やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


百三十六話

―――地下下水道に送り込んだ使い魔の鼠達から送られてくる映像には。

 

 

『いぃいやぁああああああああああああああああ―――ッ!!!』

 

『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――ッ!!!』

 

 

リィエルとオーヴァイは競いあうように数多の魔獣を次々と瞬殺していく姿が映っていた。

 

 

『もうちょっと考えろよな……』

 

 

ウィリアムは呆れながら【騎士の剣(ナイツ・ソード)】を飛ばし、猪突猛進の二人をフォローしていく。

 

 

『……前にも思ったけど、明らかに手強そうな相手ばかり出てくるわね』

 

『まぁ、今掃討している区画は他の区画と比べて強力なやつが徘徊している場所だからな』

 

 

ウィリアムはシスティーナにそう説明しながら、こちらへと迫りくる狂霊に銀色の銃弾を数発撃ち込み、その銃弾を撃ち込まれた狂霊は浄化の炎に包まれて滅されていく。

疑似浄銀弾(パラ・シルバーブレット)。錬金術で疑似的に再現された不浄を滅する聖なる弾丸であり、その効力は正規の浄銀弾なら一発で済む相手でも数発撃ち込まなければならないくらい大きく劣っている。

本来、この疑似浄銀は錬成に時間がかかる品物だが、ウィリアムはこれまでの戦闘から必要だと判断し、これを戦闘中に錬成できるレベルにまで改良し、本日せっかくなので実際に使う事にしたのである。

 

 

「本当にウィル坊の錬金術は大分ぶっ飛んでおるのぉ……」

 

「ええ」

 

 

わりと格式の高い料理店で食事をしながら使い魔で監視を続けるバーナードとクリストフ。使い魔から送られてくる映像は自身の視覚を共有しているので問題はない。

 

 

『ここでは雷加速弾(レールガン)、だったかな?あれは使わないの?』

 

『ああ。あれは基本的に威力が高すぎるからな。下手すりゃあちこち壊しちまう』

 

『……以前尾行していた時、それを一切使わなかったのはそういう事だったのね』

 

『そういう事だ。―――《水弓よ》―――《踊れ》』

 

 

ウィリアムはルミアとシスティーナの疑問に答えながら錬金【アクア・バレット】を三発同時起動(シンクロノス・ブースト)し、放たれた高水圧の水の弾丸は、迫ってきていた三体の牙が大きい蝙蝠の頭部を同時に撃ち抜く。

 

 

『……普通は【ライトニング・ピアス】じゃないかしら?ウィリアムも使えるでしょ?』

 

『確かに使えるが、俺にとってはこいつの方が消費する魔力が少なくて済むんだよ』

 

 

システィーナのツッコミにウィリアムは簡潔に返す。その間も―――

 

 

『ふ―――ッ!』

 

『シィ―――ッ!』

 

 

リィエルとオーヴァイは変わらずに魔獣を切り伏せていた。

そんな無双を続ける二人の前に、紫の体毛の巨大蜘蛛が大量の小蜘蛛と共に現れた。

 

 

『うはー!強敵ですね―――って、ええッ!?』

 

 

オーヴァイが歓喜に満ちて突撃しようとした矢先、リィエルがオーヴァイの首根っこを掴んで迷わず後退した。

 

 

『リィエル先輩!?なぜ―――』

 

 

オーヴァイが文句を言おうとした瞬間、【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・炎兵】の炎が蜘蛛達を余さず呑み込んだ。

 

 

『やぁああああああああああ―――ッ!!!』

 

 

炎が止むと同時にリィエルは迷わず突貫し、まだ生きていた巨大蜘蛛の頭部を大剣を振りおろして叩き斬りトドメを刺した。

 

 

『……どうやって気付いたのですか?』

 

『勘。ウィルならこうすると思った』

 

『……改めて差を感じますねー。オキタさんヘコみそうです……』

 

「本当にいいコンビじゃのう……」

 

「僕もそう思います」

 

 

コンタクトも打ち合わせもないウィリアムとリィエルの連携(?)にバーナードとクリストフは何とも言えない気分となる。

 

 

「にしても、あの子『オキタ』と言っておったのぉ。もしかしてオルビスちゃんの子かの?」

 

「知り合いですか、バーナードさん?」

 

「一度だけのう。とびっきりの美人じゃったから、誘ったのじゃが……」

 

 

