やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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外堀が確実に埋まっていくなぁ……
てな訳でどうぞ


百四十話

そんなわけで。

学院の珍事も一先ず解決し、エルを連れて帰ったフィーベル邸にて。

 

 

「おかえりなさい……あら?」

 

「おかえりぃいいいいいいいいい―――ッ!!我が愛しの娘達よぉおおおおおおぉぉぉ……?」

 

 

玄関口広場(エントランスホール)で娘達を出迎えたフィリアナとレナードは案の定、ウィリアムに抱きかかえられたエルを見て、見事に固まった。

 

 

「「…………」」

 

『おとーさん、この人たちは?』

 

 

エルはウィリアムを見上げて、レナードとフィリアナのことを聞く。

ここで、凍結していたレナードの完璧ではあるが、娘のこととなると残念となる思考が、暴走回転し始めていく。

 

1.愛しの娘達をたぶらかす悪魔(ウィリアム)をおとーさんと呼ぶ謎の幼女。

2.淡青色の髪、眠たげな瞳、顔立ち……もうリィエルそっくり。

3.その幼女の瞳の色は銀色と、悪魔(ウィリアム)の特徴も持っている。

4.そして、悪魔(ウィリアム)とリィエルは毎日一緒に寝ているという事実。

5.幼女は見た目からして年齢は三歳程だが、そんなことは一切関係ない。

6.娘達が平然としていることから、それなりの日数が経過している筈。

7.幼女は娘達に負けず劣らず可愛いが、今は関係ない。

8.妊娠?出産?日数?現実?全く関係ない。

 

以上の点から、導き出される結論は……

 

 

「この、大悪魔めぇええええええええええ―――ッ!?学生でありながら子供を作るとは!?許さんッ!!絶対に許さんぞッ!!今すぐ成敗―――」

 

 

コキャ。カクン。

 

ここも案の定、レナードは暴走し、鬼気迫る凄まじい形相でウィリアムに詰め寄ろうとするも、それよりも圧倒的に早くフィリアナに絞め落とされ、沈黙することとなった。

 

 

「全くしょうがない人ね。……ウィリアムくん、ちゃんと説明して頂戴ね?」

 

 

レナードを絞め落としたフィリアナはニコニコと笑って、優しげに説明を求める。

 

 

「はい。勿論です」

 

 

当然、ウィリアムは素直に頷いた。

 

 

「もちろん、二人の()()()()初夜はいつだったのかもね」

 

「違いますから!!」

 

 

冷静に勘違いしていたフィリアナの言葉を、ウィリアムはすぐに否定した。

 

 

『……?』

 

 

その光景を前に、レナードに気圧され少し涙目だったエルは不思議そうに小首を傾げ……

 

 

「やっぱり、こうなるわよね……」

 

「あはは……」

 

 

両親の予想通りの反応に、システィーナは頭を押さえ、ルミアは曖昧に笑い……

 

 

「……初夜って、何?美味しいの?」

 

「リィエル。貴女はまだ知らなくていいことよ」

 

「うん……リィエルにはまだちょっと早いかなぁ……?」

 

「……?」

 

 

いまいち状況を理解していないリィエルは、エルと同じく不思議そうに小首を傾げるのであった。

フィリアナの、システィーナの部屋を掃除した際、()()記録帳を読んだという事実に誰も気づかないまま……

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――談話室(ラウンジ)にて。

 

 

「―――と、いうわけです」

 

「あらあら、そういうことだったのね。てっきり、二人の愛の―――」

 

「違いますから」

 

 

フィリアナの言葉を遮って、説明し終えたウィリアムは否定する。

 

 

「…………」

 

 

あの後、復活し、フィリアナと一緒に話を聞き終えたレナードは難しい表情でウィリアムを睨み付けていた。その理由は―――

 

 

『おじちゃん……おとーさんのこと、キライなの?』

 

 

ウィリアムとリィエルに挟まってソファーに座っている、システィーナの幼少期のお古の服に着替えたエルが泣き出しそうな顔でレナードを見つめているからだ。

 

 

