やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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最新刊を読んで章タイトルを変更する素人……それが私だ
てな訳でどうぞ


百四十一話

―――そして、時間は現在へと巻き戻る。

 

 

『おとーさん、頭が痛いの?』

 

「いや、頭が痛いんじゃなく、これからのことで気が重いんだ……」

 

『?』

 

 

頭を抱えたままのウィリアムの力なき言葉に、心配していたエルは小首を傾げる。

 

 

「どうしたんだウィリア充?随分頭を抱えているなぁ?」

 

 

そんなウィリアムにカッシュが嫌な笑みで話しかける。ちなみにリィエルの一番大好き発言以降、『ウィリア充』という不本意極まりないあだ名がすっかり一部の男子生徒達に定着してしまっている。

 

 

「何でもないから気にすんな……」

 

 

馬鹿正直に話せば、カッシュ達が血涙を流して暴れる姿が見えている。当然、ウィリアムはカッシュにも力のない言葉で返して、机へと突っ伏した。

 

 

「本当につれないなぁ……それより、クライトス魔術学院と聖リリィ魔術女学院からどんな子達が来るんだろうな!?」

 

「聖リリィ魔術女学院は女子生徒しかいないから、可愛い子達が来て欲しいな!」

 

「クライトス魔術学院も出来れば女子生徒が多くいたらいいよな!!」

 

「それで、可愛い子達とお近づきになるんだッ!」

 

「そして、罵られたい……ハァハァ……」

 

 

カッシュを筆頭とし、相変わらず興奮して騒ぐ男子生徒達に、多くの女子生徒達は呆れた視線を送っていく。

 

 

「まったく……そのような下品な考えはおよしなさいな。そのような態度で迎えられると、お越しになった皆様のこの学院に対する印象が下がってしまいますわよ?ですから、変態(チャールズ)をナーブレス家の力を使い、祭典が終わるまで監禁致しますわ」

 

「具体的にどこに監禁するのかしら、ウェンディ?」

 

「それは今から探す必要がありますので、まだ決まっていませんわ」

 

「それなら、ちょうど倉庫街に空きがありますのでそこに監禁させればいいんじゃないかしら?監禁用の檻等の必要なものは実家のレイディ商会が用意します……採算度外視で♪」

 

「あら、名案ですわね。流石テレサですわ♪」

 

「それは止めてぇなッ!お願いやから監禁せんといてッ!!」

 

 

ウェンディとテレサの物騒な発言を前に、チャールズはグレンの固有魔術(オリジナル)(笑)【ムーンサルト・ジャンピング土下座】を起動する。

グレンに勝るとも劣らない、身を捻りながら天井高く跳躍してからの、月面宙返りからの両手両膝額五点着地。

実に二組は何時も通りであった。

 

――――――。

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――――――。

 

 

「―――ウィル」

 

「……んお?」

 

 

肩を揺すられたウィリアムは十日前の記憶から意識を今へと戻し、肩を揺すっていたリィエルに顔を向ける。

 

 

「ぼーっとしてたけど大丈夫?」

 

「あー、大丈夫だ。ちょっと物思いに耽ってただけがからよ……」

 

 

リィエルにそう言いながら、ウィリアムは教卓で寝そべっていたグレンと、ギャンギャン吼えるシスティーナ、そんなシスティーナを諌めるルミア、他のクラスメイト達を見やる。

 

 

「グレン、かわいそう」

 

『グレンおにーちゃん、だいじょーぶ?』

 

 

リィエルがそんなグレンにぼそりと(こぼ)し、リィエルの膝の上に座っている、特注で用意してくれた制服に身を包んだエルも心配げに呟く。ちなみに服装は幼子という事も考慮して、丈長のワンピースに学院のローブを羽織るという仕様だ。

 

 

「にしても、先公の顔色が悪いよなぁ……」

 

 

グレンはこの十日間、これから一週間は大忙しだから精神的に気が重いのだろう。……寝ていたにしては顔色が悪いが。

 

 

「まぁ、取り敢えず頑張れ、グレンの先公。後、候補に選ばれたシスティーナにギイブル、ウェンディにカッシュも」

 

 

代表選抜戦は各魔術学院から二十名ずつ選んだ、計六十名の代表選手候補で行われ、その中から代表が十名選ばれる。

その代表選手候補にシスティーナとギイブルにウェンディ、カッシュは繰り上がりで候補入りしている。リィエルとルミアは予想通りの理由で候補から外されていた。

ついでにオーヴァイは病弱を理由に選考から外されており、その事実にオーヴァイがウィリアムに慰めて欲しいと泣きついてきたのは記憶に新しい。

 

