思いついた妄想表紙は互いの剣を交差させて肩を合わせるリィエルとエルザ。
てな訳でどうぞ
百三十八話
魔術祭典。
かつて北セルフォード大陸の諸国間で行われていた、参加各国から魔術師十名で構成された代表選手団でいくつかの魔術的試練に挑むという、世界的な競技大会。
この恒久なる平穏と安寧を願う“平和の祭典”は、アルザーノ帝国と聖レザリア王国が冷戦状態となってから、何十年も開催されていなかった。
だが、両国の関係改善のため、水面下で尽力していたアリシア七世女王陛下によって、この祭典の復活と同時に首脳会談も行われることとなった。
なぜその話をしているのかと言うと―――
「―――というわけで、俺は代表選抜試験の監督員を務めることになった。本当にだりぃ……」
グレンが本当に面倒くさそうに魔術祭典の説明をしているからである。
誰もが魔術祭典の開催に沸き立つ中……
「悪いが俺はパスだ。正直面倒くせぇし……応援等はしてやるが」
ウィリアムは平常運転であった。
「お前も相変わらずだな……もっとも、お前は諸事情でメンバーに選ばれていないようだがな」
「そうかい、安心した」
グレンのその言葉に、ウィリアムは肩を竦めて受け取る。
ウィリアムは今でこそ学院に通う生徒だが、元は宮廷魔導士団に目を付けられていた犯罪者なのだ。加えて『魔術師』としても異色であり、保有する『戦力』としても明かしたくないのだろう。
リィエルは現役の軍人。ルミアも元・王族の異能者という、国の根本を大きく揺るがす存在であるために、選抜候補には選ばれないだろう。
もっとも、リィエルはそうなっても特に気にしないだろう。ルミアもそれを受け入れ、グレンのサポートに回って活動するだろうが。
「ま、これで安心して楽できるから万々歳だな」
今話した理由も事実だが、もう一つ理由がある。
その理由は、何かあった時の為にすぐに動けるように
実際、度重なる騒動から新しい魔導器も目下開発中であり、何かが起きた時に備えておきたいのだ。
それに、先日の件で少し気になることがある。
(リィエルの霊魂……『パラ・オリジンエーテル』の解析に本当にああする必要があったのか、少し疑問なんだよな)
先日の
聖リリィ魔術女学院の前学院長であり、元・
だが、そうなればリィエルがエーテル乖離症で倒れてからマレスに運べば、発覚のリスクがあまりにも高い。イリアの世界支配の幻術でリィエルの存在を誤魔化そうにも、術者本人でさえ欺くほど強力だからその方法は使えない。
そもそも、リィエルの
だが、それを確かめようにもサイラス達は何者かに暗殺され、イリアは忽然と姿を消して消息不明となっており、確かめる術は失われてしまっている。
(一応、この事はグレンとイヴの先公に話して頭には入れてもらってはいるが……それ以上はリィエルの秘密に触れるから出来ねぇんだよな……)
これ以上、この件を進めることは出来ないだろう。それより、ある意味小さく、ある意味大きい、非常に頭を悩ませている事案がある。
魔術祭典の代表選手はアルザーノ帝国魔術学院だけでなく、クライトス魔術学院、聖リリィ魔術女学院からも選ばれ、その代表選抜試験はここ、アルザーノ帝国魔術学院で行われる。
つまり……
(絶対来るよなぁ……エルザも……)
聖リリィ魔術女学院への短期留学で再会し、また再会することを約束した少女、エルザ=ヴィーリフもここに来る可能性は濃厚、いや、間違いなく代表選抜候補者としてこの学院に来るだろう。
こちら側の話もスノリアで再会したフランシーヌ達から聞いているだろうから……
(まず間違いなく……荒れる……ッ!!)
リィエルがフランシーヌ達に暴露した同居生活、端から見れば旅行デートのスノリア。無論、それだけではなく、リィエルとの痴情、オーヴァイとの交流、チャールズが撮った写真、そして……
さすがに再会早々、荒れはしないとは思うが、いつ【メギドの火】の如く爆発するかわからない。そんな爆弾の存在に、ウィリアムは机に突っ伏して頭を抱える。その様子を―――
「?どうしたのウィル?」
『?おとーさん?』
隣に座っているリィエルと、リィエルの膝の上に座って抱えられている三歳くらいの青髪銀眼の幼女―――妖精が不思議そうに見つめていた。
―――――――――――――――――――――
―――時は昨日に遡る。
その日は授業が全て終わり、夕暮れが綺麗な放課後となっていた。
「そんじゃあ、帰るか」
「ん」
いつも通り、ウィリアムはシスティーナ、ルミア、リィエルと共に帰路につこうとした―――その時。
ドゴォオオオオオオオオオオオンッ!!!
凄まじい爆発音が学院中に響き渡った。
「「「「…………」」」」
「な、何なのですの!?」
「また何か起きたのか!?」
沈黙の後、困惑の声が教室内に響き渡る。
「…………」
この爆発にデジャウを感じたウィリアムはつい、リィエルの手に触れるのだが……
「……?」
「……何も起きないな」
何の変化も起きず、手を握られたリィエルは首を傾げ、ウィリアムは少し残念そうに呟いた。
「急にどうしたのよウィリアム?リィエルの手を握って?」
「……あー、あの爆発音聞いて、ひょっとしたらあの子に会えるかなぁー……と」
「……あー」
リィエルの手を放しながらのウィリアムの説明に、システィーナは納得して微妙な声を出す。
先日のオーウェルの発明と、授業が終わってすぐ、チャールズが教室を脱兎の如く後にしたからその可能性は濃厚であったが、何も起きていないので違うのだろう。
「……取り敢えず、どうしようか?」
「ここで待機するしかないよな。可能性は低いが、万が一の場合もある」
「そうよね……はぁ」
ルミアの質問にウィリアムが答え、システィーナが溜め息混じりに同意する。何もなければ、音声拡張魔術で学院中に伝えるだろう。そう考えた矢先―――
『びぃああああああああああんっ!!』
廊下から幼い女の子の泣き声が響き渡った。少しして教室の扉から飛翔する何かが飛び出し、そのままウィリアムに体当たりする。
「ええっ!?」
「……ッ!」
「嘘ッ!?」
「な……ッ!?」
その体当たりした何かを視界に収めたウィリアム達は驚きに目を見開く。何故なら、その体当たりしてきたものの正体は―――
『グスッ、グズッ……だずげで、おどうざぁ~ん!!』
背中に霊的な小さな羽を生やし、グショグショに泣いている青髪銀眼の幼女―――あの時の妖精だった。
……色々と大丈夫かな?
感想お待ちしてます