その瞬間、バーナードは遠くを見つめる目となって言葉を続けていく。

 

 

「彼女はお酒ではなく、模擬戦の誘いと解釈しての……あの時はマジで殺されると思ったわい……しかも、既婚者だったのもショックじゃったしのぉ……」

 

「あはは……御愁傷様です……」

 

『その差を埋める為にも鍛れ―――ゴハァッ!?』

 

 

取り敢えず、クリストフがバーナードを慰めていると、使い魔から送られてくる映像でオーヴァイが盛大に吐血した。

 

 

『……ここで吐血かよ……ルミア、悪いが頼む』

 

『あはは……』

 

 

ルミアは苦笑いしながらオーヴァイに法医呪文(ヒーラー・スペル)を施していく。

 

 

『すいません。ご迷惑をおかけしました。もう大丈夫です』

 

『……取り敢えず、オーヴァイはもう戦闘は中止な?また吐血されたら困るし……』

 

 

ウィリアムがチラリ、と視線を奥の方へと向けると、その先には壁や天井を這う巨大な蜥蜴(とかげ)、下水道を泳ぐ真っ黒な(わに)、巨大な鋏を有するザリガニ等、多種多様な魔獣の大群が迫ってきていた。

 

 

『血の臭いを嗅ぎ付けてきた連中が集まってきてるしな』

 

『いいいいやぁあああああああああああああ―――ッ!!!!』

 

 

ウィリアムが呟くと同時にリィエルが大剣を掲げて魔獣の群れへと突貫し、大剣を振り回していく。

鎧袖一触。

独楽のように振り回される大剣は迫りくる魔獣を悉く粉砕していく。

ウィリアムは突撃こそしないが、拳銃を構えて次々と銃弾を放っていく。放たれた銃弾は暴嵐の如き剛閃をまるですり抜けるように掻い潜り、リィエルの先にいる魔獣の頭部を撃ち抜いていき、リィエルを援護していく。

 

 

『本当に凄いですね……』

 

『そうね……』

 

 

次々と始末されていく魔獣達を前に、後方で見守っているオーヴァイとシスティーナはどこか悔しそうに呟く。

リィエルは全力で戦っているが、深追いせずに押し止めるように大剣を振るっており足止めに徹している節がある。

ウィリアムはリィエルが囲われないように銃撃を繰り出しており、的確に援護している。

そんな彼らに、人の顔くらいの大きさの蝿の魔獣が新たに現れ、大群で迫ってくるも―――

 

 

『《駆動》』

 

 

ウィリアムが魔導器を解凍して呪文を唱え、リィエルが下がった瞬間―――

 

ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!

 

《魔導砲ファランクス・ミクロ》が火を吹き弾幕を形成。蝿の大群を他の魔獣諸とも尽く吹き飛ばし、僅か数分で駆逐した。

 

 

『ねぇ、ウィリアム』

 

『……なんだ、システィーナ?』

 

『以前の蜂の大群や少し前の蜘蛛の大群を始末していた時もそうだったけど、虫に対して妙にオーバーキルな攻撃を仕掛けている気がするんだけど……?』

 

『…………』

 

『……ひょっとして、虫が苦手なの?ウィリアム君』

 

『……悪いか』

 

『ん。ウィルはむかむぐっ』

 

『喋らんでよろしい』

 

 

リィエルが喋ろうとしたのをウィリアムが口を塞いで強引に遮る。

 

 

『男のプライドですか?ウィリアム先輩』

 

『……別にいいだろ』

 

『そうですか』

 

 

オーヴァイの指摘にウィリアムは素っ気なく返し、オーヴァイも納得して引き下がる。

ウィリアムがこうした本当の理由は、話が非常にややこしく、面倒になるからであるが。

 

 

「ウィル坊は虫が苦手と……いいネタを掴めたわい」

 

「バーナードさん、どうか程々に」

 

 

悪戯小僧のような笑みを浮かべるバーナードに、クリストフは苦笑しながら諌めていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

保守作業が終了し、フェジテ支局に報告し、受け取った報酬を公正に分配し終えた一同はそれぞれの帰路へと着いた。

オーヴァイと別れたウィリアム達はフィーベル邸に帰宅し、大きな問題もなく夕食を済ませる。

だが、ウィリアムが風呂に入っている間―――

 

 

『ウィルに、あの時された仕返しをまたされたい』

 

 

リィエルがとんでもない事を口にしていた。

 

 

 




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