てな訳でどうぞ
制服に着替えてシスティーナが作った朝食を取る一同。
「……普通じゃの」
「普通ですね」
その光景を魔導器を使って視界に収めているバーナードとクリストフは感想を揃って口にする。
もちろん着替えの光景は覗いていない。……バーナードは頭を抱えて苦悩していたが。
「てっきり、あーんがあると覚悟しておったのじゃが……」
「普通に食べていますね。リィエルも無言で食べてますし」
「行動がちぐはぐじゃのう……」
「ちぐはぐというより、リィエルが自身の行動をあまり理解していないと言った方が正しい気が……」
……実に平和であった。
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学院への通学中も特に大きな問題もなく、バーナードとクリストフは学院の近くにある建物の屋上に陣取って監視を継続していた。
『えー、本日も授業を―――』
ドォオオオオオオオオオオオンッ!!
ホーンからでも伝わるだらけきった雰囲気。グレンが気だるげに授業を始めようとした直後、学院全体に響いたのではないかという程の衝撃音が伝わってきた。
『『『『…………』』』』
『……悪いが少し様子を見に行ってくる。くれぐれも勝手な行動はするなよ?』
グレンは真面目な顔で生徒達にそう告げ、教室を後にしていく。
「うーん……何が起こったんじゃのうのう?」
「あれほど派手な音ですからね。近くは大騒ぎになっていると思いますが……」
襲撃ではないと最初からわかっているバーナードとクリストフは、音の原因を考察しながら二組の教室内を視界に収め続ける。
『……大丈夫かな?』
『多分大丈夫だろ。こんなのは何時もの事だし』
ウィリアムがそう言ってリィエルの頭に手を置いた―――その瞬間。
ポンッ!
そんな音と共にウィリアムとリィエルの間に三歳くらいの子供が突然現れた。その子供は眠たげな銀眼に青い髪で白いシンプルなワンピースを着ていた。服装からして女の子のようである。
『『『『…………』』』』
パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!
『おかーさん、抱っこぉ…………』
シャッター音が教室内で響く中、その女の子はリィエルを見上げながら可愛い声でおねだりする。
その声で。突然の事態で思考回路が完全凍結していた全員の、思考が回転し始める。
1.リィエルをお母さんと呼ぶ突然現れた幼女。
2.青い髪、銀色の瞳、顔のつくり……明らかにリィエルとウィリアムの特徴を持っている。
以上の二点から導き出される結論は―――
『うぃうぃうぃウィリアムぅううううううううう―――ッ!?いつの間にリィエルとの子供を―――』
『ちょっと待てぇえええええええええ―――ッ!?!?明らかにおかしいだろッ!?』
『あはは、落ち着いてシスティ?子供はコウノトリさんが目にも止まらない速さで……』
『ルミアさん?私はシスティーナさんではありませんよ?』
『ウィリア充ぅ……今日がお前の命日だ……』
『やっぱり、リィエルちゃんとデキていたんだなぁ……?』
『放課後……いや、昼休みに覚悟しておけよぉ……?』
『頼むから一回落ち着いてくれよッ!?』
ものの見事に大騒動の渦へと呑まれていった。
「よし、今すぐウィル坊の元に行って始末してくるわい」
「落ち着いてくださいバーナードさん。普通に考えてあり得ませんから。年齢的にも」
その光景を見ていたバーナードも完全に据わった目で物騒な事を呟き、唯一冷静であるクリストフはそんなバーナードを諌めていた。
『……よしよし』
『ん……』
リィエルはそれを他所に、謎の幼女を抱っこして頭を撫でていた。
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『……さっきの音はオーウェルの野郎の発明品が起動する音だったそうだ……』
『……一体何の発明なんですか?』
戻ってきたグレンの説明に、システィーナは今はウィリアムに引っ付いている幼女に視線を向けながら問い質す。
『端的に言うとな……『触った二人の特徴を有した子供の姿をした妖精が召喚される領域が展開される』装置、だそうだ……』
『つまり、この子は妖精なのか……』
『おとーさん、あったかぁい……』
疲れたように呟くウィリアムに、召喚された妖精は満面の笑みでウィリアムに頬を擦り付ける。
『『『『……可愛い過ぎる』』』』
『『『『そして、凄まじく憎いッ!!』』』』
その妖精の仕草に半分は見惚れ、もう半分は怨念の籠った声でウィリアムを睨み付ける。
『……ッ』
その睨みに妖精が怯え、ウィリアムに顔を埋めて震え始める。
そんな妖精の様子に、ウィリアムはにっこりと笑って妖精の頭を撫で―――
『ふぎゃっ!?』
何の躊躇いもなくカッシュに非殺傷弾を額に六発叩き込んだ。
「見事な早撃ちじゃのう……」
「本当にそうですね。もしかしたらグレン先輩やバーナードさんより早いかもしれないですね」
『今睨んでいるやつ全員、今すぐそれを止めろよな。この子が怖がっているから』
にこやかに、明るい口調で告げるウィリアム。だが、そのにこやかな顔は―――とても恐かった。
リィエルもいつの間にか大剣を錬成して構えており、その眠たげな瞳はどこか据わっている。
そんな二人の様子に男子一同は一斉に睨むのを止め、ついでに笑顔を向けていく。
『もう大丈夫だぞ』
ウィリアムの言葉に妖精は少し躊躇いがちに男子生徒達に顔を向ける。
彼らの笑顔を視界に収めた妖精はじっと見つめ、安心したようににっこりと笑った。
『『『『やっぱり可愛い……』』』』
『……ん。かわいい』
周りの感想に、大剣を霧散させたリィエルも同意して妖精の頭を撫でていく。
『ん……』
リィエルに頭を撫でられている妖精も気持ち良さげに目を細めており、実に幸せそうである。
「本当に可愛いのう。できれば儂も撫でに行きたいわい」
「あはは……確かに本当に可愛いですね」
『……ところで先生。この子はいつまでいるんですか?』
『装置が切れたら消えるそうだが……あの野郎、データ収集の為に後一時間は起動するとか抜かしやがってな。止めようにも
『あー、そうなのですか……』
グレンの説明に、システィーナはどこか納得したように顔をかくんっ、と俯ける。
『そんな訳だからこのまま授業を始める―――』
『ここにとびきり可愛い幼女がいると聞いてぇえええええええええええーーッ!!!』
グレンの言葉を遮るように、ツェスト男爵が実に危ない顔で教室に入ってきた瞬間―――
『ゴフォッ!?』
リィエルが直ぐ様錬成した大剣の峰打ちによる剛閃で、ツェスト男爵は速攻で教室の外へと殴り飛ばされ―――
『アバババババッ!?』
ウィリアムが具現召喚した数体の【
『?おとーさん。向こーから凄い声が聞こえてきたけど何かあったの?』
『さっきのは空耳だから気にしなくていいぞ』
『ん。空耳』
『……ん!わかった!』
にこやかに笑うウィリアムとうっすらと微笑んでいるリィエルの言葉に素直に頷く妖精。もう完全に親子である。
『この程度で屈しは―――ギャアアアアアッ!?』
「相変わらず実力が高いのう……」
「本当にそうですね……確かあれは
「ウィル坊から聞いた限りではのう」
この一時間後―――
『おとーさん、おかーさん……バイバイ……』
『……バイバイ』
『……ん。バイバイ』
『『「『……グスッ』」』』
妖精はウィリアムとリィエルに抱きしめられてお別れをした際、誰もが不覚にも涙を流す事となった。
ちなみに後日、この妖精の写真は大盛況で売れていったそうだ。
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