「……フィリアナ。私はどうすればいいのだ?私はこいつを認めたくない。だが、この子を泣かせたくもない。一体どうすれば……ッ!?」

 

 

レナードは頭を抱えて悩んでいく。そんなレナードを他所にフィリアナは話を進めていく。

 

 

「それで、その子……エルちゃんをどうするのかしら?」

 

「もちろん育てますよ。諸事情から学院に連れて来ることも学院長から許可を頂いていますし、一人にはさせませんよ」

 

「それを聞いて安心したわ」

 

 

相変わらずにこやかな笑みを浮かべるフィリアナ。

 

 

「ふふ。でも、この年で私達、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんになっちゃったわね」

 

「……あー、そうなりますね」

 

 

エルは確かに娘のような存在だ。リィエルも娘として受け入れているレナードとフィリアナからすれば、エルは孫にあたるだろう。

 

 

「私がお祖父ちゃんだと!?確かにこの子のお祖父ちゃんになるのは大歓迎だが、この悪魔を認める等……ッ!」

 

『おじーちゃん……やっぱり、おとーさんのこと、キライなの?』

 

「そんなわけないじゃないか」

 

 

エルが泣きそうな声に、レナードは百八十度変わってにこやかな笑みをエルに向けて否定した。……同時に手話で「お前を認めてはいないからな!あくまでこの子の為だ!!」とウィリアムに向かって表現していたが。

こうして、レナードとフィリアナも快くエルを迎え入れ、一同は談話室(ラウンジ)から移動し、食堂で団欒の時を過ごす。

テーブルの配置はウィリアム、エル、リィエル。向かいにはレナード、システィーナ、ルミア、フィリアナという家族で構成された配置だ。テーブルにはローストビーフ、魚のパイ、サラダ、スープ等、色とりどりの料理が並んでいる。

 

 

『美味しい!』

 

「ふふっ、腕によりをかけた甲斐があったわ」

 

 

最初は見よう見まねで出された料理を口に運んだエルは、今は満面の笑みで料理を食べていっており、フィリアナもニコニコと笑って見守っている。

 

 

「はは、口の周りが汚れてるぞ?」

 

「わたしが拭き取る」

 

『ん……』

 

 

リィエルがハンカチでエルの口の周りについたカスを拭き取っていく。

 

 

『おとーさん、この魚のパイをとって?』

 

「はいはい」

 

 

ウィリアムそう言って魚のパイを銀の皿によそい、エルが食べられるくらいの大きさにナイフでカットしてエルの前に出す。

 

 

「ふふっ、懐かしいわね。昔はああやってシスティに食べさせていたわね」

 

「……そうだな」

 

 

フィリアナは楽しそうに笑いながらウィリアム達を見つめ、レナードは不貞腐れたように視線を正面から外す。……チラチラと娘と孫を見てはいるが。

 

 

「リィエルがどんどん遠くに行ってるわね……」

 

「あはは……そうだね」

 

 

フィリアナとレナードに挟まれて食事しているシスティーナとルミアは、本当に複雑そうに目の前の“親子”の光景を眺めながら料理を口に運んでいた。

 

その後、夜の寝室でも。

 

 

『おとーさん、おかーさん……ぎゅっして?』

 

「はいはい」

 

「ん」

 

 

その日は当然のごとく、ウィリアム、リィエル、エルの三人で一緒に眠りについた。

明日からは混乱を避けるために認識阻害の魔術等を使って登校しなければならないが、エルの幸せそうな寝顔の前には些細な苦労となる。

この新しい変化を、ウィリアムは穏やかな気分で受け入れた。

 

 

―――この穏やかな変化は翌日、炸炎黒石を優に越える爆弾に変化するなど、この時のウィリアムは思いもしなかった。

 

 

 




「……ふふふ」

「きゅ、急にどうしたのかしら?全身から汗が……」

「綺麗な夜空なのに、雷や風の音、謎の咆哮が……」

「やべぇ!?エルザがまた荒れているぞ!?」

「ジニーッ!!早くなんとかしなさい!!」

「だから無理ですって」

通達の前夜に起きた出来事。

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