ウィリアムとリィエルは探索そっちのけで『黄金苔』を瓶に採集していた。ウィリアムが『黄金苔』を採集している理由は“楽”の一言に尽きるからである。

 

 

「……この先は無限ループよ。このまま進んでも同じ場所に戻されて、ぐるぐると回り続けるわ」

 

「うーん……この先は順路だと思うんだけど……」

 

「だとしたら、この先に進めないのは構造的におかしいわ。ひょっとして……」

 

 

かりかり……かりかり……

 

システィーナとルミアの謎解きに我関せずと、ウィリアムとリィエルは変わらずに『黄金苔』の採集を続ける。

 

 

「……こけ、たくさん集まってる。……グレン、褒めてくれるかな?」

 

「褒めるだろうよ。それで苺タルトでも奢ってもらえ」

 

「……ん。そうする」

 

 

そんな談笑をしながら地面に落ちた『黄金苔』もせっせと採集していく。

そろそろこの辺りの『黄金苔』が尽きてきたので、先へ進む事にする。

 

 

「あったわ!これを解呪(ディスペル)すれば先に―――」

 

 

がちゃ。

 

システィーナが嬉々として不可視の法陣を黒魔儀【イレイズ】で解呪(ディスペル)しようとした矢先、ウィリアムがとある壁を押して新しい通路を出現させていた。

 

 

「「…………」」

 

「次はこっちで採集するぞ」

 

「ん」

 

 

かりかり……かりかり、かり……

 

硬直しているシスティーナとルミアを他所に、ウィリアムとリィエルは相変わらず『黄金苔』の採集を続けていく。

 

 

「私達の謎解きが……苔集めの片手間に……ッ」

 

「あはは……システィ、元気だして。ね?」

 

 

凄まじい敗北感からその場で四つん這いとなったシスティーナを、ルミアは曖昧な笑顔で慰める事となった。

ついでに―――

 

 

「く、屈辱ですわ……」

 

 

後方の曲がり角から、ひっそりと窺っていたウェンディも四つん這いとなって崩れ落ちていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そして····時間が幾ばくか経過した、ゴール地点である洞窟最深部の部屋にて。

 

 

「だっははははははーーッ!!リィエル、よくこんなに集めてくれたなっ!!」

 

 

『黄金苔』が詰まった瓶を抱きしめて、ほくほく顔でグレンはバカ笑いしていた。

 

 

「ん。いっぱい集めた。お礼に苺タルト、奢って」

 

「おう!いいぞ!こんなに大量なら―――」

 

「わたしが集めたこけの分だけ」

 

「―――……………………へ?」

 

 

リィエルの言葉を理解できなかったグレンから抜けた声が洩れるも、次第に理解していくかのように、顔から脂汗を流し始めていく。

 

 

「……駄目なの?」

 

 

グレンの反応から、リィエルの瞳が若干不安げに揺れる。その反応にグレンは―――

 

 

「そ、そんな訳ないだろ!?ちゃんと奢ってやるさ!!」

 

「……ん。ありがとう、グレン」

 

 

未だに脂汗を流して渇いた笑みを浮かべるグレンに、心なしか薄く微笑んでお礼を言うリィエル。

 

 

「小悪魔な女の子に(だま)された、憐れな男の姿すぎる……同情はしませんけど」

 

「あはは……」

 

 

入り口での立場が見事に変わった光景に、システィーナはジト目で見やり、ルミアは曖昧に笑う。

 

かりかり……

 

そんな中、ウィリアムは着服目的で『黄金苔』をせっせと採集していた。数日前、とあるお酒と小瓶、コップ等を購入したため、その補填の為でもある。

その際、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

 

「それにしても、皆遅いですね……」

 

 

システィーナの言う通り、ゴールに辿り着いているのはウィリアム達だけであり、他のメンバーは影さえ見せていない。グレンも口では面倒くさそうにしながらも様子を見に行こうとした―――その時。

 

 

『クックックックックッ……』

 

 

不意に、不気味な笑い声が響き渡り、耳障りに反響し、部屋の隅に不気味な人影が現れる。

 

 

「な―――ッ!?」

 

 

グレンは咄嗟にシスティーナとルミアを背後に庇い、身構える。

 

 

「テメェは何者だッ!?」

 

『我ハ《狂王》……コノ墳墓ノ主ナリ……』

 

 

《狂王》は地獄の底から響くような声で、生徒達を全員連れ去り、《魔竜》復活の生贄にするとグレン達に告げ、新たな通路を出現させながら、その場から消えていった……

 

 

「畜生ッ!何でこんな事に―――」

 

「グレン」

 

「どうしたリィエル!?何があった!?」

 

「ウィルがいなくなった」

 

「何だと!?」

 

 

リィエルの告げた言葉にグレンは大急ぎで周囲を見回すと、リィエルの言った通り、ウィリアムの姿が忽然と消えていた。

状況からしてウィリアムも《狂王》に連れ去られた可能性が高く、その事実に戦慄していると……

 

 

「後、こけ。またいっぱい集めた」

 

「今はそれどころじゃねぇだろッ!?このドアホォオオオオオオオオオ―――ッ!?」

 

 

あまりにもいつも通り過ぎるリィエルに、グレンは堪らず叫ぶのであった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

――― 一方その頃。

 

 

「マジでめんどくせぇー……(ブツブツ)」

 

 

ウィリアムは不満たらたらで何らかの準備をしていた。

 

 

 




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