やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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思いついた幕間の表紙。

一.買い物袋を抱えて一緒に歩く私服姿のウィリアムとリィエル。
二.一緒に寝ているウィリアムとリィエル。場面は早朝。
三.子犬と狼と一緒に互いに睨み合うリィエルとオーヴァイ。
四.魔導器を顔に押し付けて監視するバーナードと、苦笑いしながら同じく監視しているクリストフ。

てな訳でどうぞ


百三十九話

『だずげで、おどうざぁ~ん!!ごわい人達がおいがげでぐるのぉ~……!』

 

「怖い人達?」

 

 

妖精の震えながらの言葉に、ウィリアムを含めた一同が首を傾げていると、教室の扉からグレンが入って来る。

 

 

「お前ら、無事かッ!?…………え?」

 

 

グレンは焦った表情で教室を見回すも、教室中の懐疑的な冷めた視線と、ウィリアムに顔を埋めて泣いている妖精の存在に戸惑いを見せ始める。

 

 

「先公……まさかとは思うが……」

 

「……グレンがこの子を泣かせたの?」

 

「え!?いや、マジで違うから!何かが横切って、その何かが教室の方向に向かってたから、それを追いかけただけだから!!だからその物騒なものをしまって下さい!!」

 

 

ウィリアムとリィエルがお得意の錬金術を使い、小銃(ライフル)と大剣を錬成してそれぞれの手に構えたのを見て、グレンは事態が呑み込めないながら慌てて取り繕う。

 

 

「……本当か?」

 

「……本当に?」

 

「本当です!!お願いですから信じて下さい!!」

 

 

懐疑的な視線を向けて小銃(ライフル)の銃口を向けるウィリアムと、どこか据わった目のリィエルが大剣を構えてにじり寄ってくる姿に、グレンは恐れをなして固有魔術(オリジナル)(笑)【ムーンサルト・ジャンピング土下座】を起動する。

身を捻りながら天井高く跳躍からの、月面宙返りからの両手両膝額五点着地。

そんなグレンの姿を見ても、親バカと言ってもいい状態のウィリアムとリィエルは止まらない。ウィリアムは引き金にかかる指に力を入れ始め、リィエルはがしゃり、と大剣を深く低く構えていく。

 

 

『グスッ……おとーさん、おかーさん。怖い人はあのおにーちゃんじゃないの……』

 

 

だが、グレンをチラ見した妖精がそれを止めた。

 

 

「……そうなのか?」

 

「……そうなの?」

 

『ん……』

 

「そうか……悪かったな先公」

 

「ん……グレン、ごめん」

 

「お、おう……わかってくれればいいんだよ……」

 

 

ウィリアムとリィエルが謝ると同時に構えを解き、小銃(ライフル)と大剣を霧散させたのを見て、グレンは土下座したまま安堵の息を吐く。

その直後であった。

 

 

「フハハハハハッ!!やっと追い付いたぞ!!」

 

「ああ!!怯えて泣く幼女の姿は極上の主食!!まさに天の食材ッ!!エクスタシィイイイイイイイイ―――ッ!!!」

 

「やっと写真に収められるで……ッ!!」

 

 

そんな声と共に教室の扉から入って来たのは、ツェスト男爵、チャールズ、オーウェル……学院で最早有名となった変態三人衆だ。

 

 

『ひうっ!?』

 

 

変態三人衆の顔を見た妖精は、怯えてウィリアムに更にしがみつく。その様子を見たウィリアムは鋭い目付きで変態三人衆に問い質した。

 

 

「……これはあんた達の仕業か?」

 

「その通り!実は、協力して改良した筈の召喚装置が起動した途端、爆発して壊れてな……」

 

「で、その爆発した装置の中心に、その子が座っておったんよ」

 

「それで、その子を保護しようと囲ったのだが、見事に泣きながら逃げ出してしまってね……だから追いかけて来たのだよ……ムフフ」

 

「このような事態はこの天才でも予測不能だったのでな!だから原因を解明する必要があるのだよ、フハハハハハハハッ!!」

 

 

ウィリアムのどこか迫力を感じされる声色の質問に、変態三人衆はそれに全く気づかずに答える。

 

 

『グズッ……ヒック……おどぅざぁ~ん。あ゛のひどだち、ごわいよぉ~……グスッ』

 

 

妖精は余程怖いのか、ぐずぐずとウィリアムの胸元に顔を埋めて再び泣き出してしまう。

 

 

「怖くないよぉ?大丈夫だからおじちゃんに……」

 

「大丈夫やで~?ただ写真を撮らせてもらうだけやから……」

 

「安心したまえ!痛い事は全くしないぞ!!」

 

 

そんな妖精に爛々(らんらん)と瞳を輝かせ、ジリジリと此方へと迫ってくる変態三人衆。そんな三人に―――

 

 

「……リィエル」

 

「……ん。斬る」

 

 