 

『わたしも慰める』

 

『オーヴァイおねーちゃん、よしよし』

 

 

……リィエルとエルもオーヴァイを一緒に慰めるという珍事も起きたが。

それは兎も角。

魔術祭典はその選ばれた十名の内、最も優れた魔術師がメイン・ウィザードとなって競技に挑み、残りの九人はサブ・ウィザードとなりメイン・ウィザードを補佐する。

システィーナはそのメイン・ウィザードになろうと気合いが入っている。理由はルミアがこっそり教えたのだが、システィーナの祖父であるレドルフも学生時代にメイン・ウィザードに選ばれたようで、そんな祖父に少しでも追い付きたいという当たり前な理由であった。

 

カン、カン、カン……

 

 

『後小一時間ほどで、予定通り各学院の代表選手候補団が到着します。学院総出で―――……』

 

 

魔術による拡声音響のアナウンスの通達が響き渡り、通達を受けた生徒達が代表選手候補団を出迎える為に前庭移動を始めていく。

ウィリアムも面倒くさいと思いつつ、移動するが―――

 

 

「…………」

 

(……先公?)

 

 

どこか陰りがある表情のグレンに、ウィリアムは一抹の不安を覚えた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

代表選手候補団が到着し、出迎えた生徒達の多くが事務的な拍手を送る中……

 

 

「やっぱり、聖リリィの子達、滅茶苦茶可愛いな!?」

 

「ああ、そうだな!カッシュ!」

 

「くぅ~~っ!何としてもお近づきになりたいぜ!」

 

 

パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!

 

 

「クライトス校の男子生徒達、皆イケメン!」

 

「特に先頭を歩くレヴィン=クライトス様が超☆素敵ぃ~~ッ!!」

 

 

……二組だけは何時も通りであった。

その後、学生会館の大広間で顔合わせの交流歓迎会が開かれ、総勢二百名近い大規模な歓迎会となり……

 

 

「―――四人の代表選手候補入りを祝してぇ~~、乾杯ぃ~~っ!」

 

「「「「乾杯ぃ~~っ!」」」」

 

 

交流歓迎会会場の一角のすえられたテーブルで代表選手候補に選ばれた四人と、くじ引きで参加を引き当てた二組の面々が集まっていた。

皆が皆、和気藹々と話し、明日からの試験に静かな闘志を燃やしている中―――

 

 

(マジでどうしたんだ?グレンの先公……)

 

 

ウィリアムはどこか苦虫を噛み潰したように食事しているグレンに違和感を感じていた。普段のグレンならここぞとばかりに食べ漁っていくのに、今のグレンはもどかしい気分で食事しているかのようだ。

そんな中―――

 

 

「「せ、ん、せぇ~~~~ッ!!」」

 

 

代表選手候補入りしていたフランシーヌとコレットの二人が甘い声と共にグレンに飛び付き、他の聖リリィの生徒達も津波のごとくグレンに突撃していく。

本当に相変わらずだなー……と、ウィリアムが思っていると、亜麻色の髪に眼鏡、左腕に腕輪を着けた少女が近寄って来る。

 

 

「エルザ。お前もやっぱり来てたんだな」

 

 

ウィリアムはその近寄って来た少女―――エルザに声をかけた。

 

 

「はい……お久しぶりです、ウィルさん」

 

 

亜麻色の髪を少し伸ばしたエルザは頬を染め、潤む目でウィリアムを見つめる。その姿は、完全に恋する乙女である。

 

 

「お前もシスティーナ達のように候補団に選ばれたのか?」

 

「いえ……私は、その……諸事情で代表候補入りしていませんが……聖リリィの皆さんの世話係とか、そういう役目でついてきたんです。フランシーヌさん達からの提案で」

 

 

その瞬間、フランシーヌ達の冷や汗を流しながら提案する姿が脳裏に浮かび、ウィリアムは何とも言えない気分となる。

 

 

「エルザ……会いたかった」

 

 

そんなウィリアムとエルザの二人に、リィエルが音もなくエルザの隣に回り込んだ。―――エルを抱きかかえた状態で。

 

 

「リィエル!……………………え?」

 

 

リィエルに顔を向けたエルザも、抱きかかえられたエルを見て見事に固まり、グレンに殺到していた聖リリィの生徒達もエルを見て見事に固まった。

 

 

「「「「……………………」」」」

 

『おかーさん。このおねーちゃんは?』

 

 

圧倒的な沈黙。その沈黙の中でエルの声が響き渡る。

修羅場発生まで、後、一分。

 

 

 




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