ウィリアムは据わった目で妖精を抱いたまま再錬成した小銃(ライフル)の銃口を向け、自身の周りに両手に鎚矛(メイス)を携えた一対の幾何学的な羽を有する上半身のみの甲冑騎士―――人工精霊(タルパ)騎士の誇り(ナイツ・プライド)・棍兵】と、戦鎚(ウォーハンマー)を携えた一対の幾何学的な羽を有する上半身のみの甲冑騎士―――人工精霊(タルパ)騎士の誇り(ナイツ・プライド)・鎚兵】。そして【招雷霊(ヴォルト)(フェイク)】に【騎士の腕(ナイツ・アーム)】等の人工精霊(タルパ)固有魔術(オリジナル)【詐欺師の工房】で多数具現召喚し、リィエルも迫力を感じる無表情で再錬成した大剣を振り上げる。そして―――

 

 

「「「ぎゃあああああああああああ―――ッ!?」」」

 

 

学院中に、変態三人衆の断末魔の叫びが響き渡った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

変態三人衆をコテンパンにして医務室のベッド送りにした後、ウィリアム達は療養中のセリカを急遽呼び出し、今後の事も考えた結果、学院長室で妖精の状態を確認していた。

 

 

「ふむ……私が調べた限りでは、この子は存在が定着しているな。加えて、契約者の設定が出来ない」

 

「つまり……」

 

「ああ、この子は誰にも制御されない特異な妖精として召喚されてしまったんだ」

 

 

魔術的に解析し終えたセリカの説明に、ウィリアム達(約二名を除いて)は複雑な表情となる。

妖精や精霊といった存在は、霊脈(レイライン)やマナバランス等の影響で狂化し、狂霊という仇なす存在となってしまう可能性がある。

その狂化を防ぐ意味でも契約者設定は必要なのだが、この妖精はそれができないのだ。

 

 

「おいおい、そんな湿気た面をするなよ?制御できないとは言ったが、狂化するとは一言も言っていないぞ?」

 

「「「「は?」」」」

 

「ほお?」

 

「オーウェルの壊れたあの装置も調べてみたが、どうやら狂化しないように設定されていてな。その設定をこの妖精は見事に受けているんだ。だから、この子を討伐する……なんていう展開にはならないさ」

 

 

セリカのその言葉を受け、一同は安堵の息を吐く。

 

 

『ぐすっ……』

 

「よしよし……」

 

「本当にお二人にそっくりですねー」

 

 

余程変態三人衆が怖かったのか、妖精は未だリィエルの胸に顔を埋めて泣いており、リィエルも抱きしめて頭を撫でてあやしている。そして、いつの間にかいたオーヴァイが妖精の様子を窺っている。

 

 

「キャラメル食べますか?甘くて美味しいですよー」

 

『きゃらめる?』

 

「ハイ。リィエル先輩も一緒にどうです?」

 

「……ん。食べる」

 

 

オーヴァイもリィエルと一緒に妖精をあやしてくれているので、ウィリアムはリック学院長にあることをお願いをする。

 

 

「あの、学院長……少しお願いしたい事が……」

 

「その子について……じゃろ?」

 

「はい……。正直、この子を一人にするわけにはいかないので……それで、良ければ学院に連れてきていいでしょうか?」

 

「構わんよ。事情が事情じゃし、その子は仮にも妖精じゃから然程文句も出てこんじゃろう」

 

「ありがとうございます、学院長」

 

 

ウィリアムは深々と快く承諾してくれたリックに頭を下げてお礼を言った。

 

 

『おかーさん。キャラメル美味しい!』

 

「ん、美味しい。けど、苺タルトの方が美味しい」

 

『いちごたると?』

 

「君のお母さんの大好きな食べ物ですよー」

 

『おかーさんの大好きな食べ物……食べたい!』

 

「お父さん達と帰ったら食べられますよ、ええと……」

 

 

オーヴァイは急に悩ましげな顔となり、ウィリアムの方へと顔を向ける。

 

 

「ウィリアム先輩。この子のお名前は何ですか?」

 

「……あー、そういえば知らなかったなぁ……」

 

「確かにこの子の名前を知らないわね……」

 

「ねぇ、お名前はなんていうのかな」

 

 

ルミアが代表して、微笑みながら妖精に名前を尋ねるも―――

 

 

『名前?……名前って、何?』

 

 

妖精は首を傾げて逆に聞いてきていた。

 

 

「うーん……この様子からして名前がないのかも……」

 

「名前がないと色々不便よね」

 

「ウィリアム。仮にも父親のお前が決めたらどうだ?」

 

「マジかよ……ええと……」

 

 

ウィリアムは呆れた口調ながらも、思案顔となって妖精の名前を考えていく。

少しして、思い付いたのか、ウィリアムは口を開く。

 

 

「……エル、でどうだ?」

 

「……それ、絶対リィエルからとっただろ……」

 

「ネーミングに関しては先生に言う資格はないですよ」

 

「あはは……でも、いい名前だと思いますよ?」

 

「名前付けの定番ですから良いと思いますよー」

 

「……ん。エル……悪くない」

 

 

何とも微妙ながらも決して悪くない名前に、グレン達は賛同の意を示す。

 

 

『エル……それが名前?』

 

「ああ。嫌か?」

 

『……エル……ん!エルはエル!』

 

 

妖精―――エルは満面の笑みで名前を受け取った。

こうして、名前も無事に決まり、暖かい雰囲気が辺りに暫し漂った。

 

 

 




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